ダーク・ファンタジー小説
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- 氷上戦記
- 日時: 2021/01/07 17:21
- 名前: 青戀院 蓮華 (ID: z0poZTP7)
__ここから遥か遠く。三つ子の山に囲まれた盆地に氷の国という国がある。
そこは季節が無く、ずうっと凍っているの。家も全部氷でできている。
そこに住んでいる人達もまた、氷の魔法を使えるのよ。
何故外の世界と違って氷の国だけが氷に覆われているか分かる?
実は、氷の国の地下には、氷のような魔力を持ったクリスタルが
安置されているの。凄く美しくて、凄く冷たいの。
そして今、そのクリスタルを巡って、戦争が始まろうとしているの___
- Re: 氷上戦記 ( No.1 )
- 日時: 2021/01/07 17:23
- 名前: 青戀院 蓮華 (ID: z0poZTP7)
「…それを何故俺に言いに来たのだ」
紅茶を飲みながら、興味無さ気に話を聞くのは、家の主のインヴェルノである
彼に氷の国について語った女は、氷の国の使者。名はシャンデルと言う。
「だって貴方、氷の国の一族じゃないの。協力して欲しいのよ」
「一族の『子孫』って言うだけだ。それも3代前の話だろ」
半ばうっとおしそうにマグカップを持ちキッチンへと向かうインヴェルノの
後ろをシャンデルはパタパタと追いかける。
「良いか、氷の国の人間がインフェルノ(英語で猛火の意)なんて名前の奴に
応援を仰ぐもんじゃない」
「あんたの名前はインヴェルノ(イタリア語で冬の意)よ。それに三代程度で
氷の魔力がなくなる訳無いでしょう!」
そうだな、と言うようにインヴェルノは手から氷を生み出し、
新しく入れた紅茶に落としていく。シャンデルは溜息を吐いた。
「こうなったら意地でも連れて行きますからね。」
「へえ。そんな細い腕でどうやって引っ張って行くつもりだ?」
インヴェルノはケラケラと嘲笑したが、シャンデルが指を鳴らした瞬間、
氷の床に尻餅をついた。辺りに彼の家は無く、氷の彫刻が並ぶ城のホールに
囲まれていた。
「ワープぐらいできます。氷だけだと思わないでくださいよ」
「ずるいなソレ…」
- Re: 氷上戦記 ( No.2 )
- 日時: 2021/01/07 22:25
- 名前: 青戀院 蓮華 (ID: z0poZTP7)
二人が居るホールに足音が近づいて来る。
「シャンデル、戻ったか。案外早かったな」
「アイルバトゥ様。出迎えありがとうございます」
やって来たのは、背が高く髪の長い男だった。髪の色や装飾品は、
雪や氷を連想させる風貌をしており、嫌でもここは氷の国だとインヴェルノに
実感させたのだった。シャンデルはホールを出て何処かへ去った。
「君がニクスの孫だな」
「…インヴェルノだ。何故俺が戦力に混ぜられるのか教えていただけません
かね」
「それは勿論、ニクスは立派な戦士だったからだ。同じ血を引いている」
アイルバトゥが指をさした先には、戦士の姿をした氷像が飾ってある。
インヴェルノが氷像に近づいて見てみると、インヴェルノによく似た顔が
彫られている。この氷像の人物こそニクスである。
「実際、戦争が始まるのはまだだからな。それまで私がキッチリ鍛える」
インヴェルノ露骨に嫌な顔をしたが、アイルバトゥが睨むと話を変えた。
「そういや、戦争ってどこの国とするんだ?俺に頼るって事は相当不利なんだろ?」
「ああ、そうだな。炎の国と戦う事になった」
「また何のためにクリスタルなんか取ろうってんだ」
「クリスタルが本当の目的じゃ無い。彼奴らはこの土地を奪いたいんだがな、
此処は炎に侵されようともクリスタルが守っている限り溶けん。向こうに
とっちゃ遺憾千万だろうな」
「そのためにクリスタルを…じゃあ、クリスタルさえ守れれば良いんだな」
「そうだな。しかし戦闘になるのは確かだ。サボらせはせんぞ」
「…チッ」
- Re: 氷上戦記 ( No.3 )
- 日時: 2021/01/11 01:58
- 名前: 青戀院 蓮華 (ID: LaqAx/EG)
「まず最初に、お前の魔法は弱すぎる。その程度では金魚鉢の金魚すら
凍らせる事ができないだろう」
アイルバトゥはお湯をいれたコップをインヴェルノに投げた。インヴェルノは
キャッチし、魔法を使ったが、コップに沿って凍るだけで中の方はぬるま湯に
なっただけだった。
「そんなんでは防げもせずに焼き殺されるのがオチだろうな」
アイルバトゥは嘲笑したが、インヴェルノは内心焦りで一杯だった。
__子供の頃は真夏の池を一面凍らせて怒られたほどなのに、なぜこんな__
唖然とするインヴェルノの袖をクッと引っ張り、アイルバトゥは「行くぞ」
と言った。
- Re: 氷上戦記 ( No.4 )
- 日時: 2021/01/11 02:16
- 名前: 青戀院 蓮華 (ID: LaqAx/EG)
彼が連れてこられたのは、屋外のグラウンドだった。ローマ時代のコロッセオを
彷彿とさせるが、一面氷で出来ている。アイルバトゥはインヴェルノを
グラウンドを二分割した面の中心に立たせ、自らはそれと線対称になるように
向き合った。
そして、インヴェルノが何かを察するよりも早くアイルバトゥの手から
氷の龍が飛び出した。氷の龍はインヴェルノに向かってくるが、インヴェルノは
防げるような立派な氷を張れずにちょこちょこ逃げ惑うだけだった。
「魔法で防げ!逃げていては永遠に追われるぞ」
アイルバトゥの言葉にインヴェルノは向き合い魔法を捻り出す。しかし、
掌を覆うだけの氷の手袋が完成したのみで、氷の龍を防ぐ事は出来なかった。
結局龍にじゃれつかれてあっぷあっぷのインヴェルノ。
「はははッ、情けない」
「おいテメェこの状況見て楽しんでんだろ、性悪野郎」
「ニクスそっくりの顔の男が弱小魔法しか出せずに困っているのが滑稽で仕方がない。…というか、他の奴らも笑って居るだろう」
アイルバトゥの言った一言にインヴェルノは強く反応した。他の奴ら。
周りを見渡すと、数人の戦士たちが此方を観戦している。
インヴェルノは凍えるような風の中で煮えるような熱さを感じていた。
「ほら、気にするな。修行に戻るぞ」
「…もっとひっそり修行したいもんだよ」
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