ダーク・ファンタジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 四階の美術室
- 日時: 2019/03/02 23:50
- 名前: 笹木あや (ID: xOYpbzCU)
*注意*
・初投稿
・短編
・死ネタあり
よろしくお願いします。
- Re: 四階の美術室 ( No.1 )
- 日時: 2019/03/03 00:00
- 名前: 笹木あや (ID: xOYpbzCU)
僕は帰宅部なので放課後というと飛んで家に帰ることが多い。しかし、今日は帰ろうという気が起こらなかった。親が最近うるさいというのもあるが、なんとなく校内を散歩したかったのがほとんどだ。
フラフラ歩きながら、こんなに広かったろうかと思う。南校舎の四階、美術室へと続く長い廊下はシンとしている。いつもなら美術部の賑やかな声が響いているはずが、今日はそれがない。
ふと壁を見ると、美術部員の作品たちが飾ってある。その半分は同じ人の作品だった。僕が片思いしているあの子のモノばかりだ。
彼女の絵はどこか切ない。それが美しさを際立たせている。僕は美術的センスを持ち合わせてはないが、彼女の絵はいつまでも見ていられる。
「綺麗。」
不思議とそう呟いてしまった。
- Re: 四階の美術室 ( No.2 )
- 日時: 2019/03/03 00:08
- 名前: 笹木あや (ID: xOYpbzCU)
美術室に目をやると、明かりがついていた。もしかしてと期待をして、戸を開けた。
くすんだ銀のシンクには、色とりどりの絵の具と白く細いあの子の足。その足はたくさんの色で染め上げられている。
僕は息を呑んだ。今日もあの子は綺麗だ。
シンクの上で無邪気な笑顔を見せたあの子は、改めて僕の心に深く印象づいた。
あの子は作品づくりで残っているのかななど何故ここに居るのかを考えた。
空は蜜柑色から葡萄色に変わる頃、戸を開けると僕が愛してやまない絵の具だらけのあの子がいるのだ。綺麗な絵を描くあの子だ。
- Re: 四階の美術室 ( No.3 )
- 日時: 2019/03/03 00:13
- 名前: 笹木あや (ID: xOYpbzCU)
「まだ残ってるの?」
ドキドキしながら聞いてみた。
「うん、もう帰るよ。足洗ったらね。」
「絵の具だらけだね。」
「へへ、綺麗でしょ?」
また無邪気に笑う。本当に愛らしい。
「君らしいや。一緒に帰ろうよ。まつよ。」
まだドキドキしている。
「んーん。先に帰ってて。」
「そっか。分かった。この絵、文化祭の作品?」
「うん、まだ未完成なんだけどね。」
僕には十分完成しているように見える。
「綺麗だね。君の絵、やっぱり好きだ。」
君のことも好きだと言えないだろうか。
「ありがとう。でもね。」
無邪気だった笑顔が一瞬消えた。
Page:1