ダーク・ファンタジー小説
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- 魔術学院の最強生徒は『魔法使い』だった件
- 日時: 2019/05/20 21:18
- 名前: 白夢ウルラ (ID: D28jR39t)
少年は焼け野原に一人、絶望する。
「なんで…こんなことに…」
目の前には寝ているのかと間違うような表情の少女が、—真っ赤に染まり倒れていた。
「フィー! フィセリアっ!」
その少年を無表情な男たちが乱暴に連れてゆこうとする。
—少年に抵抗する気力は残っていなかった。
それから190年程後…
抜けるような青空の下に広がるのはミリュー大陸に位置するアイロロギオ王国。その国の中央部には王都のフィオローロがある。そこはこの世界で一位二位を争うほどに魔術が発達していて、経済面でも、全世界の最先端を行く、人類誰もが行ってみたい、住んでみたいと思うような都市だ。
そこにひときわ目立つ城のような建物が建っている。
その建物の中の一室では二人の女性が向かい合っていた。
「では、今日はよろしくね、アールディアさん」
「は、はい!」
穏やかそうだが、威厳のある女性に言われ、金縛りにかかったようにガチガチに緊張して答えるのは赤い制服の女子生徒。
赤い制服の女子生徒—シリア=アールディアは、ぱっちりとした茶色の瞳に背中をくすぐるほどの長さの波打つ翡翠色の髪の左に三つ編みをし、花柄の青いリボンをした、美しいというより、可愛らしいという表現がとても似合う少女だ。
シリアはこの日、入学式が行われるヴォ—ドラント魔術学院の代表として入学することになり、その時のスピーチなど諸々のことで、他の生徒より一足先に学院に行き、理事長室に出向いていたのである。
話し相手の女性は勿論理事長のラゴーツ=シェルテである。
「じゃあ、話はこれで…あ、そういえば、アールディアさんに言っておかなきゃならないことが…!」
何かを思い出したラゴーツが唐突に口を開く。シリアが返事をする間もなくラゴーツは話を進める。
「今日の代表は、アールディアさんにお願いしているけど、本当は別の生徒に頼むつもりだったのよ…。その子には、めんどくさいから。って断られちゃったけどね…」
ラゴーツは困ったように微笑する。
「え!?」
シリアは驚愕と少し怒りがこもったような声を上げる。そうなるのも無理はない。
普通、入学試験一位の生徒が代表のはずが、急に昨日代表を入学試験二位のシリアに代わるよう手紙が届いたのだ。
彼女の家族が大喜びの中、シリアは、一位の生徒は風邪でも引いたのかと思っていた。が、代表変更の理由がめんどくさいときたもんだ。
世界でも有数のヴォ—ドラント魔術学院に入るためだけに今まで頑張って勉強してきた身にとってはさぞ屈辱だろう。
「あ、でも、ちょっとその子は問題を抱えていてね…だからあまり怒らないであげてくれるかしら」
シリアの心情を察してかラゴーツは苦笑いしつつもその生徒をフォローする。
「問題…わかりました! 次にそいつに会ったときに沢山注意しますから! では、本日は貴重なお時間を使わせていただきありがとうございました」
「えぇ、スピーチ頑張ってね」
シリアはそう言い、理事長室を出て行った。
理事長室を出てから間もなく、代表を辞退した生徒に注意しておくとラゴーツに言ったが、肝心のその生徒の名前を聞いてない…と気づくシリアであった。
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なろうで投稿しているものを投稿させてもらいました。