ダーク・ファンタジー小説
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- 夜の少女
- 日時: 2019/09/16 15:51
- 名前: 水無月匣 (ID: xs5T8t9X)
大きな帝国に訪れた夜。
白髪の少女ノーチェ・シュヴァルツはその日、両親を失って国を歩いていた。
そんな少女を引き取ったのは帝国軍のヴァイス三兄弟だった。
長男のカリファ、次男のセシル、三男のジュビア。
彼らは独りぼっちとなったノーチェを引き取ることにした。
- Re: 夜の少女 ( No.1 )
- 日時: 2019/09/16 16:06
- 名前: 水無月匣 (ID: xs5T8t9X)
「ノーチェ、月が昇るまでここからは出てはダメ。良い子ねノーチェ」
白い手が彼女をそっと抱く。
「偉い子だなノーチェ、夜まではここにずっといるんだぞ」
骨の張った手がノーチェの頭を撫でる。
ノーチェは外に出た。もう少し待つべきだった。大剣を握った男と家を出たノーチェの目が合う。
そこからはすぐだった。男が笑みを浮かべ大剣を振り下ろす。
ノーチェは反対方向に走り出す。
「鬼ごっこか?良いだろう。ゆっくり殺してやる」
「逃げなきゃ…あの人、凄く危ない気がする」
息を切らし動かなくなり始めた足を動かすノーチェの背中に迫る大剣を持つ男。
身の丈程もある大きな剣を片手で振るいながら走っている。前で何かにぶつかり
尻もちをつく。
「うおっ、なんだ!?」
「セシル、ソイツを捕まえろ。殺す!」
セシルと呼ばれた男は慌てる。
「ま、待て待て!そしたら俺まで巻き込まれるだろうが」
「そうだ。お前、兄貴に何かしたのか?」
もう一人の男がそう聞いた。ノーチェは「記憶にない」と答える。
「…私、月が昇るまで家の中で静かにしているように言われた、両親に。でも
帰って来ないから…もう夜だから外に出た。そしたら…でも多分、二人とも死んじゃったと
思う。だから別に殺されても、良い」
ノーチェは大剣を握る男の前に立ち軽く手を広げた。
「殺したいんでしょ?これなら二人を巻き込まなくて済む」
男は大剣を振りかぶるもすぐに納め溜息を吐いた。
「そこまでやられたらやる気も失せる。お前、どうせ帰ったところで何も無いんだろ。
うちに来い。俺はカリファ・ヴァイス」
カリファは一人、帰っていく。こうして三人とノーチェは暮らすことになる。
- Re: 夜の少女 ( No.2 )
- 日時: 2019/09/16 16:43
- 名前: 水無月匣 (ID: xs5T8t9X)
ノーチェは家の中に入る。
「ベッドとかは揃ってるけどよ。流石に服とかは必要だろ?早く準備しろよ」
ジュビアに言われノーチェは大きなバッグを幾つか準備し中に荷物を入れていく。
衣類や飾られている人形などを詰めているときにノーチェは手を止めた。
「…私が使っていい部屋なんてあるの?」
「まぁデカイんだよ家が。それより終わったのか?荷物は少しぐらい持ってやるから」
ジュビアに大きいバッグを一つ持ってもらい外を歩く。数十分歩いて大きな屋敷に
やって来た。中に入った。バッグを部屋に置き夕食。並べられた料理はお世辞にも
美味しそうとは思えなかった。それを何も言わずに食べるカリファと苦笑するジュビア、
ただただ見つめるだけのノーチェ。創った張本人セシルは笑顔で「おかわりは自由だからな!」と
言っている。一口食べる。何が起こったのか分からないが炭の味がする。
「あの、今度から私が創る」
「え?でもそれは大変なんじゃ「いいから」…はい」
渋々セシルは返答した。会話を聞いていたジュビアはやっとゲテモノとおさらばできると
喜んでいた。
夜中。ノーチェは転がっている大剣を見つけた。カリファの大剣だ。
「ッ!!〜〜っ!!」
柄を握り持ち運ぼうとするも動かない。固定されているように感じるがただ単に剣が
重いだけである。だが廊下の真ん中に置かれていたら邪魔になるだろう。せめて壁に
立てておきたい。何度も力を入れるもノーチェの力ではビクともしない。隣から伸びて来た
手は剣を軽々と持ち上げ壁に立て掛ける。
「あ、あのごめんなさい」
「何をしている。お前の部屋はこっちにはない。トイレもだ。…まさか剣を
退かそうとしていたのか?」
嘲笑うような口調で言う。ノーチェは頷いた。
「お前みたいな非力な女が持ち上げることなんて出来やしねえ」
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