ダーク・ファンタジー小説

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夢を見続けたい。
日時: 2020/02/04 15:17
名前: 咲斗さん (ID: jmxtpCAp)

今回は創作世界の物語ではありません。ご了承ください。
診断メーカーからいただいたお題に沿った物語です。

「逃げられないならぶつかるのみ」「指の隙間から零れ落ちるのは」「午睡の憂鬱」。
上記の三つをテーマに書き上げました。

Re: 夢を見続けたい。 ( No.1 )
日時: 2020/02/04 15:16
名前: 咲斗さん (ID: jmxtpCAp)

梅雨の午睡は憂鬱だ。
どんなに晴れやかな夢を見ていても、起きれば湿った空気に流される。
湿った空気を吸い込めば、なんとなく頭が重くなる。
頭が重くなれば、問題から逃げ出したくなる。
逃げ出したくなって、また寝息を立て始める。
この繰り返しなのだ。
そんなことをぼんやり思いながらゆっくりと体を起こし、目の前の机の上を見るが空の皿と湯のみと薬袋が置いてあるだけだった。
「まだ書いてなかったか…」
誰もいない部屋でつぶやいた。ふと思い、棚をあさると書きかけの原稿用紙があった。
やっぱりあった。
原稿用紙を机の上に置いて、近くに置いてあったボールペンを手に取る。
ワインレッドに黒の線引いてある、少し高めのボールペンだ。
俺が書くことを始めた時に送った最初で最後のものだった。
書きかけの原稿用紙に向き合い、ペンを進める。
これが俺の最後の作品となる。
今まで物事から逃げていた主人公が、ある女性と出会って生き方を変えていくという話だ。
決してオリジナリティが強い話ではないが、俺自身はこの話を気に入っている。
この話は実際にあった話でもなく、ストーリーの起承転結が多いわけでもない。
それでもこの話だけは書き上げないといけないのだ。
『そういって彼女は力なく笑い、規則的な機械の音は一本の線になった。』
ペンをおいた。ようやく完成したのだ。
だが安心するにはまだ早い。今から読み直さなければいけない。
一文字一文字をゆっくりと辿っていく。
文字を辿って行くうちに、頭の中で今までのことが映像のように流れていく。
初めて彼女に出会った時のこと、彼女と悲しみを共有したこと。
そのどれもがかけがえのない瞬間だった。
初めて彼女が自分の本を読んでくれた時、彼女は泣いて喜んでくれたな。
締め切りにギリギリ間に合うかどうかの時、彼女はそばで待っていてくれたな。
そんな彼女のやさしさを思い出すたびに涙がこぼれ落ちそうになる。
一通りの文章に目を通した後、ため息をついてそれを机の奥のほうに置いた。
少し眠くなってきた、副作用だろうか。
大きく欠伸をして机に突っ伏す。
耳を澄まさずともうるさいぐらいに聞こえる雨の音を流しながら、ゆっくりと目を閉じる。
もう一度、君に会えたらよかったのに。
そう思いながら眠りにつくと、夢の中で君に出会った。
どんなことを話したかすらも覚えてないが、目を覚ました時不思議なほど心が満たされていた。
目をこすりながら時計を見ると、いつの間にか晴れていたようで時刻を知らせるように烏が鳴いた。
なんとも間抜けな鳴き声に心を揺らされて、気づいたときには顔を覆う手から涙がこぼれ落ちていた。

END


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