ダーク・ファンタジー小説

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カーテン
日時: 2020/10/12 19:42
名前: 地縛霊 (ID: o6EPdGyL)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12887

手を差し伸べてほしい。
お願い。こんな暗いとこ、やだよ。
1人でいたくない。
助けて。
そう願っていた。望んでいた。
一番最初に差し伸べられたのは、綺麗な手。
嬉しくて、手をとろうとする。
自分の手が目に入って我にかえる。
薄汚い、泥にまみれた手。
いやだ。来ないで。
私とあなたは一緒じゃない。同類じゃない。
あなたに私を理解できるはずがない。
私の心の汚れた部分を、あなたは自分の手を汚したくないから触りもしないんでしょ?
笑顔で差し伸べるくせに、いたわった後に、「あなたのため」を口実にして私の手を離すんだ。
知ってる。何回も騙された。
離していい?って聞いてよ。
補助輪なしなんて、いきなりは無理だから。
また転んで、暗闇に落ちてく。
私の心を知ったフリして、なんにも知らないんだ。
「大丈夫。無理しないでいい。」
そんな言葉は風船より軽い。
落ちる私を置いて「偽善」だけが宙に舞う。
あんたと同類じゃないから。偽善者じゃないから。
慰めてくれる友達の方が、よっぽどあなたたちより嬉しいよ。
けど、そんな友達も、いないんだ。

暗い部屋。カーテンからのぞく弱い光。
その光を掴みたくて、手が空を切る。
生きてける気がしないんだ。将来だってきっとこんなふうにベッドに横たわってるだけなんだ。
いっそ今死んだ方が楽かもしれない。けど、死ぬ勇気もない。
役立たず。これにきっと私はなる。
許してね。
笑ってみる。目から涙が溢れる。
布団をかぶる。

夢を見た。
勉強ができない。親に「頭が悪い」って言われる。
そんな私と同じ境遇の子なんていないと思ってた。
いつも通り、暗い部屋にいて、でもカーテンなんかない。
2回目の手。どうせ綺麗な手だろうと思っていた。
また、同じ手だろうって。
でも違った。
私と同じ、汚い手。
同類。
手をとってみて、こびりついた泥を感じて。
「安心して。」
言われた言葉は、それだけ。
信じていい。昔、今の私と同じ境遇だった人。そんな気がした。
暗い部屋が明るくなって、手を引いてくれた女の人は嬉しそうに笑った。
「私と同じ。一緒に頑張ろう。」
「同じ」、「一緒に」が落ちる私を捕まえて、また私を自転車に乗せる。
涙が出てきた。

目覚ましの音。
薄暗い部屋。カーテン。
久しぶりに、部屋から出てみよう。
持ったドアノブが、汗で滑る。
スルッ。
ガチャ、と音がして遠い昔に見た二階の廊下が現れた。
明るくて、目に染みる。
涙が出てきた。
一階で掃除機の音がする。
これが大きな一歩だろうと、小さな一歩だろうと関係ない。
歩み出せたことに変わりはないのだから。


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