ダーク・ファンタジー小説
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- 想い 大翔篇
- 日時: 2018/10/13 22:52
- 名前: 山崎秋のパン祭り (ID: aY9QY40m)
どれだれ声を大きくしたって、手を伸ばしたって、届くはずもないこのこの想い。
そう思うしかないと思ってた。
けど、君に出会えて僕は本当に幸せだったよ・・・。
君はどうだった?
俺ら兄弟は5才の時に親父に捨てられた。
今考えると仕方のない事だったかも知れない。父親は仕事をクビになり、母親は俺らを置いて家を出た。そんな日々の中で父親は一日中酒を飲み、俺らに殴る、蹴るの暴行。俺は親父から弟を守ることで精一杯だった。
この時の親父は色々荒れていたのだろう。
だからだろうか、父親が俺らの事を知らない町のポストの近くに置いていき「もう、家に帰ってくんじゃねぇー」と言われた時に少し嬉しさを感じたのは・・・
でも、俺らはいつか父親が迎えに来てくれるのではないか、少しの希望を持ち兄弟で寄り添いながら何日も何日も父親の来るのを待った。何日した頃だろうか、5日いや3日だったかも知れない。俺らの空腹が限界を超えた。
「お、おにぃちゃん、お腹すいたよぉー」
弟の声に力が入っていない。いつから我慢してたんだろう。
「りん、だよなぁ・・・にぃちゃん気付けなくてごめんなぁ〜」
「おにぃちゃん・・・大丈夫だょ!ぼ、ぼくぅまだ、我慢できるょ」
無理して笑ってるのが手に取るようにわかった。
「りん、父さんはもう帰ってこねぇよ!だから、食べ物探しい行くぞ!」
一瞬禀の顔が歪んだのがわかった。
「えっ、お、おにぃちゃん、そ、そうだよねぇ、お父さんもう、来ないよねぇ・・・食べ物探しにぃ行こうかぁ」
禀とは双子だが、禀はずっと泣き虫だ・・・
なのに、涙をこらえて俺に笑顔を向けている。そんな禀を見て俺は強く禀を抱き締めた。
禀は大声を出して泣いてる。
そうなるだろう、何故か予想はついていた。親に愛された記憶はないが禀は、優しいからどんなに殴られようが親父が大好きだったんだろう。
そんな禀を慰めて居ると、禀は寝てしまった。
禀が寝てしまうと、俺もだんだん眠気が襲ってきた。そうだ、よく考えるともう、何日も飲まず食わずだった上に寝てもいなかった。目を開けると、白色の花が沢山ある場所に居た。
もう、夢なのか現実なのかもわからなかった。けど、ずっとここには居てはいけない気がしてならなかった。俺は目の前に続いている白色の花も気になったが俺がもと来た道らしき道を全力で走って戻った。そうすると、目が覚めてやっと夢だと言う事が理解できた。何時間寝たのだろう。辺りはだんだん明るくなって行く、俺らが寝たのはいつだ?もしかしたら、何日も寝ていたのかもしれない。ふと、隣を見ると禀が寝ていた。禀は何度か起きたかも知れない、禀を起こして聞いてみよう。
「りん、りん起きろ!起きろよ!」
禀を何度読んでも返事がないどころが起きる気配するら感じない。なにかわからない不安がよぎった。それでも何度も禀を呼び続けた。
「りん!りん!おい!起きろよ!食べ物探しに行かないと・・・」
禀が起きない事が不安で不安でしかなかった俺はついに泣いてしまった。それでも泣きなから禀を呼び続けるが返事がない。
「りん!りん!起きてよ!俺一人は嫌だよ!」
日が昇りきり暖かくなってきた頃やっと病院に連れて行ったら助けてくれるかも知れないと思いついた。
それで、禀を背中に背負い死物狂いで歩き続けた。何時間歩き続けたのだろうか?疲れ果てて倒れそうになった時、病院のマーク、正式いうと「十字架」のマークを見つけ俺はそこの扉を必死に叩き続けた。
「だ、誰か居ませんか」
「お、弟が、大変なんです」
「誰かぁ助けてよ」
何度か扉を叩いて居ると、中から優しそうなおじさんが出てきた。
「はいはーい、おっ?どーしたんだい?」
そんな声を掛けられた言葉に被さるように大泣きしながら
「り、りんが目を、目をさまさいの!!おじさんどしょーう!!」
そんなことを泣きながら何度も言った気がする。
「わ、わかった。禀くんをベッドに寝かせてあげるから、おじさんに1回渡してくれるかなぁ?」
「えっ!?お、おじさんり、りんに何をするの?」
こんな甘えた事いってる場合じゃないのにこの時は禀が奪われるかと思った。
「大丈夫だよ!りんくんをいじめたりなんかしないから」
「ほ、ほんと?父さん見たいに殴らない?」
「あぁ殴りやしないよ。だから、りんくんをおじさんに預けてくれないかなぁー?」
その言葉を信じることにした。落ち着いた容姿に説得力があったのかも知れない。
「う、うん、けどねぇ、おじさんにりんに俺も付いてっていい?」
「もちろんいいとも!それに、君の診察もしたいしね」
「えっ?おじさん、ぼ、ぼくはどこも悪くないから!!だから、だから、早く!り、りんを!!!」
こんな会話をしていたら視界が真っ暗になった。
「お、おい!君?大丈夫か?」
目を覚ましたら禀が一緒のベッドで寝ていた。色々な事を思い出したら不安な事が込み上げて来て、また泣いてしまった。
そしたら、おじさんが駆けつけてくれた。そして、俺を抱き締めてくれた。
「大丈夫、大丈夫だよ」
そんな優しい言葉を掛けてくれた。
「う、ぅん、お、ぉじさん!りんは?りんは大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ、りんくんはちょっと疲れたみたいでね。そのうちりんくんも起きるよ」
この言葉で安心した。
「それより君の名前はなんて言うの?おじさんはねぇー大津貝しげつぐ」
「ぇっ、えっとー、僕は大翔」
「ひろとくんね!」
「しげつぐ?さん?」
「おじさんのことは『しげ』でいいよ!」
「わ、わかった。しげさん!ぼく、お腹空いたよ・・・」
安心したらお腹が空いていたことにきずいた。
「おー、お腹空いたのか!!元気になった証拠だよ!」
「う、うん!」
そういった後、しげさんの顔が一瞬歪んだ気がする。