ダーク・ファンタジー小説
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- アリスの望み話
- 日時: 2020/09/20 13:00
- 名前: みるくてぃーともも (ID: OXQEO.ex)
ピピピ、ザーザー
不快な機械音で私は目を覚める。
「!?」
私は目を何度も擦る。
「夢…じゃな…い?」
私は赤い壁に覆われた部屋を見回す。
部屋の中央にポツンと聳え立つ椅子。
私はゆっくりと足を動かし、音を立てない様に近づく。
ガコンッ!
急に椅子が倒れ、私は思わず走っていた。
「…すか?」
?
誰か居るの?
私はそっと起き上がる。驚かせない様に。
「貴女は…?」
私は彼に名を尋ねる。
「私…ですか?」
私はこくりと頷くと、名前を言った。
「私は…ハルです。」
ハルと言う小柄で華奢な女の子は、私にも名を尋ねる。
「私は…あれ…?私の名前?…」
私は分かるはずの自分の名を忘れていた。
「此処は''人々のバス停です。」
ハルがゆっくりと語る。
「人々のバス停と言うのは、その人が行きたい場所に行かせてくれるバス停です。」
私はただそれを淡々と聞く。
「ただのバスと変わりはない様な?」
私は小首を傾げながらハルに言う。
「普通の場所に行くのでは無く、特殊な場所に行く事も可能です。」
ハルがそう言った後、私はバスの停車時間を覗き込む。
「此処、なんだか寒い…」
腕を摩りながら、私は言った。
「貴女の行きたい場所って何処ですか?」
ハルは重々しい口調で喋りかけて来た。
「…家に帰りたい…家族の所に帰りたい…」
ハルの目は鋭く、私の全身を針で刺すような目つきだ。
「私も一緒です。」
ハルの目は優し過ぎるほど優しく、重々しい口調も無い、優し過ぎるほどの声。
私は、バスの停車時間をじっと待つ。
キィィィィィィィィィィィィィ
バスが来て、止まる音がした。
やっと帰れる…
私は心の中でほっと溜息を着くと、ハルと一緒にバスに乗り込む。
バスが前進すると、赤い壁を蹴破って進む。
バスの中は暖かく、私は思わず眠ってしまいそうなほど。
バスが止まり、ハルが降りるときに言った言葉は、何より不気味だ。
ハルの家は、暖かい色に包まれた、モンブランの様な色の家だった。
「貴女は長い眠りについていて、起きた時には黄泉の国だよ。」
私は手を振りながら、顔を青くした。
バスがあまりにも暖かく、遂に私は寝入った。
「!?」
私が起きた頃には、もう、
''黄泉の国''だった。