ダーク・ファンタジー小説
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- お母さんは心の病気
- 日時: 2018/11/09 22:19
- 名前: なこ (ID: /jbXLzGv)
最初に違和感を感じたのは、5歳の時。お母さんが近所の人に電話をしていて、泣きながら「ごめんなさい。ごめんなさい。」と謝っていた。私は、怖くて、何で謝っているのか分からなくて、でもどうしていいかわからなくて、自分の部屋でガタガタ震えていた。でも、その時。
「ピンポーン」
インターホンが鳴った。おばあちゃんが来てくれた。私はとっさにドアへと走った。すがりつけるものが欲しかったのかもしれない。ドアを開けた時、おばあちゃんもお母さんの声が聞こえたのだろう。一瞬顔が曇ったように見えた。でも、すぐにニコッと笑って、
「桃ちゃん、こんにちは。」
と言ってくれた。私も、
「ばあばもこんにちは。」と言い、おばあちゃんを中へ通した。私が、
「なんかね、ママが泣いてるの。」
と言うと、おばあちゃんは
「ママは少し疲れているみたい。今はそっとしておこう。」と言った。
覚えているのはここまで。
ー桃小1ー
「桃、宿題はあとどれくらいで終わる?」
お父さんが聞いてきた。
「もうすぐ終わるよ!」
私はこっそり描いていた絵を慌てて隠しながら言った。どうしよ、見つかっちゃったかな?お父さんの目は鋭いからなあ…。「じゃあ終わったらパパのところに来てくれる?」
あれ?変なの。いつもは気がつくのに。「はあい。」
元気よく返事はしたものの、内心ビクビクしていた。こんな風に、パパが私を呼び出すことはまずない。なんか叱られるようなことしたっけ?
そんなことを考えながら、トボトボと階段を上がった。ああ、どうかおやつ抜きにはなりませんように!
地獄のドアが見えて来てしまった。
「パパ、来たよ。」
「桃。ちょっとそこに座って。」
座る⁉どうしよ。本気モード⁉
「あのね、桃。実はね、パパ転勤が決まっちゃったんだ。」
「てんきん?鉄琴のこと?」
「ううん。転勤っていうのは、お仕事のために今住んでいるところから離れて、違う所へ行くことだよ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・え?どゆこと?
「じゃ、じゃあ、・・・このお家から違うお家に行くってこと?」
「そうなんだ。」
「違うお家ってどこにあるの?」
「シンガポールだよ。」
シンガポール?シンガポールって、カンガルーの国だっけ?
「違う違う!カンガルーはオーストラリアだよ。シンガポールはマーライオンの国。」
つまり、これからは今通ってる小学校に行けなくて、友達とも離れちゃうって事?
「ごめんね。パパも桃が友達と離れ離れになっちゃうのはかわいそうだと思うんだけど、もう決まっちゃったことなんだ。」
え、でも、ってことは・・・
「外国に暮らすってこと?」
「うん。」
「英語勉強するってこと?」
「そうだよ。」
「1年中夏だよね?」
「そう。だから1年中おんなじ服着られるよ。」
確かに友達と離れるのは嫌だけど、でも・・・
「サイコーじゃん!」
楽しそう!外国で暮らすの面白そう!
「でもママがね…。」
ん?今パパなんか言った?
私の顔を見て、お父さんは慌てたように
「ごめん、なんでもないよ!」
と言った。