ダーク・ファンタジー小説
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- 黒々とした、部屋。
- 日時: 2017/12/24 18:56
- 名前: 濡濡 (ID: MgJEupO.)
幾ら周りで惨劇が起きようとも、悲劇が起きようとも。
それらが見えなければ、受け入れなければ知ることはないのだ。
何も見えなければ、何も知らずに済むのだ。
何も知らなければ、何かを考える必要もなくなるのだろう。
- Re: 黒々とした、部屋。 ( No.1 )
- 日時: 2017/12/18 23:22
- 名前: 濡濡 (ID: MHTXF2/b)
黒いカーテンをハラリと捲っても、天気が悪いのかもう夜なのか。
景色は変わらぬ、黒である。
部屋の主は壁紙も床も家具も、そして自分自身の衣服も黒にしていた。
どうしてそこまで黒いのかは本人もよく分からぬ。
部屋がこんなに黒いとランプの灯りは浮くし、埃などの埃は目立つから嫌でもこまめに掃除をしたくなる。
部屋の主は黒いソファーベッドにもたれ込み、寝転がりながらこれまた黒いクッションを両手で抱き締めていた。
主の長い黒髪がソファーベッドからサラサラと落ちていき、床に着きそうで着かないほどでふらふらしていた。
そしてしばらくすると主は手をだらっとさせればクッションは床に転がり、すぅーすぅーと寝息が聞こえてきた。
窓が少しでも開いていたのであろうかカーテンが揺れ、
時折外が見えた……気がした。
が、そんなことはあるまい。信じられないほどに黒々とした、闇であった。少しの光も感じられない程だ。
そんな今はもう、深夜である。
どんな悪人でも善人でもうとうと眠くなる時間だろうか。
- Re: 黒々とした、部屋。 ( No.2 )
- 日時: 2017/12/31 21:27
- 名前: 濡濡 (ID: RnkmdEze)
朝。鳥達がチュンチュカと鳴いていた。それに目を覚ましたのか、のろりと重々しく体を動かした。
それに伴って床に向かう黒髪もゆらゆらと揺れている。黒いカーテンからは少しだけ光が漏れている。
部屋の主はそれを気にすることなく、室内は暗闇だというのに躊躇なく動きだし、カチッと音を鳴らした。
すると、音楽が鳴り始めた。それは過去のものとは違う、新時代のアイドル。笑わないアイドルと勝手に表されていた。
部屋の主がカーテンを開くと、窓からは太陽の光が少しばかり溢れてきた。
窓に付着した鮮血も付いたばかりなのだろうか、垂れ続けていた。
- Re: 黒々とした、部屋。 ( No.3 )
- 日時: 2018/02/18 02:25
- 名前: 濡濡 (ID: OypUyKao)
黒々とした、部屋。部屋の中はそうであろうと、中から見える景色は赤であった。
赤、というのはイメージとして多いとされるのは愛、情熱、そのようなイメージであろうか?
または薔薇、ワイン、そして血、そのような物であろうか? 結論としてはどちらでも良い。
その赤は血であり、血ではないことが重要なことである。現状を知らなければ、意味不明な文でしかない。
現状を知れば、それは納得となる。そして現状を知るには引き籠るのではなく外を見ること。
何もしないのではなく、行動することが大切である。
彼女はネットにそう綴った。この始まりから先程までのことを。
彼女は知っていた、一度だけ外に出た。そして何度か確かめるために窓を開けて空を見上げた。
彼女の目に映ったのはとにかく、赤だった。空からは薔薇の花びらが舞い、ワイン瓶は飛んでいた。
ガチャン、と音を鳴らす。中身は弾け、溢れる。もちろん、本来の意義を果たすワインもいた。
そして血は……迷うことなく彼女の顔面に掛かった。それはほんの一部である。
いつの間にか彼女の住む小さな街は赤、に染まった。
薔薇の花びらが舞う理由も、ワインが投げられる理由も、街人同士が闘い血を流す意味も分からぬ。
ただ、その景色の衝撃に彼女は窓を閉め、カーテンを広げた。
それでも音は消えなかった。ガラスの割れる音、人々の嘆きは耳に力強く響いた。
だから大音量で音楽を流し始めた。全てを知らないために。
そしてネットに書かれたほんの少しの記事に従った。
『黒い部屋に住みなさい、悪いものが離れる』
本当か、偽か。真偽もはっきりしないこれに従った。外に出たくなかったから通販。
外の景色を気にすることなく、赤まみれの段ボールが大量に届けられ、伝書鳩に料金を預けた。
鳩さえも羽先が赤くなっていて、何処と無く威厳を失なったように見えた。
黒い部屋に住む彼女は何も変わらない現状に苛ついた。
「『レッドタウン』から人々はどうして抜け出さないのか」
ネットでもテレビでもそんな話題で溢れていく。誰かが抜け出せば取材攻めだそうだ。
脱出者に向けられる目は興奮を超え、気持ち悪い顔面をしている。
人々に囲まれて、終わることのない煩さに耐えられず、殆どがそこから逃げ出す。
すると、それをまた記事にする。最近はこの繰り返しで社会はつまらなくなったなと感じるあまり。
国は何もしないのか、呑気で平和な奴等がそう言っている。
国はさぞ当然のように答えた、「どうにか出来るのなら既に対処している」と。
この日から私はいつの間にか配給される食料を少しずつ食べて寝て、暇を潰すだけの日々がある。
日々に違いを与えるのは、音楽と芸術だった。何もすることがないから、街に溢れる赤をキャンバスに塗りたくった。
- Re: 黒々とした、部屋。 ( No.4 )
- 日時: 2018/02/23 07:55
- 名前: 濡濡 (ID: OLpT7hrD)
『レッドタウン』いつの日にか、この街はそう呼ばれるようになった。
元々の名前は当然あるが、マスメディアがそれを報道することはない。
ニュース番組では、そこから抜け出さない人たちについて何も知らない呑気な評論家等が自由に話していく。
「気が狂ってしまってるんです、もうどうしようもないですよ」
「はぁ、国も国ですよ。所詮、人間の行動ですから国で止めるしかないでしょう」
「薔薇の花弁が空から舞い、ワインが投げられ人々は傷付け合い、血飛沫が舞う?
そんな状況、あり得ないです。作られた街なんですよ、馬鹿な若者のイタズラですよ」
何も知らない、呑気な評論家等が何を述べる。今日も窓は赤く染まっている。いつも通りだ。
さて、フォリ・ア・ドゥと表記されていたか、曖昧だが、思い出した。
『フォリ・ア・ドゥ』とは何処かの言葉らしく、和訳するとふたり狂い。
社会と隔離された環境、閉鎖的な環境において一方の狂気が健全な相手に伝染すること。
さらにその相手が精神的に弱っていると成立しやすい。
もし、これが大規模に起きていたなら……? そう考えて尚引き籠るしかないではないか。
だから考えるのをやめて、私は寝ることにした。今までの客観的な思考はまだ続けよう。
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