ダーク・ファンタジー小説
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- ただいまタイムトラベル中!
- 日時: 2019/02/22 21:27
- 名前: 梅雨 (ID: /jbXLzGv)
ジリリリリリリリリリリリリ・・・・・・・
朝だ。朝はウチにとって学校に行く時間。
ほとんどの人がそうであるように、ウチは起きるのが面倒くさくて目覚ましを止めてしまう。というか、そうしないでいられる人は、ある意味早起きのプロかもしれない。
GOD OF 早起き。何つって。
なんて馬鹿なことを考えながら、目覚まし時計に手を伸ばす。
が、その手をすんででとめ、がばっと起き上がった。
いつものウチなら無意識に止めてしまっていただろう。そしてもう10分ぐらい寝ようとしたはずだ。
ーでも、今日はそんなこと出来ない!
2、3回瞬きをする。よし、目が覚めたぞ。
ブー。携帯音がなる。あ、サユからだ。親友の電話なら、取らないなんてことはしない。
「ナミー!今日大丈夫かな?出来そうになければ無理しなくていいんだけど・・・」
ケータイ越しにサユの声がした。この調子だと玄関にもう来ているだろう。サユは心配性だからな、早く行かないと。
「いや、大丈夫。」
「え、本当に?気を遣ってるなら––」
「今行く。ホントに行けるから!待ってて!」
そう言って切った後、急いで服を着替え始めた。
私の名前は千草波葉なみは(ナミ)。
まあ、俗にゆう「平凡なJC女子中学生」。
私立中高一貫女子校1年生で、読書が好き。クラスのリーダーなんて御免こうむるってキャラクター。メガネをかけているせいか、第一印象は「知的・真面目」らしい。
まあ実際は読書好き、成績は学年5〜10位なので、友達には
「あながちまちがってはいないでしょ。見た目と性格そのまんまだし。」
といわれる始末である。まあ別に嫌ではないけど嬉しくもない。
そして、ドアを開けたら思った通り目の前にいるこの子が親友の双葉小百合さゆり(サユ)。ふわふわしているので、サユのことを知らない人が会ったらか弱そうに思いがちだが、実際には天然だが空手がとても強い。一回、男子が走ってきてぶつかりそうになった時、相手を蹴り飛ばしたことがある。その後に慌てて「ごっごめんね!今のはちょっととっさに体が動いちゃって・・・。」
なんて言うもんだから、蹴られた人は慌てて逃げていった。ウチもその天然さにはよく振り回される。
・・・・・と、まあ紹介はこのくらいにして。
「ナミー、ここどうすればいいの?」
「さっき言ったでしょ。ここは現在進行形だからbe動詞を付けるの。」
「えーと・・・am?」
「違う!Weは2人以上でしょ!」
ウチとサユは、今公園のベンチにいる。
期末や中間テスト前には、サユの一時的家庭教師となる(給料はサユの母からこっそりと・・・)。でもサユはそのことを知らないので放課後には何かを奢らせて欲しいと言うが、ウチの方からやんわりと断っている。
サユは勉強が余りできないので、サユの母に頼まれたのをきっかけに、勉強の復習も兼ねてこうして小学校の頃から面倒を見ているのだが・・・
「amとareとisがbe動詞。・・・じゃあateは?」
「さっき教えたばかりでしょ!ateはeatの過去形!」
「てことは、canはcatの過去形?」
「ちがーう!!!」
・・・と、サユは英語が滅亡的にできない。英検5級も受かるかどうか…。
そんなこんなでしばらく教えること約一時間。
「あ、そろそろ行かなくちゃ。」
「ほんとだ!今日もありがと、ナミ。」
学校へ行く時間になった。教えていると、時間なんてすぐにすぎちゃうな。
明日はどうやって教えようか。そう考えながらノートを片付けている時、サユに
「ナミ、タイムトラベルって知ってる?」
と、唐突に聞かれた。
「は?タイムトラベル?」
タイムトラベルって、普通に訳したら『時間旅行』ってことだよね?
「時間旅行ってことでしょ。それがどうかした?」
サユが困ったような顔を浮かべる。
「いや、えっと。昨日の夜、なんか変な夢見ちゃって。」
「どんな夢?」
「えっと・・・朝起きたらいきなり小5になってて、えっと、そこで悪魔に出会って・・・えっと、その悪魔にアプローチされて、えっと、えっと、付き合わないなら友達や家族を殺すって脅されて、えっと、それで嫌々付き合って・・・」
『えっと』が多いな、おい。
「んで、嫌々付き合ってるうちにその悪魔を好きになったと。」
「違うの!その悪魔は転校生の男の子の身体に入ってて、私が好きになったのは幽霊になっちゃった男の子の方なの!」
へー。それはあまりない展開・・・かな?
「でもそれって、タイムマシンを使って移動した?それとも何か他の道具を使った?」
「ううん?朝起きたらなぜか時間が遡ってたの。」
じゃあタイムトラベルじゃないな。
「その場合、『タイムスリップ』だと思うよ。」
「え?タイムトラベルじゃないってこと?」
うっ・・・。
「え・・・うん。多分そうだと思うけど。ちょっと待ってて。」
確証が持てなくなったのでケータイで検索。
「・・・あ、あったあった。」
ほら、とサユにケータイをかざした。
「えーっと、『機械とかを使って移動するのがトラベル、自分の能力などで移動するのがリープ、望んでないのに移動してしまうのがスリップ』だって(一部諸説あり)。」
「ヘェ〜」
ウンウン頷いてる。納得したかな。と言っても、サユはきっとすぐに忘れちゃうだろう。
「んじゃ行こう。電車乗りそびれちゃうよ。」
「ほーい!」
休み時間。
「ねえねえ、これ!上手くできてる?」
話しかけてきたのは小熊優湖ゆこちゃん。
「うん、いいんじゃない?ほら、こことかいい表現だと思う!」
優湖ちゃんはクラスメートの中で比較的仲がいい。髪はポニーテール。演劇部の脚本を書いていて大人しめな子。というか、ウチの友達にリーダー的存在の人はいない。
「ありがとー!じゃあさ、ここのシナリオどうすればいいかな?主人公が言うセリフ・・・」
「ここは思い切って『逃げんなよ!』って言っちゃってもいいんじゃない?」
ウチは優湖ちゃんには脚本のアドバイスをしている。どうやら人に頼られる存在らしい。優湖ちゃんのシナリオはとても面白いから、アドバイスを頼まれても全然嫌ではない。
「あ、おぐまっち!」
サユが駆け寄ってきた。
「あ、脚本?見せて見せて!」
サユも基本的に本はすきなので、話の流れがおかしくないか審査する役目を担っている。ウチは表現とかを直す役。
そうこうしているうちに休み時間は過ぎ、5時限目が始まった。
「・・・ということから、ここはwhoになります。わからないひとは、ほうかごおしえてやるからせんせいのところへくるように。」
この学校の英語の八尾先生は、漢字を使わない話し方で有名だ。この説明ではどういう意味か分からない人もいると思うけど、この言い方以外の説明は思いつかない。どう言えばいいのだろうか・・・。
そしてこのグダグダとしたせつめーーーーー
ガタガタッ。
「えっ?」
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタッッッッッッッッッッッッッッッ
(じ、地震!?)
「みんなつくえのしたにかくれろ!」
突然のことで硬直していたウチは、先生の一言で我に返った。そしてあわてて机の下に隠れた。きっとみんなもそうだったと思う。
サユが泣きそうな目でこっちを見ている。ウチだって怖いよ。でも、サユにそんな顔を向けることはできない。サユを怖がらせたくない。
他のみんなはどうしてる?そう思い見回すと、他の人達は、お互いを突っつきあって安否を確認していた。
ーガンッ。
何かが当たる音がした。
その音は、ウチのーーーーー左から?
(ー優湖ちゃん!?)
慌てて優湖ちゃんの肩を掴んだ。目は閉じている。
ーーーーー優湖ちゃんの頭が当たる音だった?
(ゆ、優湖ちゃん!?大丈夫!?)
揺さぶった。声?声なんて、出なかった。
返事をしない。
最悪の可能性が頭に浮かぶ。
(まさか、まさかね。)
そう考えながら、顔に耳を近づける。
(ーーー息、してない。)
息をしていない。
『息をしていない=呼吸が止まっている。』
『呼吸が止まっている=意識は………?』
「ゆこーーーーー」
そうだ、先生。先生を呼ばなくちゃ。
虚ろな目で教室中を見回した。
(ーーーーいない。)
辺りを見回したがどこにもいない。
どうして?先生なら生徒の安全確保の為にいなきゃいけないんじゃないの!?
どうしよう、どうすればーーーーー
しばらく考えたが、このまま待っていても埒があかない。とりあえず先生を探しにに行こう!
ーという結論を出し、机から顔を出した。もう揺れは収まっていた。
「ナミ?」
「え……」
幻聴かと思った。それほどに、小さい声だった。
でも、確かにあった。ウチのことを見つめている眼が。
「あ、サユ………」
まずい、先生を探しに行くなんて言ったら引き止められるかもしれない。
「どこ行くーーーー」
「えっと、トイレに!」
とっさに思いついた嘘だった。
「と、トイレ?」
「っそう!トイレ!ちょっと行きたくなって。」
嘘ってのは面白い。つこうと思えば思うほど、どんどん出てくるんだ。今も、必死で誤魔化して。
サユは信じてくれるだろうか?
次の誤魔化し方を必死に考えていると、サユはぱあっと途端に明るくなった。
「なんだ、トイレか!びっくりした〜!それは仕方ないよねー!どこいくのかと思った!」
イヤイヤ、こんな非常時にトイレ行きたくなんてなんねーよ。
ふう。でも、とにかく騙せたみたい、なんとか。
「だから、ちょっと言ってくるね。他の人にバレないようにしといてくれるかな?」
「OK!気をつけてね!」
「うん。ありがとう。」
サユが笑顔で手を振ってくれた。幸いウチの机は一番後ろで、ドアに一番近い席。誰にも気がつかれずに出ることができた。
〜理科室〜
バタバタバタバタバタ。
(いない)
〜美術室〜
バタバタバタバタ。
(違う)
〜グラウンド〜
バタバタバタ。
(ここじゃない)
〜図書室〜
バタバタ。
(ここでもない)
〜体育館〜
バタ・・・・・
ドサッ。
「ハア、ハア、ハア………。」
あらかた行ってみたのに、いない。 何処に行ったの?
しばらく起き上がる気力を出せずに座り込んでいたけど、体力は回復していない。今動いたら気持ち悪くなるかも。でも、
「このまま優湖ちゃんをほっとくわけにはいかない!」
そう叫んだあと、また走り出した。
〜昇降口〜
バタバタバタバタ。
(気配はない。)
〜パソコン室〜
バタバタバタ。
(ここもいな・・・い?)
「・・・てたよ。・・・かれさま。」
話し声・・・?
この声は・・・
「八尾先生…?」
「・・・え・・・ちぐさ・・・さん?」
先生が目を丸くした。
「やっぱり先生だ!よかった〜!見つかって!」
「ど、どうして・・・きみが・・・ここに・・・」
あ、そりゃ驚くよね。普通ならウチは教室でガタガタ震えてるはずだからね。八尾先生、口をポッカリ開けてる。
「あの、優・・・小熊さんが意識を失って、息してなくて・・・それで・・・」
「なんだって!?」
ビクッ。
「おまえ、そのことほかのやつらにいったのか!?」
「い、いえっ!言ってません!」
先生、怒ってる・・・。どうしようか・・・。
「おい、ユウ!」
「え?」
自分に向けられたものかと思ったが、違ったらしい。
じゃあ、誰に話してるんだ?
「は、ハイッ!」
「ええっ!?」
今、優湖ちゃんの声が聞こえた?ーーーいや、身体がないから空耳か。
そうーーーーーーー思いたかったのに。
「全く、お前体の存在は消しとけっていつも言ってるだろう!たまたま見つかったのが千草さんで、誰にも言わなかったようだから良かったけどな、NCの奴らに見つかったらどうするんだ!」
「すみません、すみません!」
え、え、え、え、え。
「千草さんにも謝っておけ!」
「はい!波葉ちゃん、ごめんなさい!そして誰にも言わずに来てくれて、ありがとうございます!」
えええええええええ、ええええええ、えええ・・・
「全く、もう、ユウったらほんとドジなんだから。」
「まあ、ボクだって、そういうミスする時はあるよ。」
「『そういう』なんて言うんじゃなーい!」
えええええええええええええええええええええええええええええええええええっっっっっえええええええええええええええええ・・・・・・・・・
NC?
ユウ?
一体どうなってんの!?
つーか、身体がないのになんで優湖ちゃんや他の人の声が聞こえるの!?