ダーク・ファンタジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 光と影
- 日時: 2019/06/26 19:19
- 名前: 葉月 蘭 (ID: tEEjMVj9)
これは「伝説の子」と呼ばれる少女と、「悪魔の子」と呼ばれる少女のおはなし。
皆様初めまして、葉月 蘭(はづき らん)と申します。
初投稿ですので、まだまだ分からない部分が多いと思うのですが、温かく見守って頂けると幸いです。
コメント大歓迎です、ばしばしお寄せくださいっ!
あと、私は身分が学生だということに加え、とんでもなくずぼらな性格ですので、更新のペースが亀並みです笑
本当に申し訳ないですが、ご了承ください……。
そんな駄文しか書けない蘭の小説を読んでくださると嬉しいです^^
どうぞよろしくお願いいたします!
【prologue】 >>1
【episode 1 家族との生活】 >>2
- Re: 光と影 ( No.1 )
- 日時: 2019/06/24 00:39
- 名前: 葉月 蘭 (ID: akQ8i1G2)
【prologue】
体が重い。
何も考えられない。
苦しい。
頭の中に響くのは自分の愛する人々の恐れおののく声。
『——お逃げください!』
『助けて……誰かぁーっ!』
——もうこんなこと……いっそ…………忘れてしまいたい…………
☆
瞼を開けると、目の前には白い天井。横からは涼しい風が頬を撫でてきていた。
「……目を覚ました?!」
不意に隣からしわがれた大声が聞こえ、そちらに目をやる。視線の先には白髪交じりの髪をし、しわだらけの顔に黒縁眼鏡をかけた女性が居た。
「……誰?」
思わず声が漏れる。
彼女はそうつぶやいてから、自分の声に驚くように喉に手をやった。自分のものの筈なのに、どうしても聞いた覚えがない。初めて聞く曲のように、少女は興味深げに「声」を聴いた。
そんな様子を見ていた老女は、「まさか」と叫びながら部屋を出ようとする。
と、ドアが開き、そこから二人の人間が飛び出してくる。
「目覚めたじゃと?!」
二番目に飛び出してきた白髪の男性が叫ぶ。
老女の最初の叫びが彼にも聞こえていたようだ。
「おばあちゃん、病状は……!」
最初に現れた10代に見える少年が老女にそう尋ねた。
「あ、ああ…それが」
なにやらコソコソと話していた3人だったが、急に少女に体を向ける。
「あなた、自分の名前覚えてる?」
老女が聞いた。
「…名前?」
名前。自分の名前。
それは記憶に嫌というほど染み付いているはずなのに、今の少女にはそれがすっかり無くなってしまった様に何も思い出せない。自分の思い出にぽっかりと穴が開いてしまったように。
「…名前…私は……誰?」
彼女には、覚えの無い声でその言葉を紡ぐことしか出来なかった。
- Re: 光と影 ( No.2 )
- 日時: 2019/06/26 19:12
- 名前: 葉月 蘭 (ID: tEEjMVj9)
【episode 1 家族との生活】
自分の名前。それが、少女——改め「結衣」のたった今知った事である。
「結衣?」
「そうよ。それがあなたの名前。私はおばあちゃんで、」
「わしがおじいちゃんで」
「俺がお兄ちゃん。ユイはちなみに14歳だ」
残りの二人も口々に言う。
結衣。聞いた事はないが、妙にしっくりくる名前だった。
「あなたはね、交通事故に遭ったの。それで、お父さんとお母さんを失った。つい三日前のことよ」
祖母が俯きながら目を伏せた。
「三日前……」
随分最近だ。ユイはふと、体の横に置く腕を見やった。そこには生々しい傷。
「その傷を見て分かるとおり、最近だし、事故で相当の傷を負ったの。今はおじいちゃんの家で療養中なのよ」
周りを見回すとそこは普通の家のようで、白と青を基調にした部屋の端にあるベッドに、ユイは寝ているのだった。
「……そうなんだ」
ユイはこくりと頷く。と、ベッドのすぐ横に何かがいる事に気がついた。
「猫?!」
白いふわふわの毛並みをした、目が青い猫。鳴き声をあげながら、ユイのほうへとやってくる。
「かわいーっ!」
毛をゆっくりと撫で回すと、猫は部屋のドアからすばやい動きで逃げていった。
それを見たユイは脚に力を入れて立ち上がる。
「ユイちゃん?! まだ寝ていなきゃっ」
「でも、もう全然大丈夫だよ? もっとこのあたりのこと知っておかなきゃいけないし、あの猫ちゃんも追いかけたいし」
彼女は「傷も痛まないもん」と微笑んだ。
「で、でも……」
「心配してくれてありがとう、絶対無理はしないから!」
ユイは周りが心配になるほどすんなりと状況を受け入れた。
心配する祖父母と兄を置いて部屋から飛び出したユイは、猫の前にひとまず自分の姿を見なくては、と鏡を探し始める。
「鏡、鏡……」
と、急に目の前に目当てのものが差し出された。
「鏡…探してんでしょ?」
先ほど部屋で見た若い男だ。
「えーっと、お兄ちゃん? だっけ?」
「うん」
短い黒髪に浅黒い肌。目は髪と同じ黒だった。
「あ、鏡! ありがとう!」
ユイはにっこりと笑うとそれを手に取り、「お兄ちゃんに似てるのかな」なんてつぶやきながら中を覗き込む。
「へえー……」
色白の肌に栗色の髪、それが肩ぐらいまで伸びている。瞳は緑がかっていて少し神秘的だ。頬には絆創膏が貼られていて、事故があったことを物語っていた。ちっとも兄には似ていない。
「ユイ」
不意に名前を呼ばれ振り向いた。兄がこちらを物珍しそうに眺めている。
「どうしたの?」
「ユイ、状況受け入れんの速いんだな……俺だったらこんな状態訳わかんなくなるぞ。しかもやけに回復早いな」
「そう?」
不思議そうに言う兄にそう返してから、「あっ」と目を見開いた。
「お兄ちゃんの名前、何? そういえば聞いてなかった」
「俺は…翔」
「じゃあ翔お兄ちゃんだ。これから宜しくお願いします!」
翔は「記憶喪失になる前のユイみたいだな。おてんばなのとか、動物好きなのとか」と口元を緩めた。
「そうなの?」
「うん」
ユイは翔に鏡を手渡しながら「じゃあ、猫ちゃん探してくる!」と叫ぶ。
「いやいやいや、ちょっと待て」
翔が彼女の腕を掴んでそれをとめる。
「お前にまだ話す事がたくさんあるっておばあちゃんが言ってたぞ。おばあちゃんのところ行くぞ」
「えぇー……分かった」
ユイはしぶしぶ手招きする兄に従った。
Page:1