ダーク・ファンタジー小説

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ジャイアントキリング
日時: 2019/03/20 09:41
名前: T (ID: 2E2Zm7JP)

2017年、5月。
駅のホームで、一人の男がタバコをふかしながら右往左往している。人が増えてくると、煙が迷惑になるだろうと隅の方に移動した。腕時計で時間を確認する。朝の九時。煙を体にまとわせながら、九時五分に来る電車を待った。
電車が来ると、皆と乗り込んだ。人混みには馴れているつもりだが、こればっかりは、毎朝嫌気がさす。つり革に捕まり、動き出す車両の振動を体感しながら目的地へ移動した。
九時三十分、電車を降りた。スーツを着た人たちが足早にこの場を去っていく。制服を着た学生も同じだ。ジーンズにシャツを着たタバコ臭い男は、そんな彼らと肩を並べて駅を後にする。
外に出ると、曇っていた。テレビで見た天気予報通りだな、と心の中で呟き、街中に消えた。
しばらくして、昼のワイドショーが一面に映し出されるテレビが並ぶ家電量販店から出てきたタバコ臭い男がいた。買い物をした様子で、右手に袋を提げている。彼が歩き出すと、少しだけ天候が明るくなってきたようだ。彼はおそらく、あの場所に行くのだろう。俺には分かる。株の取引だけで一生は食べていけるだけの金を稼いだ、安田ミツキのことは、手に取るように。

Re: ジャイアントキリング ( No.1 )
日時: 2019/03/20 11:34
名前: T (ID: 2E2Zm7JP)

2017年、5月。
大学を卒業してから数月後、田中マイはある日財布を拾った。中身を確認すると、三万円入っていた。今立っているのは、人通りのない道。辺りを見回しても、自然が埋め尽くされている。田中は素早く、財布をカバンに入れ、その場を後にした。
自宅に帰り、カバンを下ろす。黒い長財布をもう一度手にすると、まだ田中は迷っていた。猫ババす、るべきか、否か。今なら間に合う。しかし、良心など、金の前ではとたんに破滅してしまう。それに気付いた田中は、もう悪魔になろうと決めた。この三万円の持ち主に頭を下げる。心の中で。そして、大切に使いきります、と神に誓った。

数週間後、田中は自宅近くのラーメン店で醤油ラーメンを食べていた。古風な佇まいの内装の中、腹を満たす。全部食べきると、金を払い、すぐに店を出た。外は、雨。田中は走った。どうせ濡れてもいい服だ。だから雨に濡れたって平気だ。そう唱えながら、田中は自宅へ走った。
ずぶ濡れのまま、玄関先で財布の中を確認した。残金890円。無心になると、服を脱ぎ、体を拭いた。
田中マイ、通称マイマイ。23歳独身の泥棒である。


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