ダーク・ファンタジー小説
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- 戦塵のアサシン
- 日時: 2020/02/09 16:32
- 名前: マシュマシュ (ID: .j7IJSVU)
ムシュは一文無しだ。居住きょじゅうとはもちろん無縁だ。言うなら、浮浪者ふろうしゃであり放浪者ほうろうしゃである。
その人生は子供の頃から........常に死ぬ覚悟は出来ていた。彼が知らない間に。
毎日、罪を重ねる。それが彼の日常。いや非日常だろう。
それが当たり前になって、習慣になって、どことなく憎悪ぞうおと憤慨ふんがいと悲哀ひあいが彼を狂わせた。
「本当の俺とはなんなのか?」「死にたいのか?」常日頃、考えていた。
自分が納得する答えを何度も見出したが、一時的な気休めに過ぎなかった。
日ひを重ねるうちに考えることをやめていた。
今日は、はっきりとしない天気だった。
いつも通り、彼は荒廃こうはいした街、アポピスで生きている。
アポピスは通称つうしょう、法から伏せられた街と呼ばれ、犯罪者は、もちろん淫売婦いんばいふ、詐欺師、反社会派、自己破綻者じこはたんしゃなどが棲すみついている。
そして、そこアポピスは砂埃すなぼこりが盛大せいだいに舞っており、発砲音はっぽうおんを年がら年中、奏かなでる街であった。
彼は人影のない小路で横になり、どんよりとした雲り空をボーッと眺めていた。
すると「バダバダバダバダバダ」と割れるような音が耳一杯に聞こえてきた。
視界には三機のヘリコプターが現れ、視界から消えていった。
おそらく政府アメミットの機体だろう。
不穏ふおんな空気を感じ、心臓を握りしめられるような緊張きんちょうが全身に走った。
案の定、その機体から三発の落下傘爆弾らっかさんばくだんがじわじわと降りてゆくのが見えた。
落下傘爆弾らっかさんばくだんとは自分アメミットの機体も爆裂ばくれつに巻き込まれないように、落下傘らっかさんを付け、落下速度を遅くし、その場から離れるために考案された爆弾である。
「曇り空そうせきうんは通常、上空2000メートルを浮遊ふゆうしている。」
「それと比べるとその機体は雲の傍かたわらを、間髪かんぱつを入れずに飛んでいる。」
「つまり、その爆弾は少なくとも、落下地点から直径2000メートルに被害を及ばず並外れた爆弾。」
彼は、息を弾ませていた。色んな意味で........
「なんだこの胸の高鳴り、最高だあー、最高だあー、最高だあー、はぁー疲れた。」
頭の中で恐怖と興奮が交差していた。
恐怖と興奮は表裏一体で、それらを感じ取ると、同じエンドルフィン快感ホルモンが体内を流れる。
人間が死を迎える時、エンドルフィン快感ホルモンが大量に供給され、圧倒的な安らぎを感じる。
彼はまさにそれ圧倒的な安らぎを感じていた。
落下傘爆弾らっかさんばくだんがゆっくり落ちてゆく様さまを瞳ひとみを凝らして眺めていた。
「来る!来る!来る!あれ?来ないのかよ!」
「バァッガギュッズーーーーーン!!!」