ダーク・ファンタジー小説
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- 大切なものは
- 日時: 2019/07/09 23:52
- 名前: 小田桐 (ID: Pk3oxKzN)
プロローグ
男の父親は研究者だった。
一般人の妻を持ちながらも自分の趣味である研究は続けたいと言った、それでもサポートしたいから一緒に居ることを妻は選んだ。やがて第一子である元気な男の子が産まれた。妻は子供の世話で苦労していたが研究者は手伝うことも声をかけることもなかった。研究者は妻に構うことより研究や実験に時間を費やした。
子供が青年になる頃、母は家を出て行った。
父は熱心に研究することで寂しさを埋めていたのかもしれない。
男は碌でもない父親の研究に交じることは無かった。
そんなある日、外は洪水が起こりそうな雷雨の天候でのこと、実験が成功した。
必要以上に電力を使っての実験物に雷が直撃した。
別室で寝ていた男も慌てて飛び起き、父親の研究室兼実験室を訪れると、屋根がなくなり雨に濡れた父は透明な球体のカプセルに両手を付け吸い付くように中を覗き込んで、瞳孔を開け口を開けて笑っていた。
まるで取り憑かれたかのような父に恐怖を感じたが、それでも男は駆け寄り同じようにカプセルの中を覗き込んだ。
直径二m程の大きなカプセルの中には二歳児と思われる幼児が五人眠っていた。
- Re: 大切なものは ( No.1 )
- 日時: 2019/07/10 00:22
- 名前: 小田桐 (ID: Pk3oxKzN)
エピソード1.普通の人間ではない
容姿端麗な女の子が二人、眉目秀麗な男の子が三人の五人の幼児に男も魅入ってしまった。
実験に本物の子供を使った訳では無いと父親は言った、実験とはいえ容姿の綺麗な子供を五人も、同棲の息子に気づかれることなく使うのは確かに無理があるのでアッサリ信じた。
すぐに壁が厚く頑丈な研究所を建て、子供たちの面倒をそこで見ることにした。
子供たちは三ヶ月もの間、眠り続けていたので時間には余裕があった。
男が研究施設と人員を集めている間、父親は子供たちの成分を調べた。
なんら人間と変わりない成分だが、採血を取り注射針を抜いた直後に出血するまでも無く傷口が塞がるという修復力が強い男の子が二人いた。
それぞれにわかりやすいよう名前を付け、名前の書いたベルトを首輪のように取り付けた。
目を覚ました時、逃げるかもしれない危険性に、子供たちの研究所には厳重に鍵をかけた。
食事も水分も太陽の光すら与えていなかったが、幼児が命を無くす事は無かった。それどころか栄養失調という症状一つでなかったのだ。
- Re: 大切なものは ( No.2 )
- 日時: 2019/07/10 00:43
- 名前: 小田桐 (ID: Pk3oxKzN)
心配していたが、子供たちは目を覚ますと元気に室内を駆け回ったので安心した。
幼児とは思えないほど、言語を読み解く力が早く、復唱すれば覚える程だった。
礼儀作法や運動能力を測るために色んなことを教えた。
みるみる上がる言語力と運動能力は計り知れないものだった。
一年もすれば子供たちは全て遊び尽くした様子だった。
成長面は人間と同じように髪も伸び続けるようで、毎朝の朝礼ついでに散髪を行った。人の髪を切る経験はなかったので適当にやることにした。
- Re: 大切なものは ( No.3 )
- 日時: 2019/07/10 01:00
- 名前: 小田桐 (ID: Pk3oxKzN)
「ワイス」
「はい」
呼びかけると礼儀正しく返事をしては、男の前にある椅子の座席に手を掛けて丁寧に座った。
明るい茶髪ゆるふわ巻き髪に綺麗な赤い瞳のツリ目、男の子としては小柄な色白肌のワイスは真面目で純粋で協調性の強く責任感のある子供だから一見他の四人より大人びて見える。
「緊張してるのか?」
「はい、少し」
「前髪は後ろで纏めるか?」
「はい、どちらでも。先生の好きな方で構いません」
両膝に丸めた拳をしっかり置いて、丁寧に応答しながらも相手の喜ぶ言葉を自然と口にする天然なところもある、少し危なっかしい子供だ。
軽く梳いて、ふわふわな巻き髪を後ろの高い位置で一つに纏める。
「終わったぞ」と声をかけると席を立って振り返り「ありがとうございます」と一礼して少し離れた位置にいるみんなの元へ掛けていく。
髪を下ろすと鎖骨あたりまでの長さだが、ポニーテールにした巻き髪が揺れるのを見て愛くるしいなと感じた。
- Re: 大切なものは ( No.4 )
- 日時: 2019/07/10 01:12
- 名前: 小田桐 (ID: Pk3oxKzN)
「次、ニコラ」
「はーい」
呼ばれると気だるげに間延びした返事をしてゆっくりと男の前の椅子に腰掛ける。
深紫色の瞳、同じ色のストレート髪の前髪は真ん中分けの色白肌の女の子。いつも猫背でやる気がなくへの字口が特徴的。純粋に笑った所はあまり見たことがないほど膨れっ面が多く、淡白なところもある。一人称が僕。
運動は誰より苦手で、お金や光る宝石等、それに関する知識を学ぶ事は好きな様子。
他の四人と比べると一番子供っぽく、今も床に足を付けずプラプラ動かしている。
「このくらいの長さでいいだろう」
「まあ、いいんじゃない?」
顎下までのボブの長さにしたが、お気に召したようだ。素直になれない可愛さがある。騙されやすそうなのが心配だ。
- Re: 大切なものは ( No.5 )
- 日時: 2019/07/10 01:31
- 名前: 小田桐 (ID: Pk3oxKzN)
「次、サラ」
「…私ですか?」
「前に座れ」
名前を呼べば少しして返答があり、椅子の腰掛けに手を当てて指示すると返事もなく静かに座る。
深緑の瞳と髪の色、前髪は右分け、色白で女の子だがワイスとニコラより身長が高くスラリとした体型。
両手の指を胸の前で絡めて祈るように天井へ顔を向け瞳を瞑っていることが多く、何を考えているかわからないミステリアスでマイペースな子供だ。
「よし、サッパリしたんじゃないか?」
「私の髪は土に還して栄養を」
「全く、ほらさっさと戻れ」
後ろ髪を項が見える長さ、横髪(耳より前の髪)を細く三つ編みにしてその長さは肩まで。
終わったと呼びかけるとまた両手の指を絡めて額につけて祈るように呟くので背中を押してみんなの元へ戻るように行った。
指示がなければ行動に移さなそうなのと抵抗などもしないので何かあった時が心配である。
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