ダーク・ファンタジー小説
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- 最終実験区域〈二人の為のセカイ〉
- 日時: 2019/05/05 20:07
- 名前: アイアン・メイデン (ID: uKR9UL7u)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=1156.jpg
『エデンの到来の為に』
『マシアハ』と名乗る者によって謎の巨大施設に閉じ込められた数名の少女と一名の少年。
生き残れるのは………二人だけ。
・・・・・・
「………ここは………どこだ………?」
一人の少年が長い眠りから目を醒ました。
そこは薄暗く、何もない部屋。
「………何でオレ………こんなところに………?」
誰も答えてはくれない。
「そうだ。麻彩は………麻彩!麻彩ぁぁーっ!!」
『麻彩』からの返事はない。
代わりに、と言わんばかりに、どこからともなく声が聞こえてきた。
『目が醒めたようですね、天田 陽介(あまだ ようすけ)くん。
私はマシアハ………救世主という意味です………。貴方もここでは………その通りに呼んでください。』
それはどうやら、画面に映る仮面の少女から発せられた声のようだった。
「っ!…おい!オレをこんなところに閉じ込めたのはお前か!?麻彩をどこにやった!!?」
『黙って最後まで話を聞いてください。
この巨大施設には、貴方以外に
一ノ瀬 凪沙(いちのせ なぎさ)
神室 早苗(かむろ さなえ)
四十九院 久遠(つるしげ くおん)
叢雲 日向(むらくも ひなた)
真田 真希(さなだ まき)
の五名が待機しています。
この五名と貴方………合わせて六名で、今からデスゲームをしてもらいます。
ルールは簡単です。
五名の少女は貴方を巡って殺し合うだけです。
そして、少女一人と貴方が生き残った時点でゲームは終了。
しかし、中には狂気に走って貴方の命を狙う少女もいるかもしれないので、くれぐれもお気を付けて。
貴方が無事に生き残れば、貴方は生き残った少女と結ばれます。
貴方が死ねば、生き残った少女も死にます。』
「………待て………待ってくれ!
オレには彼女がいるんだ!
麻彩が………アイツがオレを待ってるんだ!!」
そう言われ、マシアハは何かの画面を一瞥する。
「何………やってんだ………?」
マシアハは此方を向き、機械的に言い放つ。
『麻彩………貴方の彼女 花形 麻彩(はながた まあや)は、この通り 死亡しています。』
「っ!?」
『言い忘れていましたね。
この地球上に存在しているのは この私と 貴方たち六名のみです。』
「何を………言ってるんだ………?
何の冗談だよ!?」
『冗談ではありません。
2015年 6月6日 我々以外の人間は全て死滅しました。
私の手によって』
「………意味………わかんねぇよ………。
そんなこと………あるわけねぇ………!
オレは麻彩と約束したんだぞ………?絶対に麻彩を守ってみせるって………!」
『非現実的な約束ですね。
麻彩はさぞ不安だったことでしょう。
生半可な覚悟で約束などするから、このようなことになったんですよ。』
「………。
………。
生き残ってお前を殺す………。
ただし生き残るのは『オレ一人』だ………!」
『ルールを無視する気ですか。
では、本当にこれから先のことは全て貴方の責任ですよ。
せいぜい頑張って私を楽しませてくださいね?』
映像が途切れた。
陽介は覚悟を決めた。
生き残り、麻彩の復讐をする覚悟を。
「………これは………?」
よく見ると、部屋の隅に鍵が落ちていた。
「とりあえず、コイツでこの部屋から出る………。
上等だ。かかってこいよ、クソッタレども!」
- Re: 最終実験区域〈二人の為のセカイ〉 ( No.3 )
- 日時: 2019/05/07 21:15
- 名前: 白のマンダム (ID: uKR9UL7u)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=1160.jpg
考えれば考えるほど、それが『無駄』だと思えてくる。
いっそ鍵を使って扉を開けて、少女たち全員を………。
そんな恐ろしい考えすら過った。
だが………なぜここに閉じ込められたのか。少女たちの目的は何なのか。正しいことはまだ何一つ分からない。
『マシアハ』が本当のことを言っているかどうか………それすら怪しいのだから。
この無機質な建物の中にいる限りは何も得られない。
「いつかはここから出なきゃならないんだよな。分かってる。ああ、そんなことくらい分かってる。」
だが、実際外にいた少女は危険だった。
そして狂気じみていた。
「外は危険だと思わせるための工作か?
『マシアハ』はオレをここで飢え死にでもさせるつもりか?」
とりあえず、外に出る。
それから、事を決めよう。
何かあれば、鍵は手元にある。またこの建物に戻れば安全だろう。
陽介はようやく決心がついた。
「………誰もいないと良いんだけどな」
鍵を使い、扉を開ける。
「………何だ、誰もいないみたいだな」
杞憂だったか………。
などと、油断している時にこそ、最大の恐怖というものはやって来るものだ。
「いるよぉぉぉ?」
「………え?」
そこには………。
- Re: 最終実験区域〈二人の為のセカイ〉 ( No.4 )
- 日時: 2019/05/09 08:25
- 名前: 白のマンダム (ID: uKR9UL7u)
そこにいたのは片腕がない少女。
否。
「その片腕は………。切り落としたのか………さっき、何かで、その片腕を………。」
「セーカイ。セーカイ。
こうすりゃ誘き出せると思ってさぁ?
でぇー、やっぱりそうなったってワケェ。
なぁーんだ、その顔………。さっきまで安全圏の中でブルってた割には、外に出てこんな状況に出くわしても冷静なんだ。」
「ふざけないでくれ。お前らの狂気に………俺たちを巻き込むな!」
少女の出血は止まらない。
だが、少女自身も止まらない。
躊躇いなく接近してくる。
来るな。
来るな。
来るな。
来るな。
呪いのように繰り返す。
少女は『冷静』と評価したが、違う。
実際には足がすくんで動けない。
だから冷静を『装っている』だけだ。
すると、少女にもそれが伝わったらしい。少女は更に歩みを速くする。
「腕の一本程度なら………ねぇぇ………、」
「………近づくな………。」
陽介は恐怖のあまり、声にもならない声でそう言った。
少女はたたみかける。
「私が………ねぇぇぇー、やっぱり怖いの?」
「黙って向こうに行けッ!!来るな!寄るな!オレはお前らなんかのクソみたいな遊びに巻き込まれる筋合いはねえんだよ!!」
「フッ、フフ………フフ………。よーやく面白くなってきた♪」
少女はフラフラと、まだ近寄ってくる。
叢に血が落ち、まるで『血の河』のようになっている。
- Re: 最終実験区域〈二人の為のセカイ〉 ( No.5 )
- 日時: 2019/05/12 09:28
- 名前: 白のマンダム (ID: uKR9UL7u)
「怖くないでしょ?ほら、私に近づいてきてよ。」
「死んでも近づかねぇ。さっさと失せろ。」
「何で?私は、ねぇ、私は、ただ、あなたを助けてあげようとしてるのにぃ?」
「誰が信じるかよそんなウソ。それに………お前こそ貧血でマジに死んじまうぞ?」
「ウソ?はは、はぁ………そんなに信じられない?
まぁー無理はないかもね。」
少女は近寄るのをやめ、フラつきながら大袈裟に演技を始めた。
「目が覚めたら知らない場所。
そこに想い人はいなくて、代わりにあなたの恋人候補。
中には殺人すら厭わない女もいる。
あなたがすぐに『他人を信じる』バカだったなら、もう死んでるわねぇ。」
どういうわけか、陽介の反抗的な態度を肯定する少女。
そんなことを言えば余計に信用されなくなるというのに。
「おまけに私は片腕を斬ってさ………何が何やらって感じでしょう?」
「当たり前だろ。何で片腕なんか斬ったんだ。
その『恋人候補』とやらの中に、お前だって含まれてるんだろ?
だけど、その傷じゃあきっと助からない。
さっさと止血してれば話は別だったが、もうきっと駄目だ。ここには………少なくとも俺たちのためになるものは何もない。」
この施設にあるのはひたすら狂気。そう。この少女も、それに呑まれて滑稽に、無意味に死んでいく。
ここには名誉の死も 感動的な死も 綺麗な死も 存在しない。
きっと、一歩間違えればそこまで。
そうなれば、誰もが笑うような間抜けな最後を迎えるだけだ。
もっとも、生きていても絶望しかない。ならば、死後のことなど気にせずにこの世とおさらばした方が賢明なのかも知れない。
陽介はそれを………ようやく悟った。
- Re: 最終実験区域〈二人の為のセカイ〉 ( No.6 )
- 日時: 2019/05/16 23:45
- 名前: 白のマンダム (ID: uKR9UL7u)
「『音』でオレを誘き出して………外には今にも死にそうなお前がいて………なるほどな………。面白くない冗談だよ。」
「冗談だと思うの?これが?」
そう思うしかない。あまりに滑稽で、あまりにふざけている。
「まぁ、どのみち、もう『安全圏』には戻れないわねぇ。」
振り替えると、先程まで籠っていた建物のドアは閉まっていた。
そして、持ち出した鍵は………。
「………はは、バカな………。嘘だろ?壊れてる。」
鍵はどうやら一度しか使えなかったらしい。
「………してやられたって言えば満足か?」
「私を満足させてくれようとしてるの?
だったら………一緒に死にましょうよ。」
「………話が飛躍しすぎだろ。」
「どうせ生きていても希望はないのに。」
「そう思ったけど駄目だ。麻彩のために…生き抜いてやる。」
「生き残ってるのは私たちだけよ?」
「この目で『真実』を見たわけじゃあない。だからそんなの信じない。」
「………なら………私が殺してやる!オマエ一人で無様に死ねぇええぇえぇえええっ!!!」
少女が大きな刃物を咥えて突撃してくる。
それは恐らく『自分の腕を切った刃物』だ。
血塗れのそれは、まっすぐ陽介の腹に向かっていった。
- Re: 最終実験区域〈二人の為のセカイ〉 ( No.7 )
- 日時: 2019/05/17 15:53
- 名前: 白のマンダム (ID: WglqJpzk)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=1167.jpg
圧倒的。
先程までフラついていた少女と同一人物とは思えないほど。
小柄な体からは想像できない、機関車のような迫力。
否、まさに機関車そのものであった。
彼女は生きる機関車そのものであった。または悉く邪魔物をはね除けて突き進む猪突猛進の獣であった。
しかし、それはゆっくり見える。
まるで一瞬が百秒にも千秒にも感じられた。不思議な感覚。それは死の間際の幻想か。
しかし、そこで陽介はハッと我に返った。
生き残れ。本能が告げている。手段は関係ない。
生き残ることに全力を注げ。それはああすればよかったと『後悔』しないためだ。
ああだったからいけなかったんだと『言い訳』しないためだ。
陽介はあっさりと刃物を奪い取った。
少女にはもう力が残っていなかった。少女はそのまま膝から崩れ落ちる。
「………きっとまだ少しだけ生きてる。でも、この刃物で刺せば確実に殺せる。
………麻彩は俺がこんなところで手を汚しても………オレのことを待っててくれるのか?」
分からない。
だが、殺さなくてもどのみち死ぬ。それは確定だ。
「………こんなになってまで………何て恐ろしい奴だ。」
「………この刃物は貰っていくぞ。この先、何があるか分からないからな。
………オマエに教えられたことはしっかり守るつもりだよ。」
陽介はどこへともなく歩きだした。
その先に何が待ち受けているのか、ひたすら恐怖を圧し殺しながら。
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