ダーク・ファンタジー小説

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ボッチはハズレスキル【状態異常倍加】の使い手
日時: 2017/10/30 03:10
名前: 水源+α (ID: ec7C5mAV)

「───うん? なんだこれ......」

 教室の時計の針が8時19分を指している。

 あと1分で朝活が始まろうとしていて、全員がチャイム前席を心掛け、待機しているときに、それは突然起こった。

床が光ってる......うおっ! 眩しい......!?

 窓際の前から二席目に座る近藤(こんどう) 駿(しゅん)は、突然起きた出来事にいち早く気づいたが、床が一層輝きを増して、思わず眩しすぎて目を瞑ってしまった。
 他の皆も最初の微弱な輝きを放っていた床に気付かなかったが、さっきとは比べ物にならないほどに一瞬で輝きを増した瞬間に、やっとこの教室内の異変に気づきはじめた。

「何よこれ!」 「み......見えねぇ!」 「眩しすぎる......!?」 

 全員が目に襲いかかる光を遮ろうと腕で目を隠したため、視界を失い、外に出ようにも正確な扉の位置が掴めず、教室から出たくても出られない歯がゆい状況になってしまった。

 そしてその数秒後、教室から光が溢れだした瞬間、あれほど騒がしかった教室に突然の静寂が訪れたのだった。


▣ ▣ ▣ ▣ ▣ ▣

 毎日続く平和な学校の日常は、すぐに通りすぎていくものだ。

 だが人生にはアクシデントがつきもので、例えば課題の出し忘れや、再提出、委員会の退屈な仕事、厳しい部活の顧問に会わなければならないという事態が起こってしまい、そこからの日常というのは本当に長く感じてしまうだろう。

 しかし、俺はというと毎日の平和な日常でさえ、長く感じてしまう事態が毎日のように起こってしまうのだ。

それはいつものように朝、襲ってくる眠気に負けて、教室の自分の机に頭を突っ伏していると───

「近藤君......おはよう。今日も相変わらずだね? ふふっ......」

と、駿の机の横で美しい少女が優しく微笑みかけた。

「..................ぅあ? あ......ああ! おはよう峯崎さんっ! ごめんいつも寝てて......」

「別に謝ることじゃないよ? 近藤君はそのままいいと思う......それじゃ、私、友達のところにいくから、またね?」

「あ、うん......!」

ふ、ふぅ......

 ───そう

誰もが憧れ、文武両道、容姿端麗の完璧美少女の道を行く、峯崎(みねさき) 伽凛(かりん)さんが俺になぜか話しかけてくるのだ。
 それは朝の時間帯だけではなく当然、俺は友達になった覚えもなく、まるで友達のように休み時間も、昼休みの時も、毎日のように接してくれるのだ。
 それにより、皆が憧れの峯崎さんが俺みたいなボッチで、休み時間になったらすぐに机に突っ伏す奴といつも接してくれることに対して、クラスの皆から、はたまた学年全員から俺は嫉妬の的になり、理不尽な反感を買っているのだ。
 友達に当然なってくれず、俺はこれまで以上にボッチな生活を送らなければならない状況に陥っている。

 それにまだある───

「駿、お前また寝てたのかよ〜。夜にゲームしすぎな? 体には気を付けろよな?」

「あ、あぁ優真か。でも止められないんだよね......ボスがなかなか倒せなくて」

「お、じゃあさ。今日お前んち行くから一緒に倒そうぜ。俺もボスが倒せなくてさ〜」

「うん。暇だし良いよー」

「そうか!......おっと、もうすぐで朝活だな。じゃあ俺、自分の席戻るから」

 と言って、自分の席に戻った友達がこれまた問題だった。

 浅野(あさの) 優真(ゆうま)。こちらも容姿端麗で文武両道。まさに男版峯崎さんといった感じで、何だかんだで小学校からの友達だったために仲良くしてしまうのは不可抗力であるが、やはり女子からの視線がマジで心臓突き刺してしまうんじゃないかというぐらいに鋭い。

俺のせいじゃないっ! 不可抗力なんだっ!!

と、叫ぶのはさすがに止めとくが、叫びたいほどに訴えたい。

「はぁ......」

 結果的に、この教室では峯崎さんと優真以外から、鋭い視線を感じ、仲間は二人しか居ないことが大いに、改めて理解出来た。
 
 まさに宝の持ち腐れともいうべきか、これをいうなら『豚に真珠』というほうがしっくりくる。
いや、太ってはなく、体はガリなため、『ガリ豚に真珠』ともいうべきだな。
 まぁ豚って実は体脂肪低いから元々痩せてるんだけどね......

 とりあえず豚から離れて......

まぁそんなわけで、俺は皆から理不尽な反感を受ける日々を毎日送り、毎日が長く感じてしまうというわけなのだ。

「俺なんか皆にしたのか......?」

 そんな疑問を毎日抱きながら、いつものように皆からの痛い視線を浴びながら一日をスタートする毎日。

 今も、そしてこれからも、駿はこんな日常が続くと思っていた。

「うん? なんだこれ......」

 しかし、こんな日にもアクシデントは突然起こるというものだ。

 床が微かに光り輝いたとき、俺は逃げたほうがよかったのか。
 それとも逃げなかったほうがよかったのか。

 未来の俺でも判断しかねるのだ。

▷ ▷ ▷ ▷ ▷ ▷


 自分に呼吸があることを確認し、心底ほっとする。
 
 重い瞼をゆっくりと開け、ボヤける視界だが、すぐにここは教室じゃないと判断できた。

 天井がさっきいた教室よりも奥行きが断然あり、落書きでもなんでもない、様々な美しい壁絵が広がってたのだ。
 蛍光灯、扇風機、いつもの白い天井などがなくなり、あるのはシャンデリア、大量の小さな小窓、彫刻が刻まれた石の天井だった。

「ここ......どこだ?」

 いかにも中世的な造りで、場所で思い当たるところがあるとすれば、日本では教会しか思い当たらない。

教会に誘拐された......?

 しかし、見渡しても室内からでもこんな広く、構造が凝っているのが確認できる建造物が、イメージする教会とどうも合致しない。

あれ!? 何で皆が! 

 何故かクラス全員が周りで至るところに倒れていることに気付き、驚愕した駿は、直ぐに優真の元に駆け寄り、息があるか確認する。

 「............はぁ、生きてた」

寝起きでこんな衝撃的な映像を見せられるとは思わなかった......

 駿がそんなことを思った瞬間に、優真がたてていた寝息を止め、おもむろに起き上がった。

「......っぁあ......うん? お、駿か......ん?......え?......て、ここどこぉっ!?」

「こっちが聞きたいよ......俺もさっきまで寝てたから」

「そ......そうか。わりぃな」

「いや俺も口には出さなかったけど結構パニックになったから別に気にすることじゃないよ」

 優真は苦笑いすると、すぐさま立ち上がり、周りを見渡した。
どうやら周りに倒れてしまっているクラスメイト達を見ているようだ。

「......皆も寝てるのか。よし駿、まずは皆を起こすぞ」

「えぇ......切り替え早いよ......」

「いかにも嫌そうな顔するなよ......ほらやるぞ」

「......へいへい」

 というわけで、優真と俺は手分けして皆を起こすことになった。

「おーい。起きろー......朝の時間かは知らんが、とりあえず起きろー」

 駿は適当にクラスメイトの体を二、三回ゆすって、一声かけたあと、また他のクラスメイトを同じように起こすのを繰り返している。
 
嫌いな奴に起こされたくないよな......

 毎日、駿に対して嫌そうにしているクラスメイトを起こすことに抵抗感が募るが、ここはグッと我慢して、このあと五人起こした。

あ......

 突然、今まで迷いもなく、早く終わらせたい一心で動いていた駿の体が硬直する。

峯崎さん居るんだったぁ〜......!

 それは、美しく整った横顔を長くさらさらした綺麗な黒髪の隙間から覗かせ、モデルを優に越すほどの美しい無防備な体を晒す峯崎 伽凛を前に、駿は思わず立ち止まってしまったのだ。

「すぅ......すぅ......───」

 綺麗な音を出す鈴のように、微かな寝息をたてながら、あどけなさが残る美しい寝顔が視認できた途端、駿の脳内で何かが爆発したように言葉は次々と溢れだした。

どどどどうする! 優真はまだ六人くらい倒れている人を起こさないといけないから当分は来ないとして......だからといってこんな俺が峯崎さんほどの人を起こしていいものだろうか!? 否! 断じて否だ! 峯崎さんだって女の子......イケメンに起こしてもらいたいはずだ! いや、だけどこのままこんなところで寝かせておくのも失礼だし......! もうどうすれば......! 実は言うと俺は起こしてみたい......! 当たり前じゃないか! だけど......いや、でもここは毎日に理不尽な反感を買っている俺にもご褒美は一つくらいあっていいのではないだろうか! よし......これはご褒美だ。これは枯れ果てた砂漠に突然涌き出てきた真水なのだ。砂漠のなかで命の要となる水を取らない馬鹿など居ない! よって、俺はこの時を、この瞬間を楽しむことにする!

───ゴクリ......

「峯崎さん、峯崎さん......起きて」

 葛藤を続けること僅か十秒、脳内で驚くほどの早口で葛藤を終わらせた駿に、もう迷いはなかった。

 細く、柔らかい肩を優しく揺する。

「......んっ......ぁ......ぅ? ぁあ!? こここ近藤君!?」

 ゆっくりと目を開け、目がしっかりと駿に焦点に合わさったとき、慌てたように起き上がった。

「おはよう峯崎さん。今はいつもと逆の立場だね?」

 駿は跳ね上がる気持ちを抑えて、それでも会話できる喜びを噛み締めながら、平常心を保ち、笑顔を伽凛に向けた。

「っ!?............うぅ......」

 そんな伽凛は何故か駿の顔をまじまじと見つめながら、頬を赤らめせている。
 
「うん? どうしたの峯崎さん? どこか痛いところでもあるの?」

「い、いやいや......! そんなことないよ......そ、そそれよりも......近藤君は此処がどこなのか分かる?」

 伽凛はおもむろに起き上がりながら見開いた目で見渡し、率直に疑問に思ったことを駿に質問した。

「あ......いや、俺も分かんないんだ。さっきまで峯崎さんのように寝てたから......」

「そうなんだ......」

さすが峯崎さん......さっきとは180度方向性が違う内装をみて少し驚いただけとは......

 感心していると峯崎さんが急に話しかけてきた。

「こ、近藤君っ......その......」

「......!?」

 頬を火照らせ、うつむきながら話しかけてきた峯崎さんに、俺はこれ以上にないほど心臓が跳ね上がった。

な、なんだ......!? 

 駿がそう緊張していると、伽凛はうつむいた顔を駿に向け直し、改めて口を開く。

「えと......あ、ありがとう......起こしてくれて......」

「え?......あ、ああ! そんなことか! いいよ! 別に礼をするほどでもないことだし」

「う、うん! 分かった! でも......起こしてくれたのが近藤君でよかっ───」

「ん? なんか言った?」

「な、何でもない!」

「......?」

「駿! そっちは終わったかー?」

首を傾げていると、優真がそう言って駆け寄ってきたので、完了したことを優真に伝えると嬉しそうに「そうか!」と、笑顔で俺の肩に思いきり手を置いた。

 クラスメイト達は覚醒しきってない人がほとんどなため、五分待機をした。

そして五分後

「よし! 皆起きてるか?」

「はーい」

 似たような返事があちこちに響いた後、優真は手を叩き、まずはなぜこんなところに居るのかについて話し始めた。

「まずはなんでこんな場所で俺たちが仲良く眠っていたことについて皆がわかっている範囲でいいから何か教えてくれー」

 優真はそう言ったが、誰も手をあげなかった。

「......そうか......俺を含めて全員知らないとなると、誘拐かはたまたテレビのドッキリしか思い付かないよな?」

「そうだね......」

 伽凛は優真の言葉を肯定し、誘拐という言葉に不安を抱きながら首を縦に振る。

その後、次々にクラスメイト達は不安を口々にしていたが、優真が結論を出した。

「俺が考えた結果だが......これは誘拐だと思う。そもそも寝かすほどのことをいきなりするドッキリなんて聞いたことないし、カメラも一応起こしてる途中で歩き回ったがそんなものは見つからなかった......だから俺は誘拐しかないと思ってる。皆はどう思う?」

 もっともな意見に、全員がうなずく他なかった。
そして頷くことによって、もしかしたら、という最悪の事態が、恐らく本当になってしまったことに全員が恐怖に包まれた。

 そして同時に、30人いるはずのこの空間が、不気味な静寂に包まれた。
しかし───

「───お待ちしておりました。救世主の方々」

「「「......!?」」」
 
 ───しかし突如、クラスメイト達しか居ないこの広大な部屋の静寂を破った身に覚えのない威厳のある声に、全員が驚愕した。

誰、このおじさん......!?

Re: ボッチはハズレスキル【状態異常倍加】の使い手 ( No.1 )
日時: 2017/10/30 03:23
名前: 水源+α (ID: ec7C5mAV)

「お待ちしておりました。救世主の方々」

「「「......!?」」」
 
 ───しかし突如、クラスメイト達しか居ないこの広大な部屋の静寂を破った身に覚えのない威厳のある声に、全員が驚愕した。

誰、このおじさん......!?

 今まで開かずの大扉がゆっくりと開き、その奥には玉座に座る、王冠を被った老いた人物が座って待っていた。

「これって......」「誘拐のはずだけどどうして......?」「なぁ......あの人王さまっぽくね?」「あの......ネタということは......」「ないな」「うん、ない」「流石にこんな大きな扉作ってまでやらないでしょう?」

 全員が息を呑み、そのまま縫い付けられているように動かず、王冠を被っている人物と、その他に周りにいた部下達もこれには慌てた。

「何をグズグズしておる。早く私のまえに顔を見せて来たらどうだ」

「おい......来いだってよ」「お前行ってこい」「......行ってきたらどうだ?」「嫌よ......あなた行きなさいよ」「俺は......まだ生きたいし......」「死にゃしねえよ......多分」

 畏怖の目を王に向けながら、怯えた口調でそれぞれ口に出す。

 王はそんな生徒たちを見て、自分がなんかした訳じゃないのに何で怯えられてるのかが理解できず、しかも口々には「生きたいし」といわれる始末に焦った。

「待て待て......別にお主達を取って食べたりなんかしないのだが......」

 しかし、伽凛を筆頭にその言葉を警戒した。

「誘拐しておいて......よくそんなことが言えますね? 国ぐるみで私たちに辱しめをやるんでしたら私たちは断固拒否し、徹底抗戦します」
 
 そう伽凛が言うと、駿以外のほとんどの人が同調する。

 また、伽凛の後に続いたのは、友達である朝倉(あさくら) 優菜(ゆうな)だった。

「なにがなんでもいきなり何処か分からないところに皆連れかえっといて......そんな上から目線はどうかと思いますよ? 誘拐犯だったらその態度に納得できますが、あなた方のその姿じゃとてもじゃないけど、想像できませんね」

 優真も、優菜の後に続いた。

「何がしたいんですか?......手も足も縛り付けずにそのまま放置とは聞いたことがありません。逃げないようにする誘拐犯ならばそんなことぐらい常識だと思うんですけど?」

 その優真の言葉で、皆が首を僅かに傾げた。

 たしかにそうだ......と、何故この人達は自分達を縛らずに、そこの大きな部屋に三十人もろとも放置してたのか、理解できなかった。

「お主達......誘拐とは人聞きの悪いの」

「じゃあ何だって言うんですか?」

 王は伽凛からそう聞かれた時、玉座から立ち上がって、騎士達十人くらい連れて、呆然としている三十人の前で何故か、頭を下げた。

「今回は少々、いやお主達にとってはいきなりでよく分からない上、結構な手荒な真似と感じる事をしてしまった。誠に申し訳なかった......」

 下げた頭を元に戻して、王は続けた。

「これで謝罪が足りなかったら後でまた何か贈ろう────さて、では本題に入るとする。まず何故お主達がここにいたのかの経緯を話そう。先に言っておくが、お主達を呼んだのはこの私を含む王国じゃ。理由としてはだが、ある七つの剣を探してほしいのじゃ。その七つの剣は種類にもよるが、一つあれば小国を容易く滅ぼせる程の威力を持っておる......言わば伝説の剣じゃな。その剣を何故探すのかと言うと、今世界中の敵になっておる強大な勢力『魔王軍』が、その剣を求めて探し回ってるらしいのじゃ......『魔王軍』の強力な貴族に持たれると、もう私たちでは太刀打ちできなくなってしまう。そんなこともあって、先に見つけ出そうという魂胆に至り、お主達を呼んだというわけじゃ」

「え? ちょまって。『魔王軍』? なにそれ? ゲームじゃね? なんで今そんな話すんの? あり得ないだろ」

 一人の男子が王らしき者から放たれた意味不明な言葉を鼻で笑った。

 それは皆も同じようで、「この人なにいってんの?」と困惑した表情を浮かばせている。

 一部の男子は嘲笑し、大部分が困惑している中で、王は「あれを持って参れ」と近くの騎士にそう命令する。

 騎士は早々に立ち去り、数十秒後には赤い布で覆われた物を手に持って王に差し出した。

「......今から『魔王軍』と戦ったとある戦場の記憶を見せる......注意しておくが、残虐の限りを尽くしている過激な内容となっておる。目をそらすのもよしじゃが......これが真実じゃ」

 王は赤い布を取り、何のへんてつもない鏡を天井に向かって高らかに持ち上げた。

 すると天井に、鏡から一直線に伸びた光が当たり、その瞬間映像がうっすらと浮かび上がっていった。

「「「「「「「おお......!」」」」」」」

 それを目撃した皆は、一様にそう驚嘆する。

 うっすらと見える映像が段々と鮮明になっていく中で何人かはもうその映像がどんなものなのかを察し目をそらす。

「「「「「「「..................っ!?」」」」」」」

 やがて映像が完璧に写された時、皆はその映像に息を呑んだ。

 ────写るのは五メートル程の体格を誇っている牛人が、泣いて必死にその拘束を解こうともがき続けている騎士の腕をその大きな口を開けて食い千切って鮮血を至福な表情で浴びている───そんな内容の映像だった。

 映像はそこで止まり、天井に伸びた鏡から放たれていた光が消えた。
 
 皆は言葉を失い、しばらくの静寂が部屋を支配する。

 たった一分程度の映像で、皆の心には王が言った『真実』が深く刻まれた。

「......どうじゃ。信じてもらえたか」 

 王のその一言に誰も反論はできなかった。

 王の話を聞いていた皆の中の一人のクラスメイトが手を上げ、質問した。

「何故私たちなんですか?」

 その言葉に皆は同感し、頷く人も居た。

しかし、話を聞いていた駿は皆とは違い

魔王と戦えるのかっ! いや〜人生は生きてて分からないなぁ〜。俺的には戦いたい心もあるし、伝説の剣に触れてみたい気持ちもあるし、皆の意見を優先にしないとっていう気持ちもあるけど......やっぱり戦う方を選ぼっかな〜♪

 と、目を輝かせていた。

そんな駿をいざ知らず、王はまた続けた。

「お主達は多大なる力を秘めている可能性が大いにあるのじゃ......その力は、かつて現れた勇者に匹敵、いやそれ以上の非常に大きなもので、戦うごとにお主達はもっと強くなるのじゃ。その強力な力も相まって、力を持っているお主達にこれを頼みたいのじゃ。成功率もぐんと上がるし、何より安心だからの」


「なんであなた方の都合に私たちを巻き込むんです? 『魔王軍』っていう人達と戦争状態で、そもそもどちらが悪いとかじゃなく、戦争をやっていること自体が悪いことだと思いますけど......そして今、私達のように関係ない人も巻き込んでます......今は故意で私たちを巻き込んでいるのでしょうが、戦争をやっているあなた方の都合のことでどれだけの人たちが無意識にも巻き込まれていると思ってるんですか?」

 王が言った言葉に、伽凛が冷静に返答する。その声は冷静に聞こえても、凍えるような怒気を感じられる。

「むぅ......確かにそうだが、この戦争は仕方なくやっているのも同然のものなのじゃ......」
 
 王は困ったような顔をして、目をつむり、顔を横に僅かに振る。

「......? どういうことですか?」

 ここで初めて駿の声が響いた。

 皆はそんな普段は見せない、自分から発言することのなかった駿に少し驚いたが、王はそんな気も知らず、淡々と話した。

「『魔王軍』は、これまでこの世界に存在する魔物と、突如として現れた魔人を魔王が治める形によって組織された、いわば魔族の統制機関じゃ。その『魔王軍』が組織された当時から、近くにある国々を次々と無差別に殺戮を繰り返し、あわよくば世界中に、国として認めろ、と発言してきたのじゃ。最初は穏便に済ませたかったのじゃが、殺戮を繰り返してきた『魔王軍』の過去がどうしても足枷になり、なかなか認めてくれない『魔王軍』側は、ついに戦争を仕掛けてきたのじゃ......」

 その王の言葉に伽凛は瞠目し、さっきの発言と今の王の言葉を照らし合わせて、悩んだ。

これは......仕方ない......かな? 戦争はいけないと思うけど、理不尽な『魔王軍』の要求を飲んだらもっとこの世界は酷いものになってたかもしれない......殺戮を繰り返したのならそれは間違いなはず

「すみませんでした......先程の発言、撤回というわけにはいけませんが、少し間違っていました」

でも戦争はいけないのは当たり前だから、撤回をするわけにはいかないよね?

「いや、お主の発言はもっともだった。分かってはいたものの、最近忘れてきていたのは本当じゃった。改めて私に教えてくれて感謝しておる......さて、どうじゃろうか......? 私はこれ以上犠牲者を出したくない。伝説の剣を手に入れられば、負けは必至じゃ......負けたら私達人族の民族浄化もあり得るじゃろう。どうか......どうか私達に力を貸してはくれぬか......?」

 その王の言葉と、一連の話を聞いていた反対していた人達全員が肩を揺らした。

 駿も同様に肩を揺らし、拳に力を入れて、目を細めていた。

静寂が続く。

───

───

───最初に静寂を切り裂いたのは


「皆、やろう」

 駿だった。

 誰もが駿に注目した。

「ここの世界は、もう俺たちが住んでいたところとはかけ離れた世界だ」

 今までとは違う、凛々しく、堂々とした駿の姿に伽凛、そして皆が目を見開いた。

「俺達が居た世界は、果たして俺達を欲していただろうか......? 俺はそうは思わなかった。俺に場合、ただ毎日、学校の教室に来て、ひたすら退屈な授業を受けたあと、机に突っ伏して寝て、チャイムが鳴った後でまた授業を受ける......ただこれだけだった。もちろん、皆の場合は友達と話すというものがあるが、本当にそれだけで本当に楽しいと思ったことがあったか? それだけの生活にほぼ半日無駄にして、そこの世界は俺達を欲していると思ったことがあったか?」

 その問いかけに、皆は目を逸らした。

「......だが、この世界は、俺達を欲していると、そう口々に出してくれている。決してこの世界を望んだわけじゃない俺達をだ......俺はこの世界で、存在価値を示したいと思ってるんだが......皆はあんな退屈な世界で存在価値を示したいか......? 退屈な日々にまた戻りたいのか......?」

まぁ......皆を誘ってるのは怖いだけ......だからこんな大口を叩いてるだけ......ただそれだけだ、うん

 駿はそう言い聞かせてる自分が見苦しく思い、苦笑してから、嘘でも本当でもないことを口にする。

「───俺は一人でも......この世界に残るつもりだ。皆は?」

「「「......!?」」」

 その発言は皆を驚愕させる。

 しかし誰もが頭を悩ませた。

 駿の言ったことは、皆の心の奥底に仕舞い込んでいた『日常からの解放という』言葉を引き立たせた。

 毎日、密かに思っていた、退屈というものの裏にある、解放というもの。

 まだ子供であることを再確認できたこの思いは、皆に止められなかった。

「近藤君、私は残るよ」

 伽凛が挙手する。

「俺も......なんか見過ごせないわ。魔王とかいう奴。あと、駿と討伐してみたいし」

 優真も挙手する。

───それにより

「私も!」

「お、俺も!」

「僕も!」

「俺もだ!」

「私も......」

────......

と、続々と皆が挙手し、ついに全員が挙手した。

「お、おぉ......! やってくれるか! 頼もしい限りじゃ!」

 王の他にも、周りにいた騎士や大臣らしき人達が歓声を上げた。

「お主のお蔭で皆が賛同してくれた! 感謝しておる!」

「ど、どうも......」

 と駿が恐縮するのを笑顔でうんうん、と頷いた王は「よし、さっそく......あれを持って参れ」と命令し、武官が例のあれを持ってきたらしい。

「これからお主達には自分の実力を知ってもらうため、ステータスを調べる。やり方は簡単じゃ。その水晶の上に手を置くだけじゃ。さぁ、まずは並んでやってみるのじゃ」

 皆はそう言われたので水晶の前に並んだのだが

───並んでいる間、皆から駿は質問攻めを受ける。

「近藤......お前どうした! いきなり言われたときはビックリしたぞ!」

「近藤ってさ......案外いいこと言うよな」

「近藤! てめーなに格好つけてんだよ! 格好良かったけど!」

「近藤なんでそんなに変わってるんだ?」

「近藤君って、案外しゃべる方なんだ......」

「近藤君......なんかすごいね」

 と、賞賛や皮肉なども度々混じっている。

なんか......お前らがすごいよ

 と、すごい人数で囲まれている駿はそうつくづく思っていると

「近藤君!」

 と、伽凛が呼んでいるため、駿は「なんだろう?」と、首を傾げた後、人混みをかき分けながら駆け寄った。

「なに? 峯崎さん」

「いや、近藤君の番だから呼んだんだけど......」

「あ、あぁ! なるほどね。じゃあ行ってくるよ」

「う、うん!」

いや、ちょっとまてよこれって峯崎さんのステータスを見れるチャンスなんじゃね?

「優真、先にやってて」

「うん? 別にいいけど」

 と、自分の番をすこし後ろに並んでいた優真に譲った。

よし......!

「そういえば峯崎さんのステータスってどうだったの?」

 と、駿は一度伽凛に背を向けた体をまた向けながら、質問すると......

「この紙に書いてるけど......見たいの?」

お、きたーっ!

「み、見たいです!」

「うん、いいよ? はい」

 伽凛は笑顔で快諾して、紙を見せてもらった。


すると、伽凛のステータスを駿は嬉しい気持ちで黙読する。


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ミネサキ・カリン 

女性 

人族

Lv1

HP  125

攻撃力 50

魔攻力 220

MP  250

敏捷  90

耐久  50



スキル

なし

固有スキル

女神の治癒(下位)
・対称の個体に、全回復、状態異常回復する。
・スキル使用後、自動回復(大)が付加。

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つ、強っ!? すんげえ回復出来るじゃん......しかも現時点で下位ということは、上位になったらどうなるのだろうか!

「はぇ〜......」

「近藤君、どうだった?」

「峯崎さんって女神だね」

「......うん?」

「............ぁ、あ! ぼーとしてた! うん、強い! あ、行かなくちゃ! またね」

「え、近藤君!?」

 駿は顔を赤くしながら、ステータスを確認しに行った。

すると......

「な、なんだこれぇ!?」
 

ボッチはハズレスキル【状態異常倍加】の使い手 ( No.2 )
日時: 2017/10/30 03:25
名前: 水源+α (ID: ec7C5mAV)

「な、なんだこれぇ!?」

「ん? どうした駿?」

 と、優真の声に耳を貸さず、駿はある紙の一点だけをあらん限り目を見開きながら注目していた。

 こ、これは............マジかよ!?

その駿のステータスは───こうだった。

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コンドウ・シュン

男性

人族

Lv1

HP  100

攻撃力 100

魔攻力 100

MP  100

敏捷  100

耐久  100



スキル

なし

固有スキル

状態異常倍加(下位)

・状態異常の効果が二倍される
・自分の体に何らかの異常が起きた場合、それが付加される

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おいいいいいいいいいいいいっ!? なにこのク○スキル!? 状態異常倍加って......倍加しちゃいけないものだろ! ふざけるんじゃねぇえええええええ!! どうしてこうなった!? 俺の......俺の固有スキルが......役立たず......いやむしろ足手まといになってやがるぜーっ! て、ばっきゃやろう! おいおいどうすんだこれ......俺、毒とか食らったらもう恐ろしい速さで俺のHPを蝕んでくるじゃん............ていうか能力値見てみろよ......なにこの特徴の無さ!? バランサーすぎだろ! 絶対俺のステータスを決めた神様が居るとしたら「あ、とりまここ全部100でいいや」とか言ってたんだろうな〜......おいこら神、いっぺん表出やがれ!

 と、駿の頭のなかは色々とすごいことになっている。

 そんな、紙を掴んでいる両手を明らかに揺らしながら顔面蒼白の駿を心配した優真が声をかけた。

「お、おい駿! 大丈夫か!」

「......アハッ......ハハッ......」

「ヤバイ......こいつ壊れやがった!?」

 どこか遠い目をしながら、不気味に笑った駿を優真は危惧するが

「なぁ......優真......紙見せて」

もしかしたら仲間が......!? 

と、勢いよく開いたが
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アサノ・ユウマ

男性

人族

Lv1

HP  130

攻撃力 250

魔攻力 150

MP  90

敏捷  100

耐久  70



スキル

なし

固有スキル

剣豪の記憶
・剣術のスキル熟練UP経験値限度が1/2になる
・持っている武器(剣限定)に耐久性と鋭さが二倍付与される

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はい......ですよねー......

「..................」

「駿はどうだったんだ?......俺は固有スキルに剣豪ってついてるし戦士とか選ぼうと思ってるんだけど」

「................................................」

「駿? お前なんかさっきからおかしいぞ?」

 紙を見ながらずっと黙り混んでいる駿の様子は明らかにおかしかった。

 しかもよく見ると小刻みに駿の肩が揺れているのがわかった。

「優真」

「ん?」

「俺死ぬかもしれない......」

 そう言って強引に優真にステータスが記された紙を見せ、駿はまたこう呟いた。

「毒には......気を付けるよ......ハハッ......アハハッ......」

 黙読している優真の顔が徐々に驚きに染まっていくのが分かった。

「これは......!?」

 そして、読み終わった時には一杯に目を見開いた顔を駿に覗かせ、優真はこう口にした。

「お......俺とお前で強くなろうぜ......? な?」

「いや......その顔で言われたってな」

 駿は苦笑しながらも、優真に少し嫉妬し、同時に悲しんだ。

仲間なんて居なかったやんや......グスッ......

 この後、一人を除き29人がステータスの紙を見て喜んでいたという。

 そして、俺はこの光景を眺めながら、どうやってこの世界で生きていくか、今はそれだけを考えていた。

「よし......皆確認は終わったな?」

「「「はい」」」

「じゃあ次は職業を決めてもらう。職業を決めたら、その職業に合った武器を贈呈し、その後はベテランの冒険者や騎士がお主らに戦闘技術や知識を叩き込んでくれることになっておる。心して選び、その道を極めて来るのじゃ」

「「「はい!」」」

どうやらまた何か調べるつもりだな......

「ではまたこの水晶に手を置いてくれ。やり方は先程と同じじゃ」

 また並ぶこととなった生徒達は縦に一列になって自分の職業は何かとてもワクワクした表情で並んでいた。

 駿はもう固有スキルのことで一杯な気持ちなのか、あまり興味がなさそうに並んでいる。

 次々と調べられて、次々と適性の職業が言い渡される。

 戦士、僧侶、騎士、槍術士、拳闘士などという一般職の他に、賢者、バトルマスター、パラディン、遊人、武道家など上級職につける人もちらほらいた。

そういえば峯崎さんはどうなった?

 と、言い渡され喜びを露にしている伽凛の元に歩み寄り、職はなんだと、聞いてみたら

「賢者だよ? まさか私も上級職につけるなんて思わなかった!」

「え、すごいじゃん峯崎さん」

「そ、そう?..................えへへ〜」

 駿にそう言われて、伽凛は笑顔で照れ臭そうにしていた。

「近藤君は? もう決まったの?」

「あ、そういえば......行ってくるか」

 と、駿は意気込みながら水晶が置いてある机にゆっくりと歩み寄り、そっと水晶に触れた───すると

「こ、これは!」

 言い伝える役目の神官が、目を見張る。

「え?」

 その言葉に、また何かあるのか!? と、駿は嫌な予感をした。

───水晶の中に、浮かんできたおぞましい黒いオーラ。

 周囲の騎士も、武官も、王も誰もが瞠目した。

 クラスメイト達は、状況が理解できず、困惑した表情でその状況を見守る。

 その黒いオーラは、水晶の中の全体に蔓延したあと、すぐに徐々に消えていった。

 やがて、黒いオーラが消え、水晶はまた無色透明に戻った。

「な、なんだったんだ......」

 駿は冷や汗をかきながら、困惑した表情で首を傾げた。
 
 そんな駿に王は驚愕した表情で駿を呼んだ。

「お主......まさか」

「はい?」

 今まで水晶に触れてきて駿のようなことにはならなかった皆は、少し嫌な予感をした。



───しかし、それは駿も最初から同じだった。


「この男を引っ捕らえよっ!」

「「「え......!?」」」

 王の突然の言葉に、駿を含め生徒達全員が驚愕する。

「はっ!」

 そして騎士達も、その言葉に一切抗うことなく、命令に従った。

「なんでだよ!?」

「いいから黙って捕まれ!」

 駿は襲いかかって来る騎士達からこの王の間の扉を強引に開けて、城内を全速力で逃げ回りに行った。

「何でなんですか!?」

 伽凛は突然、王が駿を捕らえようとしてることに、激しい怒りを覚えた。

「彼が......魔王軍に非常に近い存在と分かったからじゃ」

「そんなの横暴です! どうしてそんなことが言えるんですか!?」

 優真も、そして皆も突然のことに怒りを覚えて、怒声を王に浴びせた。

「彼の職業はダークナイト......この水晶に黒いオーラが発生したのは、紛れもなく彼をダークナイトと示すのに十分な理由と根拠があったからなのじゃよ」

 ほとんどに人が「はぁ?」と聞き返す中、伽凛は怒気を含ませた声で叫んだ。

「近藤君はそんな職業だとしても、反旗を翻す人じゃないと確信できます!」

「たとえそうじゃとしても、私はこの国の王であり、国民を守る義務がある。不安分子を置いとくままではいかんのじゃ......」

 その言葉を、優真は鼻で笑った。

「守る義務がある? じゃああんたはいまだに戦場に立っているってことか......?」

「それとこれとは話が別じゃ。私は戦場に立たなくたって、守れることはできる」

「じゃあ俺たちもそれとこれとは話がべつになっちまうな〜。実際、俺は駿と魔王討伐してみたかっただけだからな......俺は降りて、駿と一緒に旅するわ」

「ああ、好きにするがよい」

 王は、こやつ一人抜けたってどうにでもなるわい......と、嘲笑を浮かばせた。

「よし───皆、行くぞ」

「「「おー!」」」

「......いやちょっと待たんか!」

 しかし予想外のことに、全員が行く気でいたため、王は盛大に焦って制止の言葉を浴びせた。

 その言葉に、優真は「あぁ?」と、王を振り向き様に睨み付ける。

「どうしてあの若造にそこまで出来るのじゃ!」

「......実際、まだ得たいの知らない異世界の人より、数少ない仲間の方を優先するに決まってるだろ?」

「何を言っておる! ダークナイトの男を私は信じろとでもいうつもりなのか!?」

「それはこっちの台詞だ。今日会って間もないお前達のことを信じろとでも?」

この若造どもめ......図に乗りおってッ......!!

「もうよい! 出ていけ────」

───ガチャン!

「......!?」

 と、王が叫んだ直後に、扉を開けた大きな音が、鳴り響いた。

「......お父様?」

 部屋に冷気が立ちこもってきたと思えるような怒気を籠らせた冷たい女声が聞こえた。

「り、リーエルか......!?」

 その声源をたどると、そこには金髪碧眼の容姿端麗で普通よりすこし豊満な胸を膨らませ、まさに姫と呼べるような美しいオーラを放っている、リーエルという美少女がそこに立っていた。

「......どうして、自分から呼んでおいてあの青年を騎士達に追いかけ回してるんですか?」

 そのリーエルは、笑顔ながらも冷たい声で質問する。

「彼はダークナイトだったのじゃ......だから騎士達に追わせ───」

「───馬鹿ですか?」

「え?」

「あの方は転移者で、ここの世界の事情など分からないはずですよ? ダークナイトと言われても何か分からない状況で、しかも突然引っ捕らえよ、と言われた彼はさぞかしこの国に反感しているんでしょうね? ......彼の仲間であるこの方達もさぞかし、この国に反感しているんでしょうね?」

「むぐぅ......」

 王はいいごもる。

「お父様がこの国の第一印象を悪くしたのですよ? お父様の勝手な思いと、勝手な行動で、どれだけ人に迷惑がかかっているのかご存知でしょうか? 城内の騎士達が邪魔だとメイドの方々から言いつけがありましたし......騎士達も騎士達で邪魔者扱いを受けている上で探していますし......事実探し人はここにおりますし───入ってきていいですよ?」

「え......?」

その言葉に王は思わず聞き返す。

 一方リーエルは王に浴びせていた言葉を言い終わった瞬間、冷たい顔から扉の向こうに声をかけるときは可憐な笑顔になった。

リーエルの後ろの扉が開く。

「───お邪魔します......お? 本当にここに戻ってこれた......」

 扉を開けたのは駿だった。

「ふふっ......王城はすごいでしょう?」

「はい......繋がってるとは思ってなくて......すごいです」

「あ......あ......」

 王は口をパクパクさせながら駿の方に指をさした。

「ということで、コンドウ・シュンさんです。お父様、何か言うことはないのですか?」

「あ......いや───」

「───お父様?」

 リーエルのその言葉で王は堪忍し、王はその場で駿に向かって腰を九十度に折り、次には一声

「申し訳無かった......!」
 
 それをみていた皆は駿の無事を安心しながら、腰を折り曲げている王に溜め息をつく。

「あ......その......別にいいですよ?」

王が腰を折って謝ってること自体おかしいし、なんかこっちまで恥ずかしくなるし......

 駿はそんなことを思いながら、頬を掻いた。

「ゆ、許してくれ......!」

「だから良いですって」

 駿は王の元に歩み寄り、背中をさすった。

 その光景を見ているリーエルや、他のクラスメイト達は自然と頬が緩んでいた。

「シュンさんは優しいですね。こんな愚王に」

「うっ......」

 グサリ、とその言葉は王の胸へと突き刺さった。

「駿は優しいからな。でも勘違いじいさんには優しく出来るかな?」

「ぐっ......」

 グサリ

「近藤! お前そんな奴に構うなよ! 一緒に旅に出ようぜー?」

「ぐはッ......」

 グサリ

「近藤君......大丈夫だった? 痛いことされた? ごめんね、この人の暴走止められなくて」

「ぐおッ......」

グサリ......どさっ......

「もう止めたげて......! オーバーキルし過ぎいい!」

 加害者である王を逆に被害者である駿が皆の口撃から守っている、そんな変な光景が出来ていた。


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