ダーク・ファンタジー小説
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- 明星が光輝く時、王国の秘密が暴かれる
- 日時: 2020/10/10 12:45
- 名前: 虹青 氷空 (ID: SMalQrAD)
1、幸せの崩れた音
ある王国の王と女王はとても仲が良いと評判でした。
その2人は子供も授かり、幸せに暮らすはずでした。
・・・子供が双子でなければ。
「雪乃様、おはようございます」
ソフィに起こされてしまった。
王のひとり娘である王女の雪乃は専属のメイドであるソフィに手伝ってもらいながら
着替え、食事をとるために移動した。
(部屋へ戻れ)
急にその言葉が頭の中に響いた。誰かが私のことを呼んでいる。
しかし、ソフィは連れて行きたくなかった。ソフィは、幼い頃から一緒にいる年の
離れた姉妹のような存在だった。危険にさらしたくないし、これからも一緒にいたい。
心苦しいが、嘘をつくことにした。
「お母様から借りていた本を取ってきます。少し待っててくれますか?」
ソフィが頷いたのを確認して、雪乃は部屋に戻った。
部屋に戻った雪乃は、赤く染まった紙が机の上に置いてあるのを見つけた。
(私、こんなの置いていない)
雪乃はぶるっとふるえた。そんなのお構いないというように置かれた赤い紙の内容が
何なのか気にならないわけではない。吸い込まれるように赤い紙を手にとり、開く
雪乃。その内容は、息を飲むような内容だった。
【今夜12時 夜空に明星が光輝く時 天に仕えし闇の忌み子 王都へ舞い降りし】
このことを誰かに話そうか。雪乃は迷った。
ほかの人を危険にさらしたくない。そんな思いから自分だけの秘密にした。
「おまたせしましたソフィ」
雪乃は、母親から借りていた本を抱えてソフィのいる廊下へ戻ってきた。
もちろんあの奇妙で怖い出来事は秘密にして。
「さあ、行きましょうか」
そう言っていつも通り、食事をとる部屋へと移動した。
朝の出来事以外、特に変わったことはなかった。
誰かがいつもと違う性格になるとか、体調が急に悪くなるとか、
母と父の仲が悪くなるとか。
ただ、ふいっと見上げた空はこれからの行方を示すように黒い雲に覆われていた。
夜12時。
昼間と違って、手紙に書かれていたように夜空には綺麗な明星が無数に輝いていた。
ふと、森に目をやると何やら火の玉のようなものがとんでいる。
すると突然、強風が吹きつけた。
「くっ・・・・・」
雪乃は立っていられなくなり、その場に座りこんでしまった。
そのとたん黒い霧と共に何やら人影がある。
よく見てみると自分と同い年ぐらいの少年だった。
2、闇の忌み子
「久しぶりだね、雪乃」
彼は雪乃にそう声をかけた。だが、雪乃は彼のことを知らない・・・はずだった。
彼のことを知らなくても、どこかで聞いたことのあるなんか安心できる声。
(自分の知らないうちに、彼と会っている?)
そう思った瞬間、母が事態に気がついたのか乱暴に扉を開けて部屋にはいってきた。
「あなた・・・あの時死んだんじゃ・・・」
何か気になることを言いかけたが、そこに大事な娘がいるとわかると口をつぐみ、
「大丈夫?ケガはない?」
その様子をみて、何か不服そうに彼は口を尖らせた。
そしてこういった。
「大丈夫?じゃあないでしょ。部屋に変なやつがいるんだよ。つくづく思うけど、
人間って不思議だよね。そう思わない?君も」
そう声をかけたのは、いつの間にか彼の隣にいた霧で作られた動物(?)
「人間はみんな愚かだから、しょうがないよ春乃。誰かのためにっていっても、
結局は自分のためなんだからさ」
彼の声を聴いた時、母は顔をこわばらせた。と同時に、雪乃は今までは感じなかった
恐ろしさを感じた。
「いいや、雪乃に王国の昔話をしてやるよ。それとも、エミリ(雪乃の母)から聞く?」
母をみると、今まで見たことのない顔をしていた。これは、話してくれなさそうだ。
雪乃が首を横にふったのを見て、彼は話しだした。
「昔々自然のいいところに、みんなの羨む王国がありました」
・・・と。
その王国の王と女王はとても仲がよく、ケンカなんてしたことがありませんでした。
2人は子供にも恵まれました。2人は生まれたらどんな名前をつけようかを話し合うほど
生まれてくるのを楽しみにしていました。ですが、生まれてきたのは双子でした。
この時の世の中は、双子は争いのもとといわれておりとても不吉だったからです。
女王は王と相談して、男の子を森へ捨てることにしました。
その男の子は、偶然通りかかった魔女がひろって育てることにしました。
一方捨てた本人たちは、そんなことはなかったように王女と幸せに暮らしていました。
「その捨てられた男の子は俺。幸せに暮らす王たちは雪乃たち」
「じゃあ・・・あなたとわたしは」
「やめなさい!あんたみたいなやつと私の娘を一緒にしないで!」
ふふっ、と笑って彼は言った。
「さすが、自分のお気に入りは守るんだね」
その後彼は霧に包まれながら言った。
「明日は新しい王国の誕生日になる」
そして、彼は・・・春乃は消えた。
3、王国の終わり、そして新しい王国
彼が消えたあと、雪乃は母親に問いただすことにした。
「お母様、あれは本当のことなのですか?」
彼がいなくなって安心していたのか、声をかけられて少しびっくりしたようだった。
そして、私の質問に答えた。
「本当なわけないじゃない。心配になった?」
母は私の頭を撫でながらこう続けた。
「大丈夫よ、お父様とお母様が守ってあげるからね」
いつもの、なんの疑問も持たなっか時に言われれば安心したかもしれない。
ただ、彼からあんな話を聞いた後に聞いても疑問がふえるばかりだ。
しかも彼は言った。『明日は新しい王国の誕生日になる』と。
「はやく寝なさい。お母様はお父様と相談してから寝ますから」
そう言って母はそそくさと部屋から出て行った。
母が部屋から遠ざかったのを確認して、雪乃は急いで手紙を書いて伝書バトを
飛ばした。
「いつもの人のところに持っていってね」
と言って。
その頃、春乃は自分が捨てられた森で野宿していた。
「ここで会ったんだよな、サラと」
サラというのは、あの霧で作られた動物のようなもののことであり、春乃をひろった
魔女の転生した姿だった。
「あっちは準備できたみたいだよ。そろそろこっちも準備しないとね。
・・・・復讐の準備を」
翌朝、いつもどおりソフィに起こされて着替えて変わったことなんて特になかった。
いまだ実感のない昨日の出来事。本当にあったのだろうか。
いや、あったのだ。その証拠といわんばかりに今日もあの赤い紙が置かれていた。
そこには、昨日のように書かれていた。
【今日午前12時 王国を変えし 闇の忌み子 魔女と共にやってきし】
昨日とは違ってこのことを話せる相手はいるから、ドレスのポケットに入れておいた。
「手は打ってあります、安心して?」
こんな言葉さえもいまでは、いいのがれとしかおもえなくなってしまった。
(潔白なら話してくれてもいいのに)
すると、黒い雲が王国の青空に覆いかぶさってきた。そして、昨日みたあの
恐ろしい黒い霧と一緒に彼もやってきた。なんだかんだいっていたら12時になったようだ。
「やぁやぁ、みなさんはじめまして。王女の弟・春乃です」