ダーク・ファンタジー小説

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暁の空で
日時: 2018/03/24 17:02
名前: 砂漠のうさぎ (ID: 3P/76RIf)

世界の分岐点。

落日の空で宝石は輝きを失い、
暁の空で星が墜ちる。
双子の呪いを解くために
犠牲になる地球。

これは、暁の空のお話。

体を不自由にした子供達は
親に売られて
実験台になる。

失明したならその目を、
切断されたならその足を、
麻痺した体の器官を、
宝石へと作り変える。

『生きているだけでいい世界』
『何も不自由がない世界』
存在意義など無い。
ただ健やかに育って、鳥籠の中で生きて、
一人で死んでいくだけでいい。

「そんな世界は間違っている」

声をあげた語り部を振り向く者は誰もいない。
みんなにこやかに、笑っている。

「一緒に、逃げよう」
宝石にされた少年達の物語。

−*−*−*−
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Twitter始めました。
@Acubens_7のはずです。
よろしくお願いします。


題名変えますすみません!

Re: 暁の空で ( No.2 )
日時: 2018/03/24 17:04
名前: 砂漠のうさぎ (ID: 3P/76RIf)

「さっさと死にたいの」

◆◇◆

今日は月曜日。
特に何もない、平凡な日々がまた繰り返される。

この性質のせいで、俺は他人に触れられない。
触れたくても、触れられない。
俺の左腕は、トルマリンで作られている。それ故、俺は一人だ。
だがもう少しで彼奴が来る。
俺は彼奴しか友がいないから。

「おはようございますトルマリンヤッホー元気?朝だよ起きてね!
ところでトルマリンはあのお菓子どっちが好き?今さぁ、大広間で揉めてるんだよね〜僕はきのこが好きだけど先輩はどっち派ですか?たけのこ?だとしたら敵だね戦いましょ!僕負けないよ!」

ドアの破壊音と一緒にそいつの声がマシンガンの様に連射された。
ちなみに一呼吸で喋っている。
「敬語」
「そんなの要らないでしょ」
「規則」
「要らない要らないよね〜うん」
「勝手に肯定するな」
「とりあえず起きて」
「ドア」
「直すよちょっと待ってて」
よく会話が早いと言われる。だが今日は異常。朝からこのテンションはとてもしんどい。

「勢力的にはきのこが優勢なんだ。人数じゃ負けてる。だからトルマリンにこっちに加わって欲しいんだ」
「知るか」

◆◇◆

歪んでる。そんなの分かってる。
ただ、こうしていないと生きていける自信が無い。
僕は今日も彼の部屋のドアを破壊しに行くだろう。
今日もまた、今日も。
宝石のように綺麗に生きられない。
右腕を見る。
ため息をつく。
目を閉じる。

「だから早く死にたいの」

Re: 暁の空で ( No.3 )
日時: 2018/03/24 17:05
名前: 砂漠のうさぎ (ID: 3P/76RIf)

「失くしたものを見つけなきゃ」

◆◇◆

暗闇。自分が何処にいるのかもわからない。何も見えない。不安。

「君はどうして此処に来たの」
聞いたことのある声。
「僕は、何を失くしたの」
「疑問を疑問で返さないでよ」
薄い笑い声が響く。
「お前は何を失くしたの」
暗闇に問いかける。返事は無い。
「答えたくないなら別にいいよ。ただ僕をここから出してくれればそれでいいんだけど」
「出してあげるし答えてあげるよ」
後ろに何かの気配がした。
反射的に後ろを振り向く。
「自分から侵入したくせに僕に助けを請うのかい?学習しない君は馬鹿のまま成長しないんだよ」
ランプを持った博士が現れた。
空間が光に照らされて、ようやくこの場所を理解できた。
博士の実験室だった。
侵入した覚えもないし立ち寄った覚えもない。
いつの間にかここに居た。
「ついておいでよ。お話しをしてあげるよ。馬鹿な君には理解できないだろうけど」
ゆらゆらと光が影を作る。
「僕は馬鹿じゃない」
「いいや馬鹿だ。この場所は僕と馬鹿しか入れない」
博士に先導されて、不安定な光を追って歩く。
そうしてドアに到着した。

◆◇◆

「何を失くしたの」
僕の問いに博士は答えた。
「自分かな」
白い無機質な部屋に連れてこられてソファーに座らされる。さっきの暗い空間から急に明るくなったため目がとても痛い。
白いカップに注がれたコーヒーを飲みながら博士は答えた。
「自分だね」
「意味が分からない」
「だから君は馬鹿だ」
「お前は誰だ」
「敵意をむき出しにしないでよ」
「お前は誰だ」
「僕は博士だよ」
「そうじゃない」
分からない。怖い。理解できない。こいつが、分からない。
「僕は君たちと同類だ」
僕の輝く右腕を見て奴は言った。
エメラルドになっている右腕。
何度も呪った右腕。
「僕も同類だ」
「お前みたいに腐った人間と一緒にするな」
「一緒だよ。僕も宝石だ。兄に反抗するために成ったんだ」
衝撃の事実を告げられた。
「僕が君たちの体の一部分を頂戴して宝石と取り替えた。そんな僕の体も宝石と取り替えた。それだけだけど?」
ならどこが、どこが宝石に。
長袖の白衣。白い手袋。紺のジーンズに茶のブーツ。丸い眼鏡を掛けた顔。水色の目。肌が見えるところは限られている。顔は特に何も無さそう。だったらどこが。
「それは教えないよ」
僕の心を見透かしたかのように奴が言う。
「君が失くしものを取り戻したら面倒だもん。そして取り戻さない方がいいんだけどね」
科学者は、狂っていた。
笑った。

Re: 暁の空で ( No.4 )
日時: 2018/03/24 17:05
名前: 砂漠のうさぎ (ID: 3P/76RIf)

「ただ存在しているだけでいい」
そんな世界に納得なんかしない。
ここは狂っている。
気づかないお前らは、異常だ。

◆◇◆

博士から聞いた話。
昔ここに来たときに聞いたこと。

まだ不具合が多かった頃、記憶を完全に書き換えられず、宝石が体に付いている理由を覚えている不具合が起こっている人もいるらしい。

黒いオニキスが浮かぶ腹を見る。
ここでは特に異質な俺。
エメラルドもトルマリンも理由なんて知らないと言った。
サファイアは右目。
トパーズは右手と左足。
クリスタルなんて両手両足が無い。
みんなそれぞれ理由は知らない。
知らずに、生きている。
大広間では珍しくラピスラズリが声を出している。叫んでいる。笑っている。

よく「お前は変だ」と言われる。
必然的じゃないのか。

目覚めたら、内臓が外に出されていた。

「寧ろおかしいのはお前だ」と言った。
まともに意識を保てる方がおかしい。
今は口から食事することが出来ない。
消化機能がないから。

ここに来る前のことを知っている。
俺は死んだはずだった。
夏の終わりに、校舎から落ちた。
目が覚めたら、内臓が宝石だった。
気が狂ってもおかしく無かった。
何故知らない。
何故覚えていない。
俺からしたらお前らの方がおかしい。
黒く光るオニキスが憎い。
「不具合か、もしくは」
必然なのか。

「先輩。こっちに来て下さい。重大な質問があります」
後輩が駆けてきた。大広間の論争がヒートアップしたらしい。ラピスラズリは疲れてオパールと寝ている。
「端的に言いますが、チョコレートと一緒に食べるならクッキーとビスケット、どっちが相応しいと思いますか」
そんな事か、平和で何よりだ、と言えばきっとこいつは怒るから
「ビスケット」と答えておいた。
満開の笑顔が咲く。

ですよね。やっぱりビスケットですよね。美味しいですよね〜分かりますあのサクサクとした食感。
そうだな。クッキーよりはビスケットの方が俺は好きだ。

難しい事は後回し。
今日くらいは許してほしい。
ロクでもない会話に混ざりに行く。
他人にさえバレなければ、異常でもどうでもいい。
名前を呼べば、照れて笑う純粋な後輩には特に、黙って。
「オニキスさん。場所はありますよ。隣へどうぞ。ほら」
「スモーキークォーツ、ありがとう」

◆◇◆

「だから世界に復讐する」

Re: 暁の空で ( No.5 )
日時: 2018/03/24 17:06
名前: 砂漠のうさぎ (ID: 3P/76RIf)

世界の分岐点。

星に成るか。
宝石に成るか。

選択はその二つ。

宝石に成ることを選んだ子供は
体を取られて
宝石に付け替えられて
別の世界で
生きる。

星が天空なら
宝石は地下。

【あれ】が夜の話なら
【これ】は昼の話。

「僕らはこれで、幸せになる?」
「本当にこれが、正しい選択?」

すべてを疑え。
疑問を持て。

のうのうと生きれば
『落日に墜ちる』ことになる。

歪んだ世界のもう片方。
博士の掌で回る世界。

「一緒に、逃げよう」

宝石にされた少年たちの話。

−*−*−*−

前のやつ。
新しく変えたので。

Re: 暁の空で ( No.6 )
日時: 2018/03/24 17:22
名前: 砂漠のうさぎ (ID: 3P/76RIf)



題名変えます!
『暁に映える雫』から『暁の空で』に
変更します!
理由は色々ですすみません。


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