ダーク・ファンタジー小説
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- 夜明けのノア
- 日時: 2020/01/22 20:53
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
日本人の混血児ノア・エルドラドは日本からフラクタルという
町に帰って来た。そこの市長アルカードの手により母親を殺される。
何故市長が人殺しをしたにもかかわらず捕まらないのか、何故
殺されたのか、それを暴くべくフラクタルの謎に迫る。その地の
5%が人外だという事実を知ってしまう。
1.心が動く>>01
2.吸血鬼の口契約>>02
3.黒兎コニー>>03
4.嫉妬の貴婦人エミリア>>04
5.
- Re: 夜明けのノア ( No.1 )
- 日時: 2020/01/19 20:35
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
フラクタル、その町はとても住みやすい街。その市長は
アルカードと言う男で彼の支持率は非常に高い。
「この町は純白の希望で溢れています!」
彼は市長選挙の演説でそう言い放つ。ノア・エルドラドは
日本で高校を卒業してからフラクタルに引っ越してきた。ここは
父親の故郷だ。父親はもういないがそれでも日本もここも
大好きだ。今日は太陽が眩しい暖かい日だった。
「どうしたの!?銃撃!?」
夜になりノアが下の階に降りるとそこには血を出して倒れる黒髪の
母親と銃を持った銀髪の男が立っていた。
「子どもがいたのか?それは誤算だったな…まぁいい、今のお前では
何も出来ない。何も知ることは出来ない」
男はそう言い残して悠々と家を出て行ってしまった。後日、警察が
絡み調査も行ったが誰も話を聞いてくれなかった。新聞には小さく
書かれただけだった。
- Re: 夜明けのノア ( No.2 )
- 日時: 2020/01/19 21:16
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
「今日は豪華な食事だな」
黒髪の男はノアの腕をつかんだ。夜、少々肌寒い。男は色白だ。
彼は舌でペロリと口周りを舐めた。光って見えたのは鋭い歯だ。
その歯を彼は今にもノアの首に突き立てようとしていた。
「お前は…何かを探しているな?何故親が殺されたのか、何故市長が
殺したにも関わらず誰も信じてくれないのか、と…」
「貴方は…誰?人間じゃないでしょ?」
「そうだな。私は人間ではない。人間ほど脆くもない、吸血鬼だ。
名をアルトリア。そういうお前は何と言うんだ?」
アルトリアは名前を聞く。ノアは自分の名を名乗った。
「ほぅ…ではノア、私がお前に協力してやろうか?ここの人口の
約5%が人外だ。私も含めてな。お前は既にここの謎に関わっている」
意味深な言葉を告げた。風が吹き体が震える。
「随分と強そうな人間だね、お前…ノアって言ってたけど」
木の上に立っている男はノアを見下ろす。ノアは上を見た。
黒いコートが風に煽られている。
「ユミル、何故ここにいる」
「あの人も吸血鬼!?」
「何倍も弱い癖に、随分と物騒なところに足を突っ込むんだね。
君、凄く弱いのに」
弱い弱いと連呼する。ノアは怒ることはしなかった。
「弱いよ人間は。でもある意味、どんな種族よりも強いと思うな。
長く生き過ぎても辛いだけ、押しつぶされちゃうよ」
ノアが話した。ユミルは笑った。
「あっはっは、面白い人間だね。ズルいなぁアルトリアばっかり
俺も協力しようっと」
- Re: 夜明けのノア ( No.3 )
- 日時: 2020/01/20 19:02
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
「フラクタルにこんな屋敷があったんだね」
ノアは目の前に建つ大きな屋敷を見て驚いた。
「俺たちはここに住んでいる。お前は家に帰れないだろう。
部屋は幾つか空いている。自由に使え。服も準備しておこう」
中は清潔に保たれている。男二人が住むような大きさではない。
用意された服は随分と上品な服だ。水色のドレスだ。
「お前が望む真実は簡単には解けやしない。ゆっくり歩もうじゃないか
この新聞を見てくれ」
その記事、写真に乗っているのは轟々と燃え上がる自身の家。
これまた小さくさりげなく乗せられていた。
「お前の、家だろノア」
「そうだね…これもきっとアルカード市長が?」
「違うよノアちゃん。市長はここまで目立つことはしない。雇われた
誰かさんがやったんじゃない?」
ユミルはいつの間にかノアの後ろに立っていた。彼女の肩に顎を置き
右手でそっとノアの頬に触れた。随分と気に入られているようだ。
「この家を燃やした奴、関係してるんじゃない?市長さんと」
「そう考えるのが妥当だな。調べる価値はある…兎に手伝わせるか」
「ん?兎?」ノアが困惑しているのを余所に話はどんどん進んでいく。
黒い兎がぴょこぴょこと跳びながらやってきた。兎は人の形に
変わった。V系の雰囲気が漂う黒兎の青年。吸血鬼がいる時点で
もう兎に驚いてはられない。
「コイツはコニーだ。兎の獣人。仕事だ、エルドラド邸を燃やした
人物を特定し調べろ。今日からノア・エルドラドがお前の女王だ」
コニーと呼ばれた青年は頷いて外に出て行った。窓から彼が見える。
膝を曲げ、伸ばした瞬間あっという間に遠くに跳んで行ってしまった。
「アイツは脚力が強い。常人の首なら奴の蹴りで楽に折れるだろ」
「兎を初めて怖いと思ったわ…」
- Re: 夜明けのノア ( No.4 )
- 日時: 2020/01/22 20:47
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
「しっかり仕事をしたのねベアトリーチェ。しっかり働きなさい、
あの人を奪い取った女の娘も殺すのよ!!」
恨み籠った声を出す長い赤髪の女の前に立つのは首に赤い糸が
巻かれた男型の人形だった。
「人形!?」
ノアは驚き声を上げてしまう。
「もう何が来ても驚かないって言ったのは誰だったんだ?」
アルトリアは呆れたような顔をする。ノアは一旦落ち着く。
「ベアトリーチェと呼ばれた人形を使う女はお前のお母さんを
恨んでいるらしい。ノア様も殺すって言ってた」
ノアは一人だけ知っている。ノアの母を恨んでいる女性を。
名をエミリア・ナーサリー、自分が幼いころは優しくしてくれたが
最近では嫌味を言ってばかりだった。コニーの耳がピクリと
動き彼は何かを思い出した。
「そういえば…あの人の命令って聞こえた」
「あの人?」
「考えれば分かるでしょ。どうせあのウザイ市長だ。その可能性が
高い、ならその人の喧嘩を買うだけでしょ」
ユミルはテーブルの上に足を乗っける。ノアは彼の言葉に頷く。
『どうかな?エルドラド家の娘を殺すことはできそうか?』
「えぇ、あんな娘、すぐに殺して見せますわ。お約束、忘れて
ませんわよね?私を貴方の妻に…」
『忘れてなどいない。しっかり仕事をしてくれれば、な』
男との電話。相手はアルカード市長だ。その様子をベアトリーチェは
こっそり聞いていた。羨ましい、殺したい相手を殺せば彼女は
自分を見てくれると彼は信じて止まない。
「何をしているの?ベアトリーチェ」
いつの間にか目の前まで来ていたエミリアはそう聞いてきた。
「いつ見ても綺麗ね貴方のルビーの瞳…」
彼女の手がベアトリーチェの頬に触れる。
「片方だけなら抉り取っても構いません。貴方の顔を見ていられる
ようになるなら」
「嬉しいわ私だけのお人形さん」
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