ダーク・ファンタジー小説

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朝が来る。
日時: 2021/01/05 22:47
名前: ジョン (ID: HfS/slXT)

 暗い部屋。スゥーッスゥーという弟の吐息だけが部屋に響く。
 枕元の時計を見るとまだ5時40分だ。足元がすっかり冷え切っていたので、隣で寝ている弟が起きないようゆっくり足を曲げ、手で擦った。やっぱり寝る時靴下を脱ぐのは止めるべきだった。でも、自分はこうしないと眠れない。この癖は親父に似たのだろうか?なんとも複雑な感情だ。嫌ではないけれど。 顔だけ動かしてベットの下に靴下があることを確認した。しかしベットから出たくないので弟を抱きしめた。かなり暖かい。よく見ると長いまつ毛を持っている。この子はきっと人を疑うこと、虐めることは無いだろう。そうあって欲しい。そんな期待を込めて、起きていたくない自分はまた眠ろうとした。 「朝なんて来ないで下さい。」と呟いた。まあきっと叶わないけれど。  カーテンの隙間から太陽の光が差し込んできた。 朝が来る。   

短編 若き日の思い出 1話 ( No.3 )
日時: 2021/02/20 20:37
名前: ジョン (ID: HfS/slXT)

 思えば、私はロクな人生を歩んでいなかった。点滅する視線は、妙なことに私の意識をはっきりさせた。若い頃、死を恐れてばかりいたのが嘘のようだ。いずれ訪れる死。わかっていた。わかっているから、怖かった。 私は幼い頃、「はだしのゲン」をよく読んだ。その影響からか、戦争の悲惨さと同時に死に対する恐怖が脳裏に刻み込まれた。  「私が死んだ後、意識が無くなって抜け殻となった時、私の体は唯の肉の塊になるのではないか?」私の疑問は解決するはずもない。死んだことがないのだから、当然だ。そのとき、私はある考えが生まれた。「どうせ亡くなるのなら、美しく死にたい。」この思想が、僕が三島由紀夫を知るきっかけだったと思う。 一話 終。     追記 間違って書き込んでしまいました。消すのも面倒だと思ったので、広い心で許していただきたいです。

短編 若き日の思い出 ( No.4 )
日時: 2021/02/20 21:03
名前: ジョン (ID: HfS/slXT)

 「三島由紀夫」といえば、作家でありながらボディビルを始めたり、右翼的な思想に身を任せた人でもある。私は戦後最も異様な作家だと思う。私が初めて読んだ彼の作品は、「仮面の告白」だった。主人公と私がよく似ていた。自分を隠して生きているが、それを誰にも知られたくない。自分にも普通の恋愛ができるはずだと信じようと思って行動したが、出来ないことを知った話だ。私は、家族以外に死を恐れていることをバレてしまうのが怖かったのだ。毎日毎日「もし、私が明日亡くなったら涙をひとつでも流してくれる人がいるのだろうか。」と、考えても答えの出ないことばかり考えていた。そんな私でも、恋愛をしたことがある。しかし、私は「仮面の告白」の主人公とそっくりなのだ。感情に身を任せすぎた阿呆だった。    

Re: 朝が来る。 ( No.5 )
日時: 2021/06/06 22:13
名前: ジョン (ID: HfS/slXT)

 私はただ、愛されたかった。4人兄弟の長男である私は、初めこそは父母にとても愛されていた。しかし弟、妹が生まれるにつれて少しずつ「お兄ちゃんだから」という言葉に逆らえなくなっていった。5つ下の弟が小学校に入ってから、私の「仮面」が形成された。「弟や妹の見本となる姿」を演じ続ける時期が始まったのである。        
 弟は私とは違って、優秀で女子にも人気があった。小学2年性で彼女ができたと聞いたときには、家族全員が驚いたほどだ。運動ができ、強気で思ったことを口に出せる。私は正直、とても羨ましかった。      
 私が弟と同じ年の頃は、父の会社がトラブルを起こし、忙しくなっていて、家の中がピリピリしていた。遊んでと声をかけても、「見て分からないのか」と怒鳴られ、時には殴られた。いつも祖父母の家に遊びに行き、裏の公園でどんぐりを一人でずっと拾うことが、現実を忘れる唯一の術だった。 

若き日の思い出 ( No.6 )
日時: 2021/08/31 00:06
名前: ジョン (ID: HfS/slXT)

 私が大学に入学した頃、全国の大学で学生運動が流行っていた。自らの肉体を決して敵わない情熱、野望へ費やすその姿に私は惹かれた。党員にマルクス•エンゲルスの「共産党宣言」は読んだか、現在の日本に対しての不満はないかと聞かれ、吃りながらも意見を伝えると、私を党員として認めてくれた。
 それからの私の大学生活はとても楽しいものだった。仲間ができ、戦友ができた。討論会が週に一回は開かれ、よく私の敬愛する「三島由紀夫」についても討論した。はっきり言って、我々の党は左翼であった。だから、彼の考えを否定せざるを得ないことが残念だった。 
 ある日、友人から東京大学で三島由紀夫と東大全共闘が討論会が開かれているという話を聞いた。私は興奮した。是非、観に行こうと友人と二人で電車に乗り、東大へ急いだ。
 
 

Re: 朝が来る。 ( No.7 )
日時: 2021/08/31 00:49
名前: ジョン (ID: HfS/slXT)

 私は電車を利用し、東大へ向かう。教養学部の目黒区駒場キャンパスで行われるため、駒場東大前で降りた。東大の中に入らせてもらい、貼ってあったポスターを見た。〈東大動物園 特別陳列物「近代ゴリラ」〉と、書いてある。彼らなりの挑発だろうと分かっているが、個人的には尊敬する氏をこのように書かれて私は苛立ちを覚えた。しかも、無駄に上手く書かれているから困る。     だが、私は致命的なミスをした。何処の教室で行われているか知らなかったのだ。私は方向音痴が酷く、気になったら計画も立てずに動いてしまう悪習があった。さらに人とうまく話せなかったため、たどり着いたのは、討論会が終盤に差し掛かった頃だった。   
 中には既に人が溢れ、入ることが出来ない。私は諦めて帰るべきだと思った。私は自分が嫌になった。次に氏の情報を知ったのは、彼が自決したニュースを知ったときである。
 
 


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