ダーク・ファンタジー小説
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- フォルトゥナさん、リ・スタート
- 日時: 2019/10/30 20:08
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
作り直したいのでもう一回一から…す、スミマセン‥‥。
元、平凡な女子高校生が異世界でフォルトゥナ・ルクスという中性的な少女として
異世界を冒険していく。
序章「フォルトゥナ・ルクスとしての人生」>>01
1.「ノート・ルクスに負けた魔族」>>02
2.「腕試しに来た集団」>>03
3.「魔術開花」>>04
4.「教主が見つけた希望」>>05
5.「仮面集団、襲撃」>>06
6.「仮面の裏に」>>07
7.「教会で眠る人」>>08
8.「マスカレードたち」>>09
9.「教主の姿を」>>10
10.「ジジ臭い男」>>11
11.「トランプマン」>>12
12.「
- Re: フォルトゥナさん、リ・スタート ( No.3 )
- 日時: 2019/10/19 22:14
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
「成程…異世界人か。2度目でも驚いてしまうな」
クロムが背もたれに体重をかける。彼はスッと柔らかい笑みを浮かべていた。その笑みは
フォルトゥナとの会話の楽しさからか、それとも裏にはノート・ルクスではなかったという
気持ちを隠しているのか。
「…その容姿は、ここに来てからか?」
「?そうだけど…どうしたの?」
クロムはフォルトゥナを見つめ、ノートと姿を重ねる。フォルトゥナは女、ノートは男、
それなりに違うところはあるが髪型、目元はほとんど似ている。
「いいや…気にしないでくれ。ッ!」
クロムはテーブルに手を置き腰を上げる。驚き慌てたフォルトゥナも立ち上がり彼が
見つめている方向を見た。最近、魔力を感知することが出来るようになった。数は
数人だ。真ん中に立つ赤い羽織を纏う女性がフォルトゥナの前に立った。彼女は二本の
角がある。
「アンタがフォルトゥナ・ルクスって奴かい?私は紅華、よろしく頼むよ」
紅華はフォルトゥナと握手する。「さて…」と紅華は話を変える。
「少し、腕試しでもしないかい?アイツと同じ名前を持ってるんだ、アイツと同じ人数で
やってもらうけど…こっちは2、そっちはアンタ1人ってね」
フォルトゥナの表情が引き攣る。それを流し紅華は剣士たちの方を見て誰が行くか
聞いている。フォルトゥナはクロムの方を向く。彼は困り顔をするが「大丈夫」と
断言する。
「貴方はノートから全ての知識を授かっているんだろう?ならそう難しく考える必要は
無い。その魔術は既に貴女の手足だ」
「さぁ、こっちは準備できたよ。アンタは出来たのかい?…良い目をしているね。仮面男が
蘇芳、マスクをしてるのが夢っていうんだよ。アンタ、アイツと似たような術を使いそうだし
…じゃあ始めようか」
- Re: フォルトゥナさん、リ・スタート ( No.4 )
- 日時: 2019/10/20 13:12
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
2vs1の手合わせが始まった頃、クロムと紅華等は悠々と三人を見つめていた。
「アンタなら真っ先に止めると思ったよ」
「そう見えるか。…人間は脆い。特に彼女のような女は脆いと聞いている。もう二度と
失いたくはないからな」
ノート・ルクスと同じ名を持つフォルトゥナが戻って来たからこそ全員の活気が復活したが
それでも彼の喪失は大きい。鬼も魔族も人間より遥かに長い時を生きるからこそ何度も
大切なものを失う。恐ろしいことにそのことに慣れてしまう。だがクロムやスコルは特に
魔族として申し分ない力を持っていて初めて自分たちよりも強い人間に尊敬した。その男
ノートを失ったことはかなり大きいだろう。クロムはスッと手を伸ばし何かを掴んだ。
紅華の持つ盃に入った酒、その上にも何か落ちてくる。キラキラと日光を反射する小さな
粒。それは透き通った水色の石。アクアマリンという宝石だ。
「宝石…」
「そうだねぇ、やっと扱い慣れてきたってカンジかな」
紅華はフッと笑みを浮かべた。夢と蘇芳も驚く。
「驚いた、まさかこの短時間で扱えるようになるなんて…」
手に握られた水色の剣、その剣が振るわれるたびに淡い水色の光が現れる。対応する蘇芳が
苦悶の表情を浮かべる。確かにこの力はノート・ルクスそのもの、彼本人を相手しているような
気分だった。微かに夢の声が聞こえ、充分に引き付けてから距離を取る。強く一歩を踏み出した
夢から放たれる素早い居合。コンマ1秒でもズレればフォルトゥナは真っ二つにされていた。
上に跳ぶことでその居合を躱すことが出来ていた。そして呆気にとられる蘇芳の目前に
剣先が突き付けられた。蘇芳は大人しく負けを認め、刀を納める。同じように夢も力を
抜き刀を納めた。
「やれば出来るじゃないかフォルトゥナ。どうだい?戦闘後の気分は」
「気分って…私やりたくてやってるわけじゃないんですけど」
「随分と謙虚じゃないか。もう少し傲慢になっても良いと思うけど」
紅華の言葉にフォルトゥナは首を横に振る。
「私は謙虚でいいんです」
- Re: フォルトゥナさん、リ・スタート ( No.5 )
- 日時: 2019/10/20 16:55
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
その日、数人の付添人を連れて歩いてきた人間の男は持ち前の明るさで子どもたちを
笑わせていた。
「ノート、もう行ってしまうのか」
「あぁ、このガキたちみたいに俺の帰りを待ってる奴らがいるんでな」
仮面の教主の顔をノートは見つめ二ッと笑みを浮かべた。仮面の奥で彼女もスッと微笑む。
「そういえば…お前は俺を神だといったな。なら神である俺がお前らに救済を与えてやる」
扉を開け、目を教主に向ける。その目は柔らかい。
「もし困ったら俺のところに来い。俺が、俺たちがお前らを助けてやるからさ!」
絶望の近くには必ず希望があるという言葉、それを教えとしていた。だが実際、彼女の
人生は絶望ばかり。国の騎士として戦っていた頃。その頃に布教活動を始めた。貧しい
人々にいつか必ず救われると自身が希望になるために…。だがそれは他人を救うことしか
出来なかった。自分は濡れ衣を着せられ罪人となった。死に際に見たのは1柱の神、
そして彼女は仮面をつけ仲間をかき集めた。小さな集落を拠点に教えを説いた。
長い年月が過ぎてやっと彼女に希望がやってきた。ノート・ルクスという希望が…。
彼を見た時、気付いた。この男は魔術で無理矢理若い肉体を保っているが既に老人、
死期が近付いていると言うことに。
『教主を助けたいか?ならば俺が今から言う娘を殺せ名は…』
猛毒に侵され眠っている教主の近くに立つ右目のみ繰り抜かれた仮面をしている青年は
触手のようなものを彼女の額に近付け何かを吸っていた。夢喰いという種族の青年ヘルムだ。
「あのサソリ男、信頼していいのか?」
「気に食わないがそれしか手はない。さっき言っていた人物を殺せば良いんだろう。
ならばさっさと行動しなければな」
教主の側近、ジュードは笑みを浮かべていた。
フォルトゥナたちは平穏に生活している。
「ノートさんとは血の繋がりも無かったんですか。でも不思議ですね、フォルトゥナさんは
ノートさんに似ています」
困り顔をしている長い藍色の髪をした男、白露はやんわりとした口調で話す。
「なんか最近ノートさんに似てる似てるって凄い言われるんだけど…そんなに?」
「えぇ」
- Re: フォルトゥナさん、リ・スタート ( No.6 )
- 日時: 2019/10/20 18:30
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
爆発音が聞こえフォルトゥナは聞こえた方向に目を向ける。
「爆発…戦闘でしょうか。不安ですね、結構近かったように感じます」
白露も少し険しい表情で同じ方向を見つめている。遠くから感じるこの魔力…恐らくは
スコルである。
「白露、行ってみよう。多分スコルの事だし大丈夫だとは思うけど…」
「そうですね。気になる気持ちは分かります、行ってみましょう」
二人が移動し始めた頃、スコルは地面に着地し顔を上げる。目の前の大男、その巨体に
見合う怪力を持っていた。だが戦闘姿はまるで飢えた獣同然である。
「あまりこの辺りで大暴れしたくはない。既にフォルトゥナ殿に気付かれているだろう」
雄叫びを上げ大男がスコルとの距離を縮め拳を前に突き出す。同時にスコルも手に持つ
細剣を突き出す。だがどちらも寸前で止まった。その理由はフォルトゥナの声ともう一人
マスクをした女の声がしたから。
『あのごめんなさい。兄さん、もうやめて。この人たちに喧嘩を売りに来たわけじゃないよ』
マスクの女の声はエコーが掛かったような声だ。彼女は目の前の大男の妹らしい。
「スコル、は…大丈夫そうだね。お互い怪我が無くて良かった良かった」
「そうですねぇ…怪我があったとなればもっと大変な事になっていたでしょうに」
大男はフルフェイスマスク、女はハーフマスクで口元のみ隠している。
「あの何か事情があって来たんでしょ?良かったら教えてくれる?」
『私たちはフォルトゥナ・ルクスって子を「何をしているんですかイヴ」ッ!ユーフォンス』
金色の仮面をした厚着の男はマスクの女イヴに声を掛けた。同時に彼以外の数人の仮面集団が
現れた。金色の仮面の男もイヴの兄ぐらい背が高い。
「まさか自分で名乗ってくれるとは思いませんでしたよ。いやぁ本当に貴方が
フォルトゥナ・ルクスなんですか?少し残念ですよ…これから我らの教主のために生贄に
なってもらうんですから」
「どういう意味でしょうか?貴方たちの教主様に何かあったのですか?」
白露は聞いた。顔の上半分を仮面で覆った男ジュードは笑みを浮かべている。
「教えるつもりは無いですよ?あの人にはまだまだ生きてもらわなきゃ…そのために貴方の
命を使うだけですよ。ですがやはり話し合いではどうにもなりませんね」
ジュードは剣を構える。
- Re: フォルトゥナさん、リ・スタート ( No.7 )
- 日時: 2019/10/20 21:23
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
「フォルトゥナ様!」
黒い蝙蝠のような大きな羽を広げ飛んできたクロムはゆっくり下降しフォルトゥナの方を
少し横目で見た。
「スコル、交代だ。ルネア殿のところに向かえ。事情は本人から聞いた方が良い」
「え?ここからまさか…走るの?」
困惑するフォルトゥナを余所にスコルとクロムは話を進め二人とも何かを決めた。
スコルの背中にクロムと同じ形の翼が現れた。しかし黒い羽と違い彼の羽は白い。
フォルトゥナの体をスコルは抱き抱え空へ飛んだ。
「ここからは私たちが相手しよう。…彼女でなければ不満か?俺たちを倒さなければ
主を殺すことなど出来ないがな」
「楽しそうなことしてるじゃん。クロム、だっけ?俺たちも混ぜろよ」
「すみません花蘭が…」
好戦的な妖鬼族の青年、花蘭の言動を宥める夢。イヴ以外に右眼のみ繰り抜かれた仮面の
青年ヘルム、フルフェイスの大男ザン、金色の仮面の青年ユーフォンス、顔の上半分を
仮面で覆う男ジュードの四人。彼らをそれぞれクロム、白露、花蘭、夢の四人が相手取る。
仮面集団が勝つか、クロムたちが勝つか。それともフォルトゥナが彼らの教主ルネアを
救うのが先か。
「おぉ、随分と荒々しいな」
「気を抜くなよ。あの怪力、そして巨体に合わない俊敏性…獣でもちゃんと頭脳はあるらしい。
それと…あまりやり過ぎるなよ」
全員が地面を蹴る。
「流石魔族。相当強いですねぇ…だからこそ楽しみってものですよ」
「…随分と余裕だな。秘策でもあるのか」
ぶつかり合い互いに距離を取る。
「まさか。私は貴方のような魔族に勝てませんよ。でもそうですねぇ…確かスコルと
言いましたか…魔族の多くは光属性の魔法が弱点だと聞いたことあります、しかし彼は
その属性の耐性を持っている。さぁて貴方は耐えられますかねぇ?」
不気味な笑みを浮かべジュードは剣に光を纏わせる。白露は直刀でヘルムの触手を
斬りながらどんどん間合いを詰めていく。
「見た目の割に随分と強気な攻めだな」
「祖母から斬り合いでは下がれば負けると言われております故」
「へぇ…祖母は、死んだのか?」
白露は無言になった。仮面の奥でヘルムは笑い舌なめずりをした。右手と左手の人差し指に
金色のアーマーリング状の刃をつける。白露は首を傾げる。
「俺は夢喰い、特に悪夢が好物でなぁ…これにはちょっとした薬をつけてある」
「あぁ成程!夢喰いでしたか。ですが…私は悪夢は残念ながら見たことありませんよ?」
「安心しろよ。俺がとっておきの悪夢を見せてやる」