ダーク・ファンタジー小説
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- 同居臓器 1.5
- 日時: 2019/04/26 18:00
- 名前: 塩辛太郎 (ID: jBQGJiPh)
私を悩ませ、苦しめること。
それが彼らの習慣でした。
とある者は、私が食事をとれば、即座に口の外へ押し出そうとします。
とある者は、やっと喉を通り、一人の彼を通過したのちに、液体を腹のなかで狂わせます。
とある者は、私の呼吸を、城壁の如く完全に止めます。
とある者は、私の生命を、その自身の動きで弄びます。
とある者は、とある者は…
もう本当にキリが無い程に、私を苦しめます。
人々は、そんな私を愚かだと言い、相当な扱いをしました。
何故なのでしょう。
私が何をしたのでしょう。
そう考えれば考えるほど、彼らの声はどんどん大きくなっていきました。
ある日。
私は唐突に思いました。
『彼らの声を理解できたならば、この声も無くなるのではないか』
と。
辛い日々には、やはり如何しても慣れることが出来ませんでした。
少なくとも、私には。
他に、私のような苦労を感じる者が、この世に在るのであろうか?
こうして、私は深い深い沼に落ちていきました。
こんな風に思う理由も、全て私のあの行動から来ていると思うと、腸が煮えくり返りそうになります。
それと同時に、自分が恨めしくて恨めしくて仕方が無くなってしまいました。
ふと、私は思いました。
あの日だって、私の所為で…
今の状態と、あの日の状態。
それが自然と重なっていってしまうのが、どうにも気持ち悪く、気味が悪い。
そして、今度はきっと…いや今度こそきっと。
私を支える全てのものが彼らのように他人になってしまうと思うと、踏みとどまらずを得ないのでした。
あの日。
人生の狂い始めたあの日。
確かに私は、この地に立っていないはずでした。
それなのに。
潰れたはずの内部の何もかもが、活き活きとしております。
そして不思議と、彼らの声は、潰れたはずの内部から聞こえてくるのでございます。
はて、どういう事であろうか。
その答えはきっと、彼らの声を理解できるように成れば分かる事で。
同時に、私の本能が叫んでおりました。
『理解すれば×される』
と。
今宵は、新月でございます。
あのまま月が出なければ良いのに。
切に、私はそう願っております。それは、今でも変わりません。
あの日の、痛みと記憶と同じように。