ダーク・ファンタジー小説
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- 鎖の牙─『最凶』の宿命─
- 日時: 2019/07/25 08:58
- 名前: 無名 (ID: YsIqf46g)
───横浜 魔術学区・某研究施設
『おおお、これが試作品ですか。
うんうん、良い出来ですね。オリジナルと全く変わらないですよ』
───何だ?
くぐもったような老人の声。
試作品とか、オリジナルとか。
何を言ってるんだ?
『何より素晴らしいのは退殺の影響を受けない素材を作り出せたことですね。
実に素敵ですよ。魔術はついに物理や科学を冒涜出来る領域まで到達したんですよ。これは本当に本当に歴史を揺るがすことですよ』
すごく嬉しそうだ。
さっきから何を喜んでいる?
『退殺』とか、『魔術』とか。
また意味の分からないことを。
そう言えば、身体全体が冷たい。
何かに包まれているような感覚。
目を開けてみる。
「───」
やはり目の前には老人。
しかし液体で満たされた何かに閉じ込められているのか、
そこには隔たりがある。
『これを軍事に利用すれば、戦争が起きても日本は負けないですね。
何せ触れただけであらゆるものが粉微塵になるんです』
軍事とか、戦争とか。
勝手に話を進めて。
しかし、いつまで人様をこんな液体に浸しておくつもりなのか。
下らない話を聞かされる道理もない。
ここから出せ、と言わんばかりに手を伸ばす。
すると、やはり隔たりがあったのだ。ガラスが割れ、液体が溢れ出る。
「おおお!動いたんですね!動いたんですね!」
くぐもったような声がハッキリ聞こえるようになった。
「───アンタ、誰」
「私は夜骸 錬唱ですよ。君の生みの親ですね。
もっとも安倍 秋果の情報から君を作り出しただけですけどね」
訊いて損した。
「つまんなイ。
そんなことのために態々こんな薄暗い場所に引きこもってたワケ?」
生みの親?
作り出した?
つまり人工生命とか、そういうことをこの老い耄れは言ってるのか?
「君の頭なら、今ので何か理解出来たですよね?
そうです。君は我々のプランに従ってこれから───」
「理解出来たよ、取り敢えずアンタをブチ殺せば自由の身になれるってね」
「何───」
『理解』したのは老い耄れの方だ。もっと残酷な方の『理解』だが。
命の危険を察知して逃げようとする。
そうはさせるか。
コイツ一匹殺して自由の身になる。
プランだとか何だとか、そんなものはブチ壊してやる。
それで良い。
「───あは、は」
老い耄れの頭に手を翳す。
それで終わり。
老い耄れは首から上を失って倒れた。
- Re: 鎖の牙─『最凶』の宿命─ ( No.1 )
- 日時: 2019/07/25 11:29
- 名前: 無名 (ID: OWyHbTg8)
「───さて、老い耄れを始末したは良いけど、私、これからどうすりゃ良いのかね」
腕も、脚も、体も、まるでブラックホールのようにドス黒い。
「こんな格好で出歩くの、流石に抵抗感しかないワ」
『────破壊──対象─ヲ発見──』
「あ?」
機械的な声。
「───はァ、これ何?」
何やら武装兵のようなものが一体。
老い耄れめ。
コイツを使って力試しでもするつもりだったのか?
「貧相な格好の女の子見つけて、身ぐるみ剥がそうってワケ?
だったら返り討ちにしてやんよボケ。
ついでにアンタの死体でオシャレなアクセサリーでも作ろうかしらねぇ、その肉の欠片でも残ればの話だけどさァ」
発言を無視して向かってくる。
しかし、この身体に触れれば粉微塵。
まるで死に場所でも求めて───
「がッ──!?」
何と───
武装兵の身体は全くの無事。
逆に───
「ふ──吹っ飛ばされた─!?」
殴られた瞬間、相手の拳は削り取られる筈だった。
しかし、現実は違った。
この身体が吹き飛ばされただけだった。
更に追い討ちをかけようとやって来る。
しかし、一度喰らえば充分。
「二度も同じ手は喰わねぇっつーの。
多少力ずくだけど我慢しろよザコ───」
逆に此方から突っ込み、その装甲を剥がす。
中には生身の人間。
「おはよー」
別れの挨拶には不適切だろうか?
まあ、モブがどうなろうが関係ない。
その身体に触れてゲームセットにしてやろう。
でもその前に、コイツには死の恐怖を味わう義務がある。
こんなガラクタ身につけただけで勝てると思い上がったカスは───。
「この鎧さァ───私に触れられるってことは私も触れられるってことだ。
で、鎧の中身はただの人間。
だったらその鎧ひっぺがしてやれば、全然問題ないよねェ」
すると、怯えた顔でモブが語り出す。
「オ……オ………オレを殺したって……お前は……運命からは逃げられない…!
作られた命に…ただの贋作に…自由なんてないんだよ!」
「はぁ?聞こえねぇよヘタレ小便小僧。どーせ下はダダ漏れなんだろ?
安心しろよ、てめえは塵一つもこの世に残らねえんだからなぁ」
鎧を剥がされた無力なモブに身体を重ねる。
そしてモブは、この身体に喰われるように消えていった。
- Re: 鎖の牙─『最凶』の宿命─ ( No.2 )
- 日時: 2019/07/26 01:34
- 名前: 無名 (ID: YsIqf46g)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=1213.jpg
「あーあ、この鎧重すぎっしょ。
こんなんで動いてたら全身筋肉痛になるっつーの」
仕方なく、そこらにある衣服になりそうなものを物色する。
クローゼット。
何故か鍵がかかっているが、触れればドアごと粉微塵。
すると中から衣服が雪崩れてきた。
その中の殆どは、身体に触れて消えてしまった。
残ったモノを手に取る。
「───うわ、何これ。
一昔前の特撮ヒーローみたいにシンプルなデザインのスーツ。
全身にフィットして動きやすそうじゃん」
まあ、多少目立つかも知れないが、無いよりは良いだろう。
幸いこのスーツも、『退殺』の影響を受けないようだし。
ちょっとよろけつつ、それを身につける。
「さて、じゃあ暴れてやるとするか」
特にこれといった目的はない。
だが、渇く。
全身が殺戮を求めている。
よく分かる。
───
───
「待ってください、そこの白髪のお姉さん」
「あ?」
また敵か?
「どこに行くつもりですか?私も連れて行ってください」
「うわ!何だてめえ!」
目の前に、突然女が現れた。マジックのように。
「驚かせてしまい申し訳ありません。
私は夜骸一族によって作られた魔術人形の情報を持つ人造人間 夜骸 真実です。
気軽に『マコト』と呼んでください」
「オイ、一方的に会話を進めてんじゃねえ!
いきなり何なんだよてめえは!?」
「ですから私は夜骸一族によって作ら───」
「だァァァもう良い!良いから放れろ!
私なんかじゃなくて、もっと親切な奴に頼みなよ!」
「駄目です。外は危険です。武装した人間が十名程います」
「はぁ?何でこんな糞みたいな場所にそんなに人が集るワケ?」
「私や貴女───夜骸一族の成果物を破壊するためです」
「───なるほど、目覚めていきなりブチ殺されるかもってワケね」
「私はこの施設においては───貴女より先に目覚めたので『先輩』です。
貴女とて、今どういう状況なのかハッキリと理解出来ていないでしょうから、私が説明します。
もし気配を感じたら即伝えてください。そうなれば私が適切な避難ルートを指示します」
「ご丁寧にどーも」
こんな胡散臭い奴───。
でも、今この場において信頼出来るのはコイツだけ。
他にはきっと誰もいない。
怪しい行動を起こしたとしても、コイツ程度なら即座に始末出来る。
- Re: 鎖の牙─『最凶』の宿命─ ( No.3 )
- 日時: 2019/07/27 16:33
- 名前: 無名 (ID: YsIqf46g)
───研究施設前
夜骸の研究を潰すべく、特殊部隊が待機している。
「吾妻、様子はどうだ」
『何もありません、突入okです』
「よし、そこで待ってろ。すぐ行く」
『leisure』
「聞いたか皆、突入開始だ」
「待ってください、隊長!」
「どうした?」
「本部から連絡が───」
・・・
「で、私は結局誰なワケ?」
「安倍 秋果のコピー品…という表現が適切です」
「その安倍 秋果が危険人物だったってワケ?」
「はい。だからこそ夜骸一族は安倍 秋果を利用しようとしていたのです」
「チッ。それでこんなザコに命狙われてんのか、私ら」
吾妻とか言ったか。
たった一人で潜り込んでくるとは大した度胸だ。
「背後から忍び寄って頭部を抉る───見事な作業でしたね」
「つーか、アンタはこーゆーの平気なんだね」
死体の頭を掴んで見せる。
しかし真実は顔色一つ変えない。
「ええ。夜骸の思考が組み込まれていますので」
「そりゃ良かった。
これから死体増えることになるけど問題ないってワケかい」
吾妻の死体を投げ飛ばす。
死体は窓ガラスを突き破り、外に飛んで行った。
きっとそこには特殊部隊の連中がいるのだろう。
「───あ………ぁ…あ………吾妻ァァァアアアアッ!」
やっぱり。
仲間の死体を見て絶叫する隊員の声だ。
「いつまでも突入してこねぇからいい加減にイライラしてたんだよ。
でもあんな悲鳴じゃあ全然満たされねえ。
ほら、アンタはそこで待ってな。外にいる奴等全員ブチ殺してやるからさぁ」
「お任せします」
- Re: 鎖の牙─『最凶』の宿命─ ( No.4 )
- 日時: 2019/07/27 21:10
- 名前: 無名 (ID: YsIqf46g)
「よオォ、ボケども!
いつまでも外でブルってるからお友達が死んじゃったみたいよォ!」
「お……お前…は…!」
「誰に許しを得て喋ってんだコラァァ!
貴重な酸素無駄にしてんじゃねぇよ廃棄物がよオォォ!」
隊員どもが銃を向けてくる。
しかし相変わらず震えている。
恐怖か。
それとも別の感情からか。
どうでも良い。
「け……………研究物…!研究成果!貴様…は……夜骸の研究成果…!
故に…死なねばならん!観念しろ!」
「あァ?」
「両手を挙げてそこに跪け!」
「───あぁ、あ。クソムカつく。
研究成果だ?
だったら───」
跳躍し、着ていたスーツを脱ぐ。
ドス黒い肉体が露になり、隊員たちは唖然とする。
「てめぇら実験材料は大人しく蹂躙されてろオォォォッ!!」
逃げようとしていた隊員の頭に足先が触れると、そこから削れるようにソイツの体は消えていった。
「う……うわああああぁああぁああああッ!何だ何だ何だ何だ何なんだコイツァァァァァアッ!」
銃を乱射してくる。
効く筈もないのに。
「落ち着けお前ら!頭は無防備だ!頭を撃て!」
隊員たちの中で一際体格の良い男が叫ぶ。
───いや、多分隊長か。
それにしてもバカだ。
恐るべきバカだ。
頭に飛んでくる銃弾。
しかし、頭の周りに退殺空間を作り出し、全て消す。
そして隊員たちを───
掃除機でゴミを吸い取るように削り殺していく。
「──ッ、──くそ、どういうことだ!
何がどうなってるんだ!こんなの何をやっても殺せないじゃないか!」
隊長が一人だけ逃げようとしている。
「オイオイ、逃げんなよォ!
絡んできたからには実験成功するまで付き添ってくれよ、なァァァァ!」
「ぐあぁあッ!?」
足を削る。
これで逃げることは出来ない。
あとは死を受け入れることしか出来ない。
それがコイツに残された道。
「生きて帰れるとでも思った?ざーんねーん、アンタはもう家族のツラも拝めねえんだよ」
「ふふふ…ふ…ざ……ける…なよ…!
たかがコピー品の分際で!」
「アンタこそザコの分際で吠えてんじゃないよ。
その足は何?足が飾りなのはロボットアニメの中だけだっつーの」
「くッそォ…!これで…終わりじゃない…ぞ…!我々…特殊部隊には──魔術テロリスト制圧用に──魔術兵器使用の許可が─下されてい───」
話している途中だが、その頭を削り取る。
「だったら駄弁ってないでバトンタッチしろよ端役」
先程まで隊長だった肉塊に唾を吐き捨てる。
魔術兵器───何なのか知らないが、とにかくこのかませ犬どもよりは楽しませてくれそうだ。
「さぁ、出て来なよ魔術兵器とやら!
バカがネタバレしやがったせいでスリル半減だけどさァ!」
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