ダーク・ファンタジー小説
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- 例え周りと違っても 前編
- 日時: 2019/03/16 23:12
- 名前: 夜桜_maru_ (ID: GA2wUosQ)
«注意事項です»
・誤字脱字当が有るかもしれません。
・自分で作ったおとぎ話。
・初心者
OKと言う方のみ、お進み下さい。
*忙しなく動く人々。変わりゆく街並み。それを私はずっとここで見てきた。
丘の上に建つ、古く年季の入った神社の隣。開けた場所は、王国が見渡せる。
代々、女王様が国を仕切り、今では、一番平和な国と成っている。
[痛っ!?な、何?]
突然神社の奥に広がる茂みの向こうから、声が聞こえた。
風じゃない何かが茂みを揺らし、こっちに近づいてくる。
人間...
声の持ち主は、人間だったのだ。
茂みから姿を現した人間は、灰色のサラサラした髪の毛に透き通るような白い肌を
していて、整った中性的な顔立ちをしている。
そして何より、昔友達だった女の子に似ていた。
[あっ...えっと]
男ながら高いその声と、戸惑いの顔。
思い出した。確かここは立入禁止だったはずだ。
[迷子ですか?送りますよ]
紅い瞳は、私を捉え、静かに光っていた。
人間と関わったのはいつ頃だろうか。もう、随分昔の話だった気がする。
[ちゃんと付いて来て下さいね]
私は彼を確認しながら、ふもとへ降りて行った。幸い、女の子を送った時の道を
覚えていたので、迷う事はなかった。
[私はここで...こんなとこ来たら怒られますよ]
[···また来て良いですか?]
[自己責任でお願いしますね]
立入禁止の丘にわざわざ入る人間何て二人目だ...
まぁ、そんなのどうでもいい話だけど。
[俺、零です。明日もう一度来ますね]
[はい...私は小雪です。私はここで待ってますので、声をかけて下さい]
[分かりました。ありがとうございます、小雪さん]
彼は綺麗に御辞儀をすると、走って行ってしまった。
名前...呼ばれたの、久しぶりだな...
[零さん...か...]
*
あんなに迷うとは思ってなかった。時間は沢山有ったはずなのに、待ち合わせに
遅れる始末...
僕って方向音痴なのかも...
祖母に渡された地図を頼りに行ったのになぁ...何て思ってたら、待ち合わせ場所に
着いた。
[遅いなぁ、待ち合わせ時間とっくに過ぎてたよ?]
[ごめん、急用で仕事入っちゃって...]
[仕方ない...急ぐよ]
赤茶色の髪をふわりと揺らし、走り出した雨月の背中を追いかける様に、僕も走り出した。
若干雨月より足が遅いんだから、全力で走らないでよ...なんて、遅れた僕が言うことじゃ
無いんだけど。
[浦松は、女王様と仕事だから、俺らは、馬場で丸山と馬の健康診断]
[丸くんって、獣医師の資格取得したんだ]
[医者で獣医師もしててって、考えると凄いなぁ...]
丸山は、この王国の数少ない医者であるにも関わらず、その他の仕事にも手を出す為、
オールラウンダー丸山と言われている。
[はい、アウト。一分遅刻でーす]
[良いじゃん一分位、急用で遅れたんだよ]
[冗談だよ。ほら、さっさと終わらせちゃうよ]
着いた途端に、いつものくだり。笑いながら走る丸山は、はたから見たらただのやんちゃな少年
なのに、仕事となると急に真面目になる。一体どうやったらスイッチをON,OFF出来るのだろう。
毛先が紫がかった茶色の髪に、澄んだ茶色の瞳。かつ、長身の彼は本当に羨ましい。
[ってかさ、何でこの国医者が少ないんだよ。忙しいんだけど...]
[結構発展してる方なのにね]
[発展してるからこそ、教えるのが難しくなってきてるんだよ。研究ばっかで、医者を希望している
人に教える事が出来てないから少ない...みたいな?]
[それは、あるかも...親が言ってた。ここの他に教える所はこの国にはほとんど無いって]
馬の毛並みや、口の中等をチェックし終わる頃には、時計が12時を指していた。
僕らは王宮に戻り、浦松の所へ行った。
[もうお昼か...あれ?零、どっかに引っ掻いたのか?]
僕のズボンは、少し破けていて、その下に見える赤い血。
そういえば、丘に行った時、枝に引っ掛かったんだっけ...
[うん...丘に行った時に]
[あの立入禁止の山?!何してんだよ。怒られるぞ]
[内緒にしてて。祖母に頼まれたから...]
浦松は、溜め息をつき、僕の腕を引っ張った。
[昼食べに行く前に、坂井の所行くぞ。手当てしてもらって]
何だかんだで、内緒にしてくれる僕の友達。いつからこんな友達出来たんだろ。
不思議だよね。ずっと王宮に居たのに。
[坂井、次期王様が怪我したんだけど]
[零が?足を引っ掻いたのか...気を付けなよ、王子でしょ?]
[二人共、王子も次期王様も止めて。違和感ある]
[お前もうすぐ20でしょ?今から慣れとかないと王様になれないよ?]
僕は女王様の息子で、次期王様に公表された。二十歳になったら交代すると、女王様は言った。
特に時期は決まっていないから、次の代へと変わる年は、王様が自由に決められる。
祖母は、母と代わる時、もう既に60歳だった。健康面を気遣い、25歳の母に国を渡した。
それから20年。母は僕に国を渡す事にしたそうだ。
[そもそも、代々女王様だったのに、零だけなんで男?]
[知らないよ、僕は母から何も聞いて無いんだから。でも本当は女の方が良いんだろうね]
3歳頃から、もう仕事に関しての勉強が始まっていた。普通の学校に行かず、王宮で坂井、浦松、
雨月、丸山の四人と一緒にお手伝いや、勉強をする毎日。代々女王様に使える医者などの子供の
四人は、当然の様にそれぞれその道へ進んで行った。それが僕にとっては嫌だった。
産まれた時から、もう既に行く道を身勝手な大人達に決められ、行動を制限されるなんて、なんて
不平等な世の中なのだろうか。
[僕が本当に王様になって良いのかな...]
[···零は今まで頑張って来たじゃん。王様になる資格、あるよ]
小さい頃から、体が弱く、体調を崩しがちだった僕の傍で坂井がよく言ってくれた言葉。
[零は優しいし、格好いいから、絶対王様になれるね]
時が経つにつれて、その使命の重さを実感する。
[何一つ頑張れて無いよ...本当は不安で仕方ないの。僕には、自信なんてまるで無いから]
[···それなら、俺達が自信を持って言うよ]
[零は王様になれるってね]
皆...頑張ってる。
僕らには最初からその道しか無いんだ。
[ほら、お昼食べに行こう]