ダーク・ファンタジー小説

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死に行く街に朝は来ない【短編集】
日時: 2019/04/19 09:20
名前: 戌亥 (ID: 3OoKbooX)

パンデミックにより隔離され、陸の孤島と化した小さな街『バラオシティ』

ある者は助け合い、ある者は蹴落とし生きていく
そこで、彼らは何を見たのか。
存在したのは果てなき希望か底無しの絶望か


これは、彼らの『サバイバル』の記録

>>1
ある警察官の手記

>>2
新人隊員の死の記憶

>>3
自分勝手な浮気男の末路

>>4
幼い少女の希望
(内容にグロテスクな表現が一部含まれますのでご注意ください)

Re: 死に行く街に朝は来ない【短編集】 ( No.1 )
日時: 2019/03/30 00:23
名前: 戌亥 (ID: 3OoKbooX)

数ヶ月前から猟奇事件が多発しているのは兼ねての通報により小耳に挟んでいた
どうせ、何かの違法ドラッグだろうと同期のゲイリーと笑いながら話していたのが遠い昔のように思える

ぐちゃり、と肉の噛みちぎられれる音が、痙攣し息絶えながらもはらわたを貪られるゲイリー『だった』肉の塊が現実を語っていた

掠れた声で唸る人の形をした化け物がこちらを見た。その目は白濁し皮膚は一部こそげ落ちている

違う。明らかにおかしい。クスリでああなる訳が無い。
あの姿はまるで死者が

その先の言葉は首筋に走った激痛により掻き消された

Re: 死に行く街に朝は来ない【短編集】 ( No.2 )
日時: 2019/03/30 01:34
名前: 戌亥 (ID: 3OoKbooX)

硝煙と血の香りが意識をゆるく覚醒させる
そうだ、たしか僕は撤退命令を受けて分隊長や仲間達と一緒に逃げていたんだ。
必死にあのゾンビ達から逃げて走って

分隊長に足を撃たれたんだ。
仲間を助けなければ。と、体を起こそうとするが腕に力が入らない
銃は既に打ち尽くされ、残弾も残っていなかった

助けてくれ!開けてくれ!と叫ぶオスカーの声。ロッカーの上に逃げようとしたマルコがゾンビ達に引きずり落とされ食われていく音。

ああ、僕も食われるのか。
出血が酷いのか迫る死への恐怖なのか悪寒が背筋に走る。
意識が薄れる中、ニヤリと笑うゾンビと目が合う。笑っているように見えたのは口が頬まで裂けていたからなのかもしれない
僕のはらわたをゾンビ達が貪り食う中不思議と痛みはなく、薄れ行く意識の中耳に入るのはオスカーの悲鳴に似た咆哮と劈くような爆発音だった

Re: 死に行く街に朝は来ない【短編集】 ( No.3 )
日時: 2019/04/17 02:23
名前: 戌亥 (ID: 3OoKbooX)

人が何故昔から『犬』をパートナーにしていたか知ってるだろ?
『馬鹿』で『単純』で『忠実』だからだろうが

俺の周りには昔から『犬』が絶えず傍に居た
時には甘ったるい声で俺に媚を売り、又ある時はキンキンした小煩い声で敵に吠え、犬同士で威嚇し合う
邪魔でうざったいけれど役には立つんだよな


『あの時』もそうだった。腐った死体共が家に押し入ってきた時も『犬』は必死に俺を庇ってくれた
だから、必死に別の『犬』の所へ逃げた

逃げた先の『犬』は銃を持っていた。
でも、『犬』に銃は要らないと思ったから奪い取ろうとしたらキーキー騒いで銃を離さない
何が『止めてよ』だよ。クソうるせぇな。
ムカついたから包丁で腹を刺して弱らせてから、銃を奪って囮にしてやった。飼い主に噛み付く犬だから捨てられたんだよ。ざまあみやがれ


ある日、腐れ死体共から逃げていると死体の中に見覚えのある奴がいた。
腹に包丁が刺さっていて、所々桃色の爪が剥がれた奴だ

遂に腐りやがった。飼い主に噛み付く所か腐って理性すら失ってやがる
あまりにもムカついたから頭をぶち抜いてやった。なのに

死んだ『犬』の体がバキバキ割れる。割れて皮膚が剥がれて筋肉が剥き出しになる

俺を見て、吠えて、喉に噛み付いて

痛い。痛い。あいつが、犬が、スープを啜るように腹に顔を突っ込んで、じゅるじゅる、って、音が


いたい、なんで、なんで。俺に従うだけのばかないぬが


ああ…こいつ、いぬじゃない。

こいつ、否、こいつらは

女だ

Re: 死に行く街に朝は来ない【短編集】 ( No.4 )
日時: 2019/04/19 09:20
名前: 戌亥 (ID: 3OoKbooX)

『あの光景』は、両親との美しい記憶をいとも容易く恐怖に塗り替えた

ゾンビ達がお家に入ってきた時、母は私をクローゼットに押し込み、『何があってもそこから出るな』と言い残し扉を閉めた

扉の隙間から見えたのははらわたを引きずり出される父と喉笛を食い破られる母の姿だった
怖くて、怖くてぎゅうっと強く目を閉じる。けれど、頭に浮かんでくるのはあのおぞましい両親の死に様

私も死ぬのだろう。とクローゼットの中で自分の体を抱きしめていると外から銃声が聞こえる
そっと、外を覗くと、ゾンビは皆床に伏しており、一人の男性が銃を持ち歩いていた

あの人が、助けてくれたんだ
助けてくれたのなら、恩返ししなくちゃ


その日、私は初めて母の言いつけを破った


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