ダーク・ファンタジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ABILITY
- 日時: 2018/09/24 14:22
- 名前: すう (ID: mdybEL6F)
1☆はじまりの終わり(1)
渋谷の巨大なスクリーンに、灰色の影が映った。
スクリーンの正面に、緑色の長髪の少女が仁王立ちをしていた。少女の名前はリザ。
リザは舌なめずりをすると、くるっとあたりを見回した。誰かを探しているみたいだ。彼女の場
合、探しているのは味方ではなく敵だった。
能力(アビリティ)。20XX年、急遽として、人々の体に現れた。手から氷が出る、など、
現在一億の能力がある。
人がみんな、その能力を悪用しないわけではない。リザは能力を悪用する組織、「ドラゴンズ」 の幹部だ。
彼女の能力は「洗脳」。その気になれば何人でも自分の思い通りに操れる。
「かくれんぼは終わりだぜ」
リザは小さくつぶやくと、コートの中に隠していた折り畳みナイフを握った。
いつか、自分を倒しに来るやつに、ナイフをお見舞いするためだ。
カラオケとビルの間の路地に、リザの相手はいた。こちらも小さな少女で、名前はレイナ。
能力は凍結。実際、レイナという名前は「冷名」と当て字がある。
レイナの隣にいるのも、女の子。こちらは杏樹(あんじゅ)という。能力は透明化。
「ねえ杏樹? そのリザっていう人? は、本当に悪者なのね」
レイナの質問に、杏樹は小さくため息をついた。
「分かりきったことを聞いてんじゃないわよ。バカなの? …いっそ、」
杏樹はレイナに、千ページはあろうかという本を投げつけようとする。
あたりまえだが、レイナは血相を変えて叫ぶ。
「そそそそそそ、それは早まりすぎよッ!?」
「バカ、そんな大声出したら見つかる」
杏樹はあわててレイナの口をふさいだ。
リザはそろそろ飽きてきた。
相手がずっと隠れたままで、攻めてこないのを。
なんなら、能力でも使って姿を現させてやろう。
リザは、目をつぶり、能力発動の呪文を唱えた。
「ホオミナ二クツシ…」
杏樹の肩がピクピクと動いた。
そして、意識を失ったかのように、ふらふらと路地から出ていく。
レイナはハッとして、杏樹の背中にしがみついた。
「ダメええええええええ!」
「がはっ…!」
しがみつかれた衝撃で、杏樹がせき込んだ。と思ったら、またふらふらと歩いていく。
意識を持っていたレイナも、体の力が抜け、杏樹の後に続く。
「やっと出てきてくれたね。こそこそ隠れるなんて、あたしは好きじゃないね! あんたたちまとめ
て、やっつけてやるっ!」
路地から出た二人を見つけたリザは、逃げる隙も与えず、ナイフを二人に向かって振り下ろした!
ピシ!
すごい音がして、リザの前に巨大な氷の壁が現れた。レイナが突如、能力を使ったのだ。油断し
たリザは、洗脳を解いてしまった。
「けっ。…そういうところがムカつくんだよなあ!」
突然現れた氷にびっくりして、しりもちをついたリザは悪態を突きながら立ち上がった。
「ムカつく、だなんて悪口言う暇があれば、防御でもすれば?」
クールな口調とともに、杏樹がピストルの銃口を向ける。レイナも、氷の破片を宙に浮かせ、攻撃
の準備をする。
その様子を見て、リザは怒鳴った。
「あたしをやっつけようなんざ、いい度胸じゃないの」
リザは再びポケットに手を入れると、二本のナイフを取り出した
はじまりの終わり(2)に続きます。
ご愛読ありがとうございました。 Byすう