ダーク・ファンタジー小説

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魔女の心臓は一輪の薔薇で出来ていた
日時: 2018/04/22 23:48
名前: 鮮花 (ID: VpfXouOp)

【森の奥には語り部の魔女が住んでいる。
その心臓は、薔薇で出来ていた】

_______________


はじめまして。
鮮花と申します。
魔女のお話が書きたくて投稿しました。
よろしくお願いいたします。

魔女の心臓は一輪の薔薇で出来ていた ( No.1 )
日時: 2018/04/23 01:55
名前: 鮮花 (ID: eHv1NYKC)

第1幕:語り部の魔女


「森の奥には魔女が住んでいる。だから決して、近づいてはいけない」
おじいちゃんの口癖だった。
街のみんなも口を揃えていうものだから、幼い頃は怖くて従っていたけれど
10歳になった私は、好奇心に勝てず森に入ってしまった。
迷信だろうとタカをくくっていたのが間違いで、森の奥に辿り着いた私の目の前には小さな小屋が建っていた。

「おや、かわいいお嬢さん。森の奥には魔女が住むって教わらなかったのか?」

私のすぐ後ろから、蔑むような、慈しむような、そんな声が聞こえて
振り向くとそこには女が立っていた。

「ん?ああ、そうだ。私が森に住む魔女だよ。
…魔法を見せて欲しい?初見の、しかも魔女に厚かましいお願いをするんだな今時の子供は」

私がそういうとクスクス笑いながらそう言った。
口調こそ怒っていたけれど、その顔に怒気は感じられない。
魔女が纏う青紫色の服の裾を引っ張り再度ねだる。

「いいよ。最近は人と会わなくて暇だったんだ。
退屈を殺してくれたお礼に見せてあげよう」

来なさい、と魔女は私の手をするりと取ると小屋の中にエスコートしてくれた。
中は分厚本が何冊も積み重なったテーブルや、床に散らばった本、棚に押し込められた本と…まぁ本で溢れかえっていた。
その奥に魔女の服と同じ色のカーテンが閉めてあって、そこで魔法を見せてくれるという。

「おいで、君の好奇心を満たしてあげよう」

カーテンの奥には棚がずらりと並んでいた。外から見た小屋の大きさと部屋の大きさが合わない気がする。
棚には、さっきまでの部屋とは違って、四角柱のガラス瓶がきちんと並べられていた。
そのどれもがキラキラと光っていて、そのひとつひとつに文字が刻まれていた…名前のようだ。

「さて、どの魔法が見たい?まぁ何が何やらわからないよなぁ。
…そうだな、君の好奇心にぴったりの魔法を見せてあげよう」

そういった魔女はガラス瓶をひとつ手に取る。その瓶の名は___

「さぁ、魔法を語るとしよう。今宵の魔法の名は…"シュレーディンガー"」


_______________


「さて、私の魔法はいかがだったかな」

魔女の問いに興奮気味に私は答える。
あれが魔法…何度だって、いつまでだって見てられるようなものだった。

「ふふ、そんなに気に入ってくれるとは…だが二度目はないよ。これが最初で最後だ」

魔女はそういうと、私の額を白くて細い手でガッシリと掴む。
___その手の冷たさに、ゾッとした。
ああ、私はやはり間違っていた。あんな綺麗なものを見せられて浮かれていたのかもしれない。
今目の前にいるこの女は……。

「いうだろう?【好奇心、猫をも殺す】とな」


___紛れもなく、魔女なのだ。


そうして私の意識は途切れた。

魔女の心臓は一輪の薔薇で出来ていた ( No.2 )
日時: 2018/04/23 08:33
名前: 鮮花 (ID: eHv1NYKC)

第2幕:好奇心の名は


「魔女殿ーーーーーーーっ!今日も魔法見せてください!」

寄り付いてはいけないという街の人の言いつけを破り、
森の奥の小屋の扉を叩くのは先日10歳になったばかりの少女。
金色の肩まで切り揃えられた髪を揺らし、白いワンピースに身を包んだ少女は小さな手で何度もノック(にしては相当乱暴である)する。
ガチャリ。解錠する音が聞こえ、少女は動かしていた手を止めた。
ゆっくりと、開けたくないという意思を感じられる動きで扉が開き、その向こうには…魔女が立っていた。

「…おや、かわいいお嬢さん。森の奥には魔女が住むって教わらなかったのか?」

魔女は驚いたように目を開いたが、それも束の間で、すぐに微笑を湛えてそう言った。
どこかで聞いたような台詞に少女は首をかしげる。

「その台詞は昨日聞きました。二度目は見せてくださらないなんて意地悪を言われたので、意地でも見せてもらいたくて参りましたの」
「…昨日?」

柔らかそうなマロン色の髪を掻きむしりながら魔女はうなる。
紅玉のような瞳を細め、少女をジィッと見つめた。

「…確認のために聞くが、昨日私が語った魔法の名は覚えているか?」
「え?えーと…シュガーティーだったような…」
「"シュレーディンガー"だ。馬鹿者…はぁ、昨日のことはよく覚えているようだな。恐れ入った」

魔女はやれやれ。と言ったそぶりでかぶりを振った。
そうして小屋の中に入ったが、扉は開けられたままであったため、少女は躊躇せずその後に続くことにした。

青紫色のカーテンの奥、魔法がしまわれたガラス瓶をひとつ手に取った魔女を少女は見つけた。
手にしているガラス瓶の中身は空であるにも関わらず、それには名前が刻まれていた。

「あら、その瓶の名前って私と同じですね。今日はその魔法を見せてくださるの?」
「本当に図々しいな。その質問の答えはNoだ。語らないというか語れない、空だからな。そしてこの名前は君の名前だ同じじゃない」

魔女の言葉には棘があるが疎まれてはいないようで、瓶を持っていない方の手で頭を優しく撫でられる。

「私の名前?なぜそこに私の名前が?」
「魔法を語った代わりに、君の記憶をコレクションするつもりだったのさ。だから君の名前をここに刻んだ。おかしなことは何もないだろう」

魔女はあっけらかんと言ったが少女は驚愕に身を震わせた。

「ちょっと待ってください、昨日私の頭をつかんだのって記憶を抜くためだったんですか?!」
「そうだ。足繁くここに通われて、コレクションを壊されたらたまらないからな…まぁ失敗したわけだが。運が良かったな」

笑う魔女に、少女は憤慨する。小さな頬を大きく膨らませて魔女の体を叩く。

「まあそう怒るなよ、失敗したんだから…あぁわかったわかった。ここにきたら魔法を語ってやるからそれで勘弁してくれ…えぇと……そういえば名前を聞くのを忘れていた。お嬢さん、そのかわいいお口で私に名前を教えておくれ」

にっこりと魔女は笑う。瓶に刻んだくらいだから私の名前なんて知ってるくせに。

「私の名前は、ニコラよ」

空を写したような瞳の少女_ニコラは魔女を真っ直ぐ見つめ高らかに名乗った。


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