ダーク・ファンタジー小説
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- 異世界戦争
- 日時: 2019/06/13 19:31
- 名前: Nahonn (ID: bb2N.JWt)
25年前…といっても、君たちの時代から数百年後。その頃の地球は、君たちのいる時代よりも平和的な世界であった。しかし、地球温暖化のような問題は、未だに解決されておらず、今も疫病や大気汚染などに苦しめられていた。
そんな中あるアメリカの研究チームが、驚くべき研究結果を発表した。
この発表には全世界が呆然と、急に現れたもうひとつの"世界"を見上げたことだろう。
それは、"パラレルワールド"。
君たちの時代で今、やっとブラックホールの撮影に成功したようだけれど、俺たちの時代では今、ブラックホールを作り出すことができるようにまでなったんだ。その研究をある国の研究チームが行っていたところ、ブラックホールの逆転事故で北アメリカ上空に世界(地球の数倍の大きさの星)が現れた。いわゆる"異世界"だ。
そこから、各国の人間は壊れ始めた。
地球を捨て、"パラレルワールド"で暮らすことを決意した各国首脳は、早速陣地取りを始めた。まるでいつかの世界大戦に比べものにもならない位激しい戦いである。
これを、"異世界戦争"という。
プロフィール >>1
第一章:生き地獄ともいえる
一話:世界を俺はまだ知らない >>2 >>3
二話:再会の道しるべ >>4 >>5
三話:恋と、恐怖心と >>6 >>7
- Re: 異世界戦争 ( No.3 )
- 日時: 2019/04/30 21:14
- 名前: Nahonn (ID: 3nlxUYGs)
俺が王の反感を買った理由は、まあ平たく言えば王の気遣いが原因だ。
王の気遣い、とはこのニーラス国の王の娘であるロゼリア姫が、怪我をして帰って来た少年兵や戦士の手当てに参加したことだ。それを王に見つかってしまったロゼリア姫は、咄嗟に俺に加わるよう強要された、と言ったのだ。すぐに姫は訂正したものの……今に至る。
きっと王も少しでも、血の繋がってない娘を不安にさせたくなかったのだろう。だから、不安、材料の俺に遠回しで死ねと言ってきたわけだ。
どっかの誰かみたいに「わあ!なんて優しい心遣い!!。」なんて成るわけない。だって殺され掛けてるんだぞ?。誰得だ?
やるせない怒りが込み上げてきたが、少年兵で最も強い俺を切る事が出来る王は尊敬すべきほどの能無しだ。
はあ、なんてらしくないため息をついた。いつかは覚えていないが、10歳という幼さで少年兵の兵長になった時"冷酷紳士"なんて訳の判らんことを言われていたのが、今ならよく解る。
何せ、周りの人間とのコミュニケーション能力が無いくせに、外ズラが良いからだ。(本当は、無惨に人を殺すくせして、女性にも男性にも紳士的に優しいからである。)そんな性格のせいで王の反感を買わなければいけなくなったんだ。直さなくてはな。
「うわああ!!」
目の前にいた男が声を荒上げた。俺は、無意識で戦っていたらしく、その男の声で激痛が戻ってきた。右脇腹と左肩に銃弾を食らっていて、そして背中や脚などにかすり傷や切り傷を負っていた。
あんまり酷くはないが右脇腹の銃弾を食らった所の出血が多いな。次食らったら動けねえ。
男が、いつの間にか短剣を出していて、俺の太ももに向けて突き刺そうとした。避けようと脚を後ろに下げようとしたが、考え事をしていたせいで、瞬発力と判断力がいつもよりずっと遅くなっていた。もう、刃は直ぐそこまできている。
あと、数センチの間だ。避けきれないと判断した俺は、少しでも致命的にならないよう、銃を仕込んでいた所に当たるよう、膝を内側に持っていった。
途端に後ろから、尋常ではない程の殺気を感じた。
この独特の気配は少年兵に違いない。俺は、男の頭を蹴ると、ぐるんと一回転をして、その少年兵の首をかっ斬ろうとした。女だ。ショートカットの美しい黒髪が、ふと揺れた。判断が遅い。ランクC−くらいだろうか。敵を斬るのに情けと慈愛を感じる。
どこか、懐かしい香りがした。甘い、華の香り。女だからだろうか、白い肌を斬るのに躊躇いがあった。青と銀の双眸がこちらを覗く。その瞳から、絶望と諦めと後悔が混ざった感情が少しだけ滲んでいる。死を見据えた眼だ。
でも、その眼はすぐに、希望と喜びと安堵が混ざった色を浮かべていた。
「ライア!!。ライア=イーグリオン!!!。」
女は何とも言えない喜びを、俺に抱きついて表した。暖かい女の温もりを感じた。
その再開が、この世界をひとつにする始まりといえるものであった。
- Re: 異世界戦争 ( No.4 )
- 日時: 2019/05/05 14:25
- 名前: Nahonn (ID: 3nlxUYGs)
俺は、動揺していたのかもしれない。初めて会った少女に、泣かれてしまったり、抱き付かれたり。って待て。俺は思春期の餓鬼かっての。
まあ、実際その動揺のせいで捕まって仕舞ったのだが。
それにしても、あの少女。俺を知っていたようだが、何故知っていたのだろうか。………翌々考えれば、10才という若さで兵長になれば、そいつの噂くらい嫌でも耳に入って来るよな。納得。
というか、捕虜に俺はなったんだぞ?。なんだ、この対応は………。
そこは、まるで接待を受けるかのような場だった。イリミア国の伝統的な飾りで整えられた壁、机の上には豪華な料理に、ワインなどの高そうな酒。到底、ライアのような敵国の少年兵が来るようなところではない。
アイツらの狙いはなんだ?。もしかして、俺からニーラス国を聞き出そうとしている?。それとも恩着せがましいことをして俺に働かせる気か?。
「失礼します。」
そう言って例の少女が入ってきた。さっきは、血まみれの隊服だったが、着替えたのか血は付いていないものを着ていた。少女は、こちらに来ると、一礼をする。
「先程は失礼いたしました。私は、ニーナ=ミリオネート。この国の少年兵の内のひとりです。」
ライアも社交辞令として礼をすると、
「ライア=イーグリオンです。宜しくお願いします。」
と言った。少女………ニーナは、頷くとライアの前に座った。椅子も何もない床にだ。まるでライアが主人、とでもいうような態勢だ。
この少女は何をするつもりなんだ?。
「ライア=イーグリオン様。貴方はこの国の王の息子、つまりは次期王たる方です。」
少女は平淡にそう言った。
- Re: 異世界戦争 ( No.5 )
- 日時: 2019/05/11 10:07
- 名前: Nahonn (ID: 3nlxUYGs)
ニーナsaid
目の前にいる男性が、あの頃の王子だなんて思いもしなかった。でも、その翠の瞳に宿った光は、そのたくましい腕は、心地の良い口調は、驚く程に変わっていなかった。
少年兵達の休憩場を曲がりかかった時だった。少年兵数人の話し声が聞こえた。
「DNAを知るための装置で照らし合わせても99.99999...%を差していたらしいな。」
「こりゃ確定だわな。」
「アイツも大変だよな〜。急に敵国に連れて来られて。」
「どうせ消されてるだろ。王宮にいたことなんてよ。」
「あー。そういや、ニーナとか言う女の少年兵があれの幼なじみらしいぜ。」
「マジかよ。」
「あの、王子の元許嫁か?。」
「えー。初耳。」
「まあ、王の座にはも居ないし。早くに亡くなったからな。国も必死なんだろうぜ。」
「暫くの間。第二王子に悪さされるかもしれないぜ。」
「でもあの王子優しいことで有名なんでしょ?。」
「腹の底で何を思ってるかなんて誰もわからねえだろ。」
「でもよ………」
ひっ………っとそこにいた数人の兵士達が息を飲んだ。多分私から尋常で無いほどの殺気が出ていたからであろう。そのうえ私はC-でも、上から7番目の強さだ(つまりアイツらの上司)。ライアはB+くらいだろうか。
私は、ライアのいる部屋のドアを開けようとドアノブに手を掛ける。
『(記憶)消されてるだろ』『元許嫁』私の心を締め付ける言葉のトップ3にはいる言葉だ。察しの通り、私は彼に恋愛感情を抱いている。淡い初恋のようなあやふやで、かといって、初恋よりも重く醜い物だ。それは、恋ではなく只の執着なのかも知れない。
思いきってドアを開ける。
「失礼します。」
平常心を保つには、クールを演じることだ。そう。それが一番。
彼はこちらを疑視していた。まじまじと私を見ている。私は一礼をする。顔を上げると彼のポーカーフェイスが見えた。ドキリ、なんて効果音が響く。
「先程は失礼しました。私は、ニーナ=ミリオネート。この国の少年兵の内のひとりです。」
ライアも一礼をした。社交辞令のつもりなのだろう。
「ライア=イーグリオンです。宜しくお願いします。」
何が宜しく、なのかは分からないけれど警戒を解こうとしないのは分かった。私は、なにも貴方に害することはしません。という意味も込めて彼の前に座った。彼のポーカーフェイスが崩れかけた。
その事を言うのに躊躇いはなかった。
ただ、ひとつ突っ掛かる事といえば……。
私は溢れ出そうな想いをし舞い込んで、その言葉を告げた。貴方はこの国の王子です、って。
彼はため息を吐いた。まるで呆れたような、納得したような、馬鹿にしているような。
「そうゆう事かよ。」
彼の反応は意外だった。いくらポーカーフェイスが上手い人でも目を見開くぐらいはすると思っていた。でも、彼は思ったより客観的で肝の据わっている人物に育っていたのだ。
「それで?。俺をどうするつもりだ?。」
その翠の双眸が鋭く光った。まるで、私の中の何かを見透かすように。
- Re: 異世界戦争 ( No.6 )
- 日時: 2019/05/23 20:07
- 名前: Nahonn (ID: 3nlxUYGs)
「しっかし。俺をここに捕まえたって、この国には第一王子がいるだろ?。」
そう言って彼は欠伸をした。本当に興味が無いらしい。
「はい。ですので、大事な王族の血筋として……。」
そう言いながら、王が亡くなり上にふんぞり返っている大臣達を思い浮かべていた。きっと、第一王子と第二王子を争わせて、長く王の座に居座るつもりなのだろう。そうゆうところが嫌なのだ。
「なぁ。」
ふと、声を掛けられた。ぽぅっと前を見ている彼は幼さを残した16才の顔つきだったが、随分大人っぽく何かを見据え、呆れ果てているようにも見えた。
−貴方には、私には見えない何かが見えているのですか?−
思わず口に出しそうになった言葉に思わず蓋をした。
「いつからこの世界は壊れ始めたんだろうな?。」
彼からすれば他愛もない言葉だったのだろう。此方も見ずに窓に止まった鳥を見つめていた。その鳥が羽音を発てて飛び立つと、あ、という感嘆の声を上げた。
それで、今までの感情を思い出す。この感情は……………………ただの恐怖だった。見透かされる恐怖。あの頃と全く変わってしまった恐怖。ただ丹に、敵への恐怖。その全てが、ただの恐怖心だったことに気づかないなど…。
「お前も大変だよな。利用されてることを知っていながらも、ほっておく。」
「それ以外にどうしろと?。」
思わず、口答えをしてしまった。まるで思春期の少年のように。
- Re: 異世界戦争 ( No.7 )
- 日時: 2019/05/27 15:48
- 名前: Nahonn (ID: 3nlxUYGs)
ライアsaid
「お前の上の魂胆は、『少しでも時間を稼ぎ、暫く王の座に就き国民からの信頼を子削げとる』ってとこか?。」
幼稚で浅はかな考えだ。そんなことをするところから、前王が良かったのだろう。もう其処からこの女の上は王に二度と就くことなど出来ないだろう。
「そうです。よく分かりましたね。」
ニーナはめんどくさそうにそう言った。これが彼女の本質なのだろう。
「それでは。貴方は王になる気などない、ということですね。」
俺は頷いた。ニーナは立ち上がる。俺を真っ向から見下ろした。少年兵特有の気が辺りを覆っている。
「それでは、貴方はこの少年兵の一員として過ごしてもらいます。影武者はこちらで用意しました。」
ニーナの声と共に十数人の少年兵が現れる。そのすべての少年兵は窓側の少年兵は遠距離用の銃や拳銃、壁側の少年兵は比較的近距離用の武器を持ち、壁にピッタリとくっついていた。よく訓練されている。Dくらいだろう。
「直ぐに服を脱いで、替わってちょうだい。」
「ああ。分かった。だが、ニーナはこれをしてなんになる?。」
ニーナは目を反らした。何か知られたくない事なのだろう。それを肌で感じた。そんな彼女に気を配りながらも俺は服を脱ぎ始めた。
「私は、王族だった。」
急に何を言い出すかと思いきや、彼女はそう言った。予想外の答えに俺は彼女を振り返った。
「ライアがあの国に連れ去られて、私の一族は惨殺され、私だけ少年兵として務めることになった。」
言っていることから見てニーナは俺を恨んでいると思ったが、その目は憎悪に包まれてはいなかった。憎しみが何も生まないのを知っているようだ。彼女なりに悩んで、苦しんで出した答えなのだろう。
「貴方には、希望がある。父を、母を、姉を、兄を殺したあいつらに鉄槌を下してくれるって。ここにいる私の部下も同じように、家族を殺された。」
"復讐"より明るく、"希望"にしては暗い言葉だった。
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