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ダーク・ファンタジー小説
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- 紅月
- 日時: 2018/02/21 16:11
- 名前: 夜姫 (ID: L0JcGsyJ)
『今宵も、月が美しゅうございますね。』
『そうですね、紅姫様。』
『また…その呼び方はやめて下さいと、この間申したばかりでしょう?』
『そうでしたね。大変失礼致しました。』
『良いのよ、貴方はそのままで…』
あれは、何時の時代の話だったか。
"紅姫様"
何故だかあの名前は、呼んではいけない気がした。
- Re: 紅月 ( No.1 )
- 日時: 2018/02/21 16:29
- 名前: 夜姫 (ID: L0JcGsyJ)
美しく咲く椿の花は、力をなくしたようにぽとりと落ちた。
ぽとり、ぽとり。
風は吹かず。
誰かに触れられたでもなく、独りでに落ちてゆくその様を、眺めるのは私しかいない。
ぽとり、ぽとり。
静かに、落ちてゆく。
まるで何かに引き寄せられるように。
一つ一つ、真っ直ぐに地に落ちてゆく。
紅の、血に染まったような朱い赤い紅い花。
最後の一輪さえ、残すことなく。
『また、咲きますか?』
『ええ。きっとまた咲きますよ。』
咲く…のだろうか。
- Re: 紅月 ( No.2 )
- 日時: 2018/02/21 16:43
- 名前: 夜姫 (ID: L0JcGsyJ)
綺麗に咲くのは、命も花も同じこと。
いつかは枯れゆくのもまた同じこと。
色がつくのは同じこと?
いいえ、私の世界には色がない。
白、黒。たったそれだけ。
竹馬の友は行方知れず。
家族はとうの昔にすてた。
恋人はもうこの世にはいない。
先輩、上司なぞ何時の時代の話だろう。
今は何時だろう。
昨日は何を食べただろう。
今日は何時に起きただろう。
明日は何時に起きるだろう。
いつになれば一人に慣れるだろう。
私は誰だろう。
私は誰だろう。
私は誰だろう。
紅姫様は、誰なのだろう。
遠い昔の記憶が、そっと私の心を揺らした。
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