ダーク・ファンタジー小説
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- Helios trope
- 日時: 2019/12/16 19:04
- 名前: 凍鶴 (ID: 1aSbdoxj)
今世から見れば遠い遠い昔、真に存在したかも怪しい程遠い昔。
人は魔力と生き、獣や人でなしさえもがそこらで混在していた。太陽が東から昇り、西へと還っていくように。それは、日常そのものであった。
だがある時、預言者は云った。
或る年も或る年も干魃や飢饉、洪水などの異常気象が絶えぬ地界を救う為には"本来在るべきでない魔力を滅するしかない"と。その言葉を発したのはたかが一国の宮廷預言者。しかしこれが切っ掛けとなり地界に大きな動揺を生み、やがては総てを飲み込むであろう戦争にまで発展したのであった。
やがて最期を迎える地界を救う為、太陽へ向き続ける者達の古い物語。
【用語説明&世界説明】
>>1
[Episode 1 _Helio trope_]
>>2
【重要機関 Helio trope について】
>>5
その他詳細設定は展開が進み次第追加します。この小説が初めての投稿ですので、凍鶴の要領悪さにはどうか目を瞑って下さると嬉しいです……!!!!
- Re: Helios trope ( No.1 )
- 日時: 2019/12/15 15:00
- 名前: 凍鶴 (ID: LTX6Bi5r)
【用語集(順次追加)】
・地界_此の世、世界、今を表す言葉
・Heliotrope_組織名、読みはヘリオトロープ。ソル アウロラで訓練を受けた者達が所属し、その年齢は問わず地界に百名程存在する。その中で部隊に分かれ、少人数で活動する為一般にはその姿が明らかになっていない。だが殆どの場所で『リューグナー』と呼ばれており、非道な集団であるという認識を持たれている。
・Sol aurora_国名、読みはソル アウロラ。ヘリオトロープが所属する国であり、海洋に面している上東に位置しているお陰か最東の海洋国『Mare siles(マレ シレス)』とも親交があり、水上での戦いにも慣れている。ソルと略して呼ばれる事が多い。(※その他国名は余裕が在り次第追記)
【地界全体】
海と大陸の割合は6:4であり、地図で見れば一番面積の広い大陸は中心に位置している。ソルもこの大陸に在り、此処には他に大小問わず約十数もの国が存在している。中でも大国なのはソルとヴェントス(Ventus terrea_国名。ヴェントス テラー、風の大地という意)だが、小国でも戦略と地形に恵まれた南西のリベルタ(Liberta_自由という意)も上位に上がってきている。ヴェントスは内陸国である為水上戦に不慣れである。
最東に位置するマレは国土がやや広く、大国の一つと言っても過言ではない。赤道に近い為か若干熱帯の部分もあるが北方では気温差が常時10-15度以上ある。
この他にも国は多数存在するので、登場し次第追加。未だに発見されていない大陸や国は在る為、それも何時か書かれるかもしれない……?
- Re: Helios trope ( No.2 )
- 日時: 2019/12/15 17:34
- 名前: 凍鶴 (ID: LTX6Bi5r)
[Episode 1 _Helio trope_]
今日の始まりを、早朝からの豪勢なパレードが王都で告げるのがこれ程までに不穏に感じられた事など彼にはなかった。
後ろに日傘持ちを添わせたクラリネットの大列の後に煌びやかな金属の楽器群が並び、その最後には国王陛下が前に国旗を上げた黒車に乗っている。そして道の脇には国民達が国旗を手にして腕を振るなり大声で喜びの意を表すなどしてこのパレードを見送っているところなのである。
その中で、彼はその国王陛下が乗る黒車の前__護衛車、或いは暗殺の目眩ましとして同じ車種の物に乗っていた。午前四時に置き、準備してきた為か異様に目蓋が重いのがよく分かる。
「ヴェルリカ様、宮廷まで後5レトー程です。」
後頭部座席に座る彼のそんな様子を見るなり、助手席の女性は凛とした声で言った。
「ああ、解っている。」
そう答える他に、己の気を引き締める術は無かったのだろう。いつこの車に銃弾が撃ち込まれようとも可笑しくない中で無責任な発言は出来なかった。今の国内は国民の不安に溢れており、情勢も宜しいとは言えない。その中での主権交替だ、現在新しく国王が変わった以上、更なる逆境が待ち受けているだろう。……せめて、有能な御方であれば良いのだが……。……そんな感情を胸に渦巻かせながら、一人窓へと目を遣った。刹那__目の動きさえ遅れる程速く__それが前方からこの車の横を通り過ぎるのにも、気付かずに。
キギギギィィィィィ と音を発て、後方の車が半回転するのが辛うじて判った位だった。何が起きたのか、その状況処理が追い付かず彼__ヴェルリカは車が未だ走っているにも拘らず扉を蹴って飛び出し、腰の拳銃を手に国王の乗る車へと走った。
「ヴェルリカ様ッッ!!!!陛下に何が__」
先程の助手席の女性__ルアが後を追ってくる。しかしその足は、直ぐに止まった。
「近寄るなっ!!あんたらはリューグナーさ、コイツも含めて全員ッ……。姐さんを帰せ、今すぐに!!!!」
銃を構えていた。金髪の髪をばっさりと肩で切った、外見のみずぼらしい少女がそれを二丁。一方は車内の国王を差したままにし、もう一方は此方へと向けている。……姐?何の事なのか、ヴェルリカには全く見当もつかなかったが__後ろでルアが前へ来るのを躊躇しているのか、姿を現そうとしない。撃たれやしないかと怖いのだろうか。
「なぁ、帰せってばッ!!!!」
その間も涙目になって訴えかける少女はその華奢な脚でその黒車を一足に上がると、右手で上に銃弾を放った。このままでは、此方が撃たずとも誰かが彼女を射殺するだろう。そうなれば殺されるタイミングなど、最早彼女の運次第で決まると言っても過言ではないのだ。
「民衆よ聞け!!!こいつらはリューグナーだ、私の姐はヘリオトロープに捕虜に捕られたまんま帰ってこないんだよ!!!税金をたんと盗るやつらだぜ!?怪しいと思わないか!!?」
片言のソル語を叫び、所々で文法間違いをしながらに言い切ると、彼女は突然うめき声を発て__前に倒れ込んだ。人々のざわめきは今も続く。
「…………やめて、お願いします……ヴェルリカ様。その子は私の__妹なのです。」
直ぐ後ろで少女を拘束した彼は、ルアのその懇願を確かに聞き入れた。
- Re: Helios trope ( No.3 )
- 日時: 2019/12/15 17:15
- 名前: 凍鶴 (ID: LTX6Bi5r)
「だぁーかぁぁーらぁぁぁー、あんたら税金泥棒は姐さんを取ったんだよ、それは事実だろ!?」
甲冑に赤布を纏う下級兵士達に向かって、牢の中で少女は叫び続けている。そんな彼女に向かい、そこで常駐させられていた兵士達は
「うるせぃなぁ、もうちょい黙っとれよ」
と田舎者らしい訛りを含んだ言葉遣いで応答していた。だが、牢の通路の奥から現れた此方を見るなり直ぐに敬礼すれば、彼女への道を空けたまま通り過ぎるまで此方に礼をする。どうも彼女は銃を奪われようとも牢の中で暴れ倒したらしく、縄でしっかりと柱に括り付けられていた。
「ヴェルリカ様、何故此処に……?」
「……。来るのが夜になって申し訳ない。少し話がしておきたくて」
来るのがこの時間になった理由は、早朝の事件があろうと国王が公務を続けた上、晩餐会まで開いたからである。他国の来賓も来ていたせいもあるのだろうが、その間の厳重警備のせいで遅れたのが主な理由と言う訳だ。
「ヴェルリカ……?あんた、ヘリオトロープか?」
少女は此方の名前を聞くなり会話にすかさず入り込み、上体を前屈みにしてじっと見つめてきた。ルアと似た、緑で限り無く強い目をしている。それは闇の中で猫の目の様に光っていて、この薄暗い場所ではよく目立った。
「そう、ヴェルリカ-カサブレンサだ。君はソア-テリスだそうだね、姉の名は……ルア-テリスで間違いないか?」
間違う事はないだろう、彼女の姉が自分から名乗り出たのだから。勿論、容姿もよく似通うところがある。
だが唯一不明解なのは……何故、深窓の令嬢と言われながらもヘリオトロープへ入隊したルア-テリスの妹がこのようなみずぼらしい格好をしているのかだ。爵位を持った貴族の娘となればそうそう下級民へなんて成り下がることも無い筈だが……。
「うん、合ってる。やっぱりあんたらが姐さんを……ッ」
留まる事を知らぬ殺意が彼女を包み込む。それ故か、薄く切れた頬の血さえがその殺意を表しているように見えた。
「ソア、私は生きています。此処に、ヘリオトロープとして。」
……姐さん。……彼女が姉の姿を見た瞬間、そんな少女の弱々しい声が聞こえた気がした。
- Re: Helios trope ( No.4 )
- 日時: 2019/12/15 18:03
- 名前: 凍鶴 (ID: LTX6Bi5r)
まさか生きているとは思わなかった、と少女はヴェルリカの後ろから出てきた姉の顔をまじまじと見つめ大粒の涙を流した。それを見るルアの横顔も酷く申し訳無さげであり、ヴェルリカはそっと踵を返すと、下級兵士らを連れて邪魔にならぬ様その場から離れた。
「へぇ、まさかあの娘がルアの妹だったとはね……でも処罰は下るのかしら。国王の身を危険に晒した上、パレードを中止にしたのだから審議の結果が良くとも長期の投獄は免れないわねぇ……きっと」
自身の豪華絢爛な執務室でキャサリン-リヴァーモアは悩ましげに言い、ポニーテールに縛ったその黒髪を肩から下ろせば苦笑した。この女は厳密に言うとヘリオトロープの一員ではない。が、国内の精鋭軍人の一人である為に本人の意思は上層部の方でかなり尊重される様だ。そのおかげで数年前に此処に配属され、密偵と軍人の両方を上手くやっている。
「いや、ソア-テリスはうちに配属されるだろう。其処らの孤児院に入れるにしても心配なので当然だけどもね。良い戦力になるに違いない」
「まぁ、そんな事が言い切れるの?私はあの場に居なかったけれど……でもそうみたいね、とてつもなく脚が速いと聞いたから。……処罰が下らないよう、どうせ上層に貴方が一声添えたんでしょう?」
「さぁねぇ……俺は戦力になってくれるならそれで良い。利用するまでだよ、その為のヘリオトロープだろう?もう既に国に対して忠誠を誓っているんだ、魔力根滅の為に。その為なら何だって使うさ、例え命だろうと。」
ワインの苦い味を、ヴェルリカは好いていなかった。それ故か、彼女に勧められ一口だけ含んだ後に味の余韻さえ残したまま部屋を出、自室へと戻った。その後だろう、地下牢からルアが上がって来たのは。久方振りに己の妹と話せた安心のおかげか頬はいつもより緩み、それと同時に処罰への不安を抱いているようであった。
- Re: Helios trope ( No.5 )
- 日時: 2019/12/15 18:25
- 名前: 凍鶴 (ID: LTX6Bi5r)
【Herio tropeについて】
ヘリオトロープ。ソル国内の裏機関として扱われ、その隊員の出身の殆どが軍人か貴族である。国外からの余所者は決して受け入れず、内部での事は口外してはならないという掟が存在している。ヘリオトロープは普通の軍とは違い、主に密偵や護衛として使われることが多い。護衛は国の勝手な使役だが、それを受け入れざるを得ない状況にある。地界に約百名程存在するが、秘密厳守の為に少人数かソロで活動している為生存確認がとれない者も居る。何故彼らが存在しているのかの主な理由は『魔力を裏で支配する国、首謀者を暴く為』。元々この地界は魔力、魔術が存在せず科学のみに頼って自然の原理がはたらいていたという史実に従い、ヘリオトロープが秘密裏に結成されたと思われる。巷で彼らは『リューグナー』と呼ばれており、他国語では嘘つきという意味合いになるらしい。良い印象を持たれぬ彼らだが、その裏には権力や意図的に噂を次々と流す者が隠れていると考えられる。
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