ダーク・ファンタジー小説
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- 魔王さまの大失敗!
- 日時: 2019/06/02 22:23
- 名前: 塩辛太郎 (ID: jBQGJiPh)
どうしてこうなった。
私は頭を抱えながら呻いた。
時は2015年。人間界でいう大体4030年ぐらい。
阿呆で愛らしいあの生き物は、争いながらもなんとか生き延びているらしい。
まるで映画を鑑賞するような気分で、時代とやらの移り変わりを眺めるのは浪漫がある。
痛切に、彼らが欲しくなった。そこでだ。
この魔法界の住民すべてを彼方の世界へ送り込み、支配しようとした。
だが、ここで予想外の出来事が起こったのだ。
「なんでこっちの世界の元住民が現代に住んでるんだ?!」
「いや、だってさ、度々前の魔王が粛清という名のもと追い出しやってたから…」
「〜〜兄貴め!」
支配、と言っても、人を皆殺しにしたりはしないし、勿論恐怖を与えるわけでもない。
支配と言うのは名だけで、最近異星人からの迫害を受けている彼等を守るべく、影からの抑止力になろうと、というかそれが最終目的なのだ。
およそ魔王とは思えないほど臆病な私は、国民を守るだけで精一杯だ。謀反なんか起こされたら心が折れる。
まあ、大事な生命が脅かされるようだったら、それ相応の罰は与えるが。
私が魔王という座を受け継いでしまってから、随分とこの国は丸くなってしまった気がする。
攻め込まれたらひとたまりもないだろう。
そんな国家だから、一先ずこちらの技術を示し、ついでに関心を少しでも持ってくれたらと思っている。
戦うなんて事出来ない!無理!
危険因子はなんとか見張れるけれど、世界中収めて不満がたまったら大変ということで。
地球とは親友的な存在になれたらいいななんて夢を描いていた。
そんな矢先だ。
地球にまさに異星人が攻め込んできたのだ。
何回目かもう分からないが。どうやら10年に一度ぐらいのペースで来るようだ。
彼らの技術がどんなものか分からないが、化学に支配された宇宙の中では中々早い方だと思う。
私達は人間の敵じゃないということを示すべく、異星人を追い払おうとした。
すると。
なんと前々から地球に住んでいたらしい元国民の数人が、異星人を撃退したのだ。
「あれ?誰かと思たらイストやないの。久しぶりやなぁ。」
「ロー!無事だったのか!…ところでその口調は?まるでこの国のカンサイジンのようだぞ。」
「じゃかあしい!良いの!馴染むためにはこういうのも大切なの!」
「ほう、成る程。お前はお前でうまくやってるようだな、安心した。」
彼はロー。古い友人なのだが、任務に失敗したとかで兄貴に追放されてしまった。
真逆、現代に住んでいるとは思わなかったが。
相当の実力者であり、心優しいローは、私たちよりも先に異星人を倒してくれたらしい。
言語の統一される私達の国は、どういう訳か何語でも話せるので便利なことこの上ない。
都合が良いにもほどがある。
話によれば、各国を元国民が周り、なんとか分散された異星人を討伐したんだとか。
「いやーイストが国を支えるなら、多分満場一致で賛成だと思うで。あんた、強いし優しいし頭ええやん?支配者としては申し分ないわな。…まあ、そんな感じの事を俺は触れ回っとるんやけど。」
「ファ?!何してんの?!うわ〜めちゃめちゃハードル上がった…ど、どうしよ、ご期待に添えなかったら申し訳ないのだが…」
「ッフハハ!安心せえ。あんたなら大丈夫や。」
「…なら良いが…」
荷が重い…そんな事を考えながら美しいこの星を見渡す。
憧れていた、薄汚く愚かで、しかしとても愛らしく美しい。そんな人間が目の前を歩いている。
私は興奮に満ちた顔で走り回った。
多分きっと、浮かれていたのだ。
異星人は、私の想定を超える意外な所から攻め込んで来たのである。
続けられない…