ダーク・ファンタジー小説

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太平洋の箱舟〜復員船葛城〜
日時: 2019/12/21 22:49
名前: 坂本加賀 (ID: j24nS2D/)

1945年、8月15日・・・10年近く続いた戦争がついに終戦した。しかし、東南アジアを始めとした様々なところに、陸軍や、海軍の陸戦隊が息を潜めて隠れ、攻撃の機会をうかがっていた。そんな彼らを救うため、政府は復員省を設置、鳳翔、葛城など旧海軍の残存艦艇を世界中に派遣したのであった。

Re: 太平洋の箱舟〜復員船葛城〜 ( No.1 )
日時: 2019/12/22 22:03
名前: 坂本加賀 (ID: 6FfG2jNs)

「ボー」小さな港に船の到着を告げる警笛が鳴った。ここ、ラバウルには太平洋戦争を生き抜いた兵士達が大勢いた。「田中少佐!」「おお、木村か、お前はどの船だ?」この二人の兵士もラバウル航空隊戦闘機搭乗員として戦っていた。「は、私は鳳翔であります!」木村は嬉しそうに話す。「おう、あの幸運艦か、」鳳翔は、空母黎明期に生まれた日本海軍初の航空母艦だった。「少佐は何でありますか?」「ああ、俺は葛城だ」すると木村は驚いた顔を見せた。「あの葛城ですか!?」葛城は復員船の中で最も巨大な船だ。かつて日本が建造した最後の航空母艦だった。すると葛城の短艇がやってきた。「木村少尉、また本土でな」「はっ、必ず」短艇に乗り込んだ田中は、その葛城の巨大な船体に驚いた。「載せる機体と搭乗員がいたらな・・・」田中は元々、飛龍の戦闘機隊だった。しかし、ミッドウェー海戦で飛龍が沈んでからは海軍航空隊隊長として、ここ、ラバウルに配備された。彼は旧式とかした零式艦戦を操り、必死に戦ったが、結局目立った戦果を得る前に敗戦してしまった。「飛龍に似てるな、」そう思いながら彼は短艇を降り、葛城に乗り込んでいった。

Re: 太平洋の箱舟〜復員船葛城〜 ( No.2 )
日時: 2019/12/22 22:14
名前: 坂本加賀 (ID: 6FfG2jNs)

田中の部屋は、葛城の格納庫から少し離れた個室だった。少佐だったことが幸いしたのかはわからないが、とにかく雑に部屋割りしただけの格納庫よりはマシだった。「入れ、」部屋を見回していると突如ひ弱な男が入ってきた。「ら、ラバウル航空隊整備員のさ、真田翔造少尉です」葛城の乗員によるとここは相部屋だそうだ。「ラバウル航空隊搭乗員の田中義秀少佐だ」一応階級もつけて名乗ると真田は「恐れ入ります。こ、これからよろしくお願いします」と言った。「よろしく頼む」なんだかラバウルに来たばっかりの木村少尉のようだな、と思った。ラバウルに配備されたころは田中は大尉、木村はまだ下士官だった。木村は入ってくるなり恐縮そうにあいさつをしてきたのだった。こうして、田中の葛城での生活が始まった。

Re: 太平洋の箱舟〜復員船葛城〜 ( No.3 )
日時: 2019/12/31 22:30
名前: 坂本加賀 (ID: j24nS2D/)

「何だこれは?」田中らは葛城艦内で食事をとっていた、が・・・。「なんですか、この粥は?」確かにこの粥は不味すぎる。だが急に粥などを食べると死んでしまうことがあるとラバウルの衛生兵が言っていた。「死にたくなきゃ我慢しろ」と真田に言う。ラバウルを出て1時間、やっと食事にありつけると思えばその矢先、不味い粥を食わせられれば彼の言う事もわからなくはないが・・・。話を変えようと田中は真田に話しかけた。「なあ、真田。お前はどこの隊にいたんだ?一度も見かけたことがないが」そう聞くと真田は「雷撃隊です。藤永隊長の」「あいつか」今では見かけないが、藤永は赤城の搭乗員で何度か見かけた事もあった。いつも冷静で、雷撃の腕も確かであった。「そう言えば何か言ってたなぁ」ラバウルにきて間もない頃、藤永隊の直掩をしたことがあった。その帰り、彼はこういった。「今度の新入りはなかなかいい腕だな」しかし、彼は終戦の数ヶ月前、特攻で亡くなったと聞いていた。「彼は最後に何て言ってた?」すると真田は言い辛そうに言った。「これでやっと終わりだ、と」意外だった。藤永はプライドが高く、いつも戦いが終わる度まだ戦えた、と言っていたのだが。「実は、特攻の数ヶ月前に奥さんが亡くなっていて、」初耳だった。愛妻家だった藤永は疲れたのかもしれない。そう考えながら、田中は粥を食べ終えた。


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