ダーク・ファンタジー小説
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入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 助ける私の手の向こう岸、満月
- 日時: 2020/10/11 12:57
- 名前: 地縛霊 (ID: o6EPdGyL)
本を読んでいた。ソファで。
いつもの夕方。いつもと変わらない日暮れ。
「ねぇ、その本面白いの?」
私は一人暮らしのはずなのに、後ろから声が聞こえた。
振り向くと、私がいた。
けど、Tシャツにジーンズを履いている私とは違い、黒いワンピースを着ている。
「あ、どうも、死神です。ドッペルゲンガー的なやつです。」
びっくりする間も無く、自分の頬をつねる。
痛い。
ドッペルゲンガーって、自分が2人いて、遭遇すると死ぬとか言うやつ?
「んー、じゃあ、私死ぬってことですか?」
「まあ、人間いつしか死ぬね。」
「いつ死ぬかわからなくなるってことですか?」
「まあ、いつもそうだよね。てか私のこと見えてる?」
「そうですけど…。見えちゃまずいですよね。」
「うん。どっちかが不具合起こしたようなもんだね。」
「体調的な不具合ですかね。」
「いや。知らないけど。」
なんか、死神って言ったって死そのものなんだなって実感する。
早く死なせるとかそういう概念はなくて、ただ単に私の死期が迫ってるってことだけだろう。
「ねーねー、そんな本読むヒマあるんだったらカフェにでも行けば?カフェ好きでしょう?」
「えーと、心残り無くしとけって意味ですか?」
「ま、人生いつでもそうした方がいいよね。」
正論しか言ってこねぇ。少しは人間のイメージに従ってくれたっていいじゃないか。
あ、それは押し付けか。
玄関を出て、カフェに向かう。
いつもの道を歩いて。
こんな夜にカフェに行くのってあんまりなかったな。
交差点。
青になった信号を確認して歩き出す。
横断歩道に踏み出した瞬間、爆音と共に意識が途絶えた。
起き上がると、そこにはトラックが転がっていた。
ついでに私も。
少し私は透けていて、横断歩道の縞模様がグラス越しに見るようにぼやけている。
隣に死神さんがいた。
「うん、予想してなかったね。大体私見えてる時点でおかしいけど。」
「いや、なんかあっさりしすぎてません?カフェにもついてないし。」
「しょうがないよ。」
そういうと、死神さんは消えた。
私もどんどん透けていって、見えなくなった。
見えなくなった私の向こうに夜の満月が映る。