ダーク・ファンタジー小説
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- ドレッドノート
- 日時: 2020/03/01 07:56
- 名前: 祝福の仮面屋 (ID: gC.HkZm.)
2050年、日本は世界初の試みであるナノマシン研究を確立させ、《ナノマシン化学》という新たな科学概念として世界に公表した。
そして、日本はイタリアと共同でナノマシンを利用した巨大AI筐体・《KARMA》を開発し、AIによる法の管理を宣言。
ナノマシン科学によって世界情勢は安定化しつつあるが、光が刺せば影が出来る。
これは、光に生きる者達とは真逆の人生を歩む闇に生きる者達の物語。
【登場人物】>>1.>>2
【組織】>>3
【兵器】>>4
第1章
代壱話>>5
代弐話>>6
代参話>>7
代肆話>>8
代伍話>>9
- Re: ドレッドノート ( No.4 )
- 日時: 2020/03/02 10:16
- 名前: 祝福の仮面屋 (ID: xZ7jEDGP)
《兵器》
バイトレーガー
全高・18.5m
重量・47.7t
世代・第9世代型四脚戦車
開発元・疾風迅雷net.
武装
・ケルベロス高出力電磁投射砲
・フライトドローン
・パルスガン(フライトドローン装備)
・チェーンガン
・対空ミサイル
概要
疾風迅雷net.が誇る超弩級第9世代型多脚式戦車。遠距離戦特化型を目的にチューニングが施されており、ケルベロス高出力電磁投射砲を始めとした各種遠距離兵装により、大火力での飽和攻撃を得意とする。圧倒的火力を誇る反面、内蔵バッテリーの消費が非常に激しく、4本の脚其々に予備の大容量バッテリーを装備しても最大稼動時間は167時間と現代兵器の基準でみるとかなり短い(補給無しで1週間も稼働するのは凄い方だが)。
ゲイルストーム
全高・13.7m
重量・9.5t
世代・第10世代翼竜型爆撃機
開発元・ZEXT・ENTERPRISE JAPAN
武装
・超広域索敵網アマテラス
・スケアクロウMK−2
・スパルタンライフル
・プルパルスランチャー
概要
ZEXT・ENTERPRISE JAPANが開発した翼竜型爆撃機。名称通り白亜紀に存在した翼竜・プテラノドンをモチーフとしており、高い空戦能力と機動力を誇る。超広域索敵網アマテラスは、頭部ユニット内に超高感度センサーが左右各5基装備されており、計10基のセンサーにより確実かつ正確な索敵を可能としている。コクピット部はスケアクロウMK−2と呼ばれる自律兵器に変形し、ブラストフォールの遠隔操作が可能となる。
スニークレイダー
全高・1.75m
重量・15.9kg
世代・第10世代鳥型索敵機
開発元・株式会社アンダーベスト
武装
・特になし
概要
ZEXT JAPANの姉妹社・アンダーベストがゲイルストームの支援機を想定して開発した機体。索敵に特化した性能している為銃火器は一切搭載してないが、その分空いたスペースに高性能センサーの搭載に成功し、ゲイルストームでは侵入不可能な極所での索敵活動が行える。またジェスターを乗せて運搬なども可能であり、ジェスター数機を搭載したコンテナをスニークレイダーに牽引させ、目的地への迅速な運搬に利用されている。
ジェスター
全高・1.9m
重量・95.5kg
世代・第10世代型人型アンドロイド
開発元・ZEXT JAPAN
武装
・ウロボロス腕部可変式銃剣
概要
ZEXT JAPANが開発した人型アンドロイド。放射線で汚染されたデイブレイクシティの調査や第10世代型戦車との戦闘を考慮して開発されており、装甲材に硬化ナノマシンを利用する事で安定した防御性能を持ち、ウロボロス腕部可変式銃剣と数の多さを利用した集団戦闘が主な戦術(多村からはその無機質な容姿と戦闘スタイルから『軍隊蟻』と呼んでいた)。現在では様々な組織に輸出されている。
エクスアーマー・ファルコン
全高・1.92m
重量・100.9kg
世代・世代不明
開発元・疾風迅雷net.
武装
・インフェルノ超高熱式ダガーナイフ
概要
疾風迅雷net.が開発した新型人工筋肉搭載型外装ユニット。迅用に調整が施されており、殆どのリミッターが解除されており常人が使用した場合は異常な負荷を伴う為、人並み外れた頑丈な体を持つ迅だからこそ使用出来る欠陥品。背部から翼型の飛行ユニットを展開する事で空戦能力を得る事もでき、インフェルノ超高熱式ダガーナイフを用いた近接格闘戦を得意としている。雷華や疾風用にも作製されているが、現段階での詳細は不明。
レイブレード・ストライク
全高・23.3m
重量・15.7t
世代・第11世代型戦車試作機
開発元・東柄重工
武装
・レイブレード超電荷圧縮粒子剣
・尾部チェーンガン
概要
東柄重工が開発した第11世代型戦車の試作機の内一体。本機の最大の特徴は両前腕部に搭載されている超電荷圧縮粒子剣・レイブレードであり、フレキシブルに稼働する基部ユニットから発振される高出力ブレードは、Xカーボンを主な装甲材としている強化外骨格すらバターのように切り裂く。しかし、この機体最大のデメリットはパイロットの安全性が全く考慮されていない事にあり、運用中に機体から投げ出されたパイロットも多い。
強化外骨格
全高・装着者による
重量・装着者による
世代・世代不明
開発元・疾風迅雷net.
武装
・ガトリングブレード(エクスタート)
・バスターソード及シールド(ナイト)
・ナックルバンカー(バーサーカー)
・50mmサブマシンガン(ポーン)
・高周波ダガーナイフ(アサルト)
概要
カーボンナノチューブの発展素材Xカーボンを主な装甲材として利用した、疾風迅雷net.が開発した簡易外装ユニット。エクスアーマー完成までの繋ぎとして主に使用されていたが、ZEXTからジェスターの買占めやエクスアーマーの完成と共に戦線を退いて行ったが、その安定した性能から疾風迅雷の戦闘員に好んで使用されている。自身の好みに合ったカスタマイズが可能であり、特殊な武装を装備した専用型も多数存在する。
- Re: ドレッドノート ( No.5 )
- 日時: 2020/03/02 13:52
- 名前: 祝福の仮面屋 (ID: xZ7jEDGP)
代壱話「本日の依頼」
2050年、日本は世界初の試みであるナノマシン研究を確立させ、《ナノマシン化学》という新たな科学概念として世界に公表した。そして、日本はイタリアと共同でナノマシンを利用した巨大AI筐体・《KARMA》を開発し、AIによる法の管理を宣言。ナノマシン科学によって世界情勢は安定化しつつあるが、光が刺せば影が出来る。これは、光に生きる者達とは真逆の人生を歩む闇に生きる者達の物語。
「さて、本日のご用件はどの様なもので?」
8月15日の午後12時半くらいの事、病気になりそうなほど眩しい日差しが差し込む一室にて、眼鏡をかけた男性とワンピースを着た女性は大理石で出来たテーブルを挟んで向き合っていた。ここは『MLC事務所』、荷物や通行の橋渡し役を担当している企業だ。
今、女性と対面している男は事務所の代表取締役・計良 千歳。元はナノマシン研究の第一人者だったが、今やこんな一企業の社長に落ちぶれている。千歳が女性に質問をすると、女性は周りを見回して誰かを警戒するようなそぶりを見せた後、重々しく口を開いた。
「行方不明の夫を見つけて欲しいんです」
「行方不明の夫…ですか」
女性の一言を千歳は復唱する。どうやら、今回の依頼は人探しらしい。その詳細を確認するべく、千歳は女性に問いかける。
「何故、貴方は旦那さんが行方不明だと分かるんですか?」
「夫は職場が近くにあるので、仕事が終わったらすぐに帰って来るんです…でも、急に連絡が取れなくなって…」
「ふむふむ、それで?旦那さんが最後に帰って来た日は?あ、出来れば時間帯も教えていただけると嬉しいです」
「夫が最後に帰って来たのは一昨日の午後13時くらいです。そしたら夫は時計を見て、何かに取り憑かれたように家を飛び出して…それから連絡が取れなくなったんです」
「成る程…」
女性の一言一句を的確にメモを取らながら、千歳は虚げな表情で空を窓の外を見つめていた女性に声を掛ける。
「……どうしました?」
「はひっ!?」
唐突な呼び掛けに驚いたのか、女性は珍妙な返事と共に体をビクンッと振るわせると、少し慌てた様子で千歳の方へ向き直る。
「そんな焦らなくても大丈夫ですよ、情報提供ありがとうございます。後はこちらで捜索しますので」
「はい…ありがとうございます。夫の事、よろしくお願いします」
「はい、お任せ下さい」
女性は丁寧にお辞儀をすると、ソファから立ち上がり部屋を後にする。どうやら企画の打ち合わせがあるるしく、これからそっちに向かわなければならないらしい。彼女をエントランスまで見送った千歳は再びメモに一通り目を通した後、スマートフォンを操作し、電話をかける。数コール鳴った後、電話の主は出た。
「どうしました?所長」
「少し開けるから、他に客が来たら君が応答してくれ。あ、所長関連の奴は全無視」
「了解」の一言と共に電話が切られる。千歳は地下のガレージへと出向き、そこに格納されているバイクのエンジンをかけてスーパーヒーローさながらの勢いで出社した。
***
「ここか」
目的地に到着した千歳はバイクから降り、『荻野目』と行書で書かれた表札を確認すると、玄関のインターホンを鳴らす。
………無論反応は無いが、千歳からすればこれも想定内である。
「(だろうな、少なくとも澪さんはこれから企画の打ち合わせに行くと言っていたから鍵は閉まったまま。夫が行方不明な以上、無理に開けておく必要もない)」
だが、念には念を入れてドアノブを回す。しかし、そこで千歳は想定外の状況に陥ってしまった。
「……開いてる?」
千歳はドアをゆっくりと開け、噎せ返る様な違和感を感じながら室内へ侵入する。一言で言えば住居侵入で捕まっても文句言えないのだが、一応近所の人には偽造した警察免許を見せてるから大丈夫だろう(警察免許偽造してる時点で大概だが)。そして千歳は寝室や浴室などを少し散策した後、未だ手をつけていなかったリビングへと向かう。
螺旋状の階段を昇り、三階のリビングへと続く扉を開けた瞬間、千歳は戦慄の光景を見る事となった。
「誰だ…アンタ…」
そこにはガラス張りのテーブルの上に一人の男が立っていたが、男の容姿は可笑しいとしか言えないものだった。男は臙脂色のタキシードを身に纏い、右が白・左が黒で彩られた仮面を着用していた。そして男の足元には鮮血の水溜りが出来ており、その光景に戦慄していた千歳に、男は仮面越しに話しかけて来た。
「貴方はここの家主様ですか?」
「……は?」
男の唐突な問いに、唖然としていた千歳の口から珍妙な声が漏れる。その声を聞いた男は自身の足元は見た後、仮面越しでも分かる程に口角を上げて口を開く。
「あぁ、これですか?これでしたらご心配なく、私にちょっかいをかけて来たチンピラを丸く収めて差し上げただけですから」
「いやそうじゃなくて、アンタはなんでこの家にいるんだ?アンタもあの人から依頼を受けてここに来たのか?」
千歳の問いに対し、男は「あの人の依頼?はて…何の事だか…」と首を傾げる。
『同業者じゃない』
千歳の本能がそう察し、同時に危険信号を馬鹿みたいに鳴らす。そして男が右手を挙げた刹那、千歳の放った弾丸は男の眉間を貫いたーーー
「!?」
ーーーかに思えた。
確かに、あのまま行けば男の眉間は貫かれ、男は一瞬で絶命していただろう。だが、男は眉間…それも仮面に銃弾が触れるスレスレで、人差し指と中指の間に銃弾を挟めていた。
「な!」
「中々な挨拶じゃないですか、さては貴方?依頼主ではありませんね?」
そう呟いた男は臨戦態勢に入る。
千歳も臨戦態勢に入った次の瞬間、目の前には右脚を振りかぶった190cmはあろう、仮面の男の巨体が現れた。
「うおお!?」
「フンッ!」
けたたましい破砕音と共に、振り下ろされた右脚は木材で出来た床を踏み砕く。千歳は間一髪のところで回避していたが、後一瞬でも間に合わなければ問答無用で踏み潰されていたであろう事実に、全身の毛が悪寒に逆立つ。
「器用に避けますねぇ」
「うるせぇ!」
男の口だけの賞賛をよそに、千歳は男に向かって蹴りを放つがその悉くを片腕のみでガードされ、お返しと言わんばかりに回し蹴りを頭部に食らう。
「ガハッ!」
派手に床を転がる千歳、男は更なる追撃を加えようと身構えた刹那、場違いにも程がある無機質な着信音が鳴り響く。自身のスマホかと千歳は一瞬考えたが、すぐにあの男のものだと言う事を察する。男は電話に対応し、少し申し訳なさそうな口調で話し出した。
「私です。あ、お嬢様ですか?いえ、何でもございませんよ、此方の事です。えぇ、分かっておりますよ。すぐに戻ります」
男は電話を切ると、再び此方へ向き直る。
「……まだやるか?」
「いえ、ここまでにしておきましょう。彼の方が少々ご立腹なもので…」
そう呟いた男はこちらへ歩み寄ってくるが殺意は感じられず、千歳が呆然と突っ立っている横を通り、男は窓の枠に脚を掛ける。
「名前を聞いてもよろしいですか?」
「計良 千歳だ」
「では千歳さん、また何処かで」と呟いた男は窓から飛び降りた。「何だったんだありゃあ…」と千歳は呟くと、何処からともなく噎せ返るような血臭に気づく。最初に感じた違和感の正体がこの血臭となると、千歳は嫌な予感を犇々と感じていた。
千歳の眼と鼻の先にあるクローゼット、千歳は恐る恐るその中を開けると中からは噎せ返る様な血臭や腐臭と共に、腹部が真っ二つに破られ内臓や骨が根刮ぎ取られていた澪の夫・裕二の死体が現れた。
次回
「暗殺者の一日」
- Re: ドレッドノート ( No.6 )
- 日時: 2020/03/02 22:09
- 名前: 祝福の仮面屋 (ID: xZ7jEDGP)
代弐話「暗殺者の1日」
「んん…!いい朝ですね…」
暗殺者の朝は早い。
私の名はマスクドナイト・クロノスチーム・ノアール、由緒正しき貴族家の末裔・ゴーストナイト家に仕える執事で御座います。私は洗面台で顔を洗い、身嗜みを整え玄関にて我が主人を出迎えます。
「おや、お早う御座いますお嬢様。お出掛けですか?」
「おはようノアール、少し散歩に」
「左様で御座いますか、お気を付けて」
まず、親愛なるン我が魔王!…じゃなかった、親愛なるン我が主人・ビアンカ様の日課である散歩を見送る。お嬢様の事でしょうから、散歩ついでに近所の方々の労を労いに行くのでしょう。そして私は他の使用人やメイドとの挨拶を交わした後、自己鍛錬も兼ねて我が自室へと戻って行く。
『Ladies,and,gentlemen!これから始まる手品には〜♪種も〜仕掛けも御座いません♪1!2!3!』
「日々…鍛錬…」
昨日溜撮りしておいたアニメを見ながら、私は自室にて自己トレーニングに励む。暗殺者以上に執事たる者、日々鍛錬を欠かさず行う事でちょっとやそっとでは動じない忍耐力と、何事にも怯まない強靭な精神力を得る事が出来ます…え?アニメは余計だって?……唯一の救いなので見逃して下さいお願いします。今日は数少ない非番の日なので、偶には趣味に没頭させて下さいお願いしますどーかこのトゥーり。
「ノアール様、少し宜しいでしょうか?」
「分かりました、すぐ行きます」
鍛錬を終えた私は、栗色の髪が特徴的なメイド長・レベッカさんに呼ばれて自室を後にする。アニメは大丈夫なのか?えぇ勿論、アニメが終わるまでの24分間部屋には誰も一切立ち入らせないので、アニオタとバレる心配も決して御座いません。
「ノアール様…あの…お約束、覚えて頂いてますか?」
「えぇ、勿論」
本日、私はレベッカさんとデートの約束をしていたのです。執事長とメイド長が同時に屋敷を後にするのはどうかと思いますが…まぁ、背に腹は変えられません。彼女との付き合いは長いので、折角彼女からデートのお誘いを受けたと言うのに足蹴にしてしまっては彼女に申し訳ないですし、何より彼女の思いを無下にしてしまう事になります。それに関しては私の良心の呵責に障りますし、何よりプライドが許せませんので。
***
「ここですか?」
「はい、ここ…実は私のお気に入りの場所なんです。ノアール様にも気に入って頂ければ良いのですが…」
「レベッカさん、私と貴方は同僚である以上敬語を使うのも疲れるでしょう?溜め語でも構いませんよ?」
「…ノ、ノアール、一緒に…行こ?」
「えぇ、喜んで」
頬を赤らめる彼女を傍目に、私は彼女の手を引きながらドアノブに手を掛け、ゆっくりと扉を開けます。すると、目の前にはアンティーク調の見るからに高価な家具が置かれているではありませんか。外装も随分と洒落ていましたが、内装もこう洒落ているとなると彼女のお気に入りスポットになるのも納得です。
「いらっしゃい…おやレベッカちゃん、今日は彼氏連れかい?」
「か…!お、おちょくらないで下さい!彼はその…仕事の同僚です」
「カッカッカ、まぁ座りな。今日はついてるなぁ、お客さんはアンタら二人だけだぜ?彼氏さんもゆっくりしていきな」
「ではお言葉に甘えて」
クラシックの曲が流れるこの空間では、まるで時が過ぎるのを忘れてしまいそうなくらい落ち着いて過ごせますね。どうやらレベッカさんはここの常連だそうですが、私も気が向いたら行ってみようかな…。
「ご注文承ります」
「おやマスター、これはこれは可愛らしいウェイトレスですね」
「自慢の看板娘だ、変な気は起こしてくれるかよ?」
「残念、私は幼女趣味ではないのですよ。では、私はオレンジペコを貰えますか?」
「私はテデザリゼで」
注文を受け付けたウェイトレスは、「かしこまりました、オレンジペコ一つとテデザリゼですね?」と注文を確認すると、マスターの方へと歩いて行く。かなり…というか結構今の時代では見かけない外装ですから、しかも立地もあって知る人ぞ知るといった感じですね。という訳で頼んだ物も飲み干し、店長の粋な計らいによって提供されたガトーショコラも頂いた後、しっかりと会計を済ませて帰路にたく事にしました。無論、デートは大成功です。
***
さて今はもう夜ですが、今回は些かいつもより時が過ぎるのが早く感じてしまいました。彼女に色んなところに連れて行って貰ったのもあるのでしょうが、いつもは長ったらしく感じてしまう非番の日も、こう言った楽しみを見つければ早く感じるものですね。「昼がもう少し長ければ」と嘆く声をよく聞きますが、今ではその言葉の意味が分かる気もします。
「ノアール…寝ないの…?」
「いえ、今ちょうど日誌を書き終えた所ですので、お眠りになられないのですか?」
「怖い夢…見たから…」
ビアンカ様は高校生くらいの年齢ですが、昼間の活発な彼女とは異なり夜中ではこうも甘えん坊な性格になってしまいます。こういう所も可愛いと言うべきでしょうか……まぁ、そんな事言ったら確実に二重を極まれちゃいますからよしておきましょうか。
「大丈夫です、私が側にいます」
「良かったぁ…」
………数十分後、すーすーと可愛らしい寝息を立てながら深い眠りに就いたお嬢様の毛布をかけ直し、私は部屋を後にする。これから仕事なのか?えぇ、何せ私はゴーストナイトファミリーに仕える暗殺者、闇に紛れて闇へと葬る存在であります故。
それでは皆様、Good,Night
次回
「更なる刺客」
- Re: ドレッドノート ( No.7 )
- 日時: 2020/03/03 20:15
- 名前: 祝福の仮面屋 (ID: cerFTuk6)
代参話「更なる刺客」
「はぁ……」
「珍しいな、お前が溜息を吐くとは」
千歳は珈琲を飲みながら溜息を吐き、珈琲を差し出して来た黒髪のマスター・黒星 統威の一言に対し、「そうか?」と一言だけ返す。現在千歳はとある店に来ていた。店の名は『玩具喫茶・STARS』。統威と二人の看板娘が経営する喫茶店であり、この店には他の店舗には無いこの店だけの秘密…というか個性があった。ここは『玩具喫茶』の名の通り、珈琲などはもちろん戦隊モノの玩具なども提供しているのである。故に一部の客層に莫大な人気を誇り、中には玩具目当てで来る客も居るんだとか。
「図太いお前がそこまでやられるとは…まさか、鬱病にでもなったか?」
「ばーか、んな訳あるかよ…ただ、アイツが気になるだけだ…」
「あいつ?」
「あぁ、『アイツ』」
因みに『アイツ』と言うのは、つい先日荻野目自宅で遭遇したマスクドナイト・クロノスチーム・ノアールと名乗る奇妙な男の事だった。臙脂色のタキシードにモノクロの仮面、数世紀前に流行った悪人を月に代わってお仕置きしちゃう系美少女戦士のアニメに出て来そうな風貌だったが、多分違うだろう。あの男と会ってから澪氏の夫・裕二氏の遺体を発見した訳だが…死後硬直からかなり時間が経っていた為、あの男が殺人犯とは考えにくいだろう。考えの纏まらない頭で必死に考えていると、統威が気を利かせてくれたのか、フォンダンショコラをカウンターに置いてくる。
「サービス精神か?」
「あぁ、何か考え事してるっぽかったからな。考え事すんなら糖分は必須だろ?」
「……ありがとよ」
「んで?その依頼の全容は依頼主にちゃんと話したのか?」
勿論、依頼主である澪さんには一部始終を話てある。彼女の自宅に仮面を被った謎の男がいた事、彼と交戦した事、彼もまた自分とは別の誰かから依頼を受けていた事や彼が家を退去した後に夫の裕二さんの遺体がクローゼットから発見された事。一応だが後は警察に対応して貰うように掛け合ってこそあるが、クローゼットの中の遺体が死んでからかなり時間が経っていた為、頭の奥では彼女が犯人なのでは無いかと考えている自分もいた。そんな考えをかき消すかのように、千歳はテーブルに置かれたフォンダンショコラに齧り付く。
「品のねえ買い方だな」
「糖分が必要なだけですー」
統威の一言に千歳は不貞腐れた様子で返す。統威は軽く微笑み、唐突に真剣じみた表情で資料の入った茶封筒を取り出し、千歳の前に見せつけて来る。
「これは?」
「取り敢えず話は後だ、一旦裏のスタッフルームまで来て貰おうか。鳴、輝、店番は頼んだが閉めても構わん」
「分かりました!」
「はいはーい」
統威は看板娘二人にそう告げると、千歳を連れて裏口から繋がるスタッフルームへと連れて行った。
***
「そんじゃ、まずはこれにザッとで良いから目を通して貰おうか」
「コイツは?」
「最近起こった連続行方不明事件、そして連続自爆テロに関する資料だ」
「で?この資料があの事件と何の関係があるってんだ?」
千歳の問いに対し統威は「まぁ落ち着けよ」と諭し、ソファに座るように促す。千歳はぶつぶつと何かを言いながら座り、座ったのを確認した統威は続きを話始める。
「でまぁ作家の続きな訳だが…取り敢えず、この事件には何らかの組織が関係してる」
「何らかの組織?」
「あぁ、お前は臙脂色のタキシードを着た仮面の男と会ったって言ってたよな?」
「あぁ、それがどうした?」
「その男が所属してる組織、その名前はゴーストナイトファミリーだ。流石のお前でも名前くらいは知ってるだろ?」
名前どころか、ゴーストナイトファミリーと言えばイタリアを拠点に活動しているマフィアの家族…即ちマフィアファミリーならぬ、家族でマフィアやってるファミリーマフィアである事も知っている。子供達は美男美女の集まりらしく、長女・ビアンカには連日見合いの申し込みが殺到しているのだとか。
「大体は」
「まぁ、ファミリーマフィアって事くらい知ってれば大丈夫か?まぁいいか。そんで後一つの組織な訳だが、疾風迅雷net.ってのも知ってるか?」
確か、最近ネットで話題になっているテロリスト集団の事だったか。『迅』と名乗る少年をリーダーとしており、高校生かそれ以下の年齢の子供達で構成されているとも聞いた事がある。活動拠点は未だに明らかになっていないが、一説ではかつての国後島…現在は『デイブレイクシティ』と呼ばれている廃都を拠点にしているのでは無いかと言われている。
「だけどよ、何で疾風迅雷net.みたいなチンピラ紛いの集団がマフィアと手なんか組んでんだ?」
「おいおい、誰も手を組んでるとは言ってねぇだろうがよ」
「ゴーストナイトファミリーがチンピラ紛いの集団と手を組むと思うから?」と統威は付け加えるが、確かに統威の言う通り、厳格なゴーストナイトファミリーが新参のテロリスト集団などと手を組む理由がない。ここまで来ると犯人は疾風迅雷net.で、彼らが犯罪を犯した時間帯にあの男がやって来た時間が被ると考えられるが、だがそれでも腑に落ちない点はいくつか存在する。
「いや…だとしても、何でこの事件にその疾風なんたらnet.ってのが関わってるのかが分からん。」
「そうか?話によれば荻野目裕二さんは元政治家だったそうじゃ無いか。その来歴なら、ネジの飛んだテロリスト集団に目を付けられても可笑しくないと俺は思うが?」
「いや、そうかも知れねぇけど…」
刹那、けたたましい爆発音と共に鳴と輝の二人がスタッフルームに飛び込んで来る。戦慄する千歳を他所に、統威は目を見開きながら血塗れの二人の元へ駆け寄る。
「おい!鳴!輝!何があった!?」
「て、店長…逃げて…下さい…!」
「うぅ…」
統威は鳴達が飛び込んで来た方角を睨み付け、侵入者を牽制する。しかし、彼らの前に現れた侵入者の風貌は、無機質で機械的な見た目をしていた。
「何なんだ、テメェ…!」
『標的確認、計良千歳および黒星統威。殲滅開始』
統威は侵入者に問いかけるが、侵入者は無機質な機械音声で統威と千歳の二人を新たな標的と定める。予期せぬ侵入者との戦いが、今幕を開けた。
次回
「Blood,Memories」
- Re: ドレッドノート ( No.8 )
- 日時: 2020/03/06 16:03
- 名前: 祝福の仮面屋 (ID: cerFTuk6)
代肆話「Blood,Memories」
「ラアアァァァッ!」
生身とは思えない轟音を響かせ、千歳が放ったハイキックは無機質な侵入者の頭部にクリーンヒットし、侵入者の首を180度回転させる。本来なら…いや、中に人間が入ってさえいれば、今すぐに侵入者の動きは停止するだろう。しかし、侵入者は強引に首を180度逆回転させ首を元の位置に戻す。かなり不気味な印象を受けるが、中に人が入っていないとわかった以上本気で戦える。千歳は深呼吸し、次の行動を読む為に瞼を閉じるがーーー
「避けろ計良ァ!」
「ッ!?うおおおお!?」
唐突に統威の叫び声が入り、千歳はバク転の要領で後方に回避する。刹那、さっきまで千歳が立っていたところが真っ二つに切断される。その切り口は地割れとかで起きる粗雑なものではなく、まるで鋭利な刃物でバターを切り裂いたように綺麗だった。
「何だこれ!?」
「知るか!次が来るぞ!」
再び降り注ぐ斬撃。千歳と統威は共に回避し、統威は携行している拳銃の引き金を引いて侵入者に向け発砲する。二人はその悉くを避けて行くが、放たれる斬撃の雨霰は応接デスクなど家具をぶった斬って行く。
「どうすんだよアレ!」
「俺が知るか!」
「どうやらお困りのようですね…」
くぐもった声が聞こえた次の瞬間、侵入者の体を何かが貫く。その先端は槍のように鋭く、全体的に見れば機械で出来た蠍の尾の様な形状をしていた。その蠍の尾は持ち主の方へと縮んで行き、腕に絡まるようにして格納される。その男を、千歳は見た事がある。
「ノアール…!」
「おや、これはこれは千歳さん。こんな早くも予言が当たろうとは」
臙脂色のタキシードを身に纏い、白黒の仮面を付けた男・ノアールは蠍の尾が巻きついた左腕の袖を降ろすと、仮面越しでも分かる程に明確な笑みを浮かべる。そして千歳の冷たい視線に気付いたのか、若干芝居が掛かった様子で両手を上げる。
「さて、私は帰りますかね」
「まて、話は後で聞こう」
「…話のわかる方は嫌いじゃないですよ」
***
「早速だが、お前は何でここに来た?」
単刀直入な質問だが、その選択は間違っていない。確率は低いだろうが、彼が現れたタイミングの都合が良すぎる以上、マッチポンプの可能性も否めないからだ。しかし当ては外れたのかノアールは軽く首を傾げると、まるでこちらの考えを見透かしているようにーーー
「………まさか、貴方方は私のマッチポンプなんじゃないかとか思ってます?」
冷たい声色で質問を返す。
「あぁ、何せ登場のタイミングが良過ぎたからな。疑わない訳にも行かんだろ」
大抵の者ならここで萎縮してしまうだろうが、流石は裏社会の大物と言うべきか統威は微動だにせず冷静に返す。そして統威はノアールに茶封筒を渡し、本題に入る。
「まぁ、お前のマッチポンプの可能性は低いだろうが捨て切れないからな。それにお前はあの日、何故荻野目さんの家にいた?」
「ノーコメントで」
「………巫山戯てんのか?」
「いえね、私はしがない暗殺者。依頼主の素性の詮索は致しませんし、私の仕事は依頼を確実に遂行する事ですから」
統威に胸ぐらを掴まれながらも、ノアールは飄々とした態度を崩さない。そしてノアールはため息をつくと、うんざりした様子で胸ぐらを掴む統威の腕を見下ろしーーー
「それと、この腕…離して貰えますか?」
「がっ!?」
強引に引き剥がし、怯んだ統威を応接デスクに組み伏せる。無論統威は拘束から逃れようと抵抗するが、ノアールはビクともしない。
「はてさて、では先程の話の続きと行きましょうか。千歳さん」
「あ、あぁ分かった。統威、少し二人きりにして貰えるか?」
「………分かった」
統威が出て行った事を確認したノアールは、音もなく椅子に座り、まるで猛禽類のように鋭い瞳で仮面越しにも関わらずプレッシャーを与えて来る。千歳は少し恐怖を覚えながらも、ノアールにある質問をする。
「アンタは何で、あの時あの家にいたんだ?それに…あれはアンタがやったのか?」
「ふむ、貴方からちょっかいかけて来た癖にそれを言いますか?……まぁいいでしょう。話せる所は話しましょう」
どうやら彼は、自分と同じく誰かからの依頼を受けて荻野目邸へ行っていたらしく、彼曰く「自分が来た頃には、既に例の夫は殺されていた」ようだった。その依頼主に関して聞くと、「守秘義務ですのでノーコメントで」と返して来た為殴りかかりそうになったが、つい先程統威が組み伏せられたのを思い出し座り直す(因みに、統威は現在鳴と輝を連れて店の修理を行なっている。)。
「そんで、例の写真には目を通したか?」
「えぇ、これは私の勘なのですが…この事件にはどうやら、疾風迅雷net.が関わっていると思います」
「………根拠は?」
「依頼内容を話すのは私の流儀に反しますが…私は、依頼主に『父の護衛』を頼まれていたのです。即ち、貴方は妻の澪さんに依頼を受けたのならば、私は彼の娘さんに依頼を受けたと言う訳ですね」
言わばそう言う事だ。
どうやら、彼もまた裕二氏の身内の人間から依頼を受けていた訳で、彼も依頼主に依頼の失敗を告げていたらしい。
「何で言わなかった」
「貴方が突然殴りかかって来たんでしょ」
ノアールの冷静なツッコミに顔を逸らす。正論過ぎてぐうの音も出ない。それを見かねたのか、ノアールは「まぁいいでしょう」と話を戻すとタキシードの胸ポケットを急に弄り出し、一枚の写真を机に置く。そこには、全身を鋭利な刃物で滅多刺しにされ腹を真っ二つに破られた裕二氏と、監視カメラに向かって笑顔を浮かべた血塗れの少年がいた。その少年の顔はフードで隠されており、顔はよく見えなかった。
「おそらく彼がそうです」
「……コイツは?」
「彼の名は『迅』。疾風迅雷net.のリーダーにして、この事件の最重要人物です」
次回
「Are,you,crazy?Yes,my,crazy!」
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