ダーク・ファンタジー小説
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- 夜の泡
- 日時: 2020/01/25 17:30
- 名前: 咲斗さん (ID: jmxtpCAp)
私の創作世界の童話です。
テーマ:「大人の童話」
作者:オーディーネ伯爵
作者のオーディーネ伯爵はこの作品を世に出したのち、自ら命を絶っています。
自殺の原因はこの作品に対する猛烈なバッシング。
この作品は童話「人魚姫」をオマージュした作品となっています。
夜にしか現れない女性と人生に挫折しそうな男性の悲しいお話です。
- Re: 夜の泡 ( No.1 )
- 日時: 2020/01/25 18:33
- 名前: 咲斗さん (ID: jmxtpCAp)
ある国に海を治める美しい人魚姫がいました。
彼女は夜になると浜辺や夜空を見に海面まで向かうのですが、
時がたつと同時に美しさを失っていく浜辺を見て、彼女は心を痛めていました。
ある日のこと、また夜空を見に行くと浜辺には1人の男性がいました。
男性は何を言うわけでもなくただただ浜辺に座り、海を見つめていました。
ふと目が合ったのです。人魚姫は彼の光の瞳に心を奪われてしまいました。
海底よりも深く暗く寂しい、恐ろしくも見える瞳を見つめつつ彼女は声を掛けました。
男性は驚いたように目を見開いた後、口を開きました。
職が見つからなくて精神を病んでしまったこと、今日は度合いが酷く気づいたらここにいたこと、声をかけられなけらば命を落としていたかもしれないこと…。
そこまで話したところで彼の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちました。
人魚姫はそっと、頬を撫でるように彼の涙をぬぐいました。
男性は彼女の手にふれました。
それから彼らは愛し合う仲になったのです。
彼らは毎日のように会いました。
男性は地上の様子を伝え、彼女は海の様子を伝えました。
ですが、そんな日々は長くは続きませんでした。
海が穢れていくにつれ彼女の力は失われていきます。
そのことを彼女は彼に伝えていませんでした。
彼女の力が失っていくにつれ、彼の職探しは順調に進んでいきました。
そして彼らが出会って三か月がたつ頃の新月の日、彼女はいつものように海中から姿を現しました。
男性は彼女の姿を見つけると浜辺に座り、こういいました。
「職につけたんだ、これでやっと君を迎えることができる。」
その言葉を聞いて彼女は悲しそうに、それでいて嬉しそうに笑いました。
「ありがとう。」その一言を残して彼女は消えてしまいました。
文字通り、消えたのです。
男性は急いで海面に駆け寄り水面を撫でましたが、そこにはただただ冷たい水しかありませんでした。
彼女の美しく白いしっとりとした肌はそこにはありません。
泣き崩れた彼が最期に触れた水面には、小さな泡が涙のように浮かんでいるだけでした。
END
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