ダーク・ファンタジー小説
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- 平凡でありたいギャング
- 日時: 2019/04/23 18:44
- 名前: 枢 (ID: s00TEuml)
非日常の都市、東京の池袋。大都会に引っ越してきた女子高生、西園寺瑠理はその町で
日常から非日常に引き込まれていくことになる。
1.手違いでカラーギャング >>01
2.誕生、平凡な新人ギャング >>02
3.ファイター系ギャング >>03
4.再戦宣言、設楽vs黒瀬 >>04
- Re: 平凡でありたいギャング ( No.1 )
- 日時: 2019/04/22 18:30
- 名前: 枢 (ID: s00TEuml)
静岡県民では想像できない非日常が大都会にはあった。ここに引っ越してきた時点で既に
西園寺瑠理は非日常に足を突っ込んでいることに彼女は分かっていない。まず彼女を襲った
非日常は情報屋を名乗る青年との会話から。久遠寺成也は情報屋を名乗り瑠理に色々情報を
提供することを約束した。
久遠寺「そうさ。俺は君が知りたい情報を全て提供してあげる」
西園寺「はぁ…それは有難いんですけどいいんですか?私、ここの事なんて少しも」
久遠寺「ははっ、いいのいいの。俺がそうしたいからそうしてるだけだしね。あ、良いこと
教えてあげるよ。カラーギャングっていうの知ってる?」
イメージカラーを身に着けている不良集団をカラーギャングと言う。それは知っていたので
西園寺瑠理は頷いた。
久遠寺「その中に無色、正確には無彩色をイメージカラーとするカラーギャングの
フリーダムってのがいるんだよね。丁度君みたいな子を探してたみたいだから」
久遠寺は笑った。
久遠寺「君の情報、うっかり渡しちった☆」
西園寺瑠理の驚きの叫びが反響した。うっかち渡しちった☆、じゃないぞ!
久遠寺「あ、因みに僕もそこに所属してるんだよねぇ」
西園寺「いや聞いてませんけど…」
これで完璧に非日常に飛び込んでしまったわけだ。さらに彼女は人生初ギャング集団の一員に
なることになってしまった。そんなヤバそうなところで普通で平凡な西園寺瑠理は果たして
ちゃんと日常を過ごせるのか—!?フリーダムの面子は至る所にいるらしい。学生、レストラン、
デパート、さらに警察までいるとかいないとか…。その中の数人と瑠璃は待ち合わせしていた。
???「オイお前がクソ久遠寺が言ってた西園寺か?」
西園寺瑠理は目を見開く。待て、バイクは一台100㎏を超える重量だ。そのバイクを金髪グラサンの
青年は片手で担いでいる。そんなホストみたいな恰好をした細身の男が、だ。
???「風祭、バイクなんてその辺に捨てとけ。彼女を怖がらせてどうする」
白髪の男がバイクを担いだ青年、風祭にそう言った。風祭はバイクを投げ捨てる。
???「すまないな風祭友希は怪力でね。俺は設楽厚平、フリーダムのリーダー」
西園寺「え!?カラーギャングのリーダー?」
こんなアイドルみたいな人が?もっと強面で大柄な大男を予想していた。予想外で驚き反面
安心感も出てきた。さらに彼らの後に続きフルフェイスのヘルメットを被ったライダースーツの
女性が現れた。
風祭「お、シルヴィ」
設楽「彼女は首無ライダーのシルヴィ、名前の通り首から上はないよ。でも彼女は常識人で
優しいから悩んだときは頼ると良い」
首無ライダーって…私が知ってるあの本のデュラハンみたいだ…そんなことは置いといて
彼女の存在に西園寺瑠理は更に驚いた。
- Re: 平凡でありたいギャング ( No.2 )
- 日時: 2019/04/22 19:25
- 名前: 枢 (ID: s00TEuml)
設楽は同じギャングで紹介したい人物がいると言い彼らは今バイクで池袋を走っていた。
シルヴィのバイクには風祭、設楽のバイクの後ろに西園寺瑠理は乗っていた。バイクはゆっくりと
人気が少ない路地で止まった。歯が折れ白目を剥いたガラの悪そうな男たちが転がっていた。
人間を殴る鈍い音が何回も聞こえた。
設楽「化野、今日も随分と喧嘩を売ったみたいだな」
気絶した男を殴る手を止め不気味な笑みが消えたワインレッドのコートを着た青年が振り返った。
化野江夏、風祭友希同様に人間離れした力を持つ。まぁ怪力なら風祭のほうが上だが…。成程
赤いコートを着てるのは喧嘩の返り血が目立たないようにするため。同じ理由で黒い服を
着ているのか。
化野「巻き込まれたってわけか…俺は化野江夏、よろしくな瑠理」
化野は手を差し出す。握手ということか。その手を瑠理は握った。
シルヴィ「今日もこんなに殴り倒して…第一印象、悪いよ?」
何処から声、出してるんだろうと思ったがそのことは彼らの間では暗黙の了解のようだ。
化野「仕方ねえじゃん先に殴り掛かって来たのはあっちだし…でもさぁ設楽、いいのかよ?
本当に大丈夫なのかよ、こんなところにいさせて」
風祭「久遠寺をぶっ殺せばいいんじゃね?」
設楽「そんなことは出来ないだろ。現に君は彼を捕らえられてないじゃないか」
正論を言われ風祭は押し黙る。
設楽「そうだな…流石に君に喧嘩なんてさせたくはないからね。メンバーにも頼んで君の護衛を
させることにしよう」
西園寺「なっ!護衛って…そんなことは」
シルヴィ「まぁまぁ瑠理ちゃん、全部久遠寺君が悪いけどこうなった以上は、ね?大丈夫だから」
シルヴィは瑠理の両肩に手を置いた。優しく落ち着かせるようにそう言った。設楽も不安を
消すように微笑んだ。
設楽「大丈夫、シルヴィもいるし風祭と化野もいるんだ。気にしなくていいさ」
西園寺「は、はぁ…」
その場のノリで頷いてしまった。こうしてどうにもこうにもギャング入りは逃れられずギャングに
なった西園寺瑠理だった。落ち着いた優男の設楽厚平、短気な怪力男の風祭友希、ギャップが
激しい化野江夏、生ける都市伝説シルヴィ、最もギャングらしくないギャング西園寺瑠理そして
彼女をギャングにした張本人の久遠寺成也。今、瑠理が知っているフリーダムの面子は
5人。だが他にもメンバーはいるらしい。本当に大都会では何が起こるか分からない。それで
こそ彼女は目立つ存在になる。
- Re: 平凡でありたいギャング ( No.3 )
- 日時: 2019/04/22 20:55
- 名前: 枢 (ID: s00TEuml)
高校で出来た新しい友人、天羽美羽と共に帰っていた。
西園寺「美羽ちゃん、その広告って何?」
天羽「これ?何かね〜めっちゃ人気のジムなんだってさ。アイドルも通ってたって噂もあるし
更にインストラクターは超イケメンなんだって!」
天羽はワクワクしながら言ってるが正直何処にワクワクすればいいか分からない。ぶっちゃけ
恋に興味が無いというのが理由だが口に出せるわけがない。
天羽「にしても私の苗字も珍しいっぽいけど…瑠理も名字も珍しいよね」
西園寺「まぁ…否定はしないよ。実際そうだし」
天羽「でもカッコイイ苗字だよね!ザ和風ってカンジ」
西園寺「天羽って発音は少し戸惑うけど字が好きだよ。天の羽って」
天羽はえへへ…と照れる。にしても黒瀬ジムか。少し久遠寺さんに色々調べてもらおうかな?
瑠理は鞄を持ち直し借りている家へ帰った。早速久遠寺は黒瀬ジムのことを調べてくれた。
久遠寺「へぇこりゃあ凄いね。本物の格闘家だってさ。黒瀬龍牙、格闘家では珍しい女性に
人気だった格闘家。彼の登場によって格闘技を観戦するのが好きになったっていう女の人も
多いみたいだね」
西園寺「へ、へぇ…そんなんですか(だから美羽ちゃん、あんなに赤面してたんだ)」
久遠寺が微かに目を開き笑った。
久遠寺「ただの格闘家ってワケじゃなさそうだ」
西園寺「?」
久遠寺「こっちもカラーギャングみたいだね。緑をイメージカラーとするギャング集団テンペスタ
大丈夫、彼らもただのヤンキーの集まりってワケじゃないみたいだし…」
西園寺「そうなんですね」
更に設楽さんは彼と戦ったことがあるらしいと久遠寺は付け足した。
久遠寺「まぁその時のことを詳しく知ってるのは僕よりも医者かな?」
彼に紹介されたのはあるマンションだった。瑠理がインターホンを押すとシルヴィが出てきた。
その後に遅れて白衣を着た男が出てきた。
???「やぁ西園寺瑠理ちゃんだね。シルヴィから聞いてるよ。僕は白石寛治、よろしく。さぁ
中に入りなよ」
白石は彼女を中に入れた。瑠理は黒瀬龍牙と設楽厚平の戦いについて聞いた。
白石「あー戦闘自体は僕は詳しく知らないよ。ただその後の彼の容態は知ってる。よくあんな
怪我で意識を保ってたもんだよ。片目は腫れてたしあちこち打撲傷があってね、普通なら
出血多量で死んでる怪我だよ。黒瀬のほうも同じぐらい重傷だったよ。戦いはシルヴィのほうが
間近で見てたでしょ?」
シルヴィ「うん、黒瀬って人も凄い強くて…どっちも武器は使ってないステゴロだったけど
格闘家なだけあって黒瀬も強かったよ。でも設楽さんも強いよ、まぁ二人は互角だったけど」
そんなに凄いことしてたんだ…。開いた口が塞がらない。
- Re: 平凡でありたいギャング ( No.4 )
- 日時: 2019/04/22 21:18
- 名前: 枢 (ID: s00TEuml)
夜の街にはガラの悪い男たちが活動し始めるらしい。帰り道を歩く少女を攫う男、喧嘩を売る男、
様々だが西園寺瑠理は狙われない否、狙えないのだ。手に掛けるのは簡単なはずだがそれが
出来ない理由がある。化野江夏と言う青年の存在である。かなり喧嘩慣れした彼に手を出せば
返り討ちは免れないからだ。いわば瑠璃のヤンキーキラー。
化野「到着したぜ瑠理」
忘れられた倉庫の扉を開ける。そこには数人が集まっていた。その中心に緑の服を着た細身で
筋肉質の男、黒瀬龍牙がいた。確かに美形であることは認めよう。
設楽「おぉ無事到着したみたいだな瑠理ちゃん」
設楽は瑠理のほうを見てニコッと笑った。微笑んで頷いた。
シルヴィ「まぁ化野君に喧嘩を売る人はあまりいないからね。手を出したら痛い目を見るし」
化野「なーんか嬉しくねえな、それ。折角護衛して来たのに」
西園寺「でも化野君がいたおかげで何事も無くここまで来れました」
瑠理は170㎝近くあるが168㎝、一方化野165㎝で小柄。普通なら化野のほうがボコボコにされるが
その逆が事実だ。化野は頬を掻き照れている。
黒瀬「へぇ夜は護衛がいねえと出歩けない華奢で非力な子がねぇ…あ、俺は「あ、知ってます」」
西園寺「黒瀬龍牙さんですよね。友達から聞きました、凄くカッコイイって言ってましたよ」
黒瀬「女の子らしい褒め言葉だな。まぁでも俺もアンタの事は知ってるからな。西園寺瑠理」
設楽「で、何しに来たんだ黒瀬?まさか喧嘩しろと?」
設楽が控え気味に聞くと黒瀬は指をクイクイと曲げる。
黒瀬「そのまさかだよ設楽。俺も腕が鈍くなってきたみたいでな、ちょっと運動に付き合え」
設楽「俺は無駄な喧嘩はしないさ。こっちの怪力馬鹿たちと違ってな」
設楽は化野と風祭を指差す。反論しようにも出来ない。それを聞いて黒瀬が笑った。
黒瀬「まぁ予想はしてたよ。何ならその子を賭けるのはどうだ?」
黒瀬が設楽を動かすために使ったのは瑠理だ。後ろから瑠理は腕を掴まれた。緑のスカーフで
口元を隠した男だ。
黒瀬「おっと下手に動くなよ?下手に動いたらどうなるか、俺も知らないけどな」
設楽の性格を知り尽くした作戦だ。全員がそう感じた。設楽が本気になるのは仲間が囚われるとき
だからこそ新人で戦闘力が0に近い瑠理を人質に選んだ。設楽が構えた。
設楽「そこまで半殺しにされたいのか…?」
黒瀬「さぁ?でもやっと動いたな?設楽」
二人が構える。瑠理は息を呑んだ。一体、どうなるんだろ…。
- Re: 平凡でありたいギャング ( No.5 )
- 日時: 2019/04/24 17:20
- 名前: 枢 (ID: s00TEuml)
恐ろしい殴り合いをしていた。どちらもほぼ互角だったが結果的に設楽が勝利した。
どちらも重傷を負っていながら意識はちゃんと残っていた。
黒瀬「まんまと嵌められたよ、あの坊主に」
設楽「用心深い男を嵌める…お前に悟られずお前を陥れられるのは久遠寺ぐらいだな」
黒瀬は瑠理から手当てを受け倉庫を出ていく。
西園寺「あ、黒瀬さん大丈夫なんですか?まだゆっくりしてた方が…」
黒瀬「いいっていいって、これでも頑丈な方でね」
そう言って彼は倉庫を出ていった。数日後…別の場所。
西園寺「へぇ設楽さん、フリーダムの頭ってワケじゃないんだね」
化野「元々リーダー無しで無暗にフリーダムを名乗って喧嘩しないってことだけがルールだったし
いつの間にかリーダーになってたんだってさ」
初めて知った。名前の通りあまり厳しいルールは無いらしくカラーギャングと言いつつあちこちに
メンバーはいるらしい。年齢層は割と広い。学生もいれば成人もいる。職業も様々だ。借金の
取り立て屋(風祭友希)、情報屋(久遠寺成也)、化野は有名な店で働いているらしい。他にも
瑠理が通う高校にも潜んでいても可笑しくは無いという。
化野「設楽さん、普段は白髪だけど昼間は黒に染めてるんだぜ?めっちゃ目立つから」
西園寺「確かに…若くて白髪って結構目立つかも…」
辺りを見回す。この人混みの中に白髪の青年がいたと考えるとやはり目立つ。
また別の場所でショッピングモールには大きなポスターが張られていた。そこにはギターを
かき鳴らす黒に赤のメッシュが入った短髪の青年が写っている。そのポスターを見て設楽は笑う。
設楽「喧嘩っ早い弟と違うね、化野夜見君」
化野夜見、紅林夜見という名前で有名なバンド『空紅』のボーカルを務めている大人気の人物だ。
彼は化野江夏の兄でフリーダムのメンバーの一人。髪型が猫の耳にも見えることから猫夜見などと
愛称づけられている。
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