ダーク・ファンタジー小説
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- ストレンジスト
- 日時: 2017/12/19 23:31
- 名前: 第六天魔王六世 ◆miwaoqDlgA (ID: F/ANFiDr)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=764.jpg
──さあ、目覚めろ。かつて呪われた男よ。呪われ、数多の死者の魂を得た者よ。
無限に生き、その尽きぬ命を以て神に抗う男よ。
我が召喚に応じよ。全てを食して。
呪い尽くせ。焼き尽くせ。地上に貴様の敵はない。
あるのは貴様の生け贄となる者だけだ。
生きとし生ける万物を喰らえ。そして神の呪いにより得た
その死なずの肉体を更なる高みへ。
レジナルド……レジナルド。悪魔の王よ。
──────
1943年 イギリス。
戦乱の世。人々は戦い、殺し、死に、生きる。意思が、集合体が、…脈打つ。
強大な力を得て地上を支配せんとするイギリス帝国機甲軍…対抗するのは神の地上を汚す全てを排除せんとするブリテン正教会第666魔術精鋭部隊。
二つの大義が睨み合う。
イギリス帝国機甲軍は命知らずなのか…。事は急に起きた。
「マークス隊長!危険です、下がってください!」
「………」
マークス隊長…そう呼ばれる男が、隊員の制止を無視して凄まじい速度で敵陣に突撃する。敵の数は……一人では到底殺しきれないのは確かだ。
一方で…
「ベルナール様!我々も行きます!」
「ならお前達、後方支援は任せたぞォ!」
ベルナール様…と呼ばれる男は、部下達の呼び掛けに応じ、猛スピードで突撃してくるマークスを迎え撃とうとする。
「来い来い来い来い来い来いィィィィィィッッッ!!我等獣の数字を冠する者也ィィィィィィィィィィィィッッッッッッ!!!!!」
叫んだだけで圧倒的威圧感を放つベルナール。敵も味方も、体に電気が走るのを感じた。しかしマークスは全く怖じ気づかない。
「……いいぞ、来い!来い!!殺してやるぞ!!」
「………」
マークスは拳を真っ直ぐ、ベルナールに向けて放った。
……だが、ベルナールは最小限の動きでかわした。
「…お前……それで本気か?」
ベルナールの顔がニヤリと悪人のような笑みを浮かべる。
「…………Syu」
マークスが何かを囁く。負け惜しみか。愚痴か。何でもよかった。ベルナールにとっては最早何の意味もない、死体になる寸前の、虫けらのか弱い断末魔だ。
──と、思っていた。だが、
ドスッ
鈍い音。背中に刺さる。刺さったのは音だけでない。硬い何かが刺さった。
「……ッ何ィ!?」
自分の腹を見る。そして驚く。それもその筈、腹には穴が開いていたのだ。
「……ッッッ!!!?」
だが、慌てるのは一瞬。ベルナールにはこの程度の傷など、蚊に噛まれたくらいのものでしかなかった。
「なァるほど、腕から衝撃波を出し、その衝撃波を自由自在に操って確実に攻撃を命中させる…そういうことか。それも複数を同時に操れると見た。……だが、俺には効かんよ…」
と言い終わった途端に、ベルナールの援護に来ていた数名の騎士が衝撃波を喰らって倒れた。
だがベルナールの腹に開いていた穴は、初めから無かったかのように完全に消えていた。
「……!!」
これには流石のマークスも驚いたようで、少し引き下がる。
「さァ、やるか糞人間?相手は神の加護を得た…審判を下す者…ベルナァール!!」
ベルナールが挑発する。
「……Sy!」
しかしマークスは挑発に乗らず、逃げてしまった。
「フン……糞の足しにもなりはせんなァ!帝国機甲軍どもは」
………………
それからも戦闘は続いた。犠牲者は如何ばかりか。
ベルナールとマークスは無傷で戦場を乱し回っていた。
そんな中…
彼等が戦闘を繰り広げている最中、その近くにある大きな墓石に、小さな…しかし恐ろしい変化が生じ始めていた。
『我が地上を汚す者は誰だ…。我が血を濁らす者は誰だ…。必ず殺す……』
と、赤い文字が浮かび上がり、墓石にヒビが入る。
その墓石は誰の管理下にもない。誰かが墓参りしに来るわけでもない。何故そこにあるのかすら知られていない。いや、その存在すら知られていないと言っても過言ではない…
その墓石にヒビが入り……
バキッ バキバキ ドガッ
ついには割れてしまった。
- Re: ストレンジスト ( No.1 )
- 日時: 2017/12/25 21:41
- 名前: 第六天魔王六世 ◆D5Fm7GU/Nk (ID: F/ANFiDr)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=765.jpg
ベルナールとマークスが睨み合う。
「………」
無言の睨み合い。
殺意は少々。
響く、轟く戦音。
鮮血飛翔の開幕。
その最中─────男は現れた。
「おい、そこのお前ら。お前らだ」
不機嫌な声でベルナールとマークスを呼ぶ男。マークスは男を完全に無視した。が、ベルナールが反応した。
「……何だ…誰だ。俺達の邪魔をする奴は」
「俺は悪魔…悪魔王…数多の召喚により数多の命を得た男…」
「悪魔だァ?………………殺してやる」
「ほう」
「このベルナール…神の意思により地上を統べる騎士団の長……長夜を生きてきた人外には負けんよォ?」
「なら来い。駄弁るな」
男が挑発する。駄弁るくらいなら剣をとれ──。
ベルナールは叫びつつ、突撃した。
「ドゥルルルルルルルェェェェェェイッッッッッッッ!!!!貴様の首ィィィ貰ったァァァァハッハッハァァァァァッッッッッッッ!!!!」
男はその動きを全て見切っていた。
「ぐゥ…この動きを見切るとはそら恐ろしい奴…」
それどころか、身体能力もベルナールを上回っている。
男が廃ビルの壁を蹴ると、ビルが倒れ始めた。
「な…ァ……何だと…!こいつ……尋常じゃない………」
気づけば男は、四方八方、銃弾で囲まれていた。
どうやらそういう作戦らしい。ベルナールは瞬時に、対悪魔用武装小隊を召集していた。
「間に合ったぜ、糞野郎」
「………」
男は避けない。まだ避けられる。まだ。まだ…。まだ……。まだ────。
だが、とうとう避けなかった。男は全ての銃弾をまともに喰らい、そこに倒れた。
- Re: ストレンジスト ( No.2 )
- 日時: 2017/12/31 10:24
- 名前: 第六天魔王六世 ◆D5Fm7GU/Nk (ID: Uj9lR0Ik)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=786.jpg
ベルナールは大笑いした。狂ったのか。否。初めからだ。初めから狂っているのだ。
「糞悪魔がァァァァァァっ!思い知ったかァァァァァァ!!!!」
身体中に穴が開いた悪魔。
そのスポンジのような塊に近付く。そして残酷に笑う。
塊の首に戒剣を入れる。
ドスン
塊は、頭と体に分離した。
「クッヒッヒ…」
「…ヒッヒッヒ………ハアアアアァァァァァァーーーーーーーーッハッハッハッハッハ!!!」
またもや狂ったように笑う。
愉快さが全身を支配する。
糞のような悪魔を殺した。
────
だが
────
『…こんなものか?お前が率いる騎士団の実力というのは。ふざけるな、こんなのは糞にも劣る。ソイツらは糞だ。ここで一人残らず処刑してやる』
どこからともなく声が……否、声はその首がもげた体から聞こえた。
そんな筈はない。ベルナールは焦る。
「ど…」
どこにいる。 と言うことすら出来ない。声が出ない。
だが、生憎探す必要は皆無だった。
『私はここだ』
「ん…な……んだ……と……コイツ……」
ベルナールが後ろを振り返ると、マークスが率いていた部隊、ベルナールが率いていた部隊、…そのどちらもが黒い波に呑まれていた。
「うわあああああああっ!!」
「ひいいいいい、助けてくれぇ!」
「死ぬ!死ぬぅぅ!!」
阿鼻叫喚 地獄絵図とはこのこと。
「何がどうなってやがる……コイツは一体何なんだぁぁぁぁぁ!!!!」
- Re: ストレンジスト ( No.3 )
- 日時: 2018/01/14 02:43
- 名前: 第六天魔王六世 ◆D5Fm7GU/Nk (ID: F/ANFiDr)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=810.jpg
ベルナールもマークスも、このような光景は見たことが無かった。まさに絶望を絵に描いたかのような光景。
だが、だが!
「クヒヒヒィ……もう滅茶苦茶だ」
「………」
ベルナールもマークスも、とても嬉々として表情でその波を眺める。
「べ…ベルナール様!」
「一応、状況を報告しろドルマン」
「…敵…一名……!所属は不明です……!」
「否!所属は解っている。……あんなおぞましい輩を飼っている組織と言われれば、ただひとつ…!」
「…え…」
「……我等が忌むべき存在と認定する…サンローラン私立軍…所属人数1000名…」
「……サンローラン…私立軍…」
「あの悪魔野郎は…恐らく連中が召喚でもしたのだろうよ。全くもって不本意だが、奴等まで介入してくればこの戦争は間違いなく混乱する……。
ここで無駄に命を失うわけにはいかん。…退くしかあるまい」
ベルナールは部下から敵へ、目を移した。
「貴様らァ!貴様らもそれで良いな!?」
無論、彼等にも断る理由は無かった。むしろベルナールのその言葉を求めていたかのように、怯えた顔の兵士達が頷く。
だが、そこで思わぬ展開。
「やめろ、レジナルド。もう良い、やり過ぎだ」
レジナルド…恐らくあの悪魔のことであろう。それを制止する声。すると、行進のような黒い波が一瞬にして止まった。
「………ククカカカカ…ようやくお出ましか…」
ベルナールはその声の主を一瞬で悟り、そう言った。
- Re: ストレンジスト ( No.4 )
- 日時: 2018/01/20 02:20
- 名前: 第六天魔王六世 ◆D5Fm7GU/Nk (ID: uAlEbnba)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=814.jpg
イギリス帝国機甲軍本部
一人の男が演説を始めた。
「…君達は選りすぐりの…選りすぐりの…選りすぐりの…選りすぐり!選りすぐられたり!選りすぐりられた!兵士だァッ!」
呟くような声から、唐突に覇気が強く。まるで音楽でも奏でているかのように。演説は始まった。
「私は…私、私は……私は君達のような兵士に!敬意をォォォォォォッ!表したァいィッ!!
君達はァァァァァァァァァァッ!!残存兵力が1000を下回っても尚!!666機関相手に抗戦を…続けた猛者であァァァァるゥゥゥゥゥ!!!
然らば!諸君らは狂人である!!夜を蹂躙し、昼を殺す狂人であァァァァるゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!
私の意思に応え!ここに!馳せ参じた諸君らの!その高潔を!称え!よう!!
そして共に!イギリスを再び!!日の沈まぬ!大帝国に!!!するのだァァァァァァァァッッッッッッ!!!!!
然らば!然らば然らば然らば然らば然らば然らば然らばァァァァァァァァァ!?我等に!出来ることはッッッッッ!!!
そォォォォォォうだ!レジスタント!徹底抗戦!更なる抗戦!!行くぞ我等機甲軍!!!!!」
演説の最中、男は目を見開き、鬼も驚く形相だった。
イギリス帝国機甲軍は揃いも揃って曲者ばかりである。例外なく恐ろしい力を秘めており、だからこそ666機関と対等に戦うことも出来るのだ。そしてそれらは全て、機械化によって成ったものだった。
だがその中でも、演説を開いたこの男は別格だった。
何者をも恐れず、然し何かを恐れているような男である………。
- Re: ストレンジスト ( No.5 )
- 日時: 2018/02/07 12:27
- 名前: 第六天魔王六世 ◆D5Fm7GU/Nk (ID: uAlEbnba)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=818.jpg
執事のフェオドールが資料を読み上げる。
「ルイ・ドゥ・ベルナール…『聖なる狂戦士』『天罰の権化』『血塗れ公』…様々な異名を持つイギリス最強の騎士…。
脅威の回復力は最早不死に近く、爆散しても細胞ひとつ残っていれば即座に再生出来る…。………恐ろしいヤツですな」
666機関から強奪した資料だ。人外でも開けないほど重い表紙のため、奪われても情報漏洩はないと思っているのだろうが、甘い。フェオドールの重力操作能力によって簡単に開かれた。
「……ク……クク……今度会った時は必ず殺す」
レジナルドが嬉しそうに言う。
と、それを疑問に思ったのか、アドリアナが訊く。
「勝機はあるのか?不死身同士」
「いや無い。恐らく私に喰われてもまたすぐに再生するだろう」
それは予想通りだが落胆させられる答えだった。
と、そこでフェオドールが制止する。
「……アドリアナ様、レジナルド様、少々お静かに。何か物音が────」
「解ってる、ずっとだ。さあアドリアナ、俺に御出迎えさせてもらおうか」
レジナルドは物音がしているのを解っていたのに呑気に喋っていた。呆れた男だ。
「ふん、解ったわレジナルド…。………で、敵?」
「敵だ。随分と荒々しい挨拶をしながらやって来てくれたようだぞ……クク…ククク……」
レジナルドはそう言いながら銃を構えた。
「……近づいてきましたな、すぐそこです…」
フェオドールが声を殺す。だがレジナルドが言う。
「声を殺しても無駄だ。もうヤツには全てバレている。あとは潔く逃げも隠れもせず、此方から仕掛けるだけだ」
……
………
…………
ガタッ
具合が悪いアカシアの扉がゆっくりと開く。
……………
現れたのは、灰色の男である。全身に趣味の悪いピアスを付けている。男が侮辱めいた挨拶をする。
「ヒャッホゥ軍隊ごっこのカスども!本物の軍人さんが来ちゃったよォーン」
レジナルドが笑いながら応える。
「ほう、やるか?ガラクタめ」
レジナルドの銃が弾を猛スピードで吐き出す。男は避けない。だが……
銃弾は男の眼前で爆発した。
一発だけ落とし損ねたようだが、男はそこで自爆した。
しかし、爆散した男はすぐに再生した。
「……ほう」
「挨拶忘れてたねェー。俺は…俺の名は爆破魔…ルーペルト・ホルムグレン。機甲軍の軍人だ!貴様らエセ軍隊はすぐに滅亡させてやるからよォ…覚悟しろやァ!」
ルーペルトは楽しそうに笑う。するとレジナルドは爆発した。
目や鼻が…肉片が飛び散る。
そして、粉々に粉砕された。
………
レジナルドは眼前から消え去った。
ルーペルトが笑う。そしてターゲットをフェオドールとアドリアナに移す。
だが、二人は全く狼狽していない。それどころか、まるで全てが終わったかのような顔をしている。
「ヒハハ…諦めたかァ?野糞は大人しく草原で転がってろやァァァ!ヒーーーェハハハハ!!」
口汚く罵るルーペルト。だがそれをアドリアナが制する。
「それで遺言は済ませたのか?」
「…………ぁ?」
「聞こえなかったのかグズめ。遺言は済ませたかと訊いた」
「フェィ!?お前らマジで言ってんのかよ???野糞のくせに強がってんじゃねえよ」
『野糞だと……貴様よりにもよって禁句を口にしやがったな?
決めた お前は手ずからぶち殺す。
再生不能なほど滅茶苦茶にして喰らい殺してやる。
覚悟を決めろ、ヒョロガリの糞爆弾魔』
レジナルドだ。
「…ん……だぁ?お仲間が追い詰められていく姿を見ながらあの世で絶頂してれ頃かと思ったら……何だまだ生きてたのか……」
『……クク…あんな爆発で俺を殺せると思ったのか?何の楽しみにもなりやしない。オモチャとしては落第点だ。死ね……死ね!FUCK YOU Bomber!』
「……んんんだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
ルーペルトがレジナルドの挑発に乗じて手当たり次第にものを爆発させる。
だがレジナルドの体には全く当たらない。
「グヒェェェェェェ!!?速すぎだろコイツ!!一体何者な────」
──言う前に、決着はつこうとしていた。余所見は一瞬。動揺のあまり余所見をしてしまった──それが仇だ。
レジナルドは、そのほんの一瞬の隙にルーペルトの目の前に接近していた。
「───んだよ……」
『さあ。絶頂しながら死んでみろ。』
「………ぐぅぅぅぅぅぅ!!」
『おっと、御自慢の自爆は封じさせてもらおうか』
レジナルドは素早く銃を取り出し、ルーペルトの脳天をブチ抜いた。
「オゴォォォォォォォ!!あjm,pきぇpへげjぅdニョawcccccccccccccccccc!!!!」
『ハハハ……良い声だ。ほれ……喘げ野糞!この俺が本当の絶頂というものを教えてやる!……ククク……股が爆発しそうだぞ……良い声で鳴くなァァ──』
──ルーペルトは脳をブチ抜かれて尚、恐怖を感じ続けていた。
とんでもない怪物に出くわしたばかりにこんな酷い死に方をしなければならないという恐怖と、それが快楽に思えてしまう恐怖───
レジナルドの背中から、獣のような影が飛び出す。
『……さぁ。それではとっておきの肉を食うとするか───』
レジナルドは、最早脳をブチ抜かれて能力を使えずズタズタになったルーペルトの肉体を喰っていく。
その体を見たアドリアナとフェオドールは度肝を抜かれた。
「──!!………アドリアナ様」
「……ああ…。まさか…『機械人間』………だったとはな………」
ルーペルトは何と機械だった。体の半分がロボットだった。
「……HAAAA──」
「……レジナルド」
アドリアナが恐る恐る訊く。
「味はどうだった……」
「…………潤滑油が不味かった」
「だろうな──」
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