ダーク・ファンタジー小説

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不思議な死神さん
日時: 2017/11/29 22:15
名前: 黒飴林檎 (ID: lFsk8dpp)


「もしもし、死神さんですか?」

真夜中4時44分に666−0000ー444へ電話すると、殺したい人を寿命と引き換えに殺してくれる[死神さん]に繋がるらしい。巷で流行りの都市伝説。しかしそれは本当であった。

死山神月しにやまーしんげつ
通称「死神さん」と称される都市伝説の正体。
いつも黒い喪服の全体的に黒い人。表情筋は死んでおり、その瞳は真っ赤である。
今作の主人公。


死神さんのお仕事。
一緒に覗いてみませんか?


「はい。ご依頼ですか?あなたは誰を殺したいんです?」

疲労少年 ( No.1 )
日時: 2017/11/30 06:33
名前: 黒飴林檎 (ID: lFsk8dpp)

耳元にこびりついた怒号が払えない。
どうやっても体に残るのは小さな震えと、限界を訴えてくる痛みのみ。たまらず膝を抱えて丸まった。
──少年、松山司まつやまーつかさは、親からの虐待に疲れきっていた。
学校ではそれこそ過度に目立たず、けれど友人がいないわけでもない。内気ではあれど、いじめを受けているわけでもない。意外にも運動が得意で、その事で少しみんなと喋れたり。・・・そんな、いかにも普通な高校生である司は、しかし、家庭ではそう簡単に普通で済ませられるような生活を送ってはいなかった。
「おい司ァ!!てめぇ満足に酒も買ってこれねぇのかァ!!?」
そんな事を言われても。未成年なのだから、買えるわけないだろう。
口をついて出そうになったその言葉は、しかし歯軋りと一緒に閉じ込めておく。
俯いた司に何を思ったのか、途端目に見えて不機嫌になった父は司の髪を引っ掴み顔をあげさせ、その頬をぶん殴る。
司自身、苦痛に顔を歪めはしたが、慣れた痛みだと涙を流す事はしなかった。
その後も家には父の怒号とバシンドスンととても重い音が鳴り響き、やがて止めば、父が酷く気だるげな雰囲気を漂わせて出てきた。満足したのか、酒が飲めないのが我慢ならなかったのかどちらかは知らぬが、恐らく後者だろう。
高校生である司に酒を買ってこいなど、そもそも無理な話なのだ。それを理解しているだろうに、何故ああも理不尽な怒りをぶつけてくるのか、司にはよく分からなかった。
じくじくと熱を持つ頬を緩く撫で、一先ず脅威が去ったことに安堵の息を吐いた。

「つーかさっ!おっはよー!」
あの後結局酒に飲んだくれた父は殴ることさえしなかったが、グチグチと文句をこぼしていた。
腹を殴られた時に出来たのだろう痣が気になったが、学校が唯一の休息の場である司に休むという選択肢は無かった。
そして朝。
真っ先に司の元へ駆け寄ってきたご近所の幼馴染、条裏桃すじうらーももを見て、司は少しやつれた笑みを浮かべる。
「おはよう。朝から元気だね、桃ちゃん」
「うんっ!」
何処までも眩しい笑顔にツキりと胸が痛む。
その痛みも教室に入ることで綺麗サッパリ忘れてしまう事になった。
「よっ、司!」
「まぁた桃と一緒に登校かよ。熱いねぇ」
「司ァ。あたしらにも付き合えよォ」
次々にかかる声に、本当に安堵してぎこちない笑みを浮かべてそんなんじゃないよと口にする。
これがいつもの毎朝行事になっていた。
疲労困憊の司にしてみればこのやり取りは自分の休息を示すチャイムなのだ。
桃のなんとも言えぬ表情に気付くことなく、司は欠伸を一つこぼした。

疲労少年.2 ( No.2 )
日時: 2017/12/01 17:07
名前: 黒飴林檎 (ID: lFsk8dpp)


カチカチと合わぬ歯の音が狭い空間によく響く。
その視線は忙しなく、己を包む暗闇の中を覗こうと必死に動かされている。
しかしその指は順調に頭の中に深く残ったある番号を押していく。
…そう。真夜中の4時44分。
司は狭い電話ボックスの中、死神と通信を試みようとしていた。
なんてことはない。学校でたまたま聞いた噂で、初めは興味も無かったつもりだったのに、頭とは正直なもので、脳裏にこびりついて離れなかったそれを、早朝の暗闇に怯えながら実行しているわけである。
心から信じているわけじゃない。
ただ、きっと。そろそろ限界だという警告がこの体を動かしているのだと言い訳を口にする。
その時だった。
コール音が耳元から漏れ、ひぃ、と縮み上がる。
(繋がった!?なんで!?死神に繋がっちゃったの!?)
頭の中は混乱しているくせに、歯はカチカチと音を立てているのに、その電話を握る手にはより一層力がこもる。
1…2…3………?
「………………」
4コール目が、鳴らない。それはつまり、繋がっているということで。
慌てて十円玉を入れる。本格的に滲んできた涙を拭って、震える声で噂通りに進めていく。
もし、もしこれが本当に死神さんだとしたら。
そうだったら、きっと。
「も、しもし…し、死神さん、…です、か…?」
カシャンと十円玉を入れる。
じれったくて三つ一気に入れた。受話器の向こうから小さな溜息がこぼれて、びくんと肩をはねさせる。

「はい。ご依頼ですか?あなたは誰を殺したいんです?」

抑揚のない、静かな声だった。


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