ダーク・ファンタジー小説
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- 黎明のソナタ
- 日時: 2020/01/29 16:28
- 名前: 祝福の仮面屋 (ID: T8uIPv/C)
《厨二病》
それは、(日本の教育制度における)中学校二年生頃の思春期に見られる《夢見がちな言動》を自虐した語であり、それと同時に《自己愛に満ちた空想や嗜好》を揶揄したネットスラングでもある。
厨二病と偏に括っても
サブカルチャーにハマっているのではなく、サブカルチャーである事を誇りに思い、自分は他の人間とは違うと思い込んでいる《サブカル系》。
多分世間一般的な中二病と言えばコレ、SF的な超能力やパワーに憧れ、自身にもその力が宿っていると信じちゃってる《邪気眼系》。
所謂DQN、校則やら規則にはやたら反発し、反社会的な態度を取り続け自身は不良である事を周囲にアピールしたがる《DQN系》
など、三つの種類に分かれている。
世間的に見ればやばい奴。
駄菓子菓子!この学校では厨二病であればあるほど高い地位と権力を得る!
これは、ひょんな事からヤベーイ!厨二病の巣窟へと入学する事になった極普通の少年の物語!
厨二病&厨二病の青春学園バトルコメディ!開☆幕!
登場人物解説
>>1
第1章
>>2.>>3
Session1【来るとこ間違えたわ】
>>4.>>5
Session2【九姉妹捜索前線】
- Re: 黎明のソナタ ( No.1 )
- 日時: 2020/01/31 22:22
- 名前: 祝福の仮面屋 (ID: T8uIPv/C)
【私立中二高校】
「創立300年の歴史を持つ由緒正しい私立校。本来はエレベーター式の進学校だが、ごく稀に他校からの入学志願者も取っている。」
【生徒】
啄木鳥 栄次郎《ケラ エイジロウ》
能力【無し】→【零拳】
二つ名【無難な狂想曲《ラプソディ》】
本作の舞台である《私立中二高校》にひょんな事から入学する事になった、極普通の高校生。本作の主人公かつ唯一の常識人であり、ストライクフリーダム過ぎる仲間達のツッコミに回る事が多く、彼からボケが始まる事は基本ない。
なんの能力も持たない非力系主人公だが、玄咲 花笠との戦闘により、他者の能力をかき消す【零拳】を開花させる。
小埜寺 夢翔《オノデラ ユメト》
能力 【黒い悪夢《シャドーナイトメア》】
二つ名【漆黒の堕天使】
啄木鳥とは通学路で登校途中に偶然出会い、栗松曰く「巷で話題になっている、新進気鋭のスーパールーキー」らしく、4000年間女神と戦争を続けて来た悪魔の末裔という設定でだいぶ拗らせている模様。ちなみに本作のもう1人の主人公。
闇を操る能力を持つ。
蛸山葵 平次《タコワサ ヘイジ》
能力【海神大潮《タイタニックオーシャン》】
二つ名【万海のネプチューン】
中高生徒会副会長。深淵のエンペラーこと緑川 烏堂を尊敬しており、液体を自在に操り、この世に存在しない新たな液体を作る事も出来る強力な能力を持っている。
緑川 烏堂《ミドリカワ ウドウ》
能力【全知全能《オールブラッシュ》】
二つ名【深淵のエンペラー】
中二高校の生徒会長であり、中二高校最強と言われる実力者。全ての能力を相殺する能力を持っており、体の中に魔物を飼っている…らしい。
栗松 翔悟《クリマツ ショウゴ》
能力【大樹招来《ウッドトラス》】
二つ名【進撃のパラディン】
啄木鳥の同期で、彼に厨二病学校のルールを教えてくれる解説役。自宅ではマンドラゴラなど魔界の植物を飼育している…という設定で、本当に飼育しているかは謎。
植物を操る能力を持っている。
- Re: 黎明のソナタ ( No.2 )
- 日時: 2020/01/26 19:03
- 名前: 祝福の仮面な (ID: T8uIPv/C)
「ふっ、フハハハハ…!」
「……何がおかしい?」
「最後に言い残す事は、あるか?」
と、黒髪の少年は質問すると右目を覆っていた眼帯を力任せに引きちぎる。眼帯が外され、露出された彼の右目は赤く、縦に一本に傷が走っていた。僕ともう1人の男が絶句しているのを他所に、彼は宣言する。
「俺は悪魔と契約する…!人間を変えるぞ!」
と。
すると、目と鼻の先に立っている金髪の男は、悪魔との契約を宣言した彼を睨み付け、怒りをぶちまける様に叫ぶ。
「そうか…想像以上だよ、君は3000年前と何も変わっていないんだな!良いだろう、僕は今!君を殺す事に決めた!」
刹那、何もない空間から突如として男の右手に一本の剣が現れ、男はそれを掴んで彼へ突き付けた。彼は突き付けられた剣を睥睨し、右腕を天に掲げる。すると、彼の右腕を漆黒の炎が覆い尽くした。
目の前の男も、剣を空高く掲げる。次の瞬間、男が翳した剣は純白の光を纏い、目と鼻の先には天高く光の柱が聳え立っていた。光と闇、相反する二つの概念を纏った2人は互いを睨み合う。
「覚悟は出来たか?」
「ほざけ、君はここで死ぬべきだ」
「……っ!」
俺は固唾を飲み、勝負の行く末を見届ける。
そして次の瞬間、光と闇は交差し、爆ぜる。
何でこんな事になったかって?それは数ヶ月前まで遡る…。
〜数ヶ月前〜
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい!」という母の見送りの言葉を背に、俺…啄木鳥 栄次郎は玄関を飛び出す。
「うわっ!ヤベー遅刻だ!」
と俺は声を上げ、走る速度を速める。しかし、愚かな事に俺は前から歩いて来る人に気付かず、肩をぶつけてしまった。
「あ、すいません…」
俺は軽く謝罪し、再び走ろうとしたがーーー
「な!?」
俺の体は、ピクリとも動かなかった。
ぶつかってしまった人はトランプをシャッフルする様な動作をしており、右腕を振った瞬間、男の右手には水で出来た5枚のカードが現れた。
「な…!?」
「運が悪かったな、ぶつかってしまった自分を恨め」
そう吐き捨てた男は身構え、カードを一枚飛ばす。
【死ぬ】
そう感じた俺は直感的に目を閉じる。次の瞬間、投げられたカードは何かとぶつかり合う様な音を立てた。
「……一体何が…!?」
俺は恐る恐る目を開けると、そこには、1人の少年が立っていた。少年の手には、つい先程こちら目掛けて投げつけられたカードが指と指の間に挟まっていた。少年はこちらに振り向き、問う。
「怪我はないか?」
「あ、はい。一応…」
少年の問いにそう答えると、少年は軽く息をついて男を見据える。
一色即発の状況に、俺は直感的に嫌な予感を感じていた。
第1話
【前編】
- Re: 黎明のソナタ ( No.3 )
- 日時: 2020/01/31 22:22
- 名前: 祝福の仮面屋 (ID: T8uIPv/C)
第1話(後編)
「お前…中々やるじゃないか、さては《使う》な?」
「さぁ?何の事だ?」
中折れハットを被った男は、再びトランプを一枚取り出す。
描かれていたのはQ《クイーン》、男はトランプを眼帯の少年の方へ向けると、何やらぶつぶつと詠唱を始める。
《森羅万象に渦巻く戦禍》
《全てを焼き焦がすは女王の涙》
《焼野原に何を願う》
「焼き払え【煉獄の手引き《インフェルノ》】!」
刹那、トランプから真っ赤な炎が放たれる。俺は情け無く身を屈めてしまうが、眼帯の少年は、炎に向けて手を翳した。
「な、焼けちゃうよ!?」
「何、案ずるな」
『俺には効かない』と、眼帯の少年は意味深な言葉を放ち、迫り来る炎を振り払うように翳した右手を軽く払う。次の瞬間、ハットを被った男は驚愕と戦慄に目を見開く。
「まさか、これ程とは…!」
「い、一体何が…!?」
「だから言っただろう、『俺には効かない』と」
俺には、確かに眼帯君が右手で炎を振り払おうとしたのが見えた。だが、そこから先の出来事の全てが、摩訶不思議としか言いようがないのだ。
何故なら
【彼が炎に触れた瞬間、赫赫と燃え盛る炎が一瞬にして消えた】
のだから。
俺に見えているのだから、あの男も見えていただろう。
「まさか、こんな所で出会うとはな…」
ハットの男は少しノイローゼ気味にぶつぶつと何かを呟き、眼帯君を見据えて口を開く。
「成る程、これが君の異常力《アブノーマル》か!」
「………」
「あ、あぶ?」
ハットの男がいきなり意味不明な事を叫び出した為、話の内容に付いて行けず、困惑した俺は首を傾げる。が、眼帯君は口を閉ざしたままであり、ハット男は三度トランプを取り出して投げようとするがーーー
「やめたまえ」
ガシッと、何者かに腕を掴まれる。
ハットの男は勿論自身の腕を掴んだもう一つの腕を振り払い身構えるが、即座に構えを解き、その場に跪いた。
状況を理解出来ない俺と眼帯君は、ハットの男の腕を掴んだ眼鏡をかけた男の方へと視線を向ける。こちらの視線に気付いたのか、眼鏡の人はこちらを見据えて口を開く。
「うちの者が失礼したね、君達は新入生かな?僕は《私立・中二高校》の生徒会長を務めている、緑川 烏堂という者だ。僕は君達を歓迎するよ、ようこそ、中二高校へ」
そう言って、男…緑川 烏堂はハットの男を引き連れて立ち去り、数メートル先でパッと消えた。烏堂達の行方も気になったが、今は怪我をしたかも知れない眼帯君の安否を確認しようと、彼に話しかける。
「えっと、大丈夫?怪我とかしてない?」
「エデンの果実は熟した。またどこかで会おう」
「………………ん?」
眼帯君から奇想天外な答えを返され、少し考えたが理解しきれず、俺は再び首を傾げる。そしてなんやかんやありながらも、最終目的地である私立中二高校には無事到着した。
「よう、啄木鳥。まさかお前も中高選ぶとはな(笑)」
「おう、翔悟。まさかお前も?」
「あぁ、そうだな」と、中学校の同期…栗松 翔悟は軽く頷く。そして、俺は先輩に今朝あった事の全てを話した。翔悟は何か思い当たる節があるらしく、暫く考え込んだ後、俺の顔を見て口を開いた。
「なぁ、中折れハットを被った男…だよな?」
「え?あぁ、はい」
「その人はうちの生徒会の幹部だぞ?名前は蛸山葵 平次、《万海のネプチューン》と呼ばれている実力者で、海の声が聞けるらしい」
なんかいきなりぶっ飛んだ話が始まったんだが!?
しかし、翔悟は困惑する俺を他所に、若干チュートリアル感のある説明口調で語り出した。
「そして、その上に君臨するのが生徒会長の緑川 烏堂先輩だ。深淵のエンペラーと呼ばれていて、体の中に魔物を飼っている生まれながらの厨二病にして、うちの学校の頂点を務める男だ。」
「あ、もう良いんで…」
「お前と今朝一緒にいた奴は、漆黒の堕天使と呼ばれている巷で話題になってる新入生だな。約4000年前から存在する悪魔の末裔らしく、女神族の復活に備えているらしい」
俺の言葉を無視し、翔悟はめちゃくちゃ説明くさい口調で一から全てをものの数分で語り終える。
翔悟先輩の話を全て聴き終えた俺は、ある一つの結論に至る。
「……翔悟、結論に至ったよ」
「ん?」
「来るとこ間違えたわ」
次回 Session2
【九姉妹捜索前線】
- Re: 黎明のソナタ ( No.4 )
- 日時: 2020/01/31 22:21
- 名前: 祝福の仮面屋 (ID: T8uIPv/C)
「……九姉妹?」
「あぁ、そんなものは空想だと思っていたが…まさか実在するとはな」
「あ、厨二病タイムはいいからね?」
入学式からはや三日後。
無事入学する事が出来た啄木鳥栄次郎は、眼帯君こと小埜寺夢翔から奇妙なワードが呟かれ、彼がいつも通りの厨二病タイムに入ろうとするが、栄次郎はそれを直ぐに止める。
しかし、『九姉妹』というワードが妙に引っかかるのか、通学路を歩く途中で栄次郎は夢翔に話しかける。
「あのさ」
「何だ?」
「さっきの《九姉妹》についてなんだけど…」
「9人の戦乙女が現れし時、戦女神との聖戦は始まる…」
止まらない夢翔の暴走に栄次郎は「駄目だこりゃ」と呟き、スマートフォンを片手に電話番号を入力する。数コールほど鳴った後、電話に対応したスマートフォンの持ち主は、彼の唯一信頼出来る同期だった。
どうやら事情は理解しているらしく、栄次郎が口を開く前に少年が本題に切り込んで来た。
「よう啄木鳥!話は聞いてるぜ?例の《九姉妹》についてだろ?」
「あ、知ってたんですか?」
「当然、取り敢えず学校に来い。話はそれからだ」
「会わせてやるよ、九姉妹にな」と、同級生こと栗松翔悟は電話を切り、栄次郎は未だにぶつぶつ訳わかめな事を呟いている夢翔を連れながら、私立中二高校へと向かった。
〜私立中二高校・一年教室〜
「よっ、待ちわびたぜ」
「では早速会わせてもらおうか、麗しき9人の戦乙女に…」
「うーん、戦乙女じゃねぇけど…この子が例の《九姉妹》だ」
厨二病タイムに入っている夢翔の一言を軽くあしらいながら、翔悟は教室の隅っこに向かって「来いよ」と、一言だけ告げる。こちらにやって来た人物に、栄次郎は質問を投げかける。
「えっと…君が例の?」
こちらへやって来た少女は、栄次郎の問いに首を縦に振る。
彼女の名は宮原 香澄(みやはら かすみ)。両親の都合により引っ越して来たらしく、近場の高校を選んだ結果がここらしい。まぁ、正直に言って彼女の選択には同情の余地しか無いが、彼女はとある悩みを抱えているそうな。
「その悩みって?僕で良ければ聞くよ?」
栄次郎の気遣いに対し、「そ、それは…」と口ごもる香澄。
人間関係の事なのだろうか、少し彼女は考えるような仕草を見せたが…数秒後に決心がついたのか、彼女は口を開く。
その悩みが、予想以上のもので。
「実は私…あと8人いるんです」
「……ゑ?」
予想外の答えに、栄次郎は首を傾げると同時にある事を思い出す。
ここは私立中二高校。誰もが常人ではあり得ない特殊な能力を宿している学校であり、悩み事が能力が関係していると察する事など、少し頭をひねれば誰でもわかるのだ。
申し訳なさ故か、香澄は少し顔を赤らめる。
「その…私の能力って、その、分身系の能力なんです。それで、あと8人の私は性格も違うから…」
「成る程…何かしらのアクシデントが原因で、君とその分身が逸れてしまったと言う事か」
翔悟の推理が当たったのか、香澄は首を縦に振る。
栄次郎は何をどうすべきか迷っていた次の瞬間、意外な事に夢翔が珍しく口を開いた。
「つまり、俺達は己が意思で動く傀儡達を元に戻せば良いのだろう?」
「は、はい!出来ればで良いんですけど…お願い、出来ますか?」
「いや、大丈夫。翔悟も大丈夫だよね?」
「まぁな、こんな可愛い子が困ってんのに放っておくのもアレだからな」
香澄の表情が明るくなる。
本日を以って、九姉妹捜索前線が敷かれた。
第2話
【前編】
- Re: 黎明のソナタ ( No.5 )
- 日時: 2020/02/02 11:16
- 名前: 祝福の仮面屋 (ID: T8uIPv/C)
「まず情報を整理しよう。君は分身の能力者で、何かしらのアクシデントが原因で別れてしまった…そうだよね?」
「は、はい。そうなんです…私、初めての場所に弱くて…」
「分かる、初めての場所に行くと何か緊張しちゃうよね」
「ふん、所詮は深淵に引きずり込もうとする愚者の仕業よ」
〜九姉妹捜索1日目〜
現在、俺達は何かしらのアクシデントが原因で8人の妹達と別れてしまった少女・宮原香澄と共に、逸れてしまった彼女の分身を探す手伝いをしていた。手当たり次第に探すのもアレな為、彼女の記憶に沿って分身達を探しているわけだが…
「中々見つからないね…」
「ですね…」
そう、探すのは良いもののこれが中々見つからないのである。しかも現在の時刻は午後5時半、辺りも薄暗くなって来た為、少なくとも何かを探せる様な状態では無いのだ。
「残念だけど…今日はもう…」
「だな、今回はここらで終わりにしよう」
大した情報や手掛かりも得られず、九姉妹捜索前線1日目は終了した。
〜九姉妹捜索2日目〜
「何か手掛かりは得られたか?」
翔悟は皆にそう問いかけるが、誰一人とて首を縦に振る者はいなかった。いよいよ捜索も暗礁に乗り上げたか?誰もがそう思っていたその時、意外中の意外な人物が助け舟を出してくれた。
その人物とはーーー
「緑川生徒会長!」
「やぁ、少し耳寄りな情報を手に入れてね」
そういった生徒会長…緑川烏堂は、軽く指を鳴らす。すると、何処からともなく副会長の蛸山葵平次が現れ、タブレット端末をこちらに向ける。すると画面には、路地裏の中に入って行く香澄の姿があった。
「これは…!」
「あぁ、宮原香澄の分身の一人だろう。僕の権限を使えば、警察を動かすことも出来る。手を組まないか?」
烏堂はこちらに手を差し伸べる。
ここで彼の手を払う選択もあるが、払った場合は九姉妹の捜索は確実に難航を極めるだろう。恐らくだが、向こうもそれを知っていてこちらにそう聞いて来たのだ。
ならば、利用出来るなら最大限に利用させて貰うしか無い。
「よろしくお願いします」
「君は物分かりが良いね」
九姉妹捜索二日目、開始
次回
【九姉妹捜索前線(中編)】
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