ダーク・ファンタジー小説
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- 始祖の永久機関
- 日時: 2018/08/31 23:59
- 名前: 斑鳩 ◆s/TZXTDqME (ID: uKR9UL7u)
「はぁ…またやったのか…」
「すんませン…またやっちまいました」
「あれほどやるなと言ったろうに…」
「…」
職員室。
白衣の教師がジャージを着たアザだらけの少年を注意している。
「正義感が強いのは良いんだ。だけど、それは久代、お前の仕事じゃあないんだ」
「んなことは…解ってます。でも、目の前で困ってる人がいたらどうしても…」
少年が反論し、
「…久代 督佐。本当に困り者だな…。はぁ…」
教師は呆れた声で言う。
この少年は白衣の教師から散々注意されていたにもかかわらず、喧嘩をし、惨敗したのだ。
そう、この少年…久代 督佐は本当に困ったヤツなのだ。
正義感が強く、悪人を見たらつい倒そうとして喧嘩を売ってしまう。
そして、毎回のように負けてしまう。
そう、正義感の割に喧嘩はとても弱いのだ。
と言っても、ここは超能力を使う人々が集う日本の首都…新御浜都だ。喧嘩が強くても弱くても、それ自体は何の問題もない。
だが、督佐はそもそも超能力自体が使えないのだ。
だから弱さに拍車がかかっている。
…と言うと語弊があるかも知れないので付け足しておこう。
彼は別に超能力を持っていないわけではない。
彼には一応能力があるのだが、その能力が何なのか、どれくらいの強さなのか、いつ会得したものなのか…全て謎なのだ。
だから使いたくても使えない。
普通、この街の超能力者は自分の能力を把握しているものだが、
把握していない督佐は何も能力を持たないのと同然…ということだ。
「…御劔先生…やっぱオレは……使えない人間だ」
弱々しい督佐の声に、教師…御劔 保羽は反応する。
「使えない?いや。お前には必ずお前の存在理由がある。
少なくとも…それを見つけるまではそんなことは言わせない」
御劔 保羽は久代 督佐にとって命の恩人であり、尊敬すべき師でもある。
だからそれを聞いた督佐は嬉しくなった。
「…御劔先生…」
そして御劔 保羽は何事も無かったかのように職員室を去った。
残された督佐は、座らされていた椅子から立ち上がり、窓の外を見た。
どこまでも広がるビル群。
新御浜都はとても大きな街だ。教育区画だけでもかなり大きい。
そんな中で、弱い自分が御劔と出会えたのは奇跡に等しい。
だから彼は奇跡を信じている。
- Re: 始祖の永久機関 ( No.1 )
- 日時: 2018/10/21 19:07
- 名前: 斑鳩 ◆s/TZXTDqME (ID: uKR9UL7u)
しばらく外を眺めていた督佐だが、何を思ったか、突然御劔のもとに走っていった。
「先生ッーー!!!」
「………久代。どうした」
「先生!オレはやっぱりダメだ…強くならないと…。だから先生!特訓してください!」
「……久代、お前……」
督佐は本気だった。
本当に自分の正しいと信じる道しか進まない…良い意味でも悪い意味でも正直な男だから、
きっと何を言っても曲げられない。
だが御劔は、督佐の心を理解していたから曲げようとはしなかった。
「……久代。お前はそのままで良い。さっきずっと、そのままでいい。
だが…強くなりたいと本気で思うのなら…私じゃあなく、適役がいる。
…お前、明日は空いているか?」
「………はい」
「…なら、明日朝九時に新御浜中央公園に来い。約束だぞ」
「……
はいッ!!!」
- Re: 始祖の永久機関 ( No.2 )
- 日時: 2018/10/21 19:35
- 名前: 斑鳩 ◆CjYZN4Yscs (ID: uKR9UL7u)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=1049.jpg
午前九時 新御浜中央公園前
───戦いはすでに始まっていた。
「うおおあーー!!」
督佐の拳はまっすぐ、少女に向かう。
少女はそれを避けようともしない。
破れたジャージを、ただマントのように羽織っているだけのその少女は、そこから一歩も動かず、ただ督佐の拳を凝視していた。
(くっ───何で避けないっ!?)
督佐は拳をそのまま少女にぶつけることに躊躇いがあった。だから避けてくれれば、と思っていた。
だが、避けてくれない。
そしてそのままぶち当た───
───
───ってなどいなかった。
少女は督佐の拳を踏みつけ、その勢いで跳び上がった。
そして青い炎が放たれた。
その圧倒的跳躍力と凄まじい熱気に、督佐は気を失いそうな感覚を覚えた。
「───ぁあ、こんな……強いヤツに勝てるわけが───」
だが炎は督佐から逸れた。逸れて、地面を抉った。
「───」
督佐は黙り込んでしまった。
そこへ少女が近寄る。そしてようやく、喋った。戦闘中終始無言だった少女が。
「───戦闘の基本がなってない。相手の力量を見誤って、攻撃が失敗する可能性を考慮しないまま突っ込むなんて愚の骨頂。
そもそも能力者を正面から殴りにいくバカがいるかしら?」
少女は、そう言って溜め息をついた。
督佐は何も言えなかった。
「…はぁ、そうだよなぁ。そうですよね。そうだと思ったよ」
少女は諦めたように顔を下に向ける督佐を見て、帰ろうとした。が、すぐに引き止められた。
「あの…!」
「…何?」
「……オレをっ!オレをその…えっと…、弟子にしてくださいっ!!」
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