ダーク・ファンタジー小説

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人魚の涙
日時: 2018/02/10 07:39
名前: 雪うさぎ (ID: U.L93BRt)

今回初めて投稿させていただきます。


まだまだ未熟者ですが、よろしくお願いします。


読んだ感想など、ぜひ教えていただけると嬉しいです!

Re: 人魚の涙 ( No.1 )
日時: 2018/02/10 07:54
名前: 雪うさぎ (ID: U.L93BRt)

──この世界には、たくさんの生き物が住んでいる。お前は知ってるかい?


───知ってるよ。私達、人間族と、妖精族、魔神族、獣族でしょ?


───そう。その五種族がこの世界に住んでる。
でもね、本当はたった五つでまとめられるものじゃないんだよ。


───どういうこと?


───私達人間には、村民、国王、ギャング、なんていう『肩書き』があるだろう?

同じ人間でも、その『肩書き』によって、まるで別の生き物の様な生活をしているだろう。

獣族だってそうだ。魚、兎、牛、羊、獣人なら鳥人、牛人。まだまだいるだろうね。それに、人魚かな。



────人魚?ってなぁに?


────あぁ、お前は知らないだろうね。おばあちゃんが若かったころは、人魚って種族が居たんだよ。

おばあちゃんはあまり見たことないんだけどね、おじいちゃんは人魚のことをよく知ってた。

なんせ、人魚のことをずっと見つめてきた人だからね。


───おじいちゃん?


───お前が物心つく前にお空にいっちまったのさ。そうだ、折角だから、今から話してあげるよ。人魚の物語をね……………。

Re: 人魚の涙 ( No.2 )
日時: 2018/02/10 08:08
名前: 雪うさぎ (ID: U.L93BRt)

「キャアアアアッ!」



今私達が住んでいる国………グラン王国は、今よりもっともっと荒れていた。


女の悲鳴やら、銃声やらは日常茶飯事。



仕事がなくて、食べ物が買えなくて、盗みで生活をしている人もいた。


たくさんの人が飢えて死んでいった。


そんな中でおじいちゃんは、でっかいギャングの一員として働いて、金を稼いでいた。


おじいちゃんはギャングに入りたくて入ったわけじゃない、生活のためだったんだと、この話をしてくれたときに何度も私に訴えてくるもんだから、おかしくってねぇ…………。


おっと、話がそれちまったね。いけないいけない。



そのギャングがやってた商売っていうのが、人魚を飼うことだったんだ。


人魚っていうのは、美しい人間の上半身と、虹色に輝くウロコをもった生き物でね、観賞用として売られることもあったくらいなんだよ。


おじいちゃんがやってたことは、とっても非道なこと。

辛くて苦しくて、何度も涙を流したと、私に言っていたよ。


……それが、人魚の涙を集めることだったんだ。

Re: 人魚の涙 ( No.3 )
日時: 2018/02/10 19:01
名前: 雪うさぎ (ID: U.L93BRt)

「おい、アラン。持ち場はどうした」



今日の分の仕事を終えて、家に帰ろうと通路を歩いていると、仕事仲間に呼び止められた。


「今日は昼までなんだ。じゃあ」


ひょいと片手をあげて、ドアから外に出ると、家まで全速力で走った。


首や腕や足に鎖をつけて、『売り物』を運ぶ人買いの馬車が通るのを見ないふりをして、家に入ると、暖炉に火をつけて、ふう、とため息をついた。


ギャングの一員の証の赤い布を腕から外し、テーブルに放り投げる。



「………お兄ちゃん?おかえりなさい」


ギィッ、ギィッ、と床を歩く音がして、妹のリザがドアから顔を出した。



「リザ!寝てなきゃダメだろ」


慌てて椅子から立ち上がって、代わりにリザを椅子に座らせる。


「大丈夫よ、今日は随分調子がいいの」


そう言って笑うが、その笑顔は弱々しく、服からのぞく腕は、折れそうな程に細かった。


「ほら、薬」


苦しそうに咳き込むリザに、透明の液体が入った小瓶を渡すと、申し訳なさそうに受け取って、飲みほした。


「………ごめんね、私が病気なんかにならなければ………もっと丈夫だったら……お兄ちゃんがギャングになる必要なんてなくなるのに」


「何言ってるんだ、リザが生きてくれるなら、俺はなんだってするよ。たった1人の家族なんだから」


そう言って、リザから受け取った小瓶を、テーブルに置く。


まだ数滴残っている小瓶の中身は、『人魚の涙』。


それこそが、俺がギャングをやっている理由だ。

Re: 人魚の涙 ( No.4 )
日時: 2018/02/11 11:30
名前: 雪うさぎ (ID: U.L93BRt)

『人魚の涙は長寿の秘薬』。


そんな言葉があるほど、人魚の涙にはあらゆる病に効く、1種の万能薬のような力が秘められていた。


妹や知人が病で倒れるたびに涙を取ってきては、治し、また倒れ、治し………の繰り返し。


それもこれもすべて、この辺り一帯の治安が悪いせいだ。


家を一歩出るだけで異臭が鼻をつき、盗みをする輩がうろつき、薬に溺れた者がそこらを徘徊する。

グラン王国の中でも特に治安が悪いとされるバラク街が、俺の住んでいる所だ。


「………お兄ちゃん、私はもう寝るわ。あまり無理をしないでね。
お兄ちゃんが誰より優しいのを知ってるから……だからこそ、皆心配しているのよ」


そう言い残して、リザが姿を消した。


「ふぅ…………」


ため息をついて、目を閉じ、頭を抱える。


脳裏に蘇るのは、悲鳴と、ムチの音と、下卑た笑い声。


「俺は………」


涙が一筋、頬をつたった。

Re: 人魚の涙 ( No.5 )
日時: 2018/02/12 10:08
名前: 雪うさぎ (ID: U.L93BRt)

早朝に目が覚めて、すぐにベッドから抜け出す。

腕に赤い布を巻き付け、ミルクを1杯飲み、歯を磨く。


「リザ、行ってくるよ」

寝ているリザに声をかけて、家を出る。


道端にうずくまる人々を見ないようにしながら、ひたすら歩き続ける。


どれぐらい経っただろうか、しばらくして、黒い壁に覆われた建物が見えてきた。


「アランか。よし、入れ」


「ありがとう。ご苦労さま」


門番に布を見せ、目を合わせると、頷いて門を開けてくれた。

中に入ると、むっと水の匂いと血の匂いが肌にまとわりついてくるように感じた。


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