ダーク・ファンタジー小説

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なんでもない患者の話
日時: 2020/03/09 14:53
名前: 朝雨 (ID: sEySjxoq)

あるおかしな方々の話です。

大分登場人物の頭がおかしい話ですが、流してやってください。

大まかな設定としては

・舞台は廃墟(病院) ・よく死んでよく生きる ・登場人物の頭はおかしい

そんな感じです。以上を踏まえてお進みください。

尚、誹謗中傷に関しては、相談掲示板のびっくり箱へどうぞ。

オリジナルに作られた病があります。ご注意下さい。

またはっきりとは書きませんが少々アレな(性的、グロ)表現が出てきます。

苦手な方は閲覧をお控え下さい。

カルテが燃えた ( No.1 )
日時: 2020/03/09 14:57
名前: 朝雨 (ID: sEySjxoq)

その日、凄く星が綺麗で、それでも新月だったのは覚えている。
廃墟の清掃を依頼された自分は、道具を持ち、建物内に入った。
廊下に点々と続いているのは血だ。匂いでわかる。
ちゃんと掃除しなければ、いつかは菌が発生して、それで疫病が流行ったりして。
自分が死ぬところまで想像し、ゾクゾクとする体を震わせてから、不衛生だな、と、手にした雑巾で拭きとる。
それにしても、誰がこんなところに血なんか垂らしたのだろう。
喧嘩か、鼻血か、それとも…

「…ん〜吐血、かな。」

いつの間にか目の前にいた、白衣を纏った不審者がそう言った。
どこを見ているのかわからないような目をしている。
酷く冷たい汗が頬を伝ったのがわかった。何者だろう。

「……あの、貴方は」

「君は、まだ正常だね。早く帰ったほうがいいよ。ここの人の病気、伝染りやすいから。」

「………は?誰もいないじゃないですか…?」

こんなガランとした廃墟に、何が居ると言うのだろう。
というか、病気って、伝染るって、

「何を言っているんだい。」

にこやかに、doctorは告げた。

「ほら、今、君の首を絞めているじゃない。」

ぽっきり




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朝起きたら、辺り一帯全てが炎に包まれていた。
焦げ臭さと、肉が確かに焼けていく痛みに、若干のうめき声をあげながら起きる。
最悪の目覚めだ。時刻はまだ29時。早朝もいいところだ。
昨日の就寝時間は確か24時。イコールで5時間しか寝ていない事になる。
隣のベッドからも肉の焼ける匂いがする。いつ起きるやら。
まとわりつく赤い火を振り払いながら病室を出れば、廊下も同じような有様だった。
愛しい彼女は無事だろうか。こんな時でも、トラッパーの髪は溶けないのだろうか。
どうでもいい。どうでもいい事ばかり、思いついて思いついて、終わる。
ふと、向かいから誰かが歩いてくるのが見えた。

「火を点けたのは君?」

「点けただなんて人聞きの悪いこと言わないで頂戴。恋が引火しただけよ。」

焦げ臭い。真っ黒に焦げ、今にも崩れそうな体を持つ彼女は答えた。どうでもいい。
この女も恋をしている。そうかそれならば。

「にしても臭いね。火、消せないのかい?」

彼女は怒りに多分目を見開いた。炎が赤から青に変わった。

「なんてこと、なんてこと言うの!アタシの恋を消そうっていうの?!」

「ああ、違うんだ。悪く思わないで、お嬢さん、ごめんよ。
余りにも情熱的だから、どうやら俺は嫉妬してしまっていただけだよ。
ねえ、恋バナしようよ。退屈で死にそうなんだ。」

相変わらずレディの扱いはわからないし、このレディの目が何処にあるのかもイマイチよくわかってはいないけれど。
温度を上げた空気に、肺が焦げ始めた気がする。酷い痛みだ。どうでもいい。
遠回しに窒息させられているみたいだ。最愛の彼女は今頃愉しんでいるのだろうか。
目をうんざりするほど細めて、彼女は満面の笑みで声を弾ませた。

「やだ、随分と女の子みたいのことをするのね。楽しくなっちゃうわ!
…あのね、私の好きな人はね、ストーカーが多かったの。
ポストに入っていたお菓子なんかは、皆んな他人の血や髪が入っていた…
気味が悪いでしょ?だからね、私のと入れ替えてあげてたのよ。
それである日、街角でばったり会って。
夢を見ている心地だったわ、想い人と偶然会えるなんて!
なんて幸福を下さったのかしら、なんて、この時ばかりは居もしない神に感謝すらしたわね、うふふ!
ある日ね、彼は私のお菓子を食べたの。そしたら、目がそれはもう綺麗に光って。
アタシを呼びつけてそこで待ってろって言うもんですから、もうドキドキしちゃったの!」

「…それで、どうなったんだい?」

「ウフフ、それで、もう、あとは……グチャグチャよ!混ざって食われて溶け合って、ウフ、うふふふ!それはもう愉しくて気分が快かったわ!」

「わあ、なんて羨ましいんだろう!理想の恋だねえ。
俺もそうやって、好きでも嫌いでもなんでもない人をグチャグチャにしてきたけど…
どうにも、好きな人程グチャグチャにできないんだよね。嫌いでも、同じさ。
世界も恋も生も死も、上手くいかないことだらけでうんざりするぜ。」

「あら、貴方の恋は実る前に取られてしまうのね。アタシのような女に。
…そう。そうなの。貴方もそう言うのね。横取りした、だなんていちゃもんつけて…」

気が付けば、辺りの火は消えて、冷え切った空気が流れていた。
随分と気紛れな女性に話しかけてしまった。なかなか長くなりそうだ。
いよいよ院長を呼ぶべきか。
ふと、遠くから、規則的な音が聞こえた。振り向いた女に、殺意が沸く。
聞くな、聞くんじゃない。彼を、お前みたいな女に認識させたくない。

「……あら、誰か来るわね。間男かしら、間女かしら。」

「…違うよ、違う。彼は、そんなんじゃない。」

聞きなれた不躾な足音が聞こえる。叫ぶようにして言う。

「クロス…俺が今、一番グチャグチャにしたい奴の名前だよ。」

「気色悪りぃ事言ってんじゃねえこのクソヤリチン!」

聞き覚えのある声とともに飛んできたのは、長い足から繰り出された、強力な蹴りだった。
その直後、ぶわりと黒い霧が辺りを覆った。

あ。

女から、悲鳴が上がって、やがて消えた。

「…あ?んだこのアバズレ。ゴミみてえな匂いがしやがる。
…気色悪い、テメェにそっくりじゃねえか。ジッパー。」

「そうかな。生まれて初めての恋バナ友達だったんだけど。」

もういいか。彼女の余命は尽きた。

「ねえ、ところで、今日こそ…」

「気分悪りぃからさっさと失せろ糞野郎」

「えー…釣れないなあ」

マックロクロスケになってしまった彼女は、排水溝へ流れていった。
______________________________________________________________________________

今日の診察の時だった。院長は、ふと思い出したように言った。

「そういえばさ、今日新しい子が来るって聞いたんだけど、見ていないかい?今朝の火事でカルテが燃えてしまってね。お陰で誰がどこまで生きていたのか…」

「待ってdoctor、俺その人見たかも知んない。」

「へえ。生きてる?」

「恋バナしてる途中でクロスに伝染されて排水口に流れていった。」

「あー…余命そんな長く無かったからね、聞いた話だと。」

話しながら、俺の容体を絵やよく分からない記号やら数字やらで表してから、もういいよ、と声を掛けて俺を追い出した。
そういえば、彼女の病はなんと言うものだったのだろうか。

どうでも良くない、ような。

そんな気がして、彼女を犯していないことに気づいた。
勿体無いことをした気がしないでもないが、まあ、あの熱さじゃこっちがヤられてしまいそうだったから、良いか。
ポジティブに行こう。いつでも。彼らのように。
ふと、情熱的な彼女に会いたくなって、また恋が一つ終わってしまったな、だなんて考えてしまう。
どうでもいい、そう、どうでもいいんだ。
それが、どれ程悲しい事なのか俺は知り得ないけど。この病が治るなら。

大好きで大嫌いな人をグチャグチャにできる日を夢見て、今日を生きるしかないのだ。

道端に落ちていた紙切れには、俺の名前が載っていた。
その横には、さっきの、真っ黒な、女が















【フレイア・パトリックス】 ×××才 ♀ 病院来訪当時余命380秒
死因:一色死病による壊死。
備考:ジッパーには、恋の病も伝染る事は無いらしい。

拝啓隣人様。 ( No.4 )
日時: 2020/03/14 21:04
名前: 朝雨 (ID: sEySjxoq)


人が話しているのに、その人はこちらに目すら向けなかった。
苛立ちを覆って沈めてしまうほどに、大きな悲しみの波が私を襲った。
結局、私は誰にも認識されることはなかった。
聞こえない見えない美味しくない匂いも体温もない。

そんな私を一番に認めてくれたのは、他でもない、蛇だった。
______________________________________________________________________________

「あら、こんばんはアグリー。」

「御機嫌よう、トラッパー。今日もまた御告げ口を?」

朝イチに出会ったのが彼とは、今日はついているかも知れない。
いつも通り、真逆の言葉しか出せない口を上手く動かして喋る。
腕から覗いた目玉が、こちらを見ているのがわかった。
それに対して微笑み返してやれば、心底満足そうに目玉は笑った。
…彼自身の口角は、いつでも変わらないのだけれど。

「違うわ、さっき聞いてこなかったところなの。」

「へえ、結果は?どうだったんです?」

「今日は晴れるのだそうよ。」

告げてやれば、彼は今度は手の甲に現れた目玉を瞬かせた。
訝しげに、天井を見上げた彼は、少し時間を置いてから私に言った。

「ええと、それなら、傘が必要ってことですかね?」

「そうよ。“晴れる”のよ?分からない?」

「えー…?どういう意味ですか?」

「玄人ね。」

呆れたように笑ってやれば、顔を真っ赤にして彼は顔をこちらに向けてきた。
顔だけならば年頃で可愛いと笑い飛ばせたのだろうけれど、こちらを冷たく見上げる目玉は、どう見てもどう解釈しても、可愛いとは思えない。
眼球移動症の他に人格剥離が起こっていやしないかと心配になる。

私は預言者である。
水晶を覗き込んだり、怪しげな呪文を使うわけではない。
私が使うのは『御告げ口』と言う廃墟の電話だ。
誰が話しているのかは全く分からないけれど、私以外にも電話は使える。
それでも私が預言者たる所以は、解釈の仕方なのだ。
氷漬けにされた蛇を撫でる。ああ、なんて可哀想な。
私を私と認めてくれた唯一の存在は、蛇だった。
例え、その蛇が他人を殺そうと、私を認めてくれるならばなんでも良かった。
だからだろうか。過ちに気付いた時には、人は全て石になってしまっていた。
今でも生きている私の蛇は、残念ながら氷漬けになってしまっているけれど、でも大丈夫。
彼ら以外にも、私を私と認めてくれる存在はいる。

ーー私を人間だと、認めてくれる存在は。

この院内に溢れかえる患者たちだって、結局はそうなのだ。
病など二の次。完治なんて以ての外。

死にたくないからここに居るだけだ。
______________________________________________________________________________

「……げっ」

「…随分とイイカオしてるじゃない。それに人を見つめて綺麗な声を出すなんて。」

彼に会うなんて、今日はついていないかもしれない。
その顔を覆う黒い靄さえなければ、もう少し優しく語りかける事だってできるのに。
色んな意味で勿体無いと思う。
もっと丁寧に、もっと慎ましく、もっと全てを曝け出して。
そうしたら、もっと色んな方々が寄ってきて、あの奇妙な願望を抱くファスナーだって寄り付かなくなるだろうに。
まあ、そんな事をしたら彼は彼じゃなくなるだろう。
そうしたら、たちまちに病は治ってしまう。それは彼にとって良くない事なのだろう。

「おいブス。お前、こんな所まで何しに来やがった。」

「…貴方に会うためよ。なのに、貴方に会わなかっただなんて。」

「『貴方に会わないためよ。なのに、貴方に会うなんて。』…ほォ、嬉しいこと言ってくれるじゃねえか、ニンゲンサマ?」

こんな感じか?なんて言いながら、彼は次々に容姿を変化させていった。
あんな事を言うものだから、私は彼らを手放せないのだ。
嬉しさで胸がいっぱいのなる。
嬉々とした私の姿を見て、彼は非常に顔を顰めて。

「気色悪りぃ。」

ブチッ。

あまりに酷い事を言うものだから、あまりにも酷い事をするものだから、突っ立っていた中指を噛み切ってしまった。
不思議と彼の指は不味くはなかった。
痛みに悶えるでもなくこちらを見て更に顔を顰めた彼は、ブツブツと文句を言いながら去っていった。
さぞ残念がっているところだろう。

彼の病は、私に伝染ることは無かったのだから。
______________________________________________________________________________

「うわわっ、雨降ってきた!」

「何を言っているの?」

午後の話だ。
今日の預言はわかりやすかっただなんて言ったら、この人はまた呆れたように笑うんだろう。
本当に美しい人だとは思う。でも、とても気味が悪い人でもあると思う。
じゃなきゃ、あんな風に僕を見たりしない。

「っ、風が弱いわね…どうかした?」

「………」

「ねえ、死んでる?……ああ、ああ、久々だわ!」

あの人の目を見るとき。

それは、死を覚悟する瞬間に等しい。

頭部に移動していた目玉が最後に捉えたのは、僕の体を思い切り抱きしめる彼女の姿だった。






















【アグリー・タルト】××才 ♂ 病院来訪当時余命679年
死因:石化後の破壊による身体の欠損。身体決別症によって彼の元身体は腐敗中。
備考:石化が解けた直後に目玉だけが取れ、そこから身体が再生した。
彼の本体は目玉であって、臓器では無いのかもしれない。

【トラップ・キャセリング】×××才 ♀ 病院来訪当時余命380年
死因:抱擁による地雷病(体内地雷)の発動→爆死。
備考:何食わぬ顔して、爆散した彼女が廊下を歩いていたのを見かけた。
どういうことなのやら。それにしても、一色死病は伝染る人を選ぶのだろうか。
それとも、彼と伝染らない人は、何か関係があるのだろうか。

Re: なんでもない患者の話 ( No.5 )
日時: 2020/03/14 21:08
名前: 朝雨 (ID: sEySjxoq)


どなたが読んでも多分意味のわからない話なので、一応人物のゆる〜い設定を載せます。

【今までに出て来た主要人物】
・ジッパー・フリックス(Zipper・Flicks) ♂
→貞操観念がおかしい変態。老若男女問わずセクハラする。口がチャックになっている。
→病名は一色死病。病院来訪当時余命169年。

・クロス・トリッキー(Cross・Ticky) ♂
→口も行儀も態度も悪いクズ。体が真っ黒で変形できる。黒い靄が体に纏わり付いている。
→病名は貞毒病。病院来訪当時余命1880年。

・トラップ・キャセリング(Trap・Caselling) ♀
→絶世の美女。自称預言者で反対のことしか言えない。前髪が長い。髪の先が氷漬けになっている。髪が蛇。
目が合うと石になってしまう。
→病名は地雷病。病院来訪当時余命380年。

・アグリー・タルト(Ugry・Tarte) ♂
→施設内で最も常識がある。お菓子作りが趣味。
→病名は移動眼球病、身体決別病。病院来訪当時余命679年。

・院長(Dr.Smile)
→病院の中で唯一の医者(自称)。白衣を着ている。胡散臭い。

【主要じゃないけど出てきた人物】
・フレイア・パトリックス ♀
→患者として紛れてきたが、院長より先に他の患者に接触、病気が感染して亡くなる。気の毒。
→元々は情熱病を患っていたが、クロスの病が伝染る。病院来訪当時余命380秒。

【病名と内容】
・一色死病
→モデルは黒死病。身体が指先から一定の色に染まって行き、全身に色が回ると死に至る。致死率は高め。
クロスの場合、首から上はまだ正常であり、回ってこようとする病を靄にして体外に流している。

・貞毒病
→モデルは梅毒。誰かに伝染る事は滅多にない。一定の期間以内に貞操を食わなければ死に至る。
ジッパーの変態性はここから来ている。多分。致死率は低め。

・地雷病
→モデルは無し。強いて言うならメスの蜂。体の表面付近にニトロのような物質と火薬が発生する。
それにより、少しの衝撃で全身が吹っ飛ぶ。よく周りの患者を巻き込む。致死率はかなり高め。

・移動眼球病
→モデルは無し。眼球が、身体のあるとあらゆるところに移動する病。致死率は殆ど無いが失明率は高め。

・身体決別病
→モデルはサナギと脱皮。体が生物学的に死ぬと、新たな体が発生する。致死率は殆ど無い。治る確率は低め。
死体の処理に困るらしい。

・情熱病
→モデルは地縛霊。感情が形やイメージで現れる病気。本人の致死率は殆ど無いが周りへの被害は絶大。


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