ダーク・ファンタジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- Loveじゃないとわからないから
- 日時: 2018/09/03 20:16
- 名前: 流聖 (ID: H65tOJ4Z)
Loveじゃないとわからないから
- Re: Loveじゃないとわからないから ( No.1 )
- 日時: 2018/09/05 18:16
- 名前: 流聖 (ID: H65tOJ4Z)
ラジオを解体し、また組み立てる。普通の人からしたら地味で面倒でつまらない作業かもしれない。でも僕はそういう機械類が大好きだった。興味を持ったきっかけは、自分の住んでいた家が解体されるのを実際にみた時だ。僕が壁に描いた落書きも、母の趣味でつくられたインテリアも、全てがバラバラにされていた。残念ながら組み直されることはなかった。この経験からどうやって「好き」という感情に至るのかは自分でもよくわからないが、たぶんこれがきっかけなのだ。今はマンションに住んでいる。父と僕の二人で。
僕は人とのコミュニケーションも苦手だった。授業中はいつもシャーペンを解体していたから勉強はできないし、普段体を全く動かさないのでスポーツも苦手だ。目を覆い隠す長い前髪、顔にずんと乗った丸眼鏡、小さい体格。そりゃあいじめのしたら標的になるはずだ。案の定僕はひどいいじめを受けた。原因はわかっていても直そうとはしなかった。僕は友達を必要としていなかったし、人生に友達が入る隙などなかったからだ。
僕は最近、「造る」ことにハマっていた。僕が造ろうとしているものはとても家で出来るようなサイズじゃない。仕方なく僕は廃校舎の、何に使われていたのかはわからないがスペースが広くて鍵もかかっていない、人の出入りもない。そんな最高の立地条件を満たした倉庫で作業をしていた。
中学一年から高校一年の後半まで、約四年の歳月をかけてそれは完成した。僕のお小遣いは全てそれに注ぎ、遠い町まで部品を買いに行ったりしてやっと完成したのだ。
僕がそれが正常に動くかテストをしている時だった。いきなり扉が大きな音をたてて勢いよく開いたのだ。入ってきたのは僕をいじめているグループの、しかも特に激しいいじめをする須藤、額賀、宮島の三人だった。
「あれぇ?先客かよー。しかも、眼鏡野郎じゃねえか。」
「な、なんだ!何でここに来た!さっさと出てけ!」
僕はせっかく手に入れた楽しい時間を壊されたくなくて、もしかしたら人生で一番大きいかもしれない声を出してそういった。
「ア?眼鏡野郎のくせに、いきがってんじゃねーぞ!」
須藤が僕に殴りかかって来ようとしたときだった。僕は何度も味わった暴力が怖くて、反射的にそれに助けを求めて名を呼んでしまった。
「いけ!マキナ!」
僕が造ったそれ──人型ロボットは僕の声を聞くと、須藤の拳を受け止めて蹴りを入れた。マキナの足は須藤の鳩尾にめり込み、須藤は腹を抱えて床に情けなく崩れ落ちた。後ろにいた額賀と宮島はそれを見て目を見開き驚いた顔をしていた。僕はざまあみろと思ったが、それ以上に、マキナの完成度に対する驚きが大きかった。
「おい眼鏡野郎。それ、なんだ。」
宮島が突然前に出てきて僕にそう尋ねた。額賀はまだ後ろで萎縮している。宮島は怪我をしたとかで左目に眼帯をしていた。でもたぶん、もう怪我をしてから六ヶ月もたっているので怪我はもう治っているのだろう。鋭い鋭利な刃物のような瞳は眼帯のおかげでひとつ隠れたが、やはりそれでも目を合わせられないくらいには怖い。僕は宮島の目と眉の間を見ながら言った。
「こ、これは、僕がつくったものなんだ。早く出ていかないと、須藤みたいになるぞ!い、いいのか!」
「…お前が、つくったのか。」
宮島はぽつりとそう呟くと、マキナを値踏みするような眼差しで下から上までじっくりと見ていた。
マキナは黒髪をひとつに結い、ワンピースを着た少女の容姿をしている。もちろん髪の毛はかつらだし、服も僕がお店のマネキンが着ていたコーデをそのまま買ったものだ。顔のパーツも、肌の色や触感もほぼ本物の人間と同じだ。ロボットだと知らない人からすれば本物の人間と見分けがつかないだろう。我ながら良くできたと思う。
「ラブドールかなんかか?」
「ち、違う!マキナをそんな低俗なものと一緒にするな!」
なんて事を言うんだ。人の悪口と下ネタしかない脳みそにない人間め。これだから嫌いなんだ。僕が反抗するとまた宮島の鋭い視線が僕を射ぬいた。やっぱり怖い。
「じゃあなんだよ。」
「な、なんだって言われても…マキナはロボットだよ…」
「彼女か?」
「だから違うって言ってるだろ!さっさと出てけ!」
「俺は、このマキナって奴に、それとお前に、興味があるんだ。出てかねぇ。」
Page:1