ダーク・ファンタジー小説
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- 痛 み を 教 え て ----- 。
- 日時: 2020/02/27 10:21
- 名前: えびてん (ID: BcUtmJZZ)
【 登 場 人 物 】
@砂原 樹里(サハラ ジュリ) 17 ♀
先天性無痛症の少女。
幼い頃から両親に虐待を受けていたが、樹里が小学生の時に両親と姉が行方不明になり、現在も見つかっていない。
@三島 理央(ミシマ リオ) 27 ♂
警視庁捜査一課の刑事。
連続殺人事件について調べる。
@岸谷 紗綾(キシタニ サヤ) 24 ♀
警視庁捜査一課の刑事。
三島と共に連続殺人事件について調べる。
@新田 直人(ニッタ ナオト) 17 ♂
樹里の幼馴染。
- Re: 痛 み を 教 え て ----- 。 ( No.1 )
- 日時: 2020/02/26 14:50
- 名前: えびてん (ID: OxFItNy1)
"痛い痛い!"
みんなそう叫んだ。
血を流すと、みんな。
痛いの?
痛いって何?
何で体から水が出てるの?
ねえなんで?
教えてよーーーーーー。
こうしてまた、あたしは目の前にいる人間の命を奪った。
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「また防げなかった・・・」
現場を見るなり、三島理央は悔しそうに呟いた。
「三島のせいじゃないだろ、そんな落ち込むな」
隣にいた尾形昌幸はそう言って三島の肩を叩いた。
現場には複数刺された男の遺体。
血のついた部屋。
現場を見るなり、吐き気を催し出ていく警察官も少なくなかった。
「人間のやることじゃねえな・・・本当に」
尾形は顔をしかめた。
本当に、なぜこんなことができるのか。
これで6件目。
複数の刺す傷は10個や20個の次元ではない。
この死体はまだ分からないが、これまでの5人には1人あたりに50箇所は刺傷があり、指が折られていたり、首の皮をはがされていたり、目をえぐりとられていたりと、人間の仕業とは思えない残虐な連続殺人がここ2か月で頻発している。
被害者たちに共通点はなく、犯人の目星はついていない。
「今日からお世話になります、岸谷です」
若い女の声がした。
そういえば今日から1人増えると聞いていたが彼女か。
「ああ、岸谷紗綾巡査だ。三島、仲良くな」
尾形はそう言ってその場を後にした。
女か、正直面倒臭いな。
どうせ残虐な死体を見て逃げ出すんだろ。
「岸谷です。三島さん、よろしくお願いします」
彼女はそう言って頭を下げた。
堅物そうな女。
大丈夫かこいつ。
まあ、のほほんとしてる女よりはマシか。
「現場、確認したか」
歩きながら聞いた。
「はい。やはりここ最近の連続殺人事件と殺害の仕方が同じですね」
なんだ、ちゃんと見れたんだ。
て、普通か。警察官だしな。
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「それはつまり、近親相姦・・・ですか?」
被害者について聞き込みをしていた時、こんな情報を得た。
岸谷紗綾は驚いた表情を浮かべるでもなく、淡々と呟いていた。
相手は被害者の近所の住人。
何でも、被害者は実の娘に性的虐待をしていたとか。
「何故それが分かったんですか?」
三島が聞くと、中年女性は言いづらそうに話し出した。
「いやあ・・・よく怒鳴るような声が聞こえていたんです。それで、1度様子を見に行ったことがあって、玄関が開いていたものですから、中に入ったんです。そしたら、実の娘さんが裸で泣いていたんです。その娘さんの横に、裸の石野さんが・・・」
石野、とは今回の被害者の石野正雄のことである。
「なるほど。それでどうしたんですか?」
「もちろん止めさせて、警察に通報しました。一時的に娘さんは保護されたんですけど、証拠がないってすぐに家に帰されて。それからも何度も泣き声や怒鳴り声が聞こえていたので、1度じゃないと思います」
その後、三島と岸谷は保護された娘の元へ。
娘の名前は石野友紀。
都内の高校に通う17歳の少女だった。
「・・・間違いないです」
虐待のことを尋ねると、彼女は震えながら答えた。
「大丈夫?」
岸谷はそう言って友紀の肩を撫でた。
友紀は震えながらボソボソと呟くように話し出す。
「・・・お父さんは・・・怖くて・・・逆らうといつも・・・殴られてました・・・。で、でも・・・泣いていると横にきて・・・優しい言葉をかけてくるんです・・・それから・・・服を・・・脱がされて・・・いっいつも・・・そうでした」
岸谷はそんな彼女の背中を撫でながら「うん、うん」と聞いている。
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「許せないです、被害者のこと」
歩きながら岸谷が言った。
三島は「許せないって、一応被害者だぞ石野は」と岸谷をなだめた。
「でも友紀ちゃんの話を聞いてたら・・・」
分からないでもない、が。
殺害されたことには変わりない。
「まあ、問題は誰にどうして殺されたかだよなあ」
「もしかして三島さん、友紀ちゃんを疑ってるんですか」
「まあ、第一発見者だし動機もあるし完全にシロとは言えないよね」
「でも、連続殺人だとしたら犯人は」
「だよなあ。友紀ちゃんだったとしたら他の5件の説明がつかない」
謎は深まる一方だった。
- Re: 痛 み を 教 え て ----- 。 ( No.2 )
- 日時: 2020/03/03 20:57
- 名前: えびてん (ID: BcUtmJZZ)
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「直人ー、今日ひま?」
そう言って彼女は腕に絡みついてきた。
うっざい。
思いながら、直人は笑みを浮かべた。
「ごめんね、今日用事あってさ」
「えー、直人いつもじゃん。何してるの?」
「んー、バイト。ごめんね。じゃあね」
直人はそう言って彼女の腕を優しく振りほどき、手を振るとその場を後にした。
まーじうざい、あの女。
この頃しょっちゅう遊びに誘ってくる。
そんなに暇じゃねーっつうの。
階段を降りた頃、携帯が鳴った。
『今日は残念だったけどまた今度カラオケでも行こうね〜!♡』
差出人は《吉岡燿》。
さっきの女だ。
吉岡のやつは毎日こうしてメッセージを送ってくる。
俺が優しくしてるのをいい事に、どうやら俺を狙ってるみたいで。
別に俺がナルシストでこんなことを思っている訳じゃない。
現に吉岡が他の女子に俺のことを狙っていると公言しているのを聞いたし、あんなにあからさまにアピールされたらさすがに気づく。
悪いけど俺は恋愛なんかする気は無い。
増してやあんなバカ女となんか真っ平御免だ。
バカは嫌いだ。
興味を持てない。
俺の知識の範囲にあるものしか知らない人間になんか興味ない。
『いつもごめんね!また!』
なんて優しい返事をする。
突き放したって学校生活がうまくいかなくなってかえって面倒だ。
「ねー直人ってどこでバイトしてるの?」
燿は教室で携帯を見てから周りのクラスメイトに言った。
「駅前のカフェ。なに、燿まだ直人のこと諦めてないの?」
クラスメイトの1人、圭太が言った。
「諦めるわけないじゃん。あんなイケメン。性格も優しいしさ〜頭良いしスポーツできるし。完璧だもん」
「確かに直人ってすげえよなー。燿がそんなに一途なの初め見たわ」
「ひっどーい。直人は本気だから。ま、相手にされてないけど」
燿はそう言って直人とのトークを見た。
「でも新田君ってさ、優しいけどどっか謎な所あるよね」
燿の友達・美波が言った。
「確かになー。俺仲良いけどアイツと休みの日に遊んだことねーし。普段何してんだろ」
圭太は不思議そうに言った。
「うん、なんか何考えてるかわかんないって言うか。優しいけど、笑顔が嘘っぽいって言うか」
美波が言うと、燿は微笑んだ。
「いいじゃん。なんかそのミステリアスな部分にも惹かれるんだよねー。彼女いないって言ってたし」
「はー、燿も変わってるね」
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「ただいま」
直人はそう言って狭いアパートの中に入り、奥の部屋へ。
コンビニの袋を手に、直人は椅子に座る彼女に差し出した。
「はい、お腹空いたろ」
直人はそう言って隣のベッドに腰掛けた。
「ありがとう。めっちゃお腹空いちゃったー」
彼女は振り返り、袋を漁り始めた。
その時、また携帯が鳴った。
「だあれー?」
彼女はあんパンを食べながら聞いてきた。
「同級生」
直人は言いながら携帯を開いた。
吉岡からだ。
『夜は何してる?』
なんて、くだらない内容だった。
「ふーん。女だ?またいつもの吉岡ちゃん?」
彼女は微笑みながら言った。
「まあ、そんなとこ」
直人は答えながら、『ごめん夜も用事あるんだ』と返信を打った。
「めげないねー、その子」
「しつこいだけだよ。樹里は?今日なにしてたの」
言われ、樹里は微笑むとパソコンの画面を直人に向けた。
「警察が騒いでるなーって思ってさ」
パソコンの画面には、連続殺人事件のニュースが載っていた。
「犯人の目星はついてないっぽいよー。まあそうだろうね」
樹里はそう言ってまたあんパンを食べ始めた。
「樹里は後始末が適当だから俺はバクバクだよ毎回」
直人はそう言って携帯をベッドに投げた。
「だって直人がいるからいいかなーって」
樹里はそう言うと立ち上がり、直人の隣に座った。
「頼りにしてるよー、直人くん」
言いながら樹里は直人の肩に手を置き、直人を見上げた。
「本当いかれてんな、お前」
直人はそう言ってから樹里の頭に手を回すとそのまま樹里にキスをした。
「ん、誰かとチューした?」
樹里は不思議そうに言った。
直人は「最近樹里としかしてない」と言ってベッドに横になった。
「えー、直人の学校、可愛い子いないの?あ、吉岡ちゃんは?チューした?」
樹里は楽しそうに聞きながら直人の隣に横になった。
「まさか。吉岡は顔は良いかも知れないけどくそビッチだと思うわ、あれ」
「えーいいじゃんビッチちゃん」
「面倒なだけだよ、恋愛なんて」
「・・・確かにね。愛なんかないよ、存在しない」
直人は樹里を抱き寄せ、頭を撫でた。
「はは、彼氏みたい」
「俺たちには恋だの愛だの、理解なんかできないよ、一生ね」
「樹里もそう思う。樹里はなーんも分かんない。みんなが思ってること。みんなが感じてること」
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