ダーク・ファンタジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 龍と血の伝説
- 日時: 2019/08/20 23:29
- 名前: ニル専用デニス (ID: YsIqf46g)
・・・・・時は15世紀、セフィア公国
セフィル人の国と呼ばれたこの地を統治するのは飢える獣、ゼヴ・ドラーク!
これは、『野心の龍』と『愛の救い手』の戦いの物語である
城下町
勢いよく走る馬車
目の前には四歳くらいの子供がいる
馭者がそれに気付き、熟練と評すべきテクニックで回避した
「オイ、そこのガキ・・・テメー!下痢くせぇ挽肉になって市場に売り飛ばされてェーのか、このチビカスがァァ!」
「ヒィ、ごめんなさい!」
貴族!
彼らもまた権力を持つ者!
故に、ドラークにとっては邪魔な存在だ!
「オイ、シーヘッド」
ドラークが、付き添いの老人に声をかける。
「は、先程のはメフー家の長男、メフー・フールマンであります」
老人が返答する。
「あの威張り腐った底辺一族の長男か。カス風情がそうやって威張っていられるのも俺様のおかげだと言うのに。フフフ・・・」
メフー家は、ドラークが言う通りなぜ貴族になれたのか分からぬ程劣った一族だ
「俺様はいずれこの貴族とかいうクソのような連中を地上から抹殺してやる。公国という国に生まれてきたこの俺様が言うのもおかしいが、公国などクソ喰らえだ。頂点
、トップ、唯一無二の存在こそこの国に必要な『王』よ・・・」
「しかしドラーク様はまだお若いゆえ・・・」
「サポートは必要、か?分かっている。使えるうちはゴミでも使い尽くしてやるさ。『捨てる』のはいつだって簡単に出来るんだからな。
・・・フフフ、城に戻るぞシーヘッド」
「承知」
- Re: 龍と血の伝説 ( No.3 )
- 日時: 2019/08/23 01:11
- 名前: ニル専用デニス (ID: YsIqf46g)
第三話 光と闇
「・・・ドラーク様は・・・何か企んでいる気がする!別に僕がどうなろうと構わないけど・・・もっと大切なところで・・・止めなきゃならないようなことをしでかそうとしている気がする!」
ソウィルの勘は当たっている
実際にドラークは今、ソウィルの知らぬところでソウィルの恋人と寝ているのだ
もっとも、知ったところでソウィルがそれを止めることなど出来ないが・・・
「オイ、ソウィル。今ドラーク様のことを疑ったな?」
「はッ・・・!」
独り言のつもりだったが、聞かれていた
ドラーク直属の部下『鷲鼻のハーミル』だ
「う・・・疑ってなんか・・・」
「やッかましいッ!三年間洗ってない便所にブチ込まれたドブネズミみてェな汚物ヅラしやがって・・・口答えなんかしてんじゃねェぜ!!」
「アァアッ!」
顔面を勢いよく殴られた
ゴグシャアッという音が鮮明に耳を駆け巡った
「奴隷が王を疑うってのはその時点で侮辱なんだよ!このカス!その一歳児レベルの脳ミソに刻み込んどけ、ゴミィィッ!」
「侮辱なんてしていません・・・おかしいことをおかしいと感じたから・・・」
「るせェーッてんだろォォォが!てめェの頭はバランス取るためのオモリか!?飾りか!?何度も同じこと繰り返し言わすんじゃねェよ、肉達磨にするぞボケェーッ」
「す・・・すみません!」
「チッ!最初から謝っとけよ、ゴミが!だがドラーク様にはきっちり報告させてもらうぜ!これで糞臭ェ奴隷野郎がいなくなってくれりゃ、俺も満足だ!」
ハーミルは怒ったように城の階段を登って行った
- Re: 龍と血の伝説 ( No.4 )
- 日時: 2019/08/24 00:26
- 名前: ニル専用デニス (ID: YsIqf46g)
第四話 夢の沈む日
「ドラーク様、ドラーク様」
ドアをノックする音
ドラークは、
「入れ」
と反応した
そしてハーミルがドアを開け、ドラークの寝室に足を踏み入れた
「・・・用を言え、ハーミル」
「ソウィルの野郎が貴方様のことを疑っておりました。反乱でも起こされたら大変です。今のうちに殺しておきませんかい?」
「・・・」
「・・・あの、ドラーク様・・・?」
「・・・」
ボトッ
次の瞬間、ハーミルの首は床に落ちていた
「フフフ・・・フ、フハハハ・・・良いぞ。良い娘だ。ちゃァーんと殺せたなァ」
ハーミルの首を落としたのはマリアだ
ドラークが、そうするように洗脳した
「世界の頂点に君臨するのは『悪』だ。『悪』こそ淘汰の先に立つ絶対的勝者。君は今、その領域に踏み込んだ。ようこそマリア・・・」
ドラークはマリアの眩しく輝く金髪を撫で、続いてハーミルの首に視線を落とす
「フン、お前に言われるようなことは何一つない・・・安心して奈落の底に落ちろ、ゲスめ」
- Re: 龍と血の伝説 ( No.5 )
- 日時: 2019/08/24 09:37
- 名前: ニル専用デニス (ID: YsIqf46g)
第五話 踏み越えよ
翌日
ソウィルはドラークから呼び出しを喰らった
「ドラーク様、その・・・一体何の用でしょうか?」
「・・・俺様はな、お前をこのまま殺しても構わない立場にある。だが、それだと俺様が楽しくない。そこで、だ・・・」
「・・・ッ」
ドラークは剣を取り出した
その剣を持ってハーミルを昨日殺したのがマリアだ
もちろんそのマリアは、今はここにはいない
「一週間後・・・俺様と決闘しろ」
「なッ・・・!?」
「俺様は正々堂々とお前を殺す」
ドラークはこう言っているが、実際は違う
単なる処刑では面白くないからだ
マリアを手に入れた以上、ソウィルを殺すのは容易い
だが、マリアを手に入れたという優越感に浸りながら、『恋人を奪われた間抜けなソウィル』を殺すことはきっと快感だ
ドラークはそれのみを望んでいた
他はどうでも良い
ハーミルから受けた報告も、雑用としての役割への怠慢も、全てどうでも良い
「全身全霊でお前を惨殺してくれよう。フフフ・・・一週間。どう泣いても喚いてもそれ以上延びはしないぞ?」
「・・・ドラーク・・・様・・・!」
ドラークはソウィルに剣を渡した
「昨日、マリアはその剣で我が部下を殺した。そして今その剣はマリアの血を求めている。・・・お前とは恋人同士だったよなァ?」
ソウィルはそこで危機を察知した
「アグァーーーーーーーァァァッ」
背後から悪意を纏った拳が飛んでくる
間一髪で回避するが、その拳の持ち主の正体にソウィルは唖然とした
「・・・君は・・・マリア!?」
「マリアは我がコントロール下にある。洗脳術と言って・・・まぁー、そうだな・・・要するに俺様の命令に従って動くようになっている。もはやお前の知るマリアは死んだも同然よ」
「そ・・・そんなバカな・・・ことが・・・?」
ソウィルは後退りした
目の前にいるのはマリア
愛するマリア
それが、今や悪意を持って対面するバケモノだ
「フン、愛や友情や信頼・・・どれも、現実を見ようとせぬバカどもの綺麗事にすぎん」
「ド・・・ク・・」
「ハハハハ!ハハハハハハハッ!!絶望しろ、アラメント・ソウィル!」
「ドラァァァーーーークウウゥーーーーッ!」
ソウィルの怒りはまっすぐなものだった
「一国の王が民に手を出し、まして人々のあるべき理想の姿を否定するなどッ!!」
「泣き言なら決闘の時に聞いてやる。ほれ。お前は女を殺したくないのかも知れんが、女はお前を殺したくてウズウズしているぞ」
ソウィルは怒りのままに拳を強く握り締めた
血が滴るほど強く、強く
- Re: 龍と血の伝説 ( No.6 )
- 日時: 2019/08/24 10:29
- 名前: ニル専用デニス (ID: YsIqf46g)
第六話 討ち愛
「マリア、君と戦わなきゃならないなんて・・・本当なのか?」
マリアは、答えることもできない
だが、ソウィルはマリアの本心を知っている
ドラークは言った。洗脳術を使って操っているのだと
ならば、洗脳術のその先・・・本心には『愛』がある筈
「マリア・・・!」
しかし、本心が如何に戦いを拒絶していても無意味
マリアの身体はソウィルを殺すために動く
大きな力によって無理矢理にでも動かざるを得ない
「・・・君がどうしても戦うしかないと言うなら・・・君を動かすその邪悪な力を取り払おう!」
ソウィルの拳がまっすぐ伸びる
「・・・君を殴るのは怖いが・・・君が死ぬのはもっと怖いんだッ、だからッ!」
マリアの顔面に、その拳がヒットする
頬が凹み、吹き飛ぶ
ドラークはそれを笑って見ている
「オイオイ、ソウィル。俺様のモノに傷をつけるなよ?」
「黙れッ!次は貴様だドラークッ!!」
「フフフ・・・恋人を奪われた怒りが人格まで変えたか?俺様が怖くないのか?」
ドラークにはソウィルのオーラが見えていた
燃え滾る赤
そして討つべき者に対しての慈悲など一切なき冷たい心の青
「一週間・・・俺はある場所で修行する・・・!強くなるためというだけじゃない・・・一週間経たずに貴様に挑むのを避けるためだ!!」
ソウィルが殺意を抑えているのが分かる
殺意を抑えなかったとしても、当然ソウィルの実力ではドラークには勝てないが
「今程度の力では俺様には敵わん。雑魚の割には良い選択だ・・・」
「・・・」
「おっと、ソレを持って帰れよ。もう傷物になっちまったような女は要らん」
ソウィルはその言葉に立ち止まり、無言でマリアを抱き抱えて立ち去った
- Re: 龍と血の伝説 ( No.7 )
- 日時: 2019/08/24 10:55
- 名前: ニル専用デニス (ID: YsIqf46g)
第七話 格闘王の因縁
「・・・僕は・・・恥ずかしいことだが、かつて奴隷修練場に連れて来られたことがある・・・。(公国において、奴隷になるなら必ず通わねばならないという場所だ。)そこで出逢ったんだ・・・圧倒的格闘能力を持った男と・・・」
その名はハジメ・シンドウ
なにゆえか東洋から連れて来られたという彼は凄まじく強かった
一度戦ったことがあるのだが、どうやっても勝てないのだ
此方は剣を持っていて、ハジメは素手
勝負は明白だと思うだろう
しかし、そうはならなかった
ハジメは剣を素手で破壊し、次の瞬間にはその肘をこの腹に捩じ込んでいた
何が起こったのか分からなかった
こんなバケモノは見たことがないと心の底から恐怖した
彼ならば・・・彼のもとで修行すれば、ドラークなど容易く倒せるだろう
たった一週間でも充分だ