ダーク・ファンタジー小説
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- 調和の旗
- 日時: 2020/01/29 17:14
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
異国の聖女アストライア。
彼女がリブラ王国に来ることによって国だけでなく全ての国々に
影響を及ぼした。半不老不死の山羊の獣人司教イナンナはある
伝説を語り出す。それは厄災から民を救った英雄プロメテウスが
異国の軍人だったこと、そしてアストライアは彼の生まれ変わりの
可能性があるということ。
- Re: 調和の旗 ( No.1 )
- 日時: 2020/01/29 19:12
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
プロメテウスは国王に憑く厄災の権化を払い国を救った。
彼の使った術はどの書を見ても載っていない、そして彼も何も
語らず誰も研究しきることが出来なかった魔術だと言われている。
彼は遺言を残した。
必ず、また戻ってくると…。
「昔話だから信頼は無いがね…さぁお迎えだアストライア。王様は
君を呼んでいる」
「イナンナ、世話してくれてありがとね」
去り際に言われた礼にイナンナはふと笑みを浮かべた。
教会の外で出待ちしていたのは白いマントを纏った集団だ。
「貴公がアストライアか。俺は葬列師団団長ゾディアスだ。
以後よろしく頼む」
アストライアも頭を下げる。徒歩で数十分かけて城へ向かう。
「イナンナ殿から俺たちの事は教えられているだろうか?」
「はい、確か全員一度は死んだ人たちだと」
彼女の言葉にゾディアスは相槌を打つ。彼らは全員何らかの理由で
死んだ人物だ。城に到着し中へはアストライアのみ入ることに
なった。奥で構えていたのは仮面で顔を隠した金髪の男。
仮面の奥からチラッと赤い瞳が見えた。
「お前が異国の聖女か。名をなんという?」
「アストライアと申します」
彼は間を開けて話し出す。
「お前は死を恐れるか?死は恐ろしいぞ。ゆっくり死んでいくことも
庇って死ぬことも裏切られて死ぬことも…必ず痛みや苦しみが
付き添う。葬列師団は国の禁忌で蘇った一種のアンデッド。奴らは
様々な死を知っているのさ…どんなに凄い英雄も死を告げる」
「そうですね。でも死んだ後だからこそ英雄になると思います」
そう答えると王シドゥンは笑った。
「面白い。…隠れていないで出てきたらどうだ?リブラ王国の王、
ミトラス」
空間が歪み現れたのは長い白髪の男だった。ここはリブラ王国の
隣にあるヘルヘイム王国だ。白髪の男がリブラ王国の王ミトラス。
「随分と面白い娘が転がり込んできたな。約束通り、お前の国に
引き渡そう」
「しっかり約束は果たすんだなシドゥン」
「裏切ったところで利益は無いからな。さっさと行け」
アストライアはリブラ王国へやってくる。
- Re: 調和の旗 ( No.2 )
- 日時: 2020/01/29 21:27
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
リブラ王国、城にやってくるとすぐに数人がアストライアに
近寄ってくる。
「お前、あのプロメテウスの転生体なんだって!?俺と勝負しようぜ」
「おぉ、凛とした美女じゃないか。今度お茶でも」
「何だい?色白だね、英雄の転生体とは思えないよ!」
「ちょっ、近い!!」
アストライアは仰け反る。やはり英雄プロメテウスの転生体
ということで話が広まっているようだ。だが一人、彼女に近寄ってきた
背の低い女はアストライアの胸に手をかざす。
「私は大審院の長官イシュタリア。貴方はこの国の王です。
ミトラスは貴方に次期王としての証を刻んでいますね」
「あぁ、まぁ今年中は俺が王だが来年はアストライアに継いで
貰おうと思っている。頼めるか?」
「断れません。頑張ってみますね」
大審院、こことは違う世界でいうと最高裁判所に近い。罪人を
公平に裁き更に戦場にまで飛び出す裁判官たちだ。そして城に
集まっている集団はギルド、シャンバラ。団員一人一人に
宝玉が渡されている。その効果は様々だ。最初に話してきた男は
グレイヴ、ナンパしてきた男はヘリオス、言葉遣いが荒い女は
アタランテだ。
「ヘリオス、アンタはもうちょっと女の扱い方ってのを学びな。
アストライアが驚いてたじゃないか。こりゃあもうフラれる未来しか
見えないね」
「何ッ!?俺は至って真面目だって!」
「ハッ!どの口がいうんだい!!アストライア、長いからアストって
呼ぶけどコイツがセクハラしたら呼びな。一発かましてやるからさ」
「は、はぁ…」
- Re: 調和の旗 ( No.3 )
- 日時: 2020/01/30 21:46
- 名前: 枢木 (ID: xs5T8t9X)
城の庭ではアストライアとグレイヴがぶつかっていた。
理由は簡単、どっかの兵士が本当にアストライアが英雄の転生体
なのか疑いを掛けたからである。そこで脳筋グレイヴは手合わせ
すれば分かるんじゃねと軽い気持ちで言った。それだとばかりに
アストライアは彼の波に飲み込まれてしまった。グレイヴは内心
驚いていた。こっちは二本の剣で攻めている。そしてアストライアは
戦闘初心者のはずだが動きは良い。彼女も剣で応戦している。
—カルブンクルス。
ラテン語でルビーという意味の単語。その剣が通ると赤い光が
見える。二本の剣を構え走るグレイヴに対してアストライアは
剣を引き腰を低く保つ。剣を握り直しタイミングを見計らい
突き出した。
—ペドレリーアシュトローム。
赤い炎の剣はグレイヴに向けて突き出された。その炎は悪徳を
燃やす炎、そして決して真似できない技だ。驚きでグレイヴの腰が
抜ける。全員が声を上げる。
「あの技、あの動き、無意識ながら彼女の体には英雄の記憶が
染み込んでいる」
イシュタリアは賞賛する。顔も何処か誇らしげな笑顔だ。
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