ダーク・ファンタジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 超能力者と宇宙人と生贄
- 日時: 2019/02/22 18:54
- 名前: サバ (ID: OiQJLdzt)
これはまだ地球の殆どが動物と植物に囲まれて自然の大陸だった頃のお話。
種族は違えど人間の容姿を得ていた彼ら三人は出会う。
第一話「超能力者の少年」
>>1,>>2
第二話「宇宙人の少年」
>>3
- Re: 超能力者と宇宙人と生贄 ( No.1 )
- 日時: 2019/02/17 07:25
- 名前: サバ (ID: H65tOJ4Z)
第一話「超能力者の少年」
少年は身体能力が高いことで知られている小さな村で育った。同じ歳ぐらいの子供に比べて背は少し低く線が細かった為に小柄で弱そうな見た目は村での恥晒しだと体罰なのような特訓は日常であった。
感情を表に出すことは相手に自分の考えを悟られること、つまりは弱点。それを克服させる為に冷静であれ、常に相手の一歩前を行け、感情を表に出すな、と教え込まれた。
「周りを蹴散らしてでも自分が生き残る方法を考えろ」
これが村での掟のようなもので、少年はその掟が守れなかった。
病気持ちの母の看病をしながら特訓を受けて疲労は溜まるが母に心配をかけたくなかった少年は自分のことを優先するという考えが無かったからだ。
村では「異質の子ども」「親が病気ならその子どもも病気持ちかもな」なんて言われていた。
ある日、同じ歳ぐらいの子が少年の家の戸を叩く。
少年が戸を開けると開口を待ちわびていたかのように人が雪崩のように家の中に入ってきて床に眠る母の周りを囲うように立った。
少年は彼らが何をしているのか分からなかった。
最後に家に入って来たのは少年を鍛える為に指導をしてくれた男性だった。
男性は母の真横に来ると少年を呼び寄せた。少年は男性の隣に立って母になにかするのだろうかと思っていると男性は言った。
「オマエには特別なものを感じる。こんな荷物を背負って生きるのはやめろ、そうすればオマエは強くなれる。よく見ておけ」
そう言って男性は30cm程度の鋭利な刃物を母の胸に躊躇いなく突き立てた。
少年は母の名前を呼び叫んだ。
男性は表情を変えることなく言った。
「オマエは弱いものを守るために生きてきたのではない、強いものをひれ伏すために生まれてきたのだ」
男性は抵抗する少年を担ぎ上げ、無理矢理母から引き離し物置小屋へ投げ入れる。「頭を冷やせ、感情の乱れた者など、この村に必要ない」そう言って少年を物置小屋へと閉じ込めた。少年は母を殺された悲しみに泣き叫んだ。
その日村には豪雨が襲った。
- Re: 超能力者と宇宙人と生贄 ( No.2 )
- 日時: 2019/02/19 08:10
- 名前: サバ (ID: 6fVwNjiI)
少年の赤い瞳は光を灯さず影が差し込んで黒みを帯びる。少年は夜の間ずっと泣いていたのに目元に腫れどころか、喉も渇かなかった。
地べたに両膝・足・お尻を付けてボーッと空気中を舞う埃をみつめる。
五日が経過した。物置小屋へ少年を目の敵としてきた悪ガキ大将の少年が姿を現した。それまで物置小屋へは誰も来なかった。食事も摂っていない、水分補給もしていない、睡眠もとらなかった少年は普通なら痩せこけている頃だが、ソコへ入れられた初日と容姿が全く変わっていなかった。ただ、開けられた扉の方を見ることもなく光の宿らない瞳で光の差し込む小窓を見つめていたのだ。
ガキ大将の子は少年の肩を「薄気味悪い」と蹴り上げる。簡単に吹き飛んだ華奢な少年は使われなくなった道具が入った積み上げられた段ボール箱に突っ込んだ。辺りに溜まっていた埃が分散して白くモヤがかる。それにガキ大将の子は軽く噎せる。少年はお風呂にも入っていない筈なのに物置小屋は以前と変わらぬ道具のサビやカビ、埃の臭いだけで、まるで少年が生きていない存在に思えたガキ大将の子は、段ボール箱に埋まって出て来ない少年を挑発した。
「身内を殺されたぐらいで弱いヤツだな!オマエなんかが何故アノヒトに認められるんだ?オレは認めない、オマエみたいな弱いヤツ」
少年に向けた嫉妬の言葉、少年は何も言わない。ガキ大将の子はボソッと呟いた。
「…病気の母なんて死んで当然だ」
段ボール箱の山からゆっくり物音を立てて起き上がった少年は静かに告げる。
「死んでいい生き物なんて居ない」
「は、は?」
「オレにとっては大切な人だった、生命を奪っておいて死んでいいだと?…許さない」
少年は俯き気味にガキ大将の子へユラユラと歩み寄る。ガキ大将の子は後ずさり少年の言ってる事を理解するでもなく「何言ってるか分かんねえよ」と怒鳴りつけ強がった。
少年はガキ大将の子へ視線を向けた、暗い物置小屋でギラリと光る赤い瞳と目が合ったガキ大将の子は息を詰めた後、動かなくなった。
ガキ大将の子の横を通り過ぎ、少年は雨雲を引き連れ森の中へ歩いて行った。のちにガキ大将の子が物置小屋の前で石のように固まり石化しているのが見つかった。
- Re: 超能力者と宇宙人と生贄 ( No.3 )
- 日時: 2019/02/22 18:53
- 名前: サバ (ID: OiQJLdzt)
第二話「宇宙人の少年」
建物が密集してできた町、そこは医学の先進国でありつつ、民衆の貧富の差が激しいたところでもあった。
ある医師には妻がいるが子どもに恵まれなかった。そこで養子だった男の子を育てることにした。少年がその夫婦の家へ来て二年ほどで二人の間に待ちに待った子供が出来た。女の子だ。大変喜んだ夫婦は少年のやりたい事に否定をしなくなった。少年が幸福を持ってくると思っていたのだ。
そんな幸せな時間を過ごしていた少年が町に出た時、食事も与えられず人の物を盗み裸足で掛け歩く人を見て、初めて貧富の差を感じた。それと同時に自分は世の中の事を知らな過ぎではないかと思った。
それから少年は貧しい子達の生活を知るために一緒に住んで一緒に遊んで、自分の家に帰るのはその子供たちと解散してから。身分を知られないように帰った。それから五年、子供たちとも随分と仲良くなった。母が亡くなり父は少年のすることに反対するようになった。少年は父にバレぬように外出するようになった。
ある日、貧しい子達とボールを蹴って遊んでいると一人が言った。
「そういえば北の方に魔女が住み始めたらしいぜ」
「魔女?」
俺が首を傾げると皆はそれぞれに「なんだそれ化け物か?」「人喰い女か?」等と口をつくが話を始めた少年は首を横に振る。
「さあ、よくわかんねえけど。人が手出ししちゃならねえんだと」
「ふーん」
結局は噂に過ぎないのかという程度の話に聞こえて皆興味を無くす。
「化け物だったらあぶねえしなー」
「攻撃されたら刺せばいいんだよ!」
「刺さるのかよ…化け物なら動きも早いだろ」
「さ、刺さんないなら掠るだけでも効果はあるぜ!」
「掠ったら血の色も俺達とは違うかもな!」
「違ったら施術出来ねえし、結局は死んじまうのかもな」
たわいもない話し合いをただただ聞いていたが、血液の異常があるなら輸血は出来ない。殺しはしたくないから俺たちの住む東側の区域には、その魔女が来ないことを願った。
そんなある日、少年は身分がバレてしまった。貧しい子達は仲良くしていたのが嘘かのように少年を目の敵にし「貧しい俺たちを見て楽しかったんだろう」と野次を飛ばして少年を殴ったり蹴ったりと集団で暴行を加えていた。一人が少年の胸ぐらを掴んでガラス窓に背中を押し付ければガラスは脆くぶつかった箇所からすぐに亀裂が走りあっという間に割れた。
破片が飛び散り少年の頬や腕などを掠る。ガラスの破片で切れた頬から血が出た。それを見た子供たちは顔を青ざめた。
少年から出た血の色は赤ではなく深い青まさに藍色の血だったのだ。
Page:1