ダーク・ファンタジー小説
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- 夕晴と蝉時雨、君の笑顔。
- 日時: 2018/04/28 21:29
- 名前: えんぴつ (ID: OYZ4MvwF)
- 参照: .
『───皆のことはきっと────
──ううん、絶対にね──
────忘れないよ。
────だからありがとう。
────……またいつか』
まるで作り上げられた歯車仕掛けのような
舞台の上で踊り踊らされる。
そんな私たちにはきっと、
もう時間はないんだろう。
実験の為に、己を殺すか。
己の為に、実験を壊すか。
騙し疑い信じて演じるこの話を、
今全部崩してしまおう。
そして、本当の話へと
書き換えてしまえ。
*+*+*+*+*+*+*+*-*+*+
えんぴつです。
これは合作ですので、
そこはご注意ください。
参加者様は
後程記載させて頂きます。
参加者様へ
ここまで参加しに来てくださって、
本当にありがとうございます。
ところで本題に入りますが、
お知らせ等は相談スレにてお願いします。
ここには小説以外
お書きになることの無いよう
お気をつけ下さい。
以上のことを、宜しくお願いします。
- Re: 夕晴と蝉時雨、君の笑顔。 ( No.1 )
- 日時: 2018/04/28 22:01
- 名前: えんぴつ (ID: OYZ4MvwF)
1
神桜崎咲來
"いつもの朝って、
こんなに静かなものだった?"
私は、そんな変哲のない事を考えながら
一人で人気の無い通学路を歩いていた。
聞こえるはずの蝉の鳴き声、
学校へ向かう生徒達のざわめき、
車の走る音。
それらが聞こえない。
なんか変だなぁ、
と私は思いながら足を進めている。
風は涼しくて、夏なのに太陽の暖かさが目立たない。
そんな朝が、私にはとても心地いい。
そして止まった車、他所の家の窓に映る私の姿はいつも通り普通だ。
それを見ながら前髪をちょんと直したら、きっと……もっと私らしい私の出来上がりらしい。
でもそんなの、細すぎて誰も気づかないから直していないのと同じだ。
そうやって私は、変哲のない街を歩いた。
───────
繊実明月
賑やかな学校前。
人が詰め込まれるように入って、
少し邪魔に感じる。
それを僕は冷ややかな目で見つめるしかない。
──いや、見下ろすと言った方が正確か。
そんな僕の居る教室は既にもう五月蝿い。
たわいもなく何の中身もない会話を繰り返すだけ。
僕は、ただ咲來が来るのを待ってた。
ただ、それの事ならこれぐらいなんて事なんて無かった。
- Re: 夕晴と蝉時雨、君の笑顔。 ( No.2 )
- 日時: 2018/05/01 02:06
- 名前: 1089CP (ID: Z5cmkimI)
笹森倉乃輔
今日は特に暑い日だ。照り輝く太陽が沈む頃になっても、肌から流れる汗が止まらない。
肉体的な重労働をした後にはアイスバーの一つでも頬張りたいものだ。
そんなことを思いながら、重い荷物が入った段ボール箱を抱えている一人の少年がいた。
「悪いね、倉ちゃん。これから学校だってのに、朝の搬入作業手伝ってもらっちゃって」
「しょうがねえっしょ。いつも世話んなってるお得意先の頼み、らしいからな。ホントはやりたくなかったんだけどな、俺は」
「うちの相棒が急に休む言うもんやから困っとたんに。一人で運ぶのもええ運動やが、やっぱ老体にこれ以上ムチ打つのもどうなんか思っとって。ははは。いや、ありがとな」
「なにが老体だよ……バリバリ働く皆勤サラリーマンにくせに。それに、断ったらうちの会社に圧力がくるって親父がうるせーんだから。あと、ちゃん付けはいい加減やめろってオッサン」
「ははは、言うねー」
他愛ない会話をしながら、そこそこ大きなビルディングの真下にある開いたシャッターをまたがり、倉庫とトラックの荷台を往復する。運び出した荷物をトラックに積み込み、そしてまた倉庫の中に戻り荷物を抱え、それをトラックへと積み込みするという単純だが疲れる作業を繰り返す。
まるで引越し業者のようだ。
「ったくもう。なんで俺が朝からこんなこと、めんどくせーっつーの…」
学生が朝からする労働風景ではないが、会話から察するに何か事情があるのだろう。
彼、笹森 倉乃輔は重い荷物につんけんとした表情をするも、疲れる様子はない。
まあもう慣れてしまっているのだろうか。
吐いた愚痴にもどこか諦めの表情が見え隠れしている。
一緒に荷物を運んでいた中年の作業着を着た男は、そんな彼の気持ちを知ってか知らずかただただ感心感心といった様子で勤労な若き助っ人を見ていた。
「んじゃあ、これで最後」
最後の荷物をようやく運び出し終わり、シャッターを閉める。
いい汗かいた、なんて爽やかなセリフも一切なく、ただ右手でおでこを軽くぬぐう仕草を見せたあと、ただただひたすらぶっきらぼうでつんけんとした表情と態度で自転車に跨ると
「オッサン、暑いから無理すんなよ」
「若いもんには負けとられんよ。そいじゃ、気ぃつけてな、倉ちゃん」
「だからちゃん付けすんなって! ——それじゃ、また」
軽い会話を最後に交わす。
一回だけベルを鳴らし、さっそうとペダルを漕ぎ出す倉乃輔。
そのまま慣れた運転で、ある一方の方角へと自転車を進ませる。その先には今日も変わり映えのしない、いつものあの場所。
静弥高校——
煌びやかで厳かで、でもどこか淡く背景に溶け込んだいつもの学び舎があった。
成澤 緋音
今日も遅いな、なんて考えながらわたしはアイツを待っていた。
校門まであと数百メーターというところ。
少し斜めになった道を、すごく綺麗に並んだ住宅街を横目に歩き、そして見えてくるあの校門を抜ければ今日も始まる学校生活。
でもアイツの姿は見えない。
——いつだってそうだ。
「もう。今日は十分も遅いし! 遅刻しちゃうよ。何やってんのーアイツ!」
もう我慢ならない。
先に行っちゃうよ。行ってもいいんだよね。遅れるやつを待つ必要なんてないんだ。
会ったらしっかりとお灸を据えておいてやる、と。
わたしは強く決意し、いそいそと校門まで歩いていった。
やがて見えてきた校門。
「……。」
でもやっぱり、と。ふと後ろを振り向く。
どうしても気になってしょうがない。
「アイツ、早く来いよ……」
少し弱弱しくそんなふうに息を吐いて、わたしは結局いつもの待ち合わせ場所に現れなかったアイツが軽口を叩いて現れてくれるのを期待したがやはりその姿はないのを確認して、妙な落胆を覚えてしまった。
まあこれもいつものことだ、と割り切って
「遅刻だけはするなよな」
と、ボソッと言って、一人校門をくぐった。
- Re: 夕晴と蝉時雨、君の笑顔。 ( No.3 )
- 日時: 2018/05/02 19:14
- 名前: 天城 (ID: /1jhe2RQ)
渡瀬 雫
目を開けると薄暗い私の部屋の天井が見えた。どうやら、昨日は眠る前にベッドへと向かったらしい。
…今は何時だ?
カーテンが閉まっているため薄暗く、パソコンとやりかけのゲーム画面が映ったテレビが明かりとなっている部屋では朝か夜かさえ見当がつかない。
重い体を起き上がらせてカーテンを開け、ついでに窓を開ける。窓からは涼しくて心地よい風と共に土や草木等の香りが混ざって入ってくる。
朝か。しかも、騒がしい声が無いということは学生はもう学校についている時間だろう。
「……今日もなんてくだらないものに縛られているんだろう。」
私は自分に言ったのだろうかそれとも、学生たちに言ったのだろうか。おそらく後者。そんな如何でもいいことを呟いて私は1階に降りる。
普通、1階に降りると親が急かして来るものだが、1階には人気が無い。まぁ、これが私の当たり前。
1階に降りて台所に向かう。朝食となるものが残っているか、少し不安でもあるが無かったら無かったで食べなくてもいいだろう。
冷蔵庫を開けると箱の中にバー型の栄養食が一つだけあった。これで1日過ごすか。私はそれを口に咥えると2階へと戻る。
部屋に戻ってから、段々目が覚めてきて制服に着替えて急いで家に出るというめんどくさいことはする訳がない。
「さて、ゲームの続きするか。」
栄養食を食べ終え、通信販売で大量の同じ栄養食を注文した私はテレビの前にゆっくりと座るのだった。
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卯月 翼斗
賑やかな教室。落ち着ける場所とは言えないが、これはこれで僕は意外と好きだ。
「……それで、この曲の振り付けが可愛くてよぉ…」
僕に向けられてはいるものの、どんどん話を進めていく男子生徒。別に僕の話を聞いて欲しいわけでもないが少し困る。
話題は最近人気のアイドルやクラスの人気者の話など、色々。たぶん、自分の考えを誰かと共感したいのだろう。
僕はゆっくりスケッチブックを机の中から出し、教室の様子をスケッチし始める。この男子生徒ならこれぐらいのことは許してくれるだろう。
そんなことを思いながら僕はスケッチブックの上に鉛筆を走らせる。
教室の扉に密集して話している女子生徒、1つだけ開いている窓とそこから入ってくる風で揺れるカーテン。何故か教室内で鬼ごっこをしている男子生徒…
彼は…確かサッカー部員だったかな。
僕はスケッチが、正確に、生活の風景を一時停止させたかのように描けるからとても楽しい。
スケッチを見るだけであの時を思い出せるのは結構自信につながるものだ。
そんなことを考えているとチャイムが鳴り、皆が急いで席に着き始める。先ほど僕に話をしていた彼も満足して自分の席に着いていった。
新しい学校生活の始まりだ。
- Re: 夕晴と蝉時雨、君の笑顔。 ( No.4 )
- 日時: 2018/05/03 22:23
- 名前: 宝治 ◆wpAuSLRmwo (ID: iihmFlhR)
(早乙女 茱萸)
「おはよーっ、おはよーございまーーーっ」
茱萸の声が商店街を駆け巡る。声にびびった鳩の飛び立つ様子が面白くてもう一度同じ大声を出し、前を飛ぶ鳩と同じ速度で歩道のど真ん中を突っ走る。
「おはよーだよーっ」
商店街の人たちは誰も茱萸の挨拶に声を返してくれないけれど、そんなこと気にしない。
だって今日も風が気持ち良くて空気はうまい。それだけで十分なのだ。
新しく買ってもらった制服のすそはだぼだぼだし、勉強は難しい。でもしょぼくれたりしないんだ。茱萸の毎日は軽やかで楽しくて、カラフルなわけわからないことに首を突っ込むのに忙しいんだもん。例えば今日の朝ごはんはウィンナーと目玉焼きとパンだったんだけど、なんとその目玉焼きに黄身が二つあったのだ。すごいよね、なんでこんなことになるんだろうね。お母さんに聞いても笑うだけで答えてくれなかったから、分からずじまい。
でもそう。双子の目玉焼きと一緒で、今日何が起こるかも明日何があるかもわからないままに茱萸は生きる。
「……あっ、鳩さんいっちゃったよ」
並走していた鳩が道を大きく外れて空高く舞いだした。朝焼けした雲が澄んだ空に流れている。朝日が飛ぶ鳥の輪郭を際立たせて、翼の動きがキラキラと光って見えた。
(はやく、この美しさを共有できる友達が出来ればいいのに。)
「あー!この分だと、今日も教室一番乗りは茱萸が頂きかなー」
大きな独り言は空に吸い込まれて消えていった。
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(文生 靜)
家には桜の木が何本か植わっていて最近までは落ちた花の掃除に忙しかったが、最近はそれも落ち着いてきた。だからこの頃は空いた時間を使って花壇の草花に水をやって、選定をしている。
それから、義母さんの朝飯を頂いて、まだまだ寝ている義父さんに挨拶をしてから登校する。
教室には誰もいないから、花瓶に今朝刈り取った花を——今週はキキョウとアヤメを——活けてやる。
だれにも内緒でね。クラスメートのやつら、『これはきっと花を愛する美少女がやったに違いない!』とか阿呆なことを抜かしてて、そういう反応が面白い。
別に植物が特別好きというわけではない。これは義務だ。庭木の手入れも掃除も花瓶の水の入れ替えも、自分が自分に与えた役割に過ぎない。
この行為が誰に知られるわけでもないが、僕なりの『大衆に向けたパフォーマンス』なのだ。——養子は何かと肩身が狭いもの。義両親が息子に何を求めているのか、友人が自分をどう思っているのか、予想しながらそれに見合う行動を心がけているつもりだ。特に不満はない。
……こんなこと、朝一番の誰もいない教室で考えることではないが。これから僕がやるべきは、二番目に来たクラスメートに挨拶と嘘を伝えることだ。
「おはよう。見てみろよ、……また花瓶に花が活けてあったよ」
なんてね。
- Re: 夕晴と蝉時雨、君の笑顔。 ( No.5 )
- 日時: 2018/05/05 14:00
- 名前: えんぴつ (ID: V9u1HFiP)
- 参照: .
神桜崎咲來
いつも通りなんとなく。
ただぼうっとしながら歩いていた。
そんな私はいつも通りの時間に学校に着いたらしい。
出席確認で名前を呼ばれるその次に、
その名前の生徒が返事をする。
「……はい」
神桜崎。
その名前がすらりと耳に入った。
私はただ今日も、それに無意識な返事を返す。
前には明月の背中。
彼が何を考えているのか、
きっと他の生徒達にはわからない。
いや、私には分かるけれど。
だって仕草にその考えがすぐ浮き出るから。
困った時は大体手を触る。
それは誰かに謝る時も。
嬉しい時は無表情なんだけど、
髪を触ってる場合がこれ。
たまに……まあ、笑ってくれはする。
哀しい時には……
多分、無表情のまま。
何も感情を出さないから、
普通なのか哀しいのかわからない。
確か、そうだったと思う。
でも最近はなんだか元気が無い。
いつも無さそうに見えるけど、何か違う。
何かが、引っかかる。
───────────
繊実明月
「はい……」
無感情な"誰か"の声が、繊実の名を呼ばれた後に
いやに静かな教室内に響き渡った。
少し熱を増した空気が、肌にべたりと張り付く。
風が異様に生温く吹くように感じて、
普段外に出る様な性格ではない僕には
とても耐え切れるものではない。
桜が咲いていたはずの校庭の木も
今はすっかり青葉で飾られている。
もう、桜の季節ではない。
それどころか、
もう長い月日が経ったようにも
僕には感じられる。
もう、夏なのか。
結局、何もすることはなく
その時間はその空気にうんざりしながら、
窓の外を虚ろに見つめるだけだった。
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