ダーク・ファンタジー小説
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- ノースルーフ
- 日時: 2018/12/08 15:22
- 名前: LUCA (ID: cSGMzERh)
頑張ります
- Re: ノースルーフ ( No.1 )
- 日時: 2018/12/08 17:47
- 名前: LUCA (ID: cSGMzERh)
朝起きてまずすることは、いち、のびーっと空を抱くように大きく腕を横に広げること。に、カーテンの隙間から漏れる陽射しを逃がすまいと瞼の裏に閉じ込めて、勢いよくカーテンを開けること。さん、硝子越しに見える町の景色を美しいと思うこと。(今日は雪だった。柔らかい太陽の光に透けて、雪がきらきらと耀いていた。小さく愛らしい真っ白な雪はさながら天使のようだった。)よん、朝一番の光を一身に浴びて、自然の力を借してもらうこと。ご、脈打つ自分の青い血潮に今日も元気だと思うこと。ろく、ノースルーフの平和と幸福を神さまに祈ること。
「はよー」
顔を洗ってリビングに行くと、既にじいちゃんが家を出る用意をしていた。
「おはよう」
低く太い声、大木のような逞しい体、他人に厳しく自分にはもっと厳しいという性格を表したかのようなつり上がった眉毛。そんな目の前のじいちゃんが83歳なんだってことには誰も気づかないだろう。
「もう出んのか、じいちゃん」
「ああ、冬は早いんだ」
俺に一ミリも視線を向けないで靴紐を結びながらそう答えるじいちゃんは、いかにも強い男って感じがして、いつだって俺の憧れだ。
「いってらっしゃい」
そう呼び掛ける俺の声に返事はなく、その代わり、見上げるほどの大きな背中が語るエネルギーを俺は感じ取る。開いたドアの間から外の冷たい風が肌を触れるとかなり寒くて、これは今年に入ってから一番気温が低いに違いない。
そして俺はキッチンに移動して朝御飯を作りはじめる。ガスコンロの火をつけて、フライパンの上に卵を落としたら塩コショウをちょっとかけて、あとはウインナーとかリンゴとかトマトとかと一緒にパンを食べる。飲み物はミルクで。大事なのは、
「いただきます」
両手を合わせて、自然と神さまに対する感謝の気持ち表すことだ。リンゴがみずみずしいのも、パンがふわふわなのも、トマトが新鮮なのも、全部自然と神さまのおかげなのだから。目玉焼きの形が決して綺麗とは言えないのも、たぶんそう。
「ごちそうさまでした」
全部残さず食べたら、最後もきちんと言う。ささやかな日常の中にも自然と神さまがもたらす力は多い。それに感謝する機会も、方法も。だから簡単だけど丁寧に─皆だって助けられたらありがとうって言うだろう?─紡ぐのだ。
食器を片付けてから着替えて、リュックに教科書やノート、筆箱を入れたら準備OK。誕生日に買ってもらったお気に入りの靴を履いて家を出る。この時も忘れちゃいけない。俺とじいちゃんの二人暮らしだから、返事が帰ってこないとわかっているけれど、例え誰もいなくてもそこに家があるから俺は言う。
「いってきます」
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